第二十二章 ― 最終対決・第二部
リュウは翼の上にぶら下がり、指先が滑り落ちていく。
《死の魔神》が可視化された姿を現す――
その体から影が漏れ出し、自らの意思を持って動き始める。
生物は宿主を完全に飲み込もうと試みる。
カズキは慎重に機体を操り、兄を揺さぶらないようにする。
必死に安全な着陸場所を探す――不可能だった。
下にはただの廃墟しかない。
冷たい《戦の神》の声が脳内に響く。
> 「宿主を通して魔神を討て。犠牲は避けられぬ。」
カズキは怒りに震え声を返す。
> 「他の方法があるはずだ!」
> 「ない」
《戦の神》は答える。
「悪魔との契約は永久だ。死のみが解放だ。」
リュウもその精神会話を聞く――兄弟の絆が許す。
弱々しい声が風に乗って届く。
> 「……正しい……俺は……永遠には……抗えない……」
《死の魔神》は絶望を糧に指数関数的に増大する。
巨大な形態が立ち上がり、暗黒の翼が空を覆い、無数の眼がカズキを凝視する。
> 「お前たち二人とも死ぬ」
多重に歪んだ声が告げる。
怪物は機体へ直接襲いかかる。
幽体の爪が金属を裂く。
カズキは応戦し、《インフェルノ・ブラスター》を怪物の核に撃ち込む。
レーザーは通り抜けるだけで無力だった。
獣は部分的にしか実体化していない。
《高度戦略》が瞬時に計算する。
――完全に実体化した瞬間のみ、魔神は脆弱になる。
カズキは強制的に全体化させる必要がある。
> 「リュウ!――あと十秒耐えろ!」
兄は決意を示し頷く。
忘れ去られた力を呼び覚まし、
幼き日の記憶が脳裏に溢れる――遊び、笑い、互いに守ると交わした約束。
人間性の火花が、彼を現実に引き戻す。
《死の魔神》は苛立ち、全身を完全に実体化させ、宿体を支配せんとする。
――ここが脆弱な瞬間。
カズキと《戦の神》は完全な調和で行動する。
《カオス・メテオ・レイン》を集中させ、すべての破片を一点に収束させる。
黙示録のような爆発が生じた。
《死の魔神》は苦悶の叫びを上げ、存在の核が風に散る。
リュウはついに解放され、翼の上で意識を失って崩れ落ちる。
カズキは険しい地形に緊急着陸を行う。
キャノピーを飛び出し、兄に駆け寄り脈を確認する――生きている、呼吸している。
安堵の涙が頬を伝う。
《戦の神》が囁く。
> 「勝利のすべてを感傷に変えたな。」
カズキは疲労で微笑む。
> 「兄を救った。それが勝利だ。」
魔神は沈黙する――
おそらく、千年ぶりに人の心を理解したのだろう。




