表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春のメドレー  作者: 大和剛
海風の超新星編
2/33

第二話 水泳のリズム

前回のあらすじ

俺は川名貫太郎。島宮県鳴海市在住のしがない高校生だ。県立の鳴海西高校の受験に失敗して、滑り止めで合格した海風学園高校に入学することになった。

海風学園高校で出会ったクラスメイトの佐藤健太、山本亮、高木拓也、中村美枝子、小林綾乃、斎藤南と打ち解けることができ、彼らは俺と同じ授業を履修して苦楽を共にすることにした。

プロローグ:部活動の勧誘

海風学園高等学校の校舎は、朝の陽光に照らされ、白亜の壁がキラキラと輝いている。島宮県鳴海市の常夏の気候が、校庭の椰子の木を軽やかに揺らし、潮風が教室の窓から吹き込んでカーテンをそよがせる。昨日までの厳粛な入学式の雰囲気は一夜にして消え、校舎内は活気に満ちた喧騒に包まれている。廊下の壁には、色とりどりの部活動のチラシが貼られ、バスケ部、吹奏楽部、美術部、アニメ研究会――それぞれの個性がビビッドなデザインで新入生の目を引く。先輩たちはチラシを手に、笑顔で新入生に声をかけ、部活動の魅力を熱心に語っている。笑い声や足音が響き合い、校舎全体が新しい出会いのエネルギーで脈動している。


川名貫太郎は、ε組の教室の入り口近くに立っている。肩に掛けたバックパックを少しずらし、ブレザーの袖を軽く引っ張る。制服はまだ体に馴染まず、袖が少し長く感じられる。昨日、母親に「そのうち慣れるよ」と言われた言葉が、頭の片隅に残っている。彼の手には、昨日配られた時間割の紙が握られ、折り目がいくつか付いている。紙の端が少し汗で湿り、貫太郎の緊張を物語る。隣の教室からは、クラスメイトの佐藤健太の大きな笑い声が聞こえてくる。健太の明るい声に、貫太郎は少し肩の力を抜く。昨日、入学式の後に健太や山本亮、高木拓也、中村美枝子、小林綾乃、斎藤南と自然に打ち解けられたことが、彼の心に小さな安心感を与えていた。彼らは同じ授業を履修することになり、これから苦楽を共にする仲間だ。

貫太郎(心の声):「昨日はなんとか友達ができたし、悪くないスタートだよな。でも、これからどうするかな……部活、考えないとな。」


貫太郎の視線は、渡り廊下の壁に貼られたチラシに留まる。バスケ部の「仲間と共にコートを駆け抜けよう!」、吹奏楽部の「音で未来を奏でよう!」、そしてアニメ研究会の「オタク魂を解放せよ!」――どれも魅力的だが、貫太郎の目を特に引いたのは水泳部のチラシだった。青と白を基調にしたシンプルなデザインに、「海風水泳部 一緒に波を乗り越えよう!」というキャッチフレーズが大きく書かれている。チラシの中央には、プールの水面に反射する光が描かれ、まるで水しぶきが今にも飛び出してきそうな躍動感がある。貫太郎の胸に、中学時代の記憶が鮮やかに蘇る。中学では水泳部でリレーのアンカーを務め、全国大会で優勝したこともあった。あの夏、仲間と共にプールサイドで笑い合い、ゴールにタッチした瞬間の歓声が響き合った日々。水しぶきを切り裂く感覚、仲間との絆、表彰台での誇らしさ――それらが貫太郎の心の支えだった。鳴海西高校の受験に失敗し、自信を失った今、あの感覚を取り戻したいという思いが、彼の胸に強く湧き上がる。

貫太郎(心の声):「水泳か……またやりたいな。中学の時は結構活躍したし、ここでもいけるんじゃないか? 海風の水泳部、女子が多いって噂だけど、俺ならやれるはず。」


彼はチラシをじっと見つめ、指で紙の端を軽く撫でる。チラシには、部活動の説明会の日程や練習スケジュールが細かく書かれている。貫太郎の頭に、水泳部のプールで泳ぐ自分の姿が浮かぶ。だが、同時に、未知の環境への不安も頭をよぎる。海風学園の水泳部は強豪として知られ、レベルが高いと聞いている。中学での実績が、ここで通用する保証はない。貫太郎は一瞬、目を閉じ、深呼吸をする。母親の「頑張ってね」という笑顔を思い出し、胸に力を込める。その時、背後から鋭い声が響いた。少し低めで、どこか挑戦的な響きを持つその声に、貫太郎は反射的に振り返る。

