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ユニコーン  作者: 宙音
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3. division in the camp

「レオンって見かけによらず食べる量が多いのね」

 私は鶏肉を口いっぱいに頬張るレオンを目を丸くして見つめる。

 さっきからレオンは上品とは言えない食事の仕方をする。豪快、というのだろうか……私の周りにはこんな食べ方をする人がいないだけに少し面白い。

「すこしはテーブルマナーを学んだ方がいいんじゃないかな」

「うるせえ」

 シャクラとレオンが食堂へ来てからずっとシャクラはレオンに対して厳しい物言いをしている。

 やっぱり、さっきのは考えすぎではなかったらしい。シャクラはレオンが気に入らないんだ。

「二人とも、食事は楽しくするものよ。シャクラ、いいじゃない。美味しそうに食べるのが一番よ」

 私は二人が言い合いを始める前に遮る。

「ティラは優しすぎるよ」

 シャクラはそう言いながらも優しい瞳で見つめてくれる。さっきから彼の目の前にあるお肉はいっこうに減っていない。

「食欲ないみたいね。なにか別のものを用意する?」

「ありがとう、ティラ。じゃあ、そうだな……」

 考え込むシャクラをレオンは食事の手を止めずに一瞥すると口を開いた。

「柔らかい肉の入ったスープだ」

「え?あ、分かったわ。ビビアン、お願いできる?」

 傍に控えていたビビアンはにっこりとほほ笑むと静かに返事をして台所へ向かった。

「余計なことを言わないでくれるかな?」

 シャクラは穏やかな表情でそう言うが目が全く穏やかでない。

「レオンはシャクラのことを思って言ってるのよ?」

「そうかな」

 私は意味深なことを言うシャクラに首をかしげる。

 もしかしてスープも飲めないくらい身体が辛いのかもしれない。

「スープも食べれそうにない?」

「ううん。大丈夫、頂くよ」

 私が心配しているのを悟ったのかシャクラは安心させるように私に向かっていつもの温かい笑顔をくれた。



 食事を終えたレオンを用意させた部屋へ案内しようとしたら、シャクラもついて行くと言った。

 身体にさわるから早く寝てほしいと思ったけど、なぜか強情に言って聞かないのでしかたなく二人でレオンの部屋まで行くことになった。

 屋敷の螺旋階段を一段一段ゆっくり登っていくと、長い廊下があってお手伝いさんや執事の部屋が長い廊下の手前にある。

 そこを通り過ぎた一番奥に私とシャクラの寝室がある。

 本当は三階に私とシャクラの寝室はあるのだけど、シャクラの身体に何かあった時にすぐ助けが呼べるようにと今は皆がいる二階で寝ることにしている。

「ここよ。どうぞ」

 レオンの部屋は私たちの寝室の隣だ。シャクラのお見舞いにやってきた人たちようにと部屋をいくつか空けていて良かった。

「また豪華な部屋だな」

 レオンは扉の前で瞬きを繰り返す。

 お客様用の部屋だから、とベッドも家具もバスルームも使いやすく落ち着く素材のものを置いている。

「あるものは自由に使って。あと、なにかあったらいつでも言ってね」

「それはどうも、ご親切に」

 レオンはわざと丁寧にそう言うと服を脱ぎ始めた。

「きゃっ!?なっ、なにして……っ」

「なにって風呂に入ろうとしてるんだ」

 私は急にレオンの逞しい胸があらわになって驚くと同時に顔が火照るのを感じた。

「本当に野蛮な人だね。ほら、ティラ行くよ」

 シャクラはレオンが私の視界に入らないように目隠しをしたまま回れ右をさせると部屋から出してくれた。

「お、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 レオンの返事は少し私をからかうような笑いが含まれていた。

 火照った頬を両手ではさんでふうっと息を吐き出す。


「ティラ、どうして赤くなってるのかな?」

 シャクラはレオンの部屋の扉を閉めると私の手を頬から引き離しぎゅうっと握ってきた。

「え、だって急にレオンがは……裸に」

「ふうん。じゃあ、僕のでも赤くなってくれるの?」

 シャクラはそう言いながら寝室の扉を片手で開けて優しく笑った。

 けれど、その笑顔の裏にはきっといつも私にしか見せない悪戯っ子のシャクラがいる。

「そ、それは……」

 シャクラが病人とは思えない力で私をふわりと持ち上げてベッドの上に丁寧に降ろす。

「どうなの?」

 はにかんだ笑顔で再度聞いてくるシャクラがとても愛しいと思った。

「それとも、もう見慣れちゃった?」

「そんなことないっ」

 悲しそうに聞くシャクラにぎゅうっと抱きつくとベッドに座るように促す。

「本当?」

 シャクラは大人しくベッドに腰かけると上半身を起こしている私の髪を撫でた。

「本当よ」

「そっか、よかった」

 シャクラが病気だと分かってから私は彼につきっきりで面倒をみていた。

 食事のときもお風呂のときも、寝るときだってずっと傍にいる。

 だから、シャクラがお風呂上がりに半裸で出てきたり、寝起きで肌蹴た胸板があったりと確かによく目にする。

 最初の頃は初めて目にする男らしい身体が少し怖くって驚いていたけど、今はもう平気になってきている……とは言うものの、やはり他人の肌を見ると恥ずかしくなってしまう。

「ティラ、先にお風呂はいるから大人しくしててね。誰か野蛮な人が来ても扉を開けちゃだめだからね」

「え?あ、うん。わかった」

 こくりと頷くとシャクラは私の返事に満足したのかお風呂場へと消えていった。


「誰か野蛮な人、って……シャクラらしくない言い方ね」

 シャクラはすごく上品で繊細だから、レオンのような豪快な人は苦手なのかもしれない。

 私はレオンに対するシャクラの態度が可笑しくなって静かに笑った。

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