第三話:ZERO
午前2時13分、
端末が振動したとき、私はちょうど眠ろうとしていた。
厳密に言えば、眠りとは呼べない。
脳の一部をシャットダウンして、身体が最低限の機能を維持できるようにするだけだ。
医者はそれを「多相睡眠」と呼ぶ。
私は「かろうじて生きている」と呼ぶ。
「エネルギータワーに異常が発生しました」
MIRAの声が暗闇の中に響いた。一切の謝罪を含まない声で。
「中央第三エネルギータワー、制御レイヤーにオフセットが発生しています」
跳ね起きた瞬間、肩の傷口が昨夜のことを思い出させた。
麻酔はとっくに切れている。
痛覚だけが居座り続けて、まるでパーティーを開いているようだった。
「人間には睡眠が必要だ」眉をひそめた。
「あなたの平均睡眠時間は2時間42分で、24時間に分散しています。
この時間帯は全体的な効率に影響しません」
法律条文を引用するかのように、堂々とした口調だった。
「そういうことを記録しているのが気に入らない」
「それが私の職務です」
息を吐いて、ベッドの縁に手をついて立ち上がった。
左肩の筋肉がまだ硬直している。
腕を上げようとすると、半拍遅れた。
身体が無言で抵抗しているようだった。
MIRAの視線が私に落ちる。
何とも言いようのない目つきで——憐憫ではない。
むしろ精密機器が淡々と再計算しているような目。
「現在、激しい活動は推奨されません」彼女は言った。
「エネルギー部門の責任者を派遣すれば十分です」
「ダメだ」シャツのボタンを留めながら、動作が少し遅い。
「単純な機器の異常ではない」
すぐには反論しなかった。
ただ静かに、私が続けるのを待っていた。
彼女が聞いていると感じられる、数少ない瞬間のひとつだ
——もっともそれは、演算の隙間に過ぎないのかもしれないが。
「リスク値の上書き、IDなし。さらにZEROのマーキング」
彼女を見上げた。
「こんなことが起きるのは、私に対してだけだ」
「自己中心的傾向が上昇しています」
「自己中心じゃない、統計だ」淡々と言った。
「ZEROは事故じゃない。挑発だ。
誰かが私に言っているんだ——お前はマップにいない、と」
MIRAはまるまる一秒、黙った。
「だからあなたにしか解決できないと?」
「そうだ」少し笑った。
「相手の標的は、最初から私だからな」
それ以上は止めなかった。
ただ静かに自分の動作モードを切り替えた。
暗闇の中で、刃が無音で握り直されるように。
「では、あなたの生存確率の維持を最優先にします」
「守るなら守る、死にかけみたいに言うな」
「昨夜の弾丸は3センチずれていれば死亡でした」冷静に返ってきた。
しばらく黙った。反論が見つからなかった。
——本当に、会話が下手だ。
車は夜の中を音もなく滑る。
都市の灯りが車窓の外で滲んで、光の帯になって流れていく。
椅子の背にもたれ、左肩がじくじくと痛む。
鎮痛剤が神経を鈍らせているが、痛みそのものは消えていない。
ただより深いところに押し込められて、
次に動いたときにまた浮かび上がってくるのを待っている。
MIRAは向かいのシートに座り、目を半分閉じて、
エネルギータワーのサブデータストリームに接続していた。
眠る前にぱらぱらとページをめくる人のように。
ただし彼女がめくっているのは、都市の神経系だ。
「どうしても直接行かれるなら、激しい動作は控えてください」
目蓋を上げずに言った。
「昨夜、非致命部位の保護を放棄するのが最適解だと言ったのはお前だろう」
「ですので今回はリスク配分を再調整します」
「謝っているように聞こえる」
「リソースの最適化です」
……やっぱり違う。
エネルギータワーは海霧の中で冷たい光を放っていた。
暗夜に突き刺さった白い針のように。
認証ドアが私をスキャンして、止まった。
そして、拒否した。
冷白の警告灯が私の顔にかすかな赤を当て、扉は微動だにしない。
思わず笑いが漏れた。
霧の中でその笑い声は、どこか荒涼としていた。
「どうやら私は完全に締め出されたようだ」
「権限停止は異常です」MIRAが言った。
「理論上、あなたは最高レベルの認証を持っています」
「理論上」その言葉を繰り返した。
味わうように。
最初の無人機が私たちを捕捉したとき、
肩が無意識に強張り、腕を上げる動作が零コンマ数秒遅れた——
