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賭け 1  裏世界でのプライバシー

初投稿となります。

不定期で投稿するのであしからず…

誤字脱字があれば、報告していただけると助かります!


「こちらが貴方様の偽名(プレイヤーネーム)になります」


 サングラスをつけた丸刈りの黒服が俺にカードを渡してくる。

 これは、裏社会にしか流通していない会員証。

 なんのための物かと言うと……


『うおおおおーー!!!!』


 この熱狂が渦巻く違法賭博の世界において必須な賭け金(チップ)だからだ。

 俺は今日、人生で初めての賭け事(ギャンブル)を行う。

 父の記憶を戻すための賭け事を――


「おい、ガキ」


「は?」


 振り返るとチンピラが俺の肩に手を置いていた。

 金髪で室内にも関わらずサングラスをつけており、視界が悪そうだ。


「お前、俺と勝負しろよ」


 周りがヒソヒソと笑いながら話している。

 この騒ぎはもしや……


「ルーキー潰し……か」


「はっ、勘が良いな」


 いかにも初心者そうな俺を狙った雑魚狩り(ルーキークラッシュ)


「良いだろう、受けてやる」


「威勢だけは良いなぁ? でも意地を張ってるなぁ、負けても後悔すんなよ」


 見た限り煽っているようだが、そんな安い挑発には乗らない。

 お互いテーブルに着き、カードを手前の型に嵌める。

 間も無くして審判が現れ、トランプをポーカーのディーラーの様に卓上に並べた。

 ギャンブルのルールは、並べられたトランプを先に取った方が先行を得るがチップの掛け数が後攻の二倍となる。

 その為、俺みたいな初心者を狙い、安い賭け金で稼ごうとする輩が一定数いる。

 そして、カードの情報がホログラムで映し出される。


「相手は、エキスパートか」


 両者、相手のランクを凝視。


「なんだ、やっぱり初心者(ルーキー)のガキじゃないか、18歳とはな……クククッ」


「なんだ、やはり雑魚狩り(ルーキークラッシュ)のチンピラじゃないか、24歳とはな……もしかしてギャングの下っ端か?」


「調子に乗るなよ! この青臭いガキが! お前は絶対殺す!!」


 癪に障ったのか、怒号を浴びせて、殺すと言ってきた。

 しかし、残念ながらこのギャンブルでは暴力を振るえば一発退場となり、バラバラに分解されて闇市場で臓器を売られる。

 だから、この殺すと言う言葉は俺を逃さない……という意味だろう。


「じゃあ、俺は、俺の名前を賭けに出す」


「は? ククク……ブハハハハ! こいつ間抜けだぜ? 折角俺が先行取ったのに賭け金(プライバシー)が1? 1? ブハハハハ!」


 この違法賭博は個人情報を賭けて競うギャンブルだ。

 名前、住所、電話番号、経歴などなど、自分の持っている個人情報を賭けに出す。

 個人情報は闇市で高く取引され、身分を偽装したり、責任を押し付けたりすることが出来る。

 そして、型に嵌めたカードによって、プライバシーが管理され、自分の知っている個人情報を失えば、記憶から抹消される。

 血縁者だったり、友達や、賭けで得た他人の個人情報もチップとして使う事も出来、いろんな情報がある中で、俺は自分の名前、この場の現金で換算すると1円だ。

 もちろん闇市では1000万はくだらない。

 それを俺は出した。

 

「早くカードを捲れよ」


「ククク……俺は手加減はしねえぜ? おい審判、ルールを」


 チンピラは1の二倍の2円を出し、審判が淡々とルールを話し始めた。

 今回のルールは肩が代償のロシアンルーレット。

 本来は頭に向けてやるのが基本だが、今回はそれの肩版。

 ルールは肩に弾が当たった方が負ける。

 先行のチンピラは自分の肩に向けてリボルバーのトリガーを引く。

 一発目は不発。


「俺の番か」


 二発目、三発、四発目も不発。

 タイミングで言えば、次に弾が込められてなかったら、俺の負けだ。


「さぁ、引くぞ……?」


 カチッという音でその場が静まりかえる。

 俺の負けだ。


「くっ……」


「ざーんねんでしたー! お前の負けだ! 早く自分の肩に撃つんだなぁ!」


 だが、その逆境の最中、一筋の希望(ヒカリ)が見えた。

 勝てる希望が。


「なぁ、審判。ルールをもう一回説明してもらっても良いか?」


「なんだ? 命乞いか? 情けねえなあ、同じ男として恥だ。ブハハハハ!」


「ルールは肩に当たった方が負ける……肩に当たった……方……」


「ま、まさか!」

 

 俺は相手の方に銃を向けた。チンピラは慌てて逃げ出そうとするが、トリガーを引き、バキュンッという音が豪快に鳴った。

 チンピラの肩に弾が命中し、そいつはその場で蹲った。


「俺の……勝ちだ。」


「く、くそっ……がぁぁー! 審判! これはルール違反だろ!」


 痛みに任せてチンピラは叫ぶが、審判は無情にもルール上は問題ないと言い下した。

 暴力ではあるが、これは賭け事でのルール上で決められた暴力である為、例外である……と。


「ハァ……危なかったぜ」


 汗を拭っていると、また周りでヒソヒソと声が聞こえる。

 今度は笑われずに。

 審判から相手のチップを渡されて、俺は勝利を味わった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

もしよければ、★をつけていただけると、とても嬉しいです。

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