美咲:「何? またあんた?」


そこに立っていたのは、昨日、校門で出会った先輩、高橋美咲だった。彼女は制服のブレザーの袖を軽く折り返して、スカートの裾から、赤いハイレグの競泳水着の下半身部分がちらりと見え、彼女の水泳部キャプテンとしての自信を象徴しているようだ。美咲の目は貫太郎をじっと見据え、眉を少し上げた表情がどこか挑戦的だ。貫太郎は一瞬たじろぎ、胸がドキッとする。美咲の存在感は、昨日と同じく圧倒的で、まるで彼の心を見透かすようだ。

貫太郎(心の声):「うわっ、美咲先輩!? なんでここに……って、そりゃ水泳部の勧誘だよな。やべえ、なんか緊張する。」


貫太郎はなんとか平静を装い、笑顔を作ってみる。バックパックを握る手に、少し汗が滲む。

貫太郎:「あ、えっと、美咲先輩ですよね? 昨日お会いしました、川名貫太郎です。」


彼の声は、緊張のせいで少し上ずっている。美咲は「ふーん」と小さく鼻を鳴らし、貫太郎の言葉を軽く流すようにチラシに視線を移す。彼女の手には、水泳部のチラシが何枚か握られ、新入生に配るためのものだと一目で分かる。チラシの角が少し折れ、彼女の雑な扱い方が垣間見える。

美咲:「で? そのチラシ見て何考えてんの? 水泳部にでも入ろうって?」


美咲の口調は素っ気なく、まるで貫太郎の決意を試すかのようだ。彼女の視線は鋭く、貫太郎の胸に小さなプレッシャーを与える。貫太郎は一瞬、言葉に詰まるが、中学時代の自信を思い出し、胸を張って答える。

貫太郎:「はい、昨日も言った通りに、中学の時、水泳部で結構活躍してたんです。だから、ここでも水泳部に入ろうかなって考えてます。」


彼の声には、わずかに自慢げな響きがあった。中学で全国大会入賞した実績は、貫太郎の誇りだ。だが、美咲はその言葉を聞いて一瞬目を細め、冷ややかな笑みを浮かべる。彼女の笑顔は、どこか刺すような鋭さを持っている。

美咲:「昨日も言ったけど、うちの水泳部はそんな甘くないよ。中学でいくら優秀な成績収めてたって、ここで活躍できるなんて保証はないから。勘違いしないでよね。」


その言葉は鋭く、貫太郎の胸に突き刺さった。中学時代の栄光が、一瞬にして色褪せるような感覚。貫太郎の笑顔が固まり、言葉に詰まる。美咲の視線は冷たく、彼が何か言い返すのを待っているようだ。貫太郎の頭に、受験失敗の記憶がフラッシュバックする。あの時も、自信を持っていたのに、結果は惨敗だった。美咲の言葉は、その傷を抉るようだった。

貫太郎(心の声):「うっ……何だよ、その言い方。確かに中学の実績がここで通用するかは分からないけど、でも……でも、試してみたいじゃん!」


貫太郎はなんとか反論を絞り出し、美咲の目を見返す。胸の中で闘志が小さな火を灯す。

貫太郎:「そ、そうですか……でも、やってみないと分からないですよね? 挑戦してみたいんです。」


彼の声は少し震えていたが、決意が込められている。美咲は一瞬、驚いたように目を丸くする。彼女の鋭い視線が、貫太郎の真剣な表情を捉える。それから、彼女は小さくため息をつき、肩をすくめる。

美咲:「ふーん、まあ、やる気があるならいいんじゃない? チラシやるよ。見といて。」


美咲は手に持っていたチラシを一枚、貫太郎に差し出す。その動作は雑で、まるで興味がないかのように見えたが、貫太郎はそれを受け取る。チラシの紙は少し湿っていて、美咲の手のぬくもりがわずかに残っている気がした。貫太郎はチラシを握り、軽く頭を下げる。

