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非日常的な告白作戦

「砺波が来たらね、このラガーマンズ三人組が『よぉ、姉ちゃん、かわいいじゃねぇか』とか言って砺波に絡むから。そこを偶然、通りかかった殿が止めに入って、ラガーマンズを少林寺拳法的な動きで撃退。で、超告白タイム! ということで」

 さらりと『泥舟タイタニック作戦』の概要を説明した曽良。周りでは不良三人組が「完璧だぜ」と興奮もあらわに歓声を上げている。

 ただ一人、鈴木だけは呆然と突っ立っていた。なんてことだ、と驚愕していたのだ。

「徹夜で……」

 徹夜で、ここまでありきたりな作戦を思いつくなんて――もはや、理解不能で鈴木は頭を抱えた。しかも、超告白タイム、てなんなんだ? 一番肝心なところがあやふやじゃないか。

「どう、殿? 気に入った?」

 しかし、曽良は自信満々だ。ケチをつけるのも気がひけるほどに爛々と輝く瞳で見つめてくる。自分が女子だったら、赤面して昇天しているところだろう。

「あのぅ……」

 しかし、言いづらい。『徹夜で勉強したって、逆効果なのに』と、夜食を手に囁いた母の愛にようやく気づけた。

「んだよ、鈴木? 文句あんのかよ?」

 鈴木の異変を察したようだ。よっちゃんが恐ろしい目つきで睨みつけてきた。

「ありません!」

 瞬時に姿勢を正して屈服する鈴木のこの潔さである。

「だよな。ぜってぇうまくいくぜ」

「はあ……」

「元気ねぇなぁ! 気合が足りねぇよ」

 そうは言われても、ここまでテンプレ全開の作戦を自信満々に披露されては不安にならないほうがおかしいというものだ。

「大丈夫だよ、殿!」いきなり、視界にイケメンの笑顔が飛びこんできた。「思いの丈をぶつければいいだけさ」

 眩いほどの無邪気な笑み。綺麗な顔立ちの中にも、愛らしさがあって……なるほど、女の子たちが夢中になるわけだ。今さらながら、しみじみ思った。

 つい、見惚れていると、「はい」と、曽良は二枚の紙っぺらを差し出してきた。

「映画のチケット。渡しておくね」

「チケット?」


 ――映画観る約束しといたんだ。大丈夫、砺波は必ず来るよ。タダ券がある、て言っといたから。


 あ、と鈴木は目を丸くした。そういえば、曽良はそんなことを言っていた。てっきり、呼び出すためだけの嘘だと思っていたのだが……。

「タダ券って、本当だったんですか」

「そこは嘘なんだけど」苦笑して、曽良はチケットを鈴木の手に握らせる。「砺波の好きそうな映画、探しといたんだ。告白ついでに誘うんだよ」

「……」

 わざわざ、買っておいてくれたのか。鈴木は手の平に押しこまれたチケットに視線を落とした。

「『ゴリラの惑星』?」

「うん。ゴリラが支配する惑星に迷いこんだ宇宙飛行士の話なんだ。最終的に、そこが地球だった、ていうオチでびっくりするよ」

「へえ、そうなんですか」観たいなぁ、と言いかけ、鈴木はハッとした。「って、どんだけ、心の準備させてくれちゃったんですか!?」

「ああ、それと……砺波の好きなタイプ、聞いといたんだ。黒髪短髪、地味な男の子、て言ってたよ」

「え……」

 きょとんとする鈴木の周りで、おお、とどよめきが起こった。

「それ、お前じゃねぇかよ!?」

「ああ。お前しかあてはまらねぇよ」

「こりゃ、イケるぜ!」

 不良たちのテンションも最高潮だ。鈴木の心臓も浮き足立っている。

「た、確かに……」

 鈴木はごくりと生唾を飲み込み、周りを見渡した。

 地味とは程遠いスーパーイケメン、長髪のちょいイケメン、リーゼントにモヒカン頭。黒髪短髪、地味な男の子……自分しかいない!

「って、まわりがおかしいだけだーっ!」

 順調に感覚が麻痺してきていることに気づいた瞬間だった。

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