第十一話 転校生 side樹碧
今日は学校だった。
朝から全校集会みたいなやつがあるんだって。
それで新学期からこの学校に入る先生や、転校生などを紹介するんだそうだ。
「今日の転校生、男の子らしいよ〜。」
何処からかそんな言葉が聞こえてくる。
男の子か……。
病院には碧くんが居なくなってたから、多分退院したんだろうけど…。
この学校に来たりして…。
「何にやけてんのよ!」
「キャッ!」
後ろから藍ちゃんが不意打ちしてきた。
「脅かさないでよぉ〜…。ビックリしたな〜。」
「アハハ〜。メンゴメンゴ。それで…何でにやけてたのかなぁ〜?」
「いや…その……。」
「ま、いっか。そういえば今日は転校生くるのかな?」
『転校生』の言葉に過剰反応してしまう…。
その転校生が碧くんなはずが無いのに…。
「ね!?超格好良くなかった!?さっきの子!」
「だよね〜!ジャニーズか何かに入ってたとかありそうだったよね!」
へ〜。今日の転校生ってそんなに格好いいんだ…。
「ハイ!みんな〜。今から集会だから廊下に並んで〜。」
この先生の声でクラスのみんなは廊下に並び出す。
「いこっか、藍ちゃん。」
「そだね。」
藍ちゃんは私の前に並んだ。
私より2日誕生日が早かったから。
「え〜…。今日は少し暑いですが……」
長い校長先生の話が始まった。
他の生徒達も退屈そうに聞いている。
聞いてない人は隣の男子と話していたり、後ろを向いて話している人だっている。
退屈だな〜。
私は他の人になるべく見つからない様に伸びをする。
「次は新しく転校してきた人を紹介します。」
この声と共になにやらみんなが騒ぎ出した。
「ねーねー!あの子!格好良くない!?」
など聞こえてくる。
私は爪先立ちしてなんとか見ることが出来た。
転校生は全部で3人居た。
右から背の少し低い可愛い子。
真ん中の子は、右の子より少し背の大きい綺麗な子。
あれ……?
あの男の子…
まさ…か…ね?
目を凝らした私は驚愕した。
やっぱり…碧くんだ。
「それじゃ自己紹介して下さい。」
その声と共に右の子がマイクを手にした。
「私の名前は白菊 絢です…。二年生に転入します…。これからも宜しくお願いします…。」
少し照れている姿は物凄く可愛かった。
あの子モテるだろうなぁ〜…。
「私の名前は江野 円です。三年に転入します。」
女の私から見ても円さんは格好良かった。
なんかちょっとだけ強気だろうなぁ〜。
「それでは最後にキミ。自己紹介を。」
「ハイ。名前は澄那岐 碧。二年に転入します。宜しく。」
やっぱり…碧くんだ…。
私は藍ちゃんに教えてあげようと藍ちゃんの方を叩いた。
「え?あ!うん、何?」
「え…いや、前に病院に行ったとき探してた子…あの澄那岐くん…。」
「やっぱりね…。」
「え!何で!?何で解ったの!?」
「私前に病院で迷ったときに会ったよ。やっぱりあの人だったんだ〜。私も好きだなぁ〜。」
ズキンッ
藍ちゃんも碧くんのことが好き?
多分ここに居る女の子はみんな碧くんのこと…。
嫌…。
私は碧くんのことが好き…。
みんなに取られたくない…。
自分勝手なのは自分でも解ってる…。
それでも…碧くんには私を見ていて欲しい…。