表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

第十六章 – 力の収束

地平線の彼方で、世界の終焉が形を取り始めていた。

それは自然の嵐ではなかった。

呼び起こされた、世界そのものを裂く暴風。


黒雲は幾千メートルもの厚さで空を呑み込み、

稲妻が絶え間なく天を引き裂き、

暴風は海を山のような波へと変え、

天地を震わせていた。


混沌の中心から、リュウの声が無線を通じて響いた。

低く、歪み、人間とは思えぬ響きで——


> 「兄上……終焉の舞が始まる。

天が血を流す場所で、我を待て。」




座標が続いて送られてきた。

——嵐の震源地。



---


カズキは一人で発進した。

制止の命令が無線に飛び交う。

だが、彼はそれを聞かなかった。

運命を拒むようにではなく、受け入れるように。


この戦いは、個の因縁だった。

誰も介入できぬ宿命の決着。

戦争の終わり——そして彼らの血の系譜の終わり。


雲の壁を突き抜けた瞬間、

世界は轟音と乱気流と闇に変わった。

機体は激しく揺れ、翼に氷が張りつく。

視界は完全に失われ、

警報だけが耳を突く。


だが、カズキは動じなかった。

彼はただ、呼吸を続けた。

疲弊しきった肉体で。


四夜の不眠。

数週間の連戦。

人の身は、既に限界を超えていた。


その時、心の奥で声が囁く。

穏やかに、しかし抗えぬ力で——


> 「このままでは勝てぬ。……我に委ねよ。」




カズキは一瞬だけ迷った。

そして、静かに答えた。


> 「抗わない……だが、今度は共に戦う。」





---


融合は、痛みではなく光で始まった。

肉体と神性が、矛盾なく共鳴する。

人と神——二つの意志が一つの渦に溶けた。


機体が震え、まるで魂を得たかのように脈動する。

次の瞬間、音の壁を突き破った。

——一度ではない。三度。

連続する衝撃波が、地獄の雲を切り裂いていく。


カズキの飛行はもはや人間の領域ではなかった。

三回転の旋回、垂直急降下、逆重力の軌道。

重力すらも、ただの提案のように無視される。

空そのものが、彼の通過に震えた。



---


嵐の中心で——

リュウが待っていた。


完全体の「死の悪魔デモン・オブ・デス」。

それは金属と肉の融合した巨躯だった。

百メートルに及ぶ膜翼。

無数の眼が緑の瘴光を放ち、

その存在だけで大気が崩壊していく。


暗黒が二人を包み、現実から切り離された領域が生まれる。

そこは“声なき空”——

破壊だけが存在する閉じた世界。


空間が裂け、次々と異界の門が開いた。

そこから放たれるのは、

魔弾、閃光、歪んだ爆発の雨。


空は網のような光の構造体に変わり、

災厄の交響曲が奏でられる。


カズキ——あるいは戦の神——は同じ言語で応じた。


> 混沌の流星雨メテオ・オブ・カオス




無数の火球が虚空に出現し、

リュウの魔弾とぶつかり合う。

衝突のたびに生まれる爆炎は、

美しくも恐ろしい、対称の破壊。


空そのものが裂けた。

次元の亀裂が開き、

その奥に現実の外側——“虚無”が見えた。


下の海は割れ、

水は沸騰し、空気に触れる前に蒸発した。


山は崩壊し、

津波が生まれ、

大地が悲鳴を上げた。



---


カズキは破壊を抑えようとした。

だが、その力は——

あまりにも神聖で、あまりにも盲目だった。


> 「……やめろ、街が——!」




叫びは心の中で反響し、嵐に呑まれた。

彼は軌道を逸らしたが、遅かった。

波は陸を飲み込み、

数千の命が、神々の雷鳴の下で消えた。


その瞬間、

彼の中に残っていた人間の魂が、裂けた。


それでも戦いは終わらない。

誰にも止められない。

空も、地も、運命すらも。


神と悪魔の最終衝突。

だがそれは同時に——

同じ空を愛した、二人の兄弟の戦いでもあった。


そして今、

その空を、彼ら自身の手で滅ぼしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