第九話 一目惚れ side樹碧&藍
藍ちゃんと一緒に碧くんに会いに来たまでは良かった…。
しかし私が入院していた部屋には碧くんはもう居なかった。
「もう退院しちゃったのかな…。」
「そうかもねぇ〜。」
でももう少しだけ探してみることになった。
藍ちゃんは碧くんよりもこの大きな病院に興味があったのか別行動することになった。
「それじゃ!私は冒険に行ってくるよ〜ん。」
そう言って藍ちゃんは何処かに走っていった。
碧くんを捜している内にかなり時間が経っていた。
やはり碧くんは退院したのだろうか…。
碧くんを捜すのを止め、私は藍ちゃんを捜すことにした。
「あちゃ〜…。迷ってしまったのだ…。」
私は樹碧と別行動したは良いけど…この病院は大きすぎて迷ってしまった。
地図らしきものはないし……とは言っても人に聞くのはちょびっと恥ずかしい…。
ん〜……どうしたものか…。
「どうしたんですか?」
後ろから不意打ちの様に男の人の声が聞こえた。
振り返るとそこには格好いい男の人が立っていた。
「え〜っと…そのちょっと散歩を…。」
「眼が泳いでるけど?」
ビクッ
この人…鋭い…。
「解ってる。案内するよ。」
助かったァ〜。
私の斜め前を歩く男の子。
私より頭一つ分くらい大きくて、格好良い。
年は私と同じくらい…だと思う。
それにしても…これが……一目惚れと言うものだろう…。
私は名前すらしらない男の子に恋をした…。
「そう言えば…名前教えて貰っても?」
「あ、私は藍です。春日藍。」
「そっか、藍さんか。俺は澄那岐碧。よろしく。」
澄那岐くんはニッコリ笑いかけてくれた。
「この病院に入院してるんですか?」
もう少し…澄那岐くんのことを知りたい…。
私の中で欲望が生まれた。
「そうだけど…そろそろ仮退院出来るかも。」
何の病気だったんだろう…いや、怪我かもしれない。
でも流石にこれは失礼だから聞かなかった。
「さて、着いたよ。」
あっという間に病院の正面玄関に着いてしまった。
「あ…ありがとう…ございます。」
「いや、俺も楽しかった。…それじゃ。」
そう言って澄那岐くんは来た道を再び戻って行った。
ボーッとしている私の後ろから樹碧の声が聞こえた。
「何処行ってたの?探したんだよ!」
「ゴメンゴメン。ちょっと迷っちゃっただけ。」
その日…私はいつもより上機嫌だった。
また…
会えるかな…?