表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

第2章 ― ギャングの襲撃

――三日前の夜。


リュウは軍用格納庫を双眼式の熱感知スコープ越しに見つめていた。

すべての警備員の配置、巡回のルート、死角の位置。

それらを外科手術のような正確さで記録していく。


胸の奥では、古くから燃え続ける炎が揺らめいていた。

――嫉妬という名の炎。

彼は常に「完璧な兄」の影だった。

天才パイロット、父の誇り。

だが今、その影は牙を剥いた。


闇の奥では、彼のギャングが静かに待機していた。

二十人の男たち――絶望に飢え、そして“人を超える力”を約束された者たち。


リュウは手を高く掲げた。

空気が一瞬、祈りのように沈黙する。

そして――嵐が始まった。


動きは完璧に同期していた。

鉄条網は切り裂かれ、見張りは音もなく沈む。

数分のうちに、格納庫は彼らのものとなった。


リュウは戦闘機の列の間を、聖域を歩む僧侶のように進んだ。

その足取りには、危ういほどの自信――いや、神性すら宿っていた。

彼は最新鋭の戦闘機の冷たい機体に触れ、嘲るように笑った。


「臆病者の手に渡るとは……無駄な道具だ。」


部下たちは素早く動いた。

回線を切り替え、システムをハッキングし、燃料を満たす。

作戦は軍人さながらの精密さで進行していた――いや、それ以上に、闇の意志が導いていた。


リュウは一機の特別な戦闘機の前で足を止めた。

試作型、黒い艶消し塗装、翼には死の紋章が刻まれている。

彼はコックピットに乗り込み、目を閉じた。

そして禁じられた言葉を呟く。

時に忘れ去られた古代の言語――血で結ばれた契約の言葉。


格納庫の空気が一気に冷え込む。

吐息が白く凍る。

無の深淵から声が響いた。


――「復讐の代償を、受け入れるか?」


リュウは一瞬も迷わなかった。

「すべてを捧げよう。」


契約は結ばれた。

彼の瞳は漆黒に染まり、血管が闇のように脈動する。

死神の悪魔が、機械と人とを一つにした。


同時に、夜を切り裂く爆発が響く。

弾薬庫が炎上し、火柱が天を貫く。

それは完璧な陽動だった。


十五機の戦闘機が幽霊のように夜空を奪った。

生き残った警備兵たちは銃を撃ったが、弾丸は見えない盾に弾かれた。


カズキが駆けつけた時には――すでに手遅れだった。

格納庫は炎に包まれ、

炎の舌が空を舐め、

タービンの残光は遠い地平線に消えていた。


兄はすべてを裏切った。

祖国を、家族を、そして己の魂を。


こうして――二人の戦争が始まった。



---


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