貫太郎:「ありがとうございます。ちゃんと見て考えます。」


美咲は一瞬、貫太郎をじっと見つめる。それから、口の端に小さな笑みを浮かべ、続ける。

美咲:「勝手にしなよ。ただ、入ったら覚悟しなさいよね。うちは緩い部活じゃないから。」


彼女の声には、厳しさの中にどこか期待が滲んでいる。貫太郎は、その言葉に胸がドキッとする。美咲はそれだけ言うと、くるりと背を向けて廊下の奥へと歩き出す。彼女の後ろ姿は力強く、どこか魅力的だ。貫太郎は、彼女が去っていく姿をしばらく見つめる。美咲の厳しい言葉が頭の中で反響する一方で、なぜかその態度に引き込まれるような感覚があった。

貫太郎(心の声):「何だよあの先輩……めっちゃ怖いけど、なんか気になるな。水泳部、厳しいって言ってたけど、それって本気ってことだよな。俺、負けたくないな。」

彼はチラシを握り潰しそうになりながら、教室へと戻る決意を固める。美咲の言葉に傷つきながらも、それが逆に彼の闘志に火をつけたのだ。チラシをバックパックにしまい、貫太郎は深呼吸をする。廊下の喧騒が、再び彼の耳に届く。バスケ部の先輩が「一緒にコートで汗かこうぜ!」と叫び、吹奏楽部の先輩が「音楽で青春を彩ろう!」とチラシを配っている。貫太郎は、その活気に背中を押されるように、教室へと足を踏み出す。


貫太郎が去った後、廊下の喧騒の中で、もう一人の人物が美咲に近づいてきた。生徒会長の上原美玲だ。昨日、入学式で新入生歓迎の言葉を述べた彼女は、美しさと知性を兼ね備えた先輩として、新入生たちの憧れの的だ。長い黒髪が朝の光を受けて輝き、制服のブレザーが彼女の凛とした雰囲気を引き立てる。美玲は美咲の横に立ち、貫太郎が去った方向を見ながら、穏やかな笑顔で口を開く。

美玲:「ねえ、美咲。あの子、川名貫太郎君でしょ? さっきのやり取り見てたけど、結構見込んでるんじゃない?」


美咲は一瞬、目をそらし、チラシを持った手を軽く握る。それから、肩をすくめるように小さく笑う。

美咲:「見込んでるってほどじゃないよ。ただ、チラシ見て目をキラキラさせてたから、ちょっと試しただけ。中学で活躍したとか言ってたけどさ、そんなのここのレベルじゃ通用しないって分からせたかっただけ。」


彼女の口調は素っ気なく、いつものツンツンした態度がにじみ出ている。だが、美玲はそんな美咲の言葉を聞いて、優しく微笑む。彼女の目は、まるで美咲の心を見透かすようだ。

美玲:「ふふっ、そういう言い方するんだから。美咲らしいね。でも、私には分かるよ。あの子のこと、内心じゃ水泳部のホープになるかもって思ってるでしょ?」


美咲は美玲の言葉に一瞬動きを止め、チラシを軽く叩く。彼女の頭に、貫太郎の真剣な目が浮かんでいた。中学での実績を自慢げに語る姿は確かに生意気だったが、その裏にある挑戦したいという気持ちが、美咲の心に引っかかっていたのだ。

美咲:「何? 何でそう思うわけ? ただの新入生だよ。まだ泳いでるとこ見てないし、ホープとか決めつけるの早すぎ。」


彼女の声には、照れ隠しのような響きがある。美玲はそんな美咲を見て、くすっと笑う。

美玲:「だって、美咲がそんな風に絡む相手って、期待してる子だけだもん。去年の新入部員の時もそうだったじゃない。最初は厳しくして、でもちゃんと育ててあげてたよね。」


美玲の言葉に、美咲は一瞬黙り込む。去年、新入部員を厳しく指導しながらも、彼らが成長していく姿を見守った記憶が蘇る。美咲の厳しさは、部員たちを本気で強くしたいという思いの裏返しだ。貫太郎の生意気な態度に苛立ちながらも、彼の目に宿る闘志が、彼女の心を揺さぶっていた。

