第十八章 – 戦いの激化
戦いは何時間も続いた——
肉体、機械、そして理性までもを試す決闘。
常人の操縦士なら、とっくに墜ちていた。
だがそこにいたのは、奇跡を生き延びた二人の亡霊。
裂けた雲と歪んだ稲妻の中で、
兄弟はなおも空を裂いていた。
一つひとつの機動が、記憶を運ぶ。
一発の射撃ごとに、物語が宿る。
リュウは少年時代に共に考えた回避を放ち、
カズキはかつて遊び半分で磨いた防御で応える。
この戦いは——
共有された記憶の舞踏、命を懸けた回想劇だった。
地獄の砲《ブラスタ―・インフェルノ》が咆哮する。
真紅の光線が空を裂き、雲を溶かす。
リュウは《インフェルノ・ピルエット》で紙一重に回避。
カズキは《死の斬撃》を放つが、
リュウは《ブルータル・ループ》で光線の軌跡をなぞり、影のように旋回。
攻防は鏡写し——
まったく同じ頭脳が、正反対の意思を持ってぶつかり合う。
優勢なし。
退く者もなし。
互いを、恐ろしいほどに理解している。
やがて、カズキは完璧な隙を見つけた。
照準の中心にリュウ。
逃げ場も、反撃の術もない。
指が引き金を絞る——
その瞬間、時間が止まった。
閃光。
幼いリュウ——膝を擦りむいて泣いている。
青年のカズキが、そっと膝をつき、
布切れで手当てをしてやる。
> 「俺がずっと守る。約束だ。」
その記憶が、現在を貫いた。
カズキは震える声で呟く。
> 「……許してくれ。」
撃たなかった。
リュウはそのためらいを見抜いた。
そして、憎しみに鍛えられた戦士として応じた。
ミサイルが空を裂き、カズキの機体を直撃。
轟音。警報の咆哮。
計器が閃き、操縦桿が反応を失う。
機体はスピンに陥り、
空が回転する。
> 『感傷は死を招く!』
——戦の神の声が脳内に雷鳴した。
だがカズキは無視した。
彼はまだ「人間」だった。
それが、唯一の強さだった。
リュウが追撃に入る。
もはや《死の悪魔》が完全に支配していた。
空気が震え、地獄の超音波が走る。
カズキの頭蓋が裂けるように痛み、
耳から血が流れ出す。
視界が歪み、吐き気が襲う。
本能だけで、
彼は《ブルータル・スピン》を発動。
直後、彼がいた空間が黒く裂け、
《空の深淵》が大気を呑み込んだ。
カズキは反撃に転じる。
《ブラスタ―・インフェルノ》が最大出力で輝き、
純粋なエネルギーの刃が天を貫く。
その光線がリュウの翼を裂き、
エンジンを爆ぜさせた。
敵機は炎を纏い、
狂った螺旋で墜落していく。
リュウは最後の瞬間に脱出。
パラシュートが荒れ狂う海上で開いた。
カズキは上空を旋回し、
レーダーが生命反応を捉えるのを確認。
今、終わらせることができた。
一発で。
だが——しなかった。
波間に浮かぶ兄を見つめる。
あまりにも小さく、
無力で、
それでも、まだ兄だった。
カズキは機体を旋回させ、
基地への帰路を取る。
無言のまま。
> 『慈悲は弱さだ。』
——戦の神が低く呟いた。
カズキは即座に答えた。
> 「慈悲は人間性だ。
お前たちとの唯一の違いだ。」
神は沈黙した。
そして——
初めて、理解したように思えた。




