第三話 夜中の楽譜 side樹碧
私は恐がりです。
はっきし言って、夜の病院とかホンットに怖くて仕方がありません。
なのに、かなりの高確率で私は夜中に目が覚めるてしまうんです。
だけどいつも起きるたびに、澄那岐さんも起きているんです。
それになにかシャーペンか何かが机を擦る音が聞こえる。まさにテスト中に聞こえるカタカタといった感じに似ている音。ってか同じだけど。
そして私は自分の好奇心に耐えられず、気が付くと、彼のベットを仕切っていたカーテンを開けてしまっていた。
彼は机に向けていた頭をスーッと上げてこっちを向いた。
「何か用?」
……始めて顔を見た。
格好いい。
月の光が横顔を綺麗に輝かしている。
私は頬が少し赤くなってしまっていた。そしてその赤くなった頬を隠すように、両手で顔を覆った。
「ねェ、何か用なの?」
「あ、いや……何か物音がして…それで……気になって………。」
「そっか、起こしちゃったか。悪かった。」
私はさらに頬が熱くなったの瞬間的に解った。
「い、いえ!私も元から起きてましたし……。」
そして私は彼が机の上にある、紙に気が付いた。
「あ、あァこれ?楽譜だよ。」
今始めて気が付いた。
彼ってホントは……かなり優しい?
「見る?」
私は彼の言葉で我が帰り、
「見てもいいんですか?」
と、言葉を口にすることが出来た。
いいよと彼は言って、ベットの脇にある椅子を指差した。座っていいよの合図なのは見てすぐに解った。
「おじゃましまァ〜す……。」
彼は小声でどうぞと言った。
「寒かったら布団貸すよ?」
「あ、大丈夫ですッ」
そして私は彼から楽譜を渡された。
「わァ〜、凄い。これ作ったんですか?」
私は始めてと言ってもいいほどじっくりと楽譜を見ていた。
「まあね。これね、そこの棚に入ってるギターで弾くんだよ。でも我ながら上手く出来たんだけど、まだギターでは弾けてないんだよね、アハハ。」
そして情けないな、と言って苦笑いしていた。
「あの、澄那岐さん?」
「ああ、碧でいいよ。」
「あ、じゃあ……碧さん…で……。」
私はまた顔がカーッと赤くなったのは言うまでもない。
「さんじゃなくて君でもいいけど?」
私が言いにくい様に言ったからだろうか、優しく彼は言ってくれた。
「あ、まだ君の名前聞いてなかったよね?」
私はあたふたしながら、
「わひゃひ…………。」
咄嗟に声を出した。が、噛んでしまった………。
そして彼はクスクスと少し可愛らしく笑った。
「なに緊張してんの?面白いなァ〜。キミって。」
まだクスクス笑っている。
私はさらに恥ずかしくなった。
笑い終わったのか彼がまた聞いてきた。
「名前。教えて?」
私は落ち着きを取り戻し、
「時雨 樹碧って言います。樹碧って言う字は難しい方の『き』でみどりは……あ、碧くんの字と同じですね。」
「そうなんだ。この漢字ってあまり使われてないから、ちょっと驚いた。」
そして最後に、よろしくと言って碧君はにっこりと笑った。
しかし………その笑った顔は前にも感じた、一見暖かそうに見えるのとは裏腹に、彼の瞳は……内側から凍り付くような、恐ろしく、冷めていた………。
しかしそれはほんの些細なことで、よく見なければ気付かないほどだった。