美咲:「……まあ、もし入部してきたら、鍛え甲斐はありそうだけどね。あの生意気な態度、叩き直してやらないと。」


彼女はそう言って小さく笑う。その声には、厳しさの中に隠れた期待が滲んでいる。美玲はそんな美咲を見て、満足げに頷く。

美玲:「やっぱりね。私も楽しみだよ。あの子が水泳部に入ったら、きっと面白いことになると思う。美咲と一緒に育ててあげてね。」


美咲は一瞬、眉を上げるが、すぐに軽く笑って答える。

美咲:「勝手に決めないでよ。まだ入部するかも分からないんだから。」


彼女の声には、どこか照れが混じっている。美玲は軽やかに手を振って続ける。

美玲:「ふふっ、楽しみにしてるよ。じゃあ、私、生徒会の仕事あるから行くね。美咲も部活の勧誘、頑張って。」


美玲はそう言うと、軽い足取りで廊下の奥へと歩き出す。彼女の後ろ姿は、まるで春の風のように軽やかだ。美咲は美玲の背中を見送りながら、手に持ったチラシを軽く叩く。貫太郎の顔が再び頭に浮かび、彼女の唇に小さな笑みが浮かんだ。

美咲(心の声):「川名貫太郎、か……。もし入ってきたら、覚悟しなよ。私がしっかり鍛えてやるから。」

潮風が再び廊下を吹き抜け、美咲の短髪を軽く揺らす。彼女はその風を感じながら、新入生たちの喧騒の中へと再び歩き出した。水泳部の未来を担うかもしれない新入生との出会いが、彼女の心に小さな波を立てていた。廊下の喧騒は続き、バスケ部の先輩が「一緒にスラムダンクしようぜ!」と叫び、美術部の先輩が「キャンバスに青春を描こう!」とチラシを配る。美咲はチラシを手に、新入生一人一人に声をかけていく。その背中には、水泳部キャプテンとしての責任感と、貫太郎への期待が宿っている。


一方、教室に戻った貫太郎は、チラシを机に広げ、じっと見つめる。チラシには、部活動の練習スケジュールや、顧問の松澤恵美の名前が書かれている。恵美が水泳部の顧問だと知り、貫太郎の胸に新たな決意が芽生える。彼女の優しげな笑顔と、美咲の厳しい視線が、頭の中で交錯する。

貫太郎(心の声):「松澤先生が顧問なら、きっと支えてくれるよな。でも、美咲先輩の言う通り、甘くないんだろうな……。でも、俺、挑戦するぞ。負けるわけにはいかない!」

彼はチラシを握り、窓の外を見る。遠くに海が輝き、潮風がカーテンを揺らす。貫太郎の新しい物語が、今、始まろうとしていた。


シーン1:対面式

海風学園高等学校の体育館は、新入生と先輩たちで溢れかえり、まるで祭りのような熱気に包まれている。入学から二日目の朝、体育館の床には色とりどりのマットが敷かれ、汗と笑い声が混じり合った独特の空気が漂う。高い天井には鉄骨がむき出しで、開け放たれた窓から潮風が流れ込み、鳴海市の常夏の気候が体育館を爽やかに通り抜ける。体育館の中央には壇上が設けられ、マイクスタンドと大きなスクリーンが準備されている。スクリーンには「対面式」とシンプルに書かれ、部活動紹介のスケジュールが映し出されている。貫太郎は、ε組のクラスメートたち――健太、亮、拓也、美枝子、綾乃、南――と共に、後方のベンチに座っている。彼の制服のブレザーはまだ体に馴染まず、袖が少し長く感じられる。彼の手には、さっき美咲から受け取った水泳部のチラシが握られている。チラシの端は汗ばんだ指先でくしゃっとし、少し湿っている。貫太郎の胸には、昨日美咲に言われた「中学の実績なんて通用しない」という言葉がまだ刺さっているが、同時にその厳しさが彼の闘志に火をつけていた。

貫太郎(心の声):「さっき、美咲先輩に水泳部のチラシ貰ったけどさ……やっぱり気になるな。あの厳しい態度、逆に本気っぽくて、なんか燃えてくる。俺、中学の時みたいに輝けるかな。」


