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第1章 ― パイロットの覚醒

格納庫には焼けた油と冷たい鉄の匂いが漂っていた。

カズキは眠りについた機械たちの間を静かに歩いていた。

彼の黒い戦闘機は、まるで獲物を狙う獣のように静かに佇み、

翼に刻まれた赤い紋様が独自の鼓動で脈打っていた。

それは生きた血管のように光を放っていた。


コックピットの奥から囁きが響く。

古く、飢えた声たち――栄光という毒を含んだ約束を囁く亡霊たちの声。

カズキが冷たい金属に触れると、

指先の間で青白い火花が踊った。


彼の紅い瞳は、存在しない炎を映し出していた。

金色の瞳孔が細まり、

内に潜む悪魔の気配が目を覚ますのを感じ取った。


「話がある。」

カズキは静かに機体へと呟いた。


返ってきたのは、骨の髄を震わせる歪んだ残響だった。

――「戦が呼ぶ……血が応える。」


カズキは昇降階段の途中で立ち止まった。

彼を縛る恐怖は戦場のそれではない。

それは内に棲む獣――自由を求める飢えた魂への恐怖だった。


格納庫の反対側では、技術者たちが緊張した沈黙の中で様子を見守っていた。

無線からは司令官の怒号が響く。

「東岸で攻撃発生! 防衛線が突破された!」


決断の時が訪れた。


カズキはコックピットへ乗り込んだ。

シートは彼の身体に吸い付くように形を変え、

赤い光が順にパネルを走り抜けていく。

エンジンが原始の咆哮を上げた。


――初の実戦試射:〈インフェルノ・ブラスター〉。

紅蓮のレーザーが格納庫の扉を貫き、

空気を切り裂く光の刃となった。

吹き上がる風が工具と紙片と悲鳴を吸い込み、

垂直上昇する機体が構造全体を震わせた。


夜空は、古の捕食者を迎え入れるように彼を包み込んだ。


無線が再びざらつく音を立て、

不吉な報告が流れた。


> 「北部基地が侵入を受けた。正体不明の勢力……航空機が奪われ、兵士たちは……皆殺しにされた。」




ノイズ混じりの通信の中、最後の一言がカズキの血を凍らせた。


> 「敵の指揮官は――常人には不可能な戦術を使っている……。」




その戦略パターンを、カズキは知っていた。

心臓が沈む。


「……兄さん。」

苦しげに呟く。


そしてその瞬間、

彼の心の奥で――〈戦神〉が嘲笑った。



---


つづく

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