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非日常的な告白

「ふ、藤本さん! 違いますって。本当に気合いを入れてもらってただけなんですよ」

 必死に両手を左右に振りまくる鈴木。もはや、なぜ気合いを入れてもらっていたのか、自分でも思い出せなくなっていた。

「誰が、『金じゃなくて、気合いの話です。あはは』なんて言われて納得すんのよ!?」

 それもそうだ。

「でも本当なんですよ。ほんっとに誤解なんです! 脅されてたわけじゃ……」

「あんたもあんたよ! 男だったら、暴力に屈してんじゃないわよっ。しかも、こんな不良に」

「いや、確かに誤解されるのも納得な状況だったかとも思うんですけど……」

 確かに……確かに、そうだろう。傍から見れば、この三人組と肩を並べて円陣を組むそのさまは、不良たちに絡まれているように見えて当然だったかもしれない。

「でも、違うんですよ」

 でも……でも、本当は――鈴木はぐっと拳を握り締めた。

 砺波はそんな鈴木に耳を貸すことなく、「まったく……」と冷たい目でよっちゃんたちを見回した。

「よく見てみなさいよ。リーゼントにモヒカン、それに中途半端にかっこつけたやさ男。こんなしょーもない連中、怖がることもないじゃない」

「な……なんだと!? 人が大人しくしてりゃ、調子に乗りやがって!」

 よっちゃんは顔を真っ赤にして、地響きすら起こさせそうな怒号を上げた。しかし、砺波は毅然とした態度で腰に手をあてがう。

「調子に乗ってるのはどっちよ? そんなダサい格好で校舎をうろつきまわれて、目障りだったんだから。どうせろくでもないことしてんだろうと思ってたけど、カツアゲとはねぇ」

「ぁあ!? だから、言ってんだろ!? カツアゲなんてしてねぇっつーの!」

 鈴木は思い出していた。――学校で悪名高かった不良三人衆。廊下ですれ違うたびに目を伏せていた。関わらないように、と必死に気をつけていた。それが、ひょんなことから関わってしまった。すべては『がっかりイケメン』、藤本曽良のせいで。藤本曽良がよっちゃんに『第三ボタン』なんてカツアゲされてたから……。

「今まで、いったいいくら金巻き上げてきたわけ? 何人脅してきたのよ? ほんっと、期待を裏切らないでくれるわ」

 鈴木の拳がふるふると震えていた。


 ――心配すんな、鈴木!

 ――お前ならやれるぜ、鈴木。


 どうせロクでもない連中……そう思っていたはずなのに。

「見た目は中身を映し出すっていうけど、あんたたちの場合、『ロクデナシです』って張り紙を背中にはっつけて歩き回っているようなものよね! まったく……あんたらの床屋の顔が見てみたいわ。よくもまあ、こんなロクでもない連中に――」 

「てめぇ、床屋のオヤジまで……」とよっちゃんが怒鳴りかけたときだった。

「ロクでもないのはどっちだっ!? 人を見た目で決め付けるなよっ!」

 公園中に響き渡ったであろうその声は、学園のアイドルも不良も一瞬にして黙らせた。

 鈴木は目を瞬かせ、呆然とした。

 今のは誰だ? いったい、誰がいきなり藤本砺波に怒鳴りつけた? なんで皆、こちらを見ている?

「鈴木……」

「鈴木、お前……」

「もはや、殿」

 なぜ、不良三人組が口々に自分の名をつぶやいて、涙ぐんでいる?

「ちょっと、あんた!」

 なぜ、藤本砺波が勇ましい足取りでこちらに向かってくる?

 ああ、そうか。

 通りがかった天使に囁かれでもしたかのように、ふと気づく。今のは自分が――。

「て、いや、なんで!?」鈴木の顔は一瞬にして青ざめた。「あの、ちが……今のは――!」

「それが、人を心配して駆けつけて来てやった奴への態度かぁ!?」

 鈴木の目の前で砺波のスカートがひらりと舞った。すらりとしなやかな脚が鞭のような勢いで迫ってくる。

 意識が飛ぶ直前、鈴木はお花畑を見た気がした。白い布地に、ピンクや黄色、カラフルなお花たち。

 ああ、これがいわゆるパンチラ。

 ありがとう――鈴木は誰かに感謝して昇天した。

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