体育館のざわめきは、新入生たちの期待と先輩たちのエネルギーでますます高まる。貫太郎は仲間たちの姿に、昨日からの絆がすでに強まっていることを感じる。

貫太郎(心の声):「みんな、なんか楽しそうな雰囲気だな。昨日初めて会ったばっかりなのに、こうやって一緒にいると、なんか心強い。よし、俺も負けてられないぞ。」


体育館のざわめきが一瞬静まり、司会の声がマイク越しに明るく響く。司会は生徒会のメンバーらしい女子生徒で、元気いっぱいの声が体育館を包み込む。

司会:「次は、水泳部の紹介です! 水泳部の皆さん、どうぞ!」


体育館に拍手が沸き起こり、新入生たちの視線が壇上に集中する。貫太郎の心臓がドキッと鳴る。壇上に二人の女子生徒が現れる。一人は入学式の日に校門で会った美咲、もう一人は入学式で新入生歓迎の言葉を述べた生徒会長の上原美玲だ。貫太郎の目は一瞬にして彼女たちに引き寄せられる。二人は普段の制服姿とは打って変わり、水泳部のTシャツとショートパンツ姿で登場している。美咲のTシャツは濃い青で、胸元に「海風水泳部」の白いロゴがプリントされている。短い黒髪に、堂々とした姿勢が彼女の主将らしい威厳を際立たせる。ショートパンツから伸びる脚は引き締まり、競泳選手としての鍛えられた体が一目で分かる。一方、美玲のTシャツは明るい水色で、柔らかな笑顔が新入生たちを安心させる。彼女の髪はゆるやかにウェーブがかかり、肩に軽く触れている。貫太郎は思わず息を呑む。

貫太郎(心の声):「えっ、待てよ……美咲先輩、それに美玲って、入学式の時の生徒会長じゃないか!? 確かに生徒会長が水泳部員なのは入学式で聞いたけど、二人ともいつもと違う……しかも、この格好めっちゃ似合ってる。やばい、なんかドキドキする。」


体育館の空気が一気に熱を帯び、新入生たちのざわめきが大きくなる。貫太郎の隣に座る健太が、肘で軽く貫太郎を突く。

健太:「おい、貫太郎! あの美咲先輩、めっちゃカッコいいな! 生徒会長もすげえ美人だろ!」


貫太郎は健太の興奮した声に小さく笑い、頷く。

貫太郎:「ああ、確かに。美咲先輩、めっちゃ存在感あるよな。生徒会長も、なんかめっちゃ輝いてる。」


美咲がマイクを手に取り、凜とした声で話し始める。彼女の声は体育館全体に響き渡り、新入生たちの注目を一気に集める。

美咲:「みんな、こんにちは! 水泳部主将の高橋美咲です。私たち水泳部は、夏の大会優勝を目指して日々厳しい練習を積んでます。うちは強豪でね、三年前には島宮県高校総体で男女アベック優勝した実績があるし、十年前にはインターハイで全国優勝も果たしてる。総合優勝は逃しても、毎年個人種目でインターハイに出場する部員が何人も出てます。」


美咲の言葉には誇りが宿り、体育館に感嘆のざわめきが広がる。貫太郎は中学時代の水泳部の記憶を思い出す。県大会で優勝したあの夏、仲間と共にプールサイドで笑い合った日々。あの時の自分は、どんな壁も乗り越えられると思っていた。美咲の言葉に、貫太郎の胸が熱くなる。

貫太郎(心の声):「全国優勝か……すごいな。中学の県大会とはレベルが違いすぎる。でも、俺もそういう舞台に立てたら……絶対カッコいいよな。」


美咲が一息つくと、美玲がマイクを引き継ぐ。彼女の声は柔らかく、しかし力強く響く。体育館の空気が、彼女の笑顔でさらに温かくなる。

美玲:「水泳部副キャプテンの上原美玲です。水泳部では、ただ泳ぐだけじゃなくて、体力も精神力も鍛えられる場所。ここでの経験は、きっと皆さんの未来に役立つよ。でね、私たち、入部希望者向けに三日間の体験入部期間を設けてるの。最終日には入部試験があって、基準タイムをクリアできないと不合格になります。実はこれまで、試験で落ちちゃった子も結構いるんだよね。でも、諦めない気持ちがあれば、きっと乗り越えられるよ。」


美玲の言葉に、新入生たちの間に緊張が走る。貫太郎はチラシを握る手に力を込め、隣の健太と目を合わせる。健太の目はキラキラと輝き、貫太郎に小さな勇気を与える。

貫太郎:「入部試験か……基準タイムってどれくらいなんだろう。中学の俺の記録でいけるかな?」

健太(小声で):「お前ならいけるだろ。中学で活躍してたって言ってたじゃん。俺も水泳やってたから、一緒に挑戦しようぜ!」


健太の励ましに、貫太郎は小さく頷く。だが、心の中では美咲の「中学の実績なんて通用しない」という言葉がよぎり、胸に小さな不安が広がる。貫太郎はチラシを見つめ、深呼吸をする。