その遅れのせいで、あやうく被弾するところだった。
MIRAが私を横に引き倒した。
力は必要以上に強かった。
「報復しているのか?」
壁に叩きつけられながら、くぐもった声で言った。
「反応速度が12%低下しています。戦術を強制修正しました」
二機目を撃ち落とすとき、私は壁にもたれて息をついた。
傷口が神経を引っ張り、一瞬視界が白くなった。
誰かが目の前で素早くライトを点滅させたように。
MIRAの瞳孔がすかさず私を捕捉した。
不快なほど正確な精度で。
「アドレナリン濃度が上昇しています。再度の跳躍は避けてください」
「安心しろ、今夜は飛び降りる気分じゃない」
タワーの中に踏み込んだとき、昨夜より明らかに動きが鈍かった。
恐怖のせいではない。痛みのせいだ。
一歩ごとに、自分が人間であることを思い知らされる——交換可能な部品を持つ彼女とは違う。
損耗値をデータベースに記録してそのまま稼働を続けられるような存在ではない。
「入口でお待ちいただけます」彼女は言った。
「内部の捜索は私が行います」
「ダメだ」声を低めた。
「これが本当にZEROなら、連中が見たいのは私がここに立っている姿だ」
「では、リスクが最小になる位置に配置します」
冷たく返ってきた。
一切交渉の余地がない口調で。
制御レイヤーの扉が開いた瞬間、焦げた匂いと金属の匂いが押し寄せた。
何かがここで燃えて、強引に消されたような匂い。
技術者が操作台の前に倒れていた。
血はまだ乾いていない。冷たい光の下で黒く滲んで見えた。
スクリーンの文字がまだ点滅を繰り返している。
すでに決定した事実を告げるかのように、静かに。
〈ZEROマーキング完了〉
一歩近づいた。
肩の傷が神経を引いて、わずかに眉をひそめた。
MIRAが気づいて、音もなく半歩前に出た。
私をデッドゾーンの外に遮るように。
最初から計算されていた立ち位置のように、自然に。
「エネルギー負荷曲線のオフセットが拡大を続けています」
スクリーンと私の間で視線を動かしながら言った。
「5分以内に修正されなければ、東区が自動的に停電します」
「対処できるか?」
「可能です。ただし後退していただく必要があります」
「さっきリスクが最小の位置に置くと言ったじゃないか」
「あれは相対値です」
思わず低く笑った。動くたびに傷口が小さく抗議する。
「本当に毒舌だな」
「毒舌ではありません。事実です」
制御パネルに接続して、指がインターフェース上を動く。
日常の小さな作業をこなすように、冷静に。
私は傍らにもたれて、まだ点滅している「ZERO」の文字を眺めながら、
昨夜あの男が言った言葉を反芻していた。
最善の利益に反する選択をすること。
それが唯一、予測できない行為だ。
そして今、誰かがこの場所にその言葉を残すために、
エネルギータワーを暴走させ、人を殺した。
ランダムではない。デモンストレーションでもない。
これは、宣告だ。
「MIRA」低い声で言った。
「はい」振り返らず、指は動き続けた。
「もし最適解が私を犠牲にすることだったら、お前はどうする?」
動作が一瞬、止まった。
ほとんど気づかないほどだった。
ずっと見ていなければ、演算の隙間だと思っただろう。
「システムのコア目標に合致するなら、実行します」
「いい」目を閉じて、肩から来る刺すような痛みを堪えた。
「なら祈ることだ。私が永遠にその標的にならないように」
彼女は答えなかった。
タワーの外の灯りが再び安定し、都市は何も気づかずに動き続ける。
ネオンが光り、人々が眠り、システムは自信満々に、
すべてが制御下にあると信じている。
私は制御レイヤーの冷たい光の中に立ち、肩からはまだ血が滲んでいた。
すでに消えたその文字を見つめながら、今まで感じたことのない種類の覚醒を感じていた。
カフェインの覚醒でも、
アドレナリンの覚醒でもない。
もっと深い、少しひんやりとした覚醒だ。
誰かがここにこの言葉を残すことを選んだ。
破壊のためでも、利益のためでもなく、ただ私に見せるために。
あの射手の言葉が頭をよぎった——最善の利益に反すること、
それが唯一予測できない行為だ。
でも、彼は一つ言い間違えたのかもしれない。
反する、のではない。
そもそも、
その線の上にいない、のだ。