貫太郎(心の声):「確かに、中学の記録がここで通用するかは分からない。でも、試さないと始まらないよな。美咲先輩の言葉、逆に俺のやる気に火をつけてるぜ。」


美咲が再びマイクを手にし、力強く続ける。彼女の目は新入生たちをじっと見据え、まるで一人一人に語りかけるようだ。

美咲:「でもね、水泳部は校内一クリーンな部活だって自負してる。上下関係も厳しすぎず、みんなで支え合って成長できる環境だよ。だから、興味があるならぜひ体験に来てね。沢山の入部を待ってるから!」


美咲の言葉に、体育館に拍手が沸き起こる。彼女の笑顔は厳しさの中にも温かみがあり、貫太郎は一瞬ドキッとする。美咲の情熱が、彼の心に小さな火を灯す。隣に座る亮が、感心した表情で呟く。

亮:「クリーンな部活か……理論的に考えても、健全な環境で努力するのは悪くないな。」

亮(心の声):「スポーツは精神と肉体のバランスが大事。水泳部なら、データに基づいたトレーニングも期待できるかもしれない。興味深いな。」


その時、突然、体育館に音楽が流れ始める。松田聖子の「青い珊瑚礁」のイントロが響き渡り、新入生たちの視線が壇上に集中する。軽快なメロディが体育館を包み込み、まるで夏の海辺にいるような雰囲気が漂う。美咲がマイクを置き、美玲が観客に向かって笑顔で叫ぶ。

美玲:「さあ、最後にファンサービスだよ! 見ててね!」


美玲はTシャツの裾をつかみ、一気に脱ぎ捨てる。その下から現れたのは、青いハイレグ型の競泳水着だった。鮮やかなブルーが彼女の白い肌に映え、流れるような曲線がスポットライトに照らされて輝く。美咲も同じくTシャツを脱ぎ、赤いハイレグ型競泳水着姿に。彼女の引き締まった体が、競泳選手としての強さを物語る。二人とも松田聖子を模したカツラを被り、ステージ上で軽やかに動き始める。新入生たちから驚きの声と歓声が上がり、体育館が一気に沸き立つ。

貫太郎:「うわっ、なん!? 美玲先輩が大胆……美咲先輩まで!?」

貫太郎(心の声):「これは……予想外すぎる。水泳部ってこんな楽しそうなとこなのか!? めっちゃテンション上がるんだけど!」


美玲と美咲が歌い始める。替え歌された「青い珊瑚礁」の歌詞が、体育館に響き渡る。歌詞は水泳部をテーマにアレンジされ、仲間との絆やゴールへの情熱が込められている。

美玲&美咲:

「あゝ私の夢は 南の波に乗って泳ぐわ

あゝ青い水切って 目指せあのゴールへ

仲間と泳ぐたび

すべてを忘れてしまうの

はしゃいだ私は Little swimmer

熱い鼓動聞こえるでしょう

水面にキラキラ波の光

二人っきりで泳いでもいいの

水泳が好き!

あゝ私の夢は 南の波に乗って泳ぐわ

あゝ青い水切って 目指せあのゴールへ

涙がこぼれるの

仲間が支えてくれるから

背泳ぎ泳ぐ Little champion

未来を描いて欲しいの

プールは恋のブルーラグーン

二人の距離が近づいてゆくのよ

水泳が好き!

あゝ私の夢は 南の波に乗って泳ぐわ

あゝ青い水切って 目指せあのゴールへ」


美玲の甘く伸びやかな声と、美咲の力強い歌声が絶妙に調和し、まるでプロのデュエットのような完成度だ。彼女たちの動きは軽快で、水着姿がスポットライトに映え、新入生たちの視線を完全に釘付けにする。美玲の優雅な動きと、美咲の力強いステップが、歌詞の情熱をさらに引き立てる。貫太郎は口を半開きにしたまま、呆然と見つめる。

貫太郎:「す、すげえ……。歌上手いし、めっちゃ楽しそう。」


健太が、目を輝かせて叫ぶ。

健太:「やばい、見とれてる俺。生徒会長、こんな一面あったんだ。」

健太(心の声):「生徒会長がこんなに歌えるなんて……しかもあの水着姿。いや、元々水泳部で活躍した俺だから、水泳部に絶対入りたい!」


亮が、冷静に分析するように呟く。

亮:「音楽とスポーツの融合か。確かに効果的だな。」

亮(心の声):「パフォーマンスで士気を高める戦略か。合理的だし、水泳部の雰囲気も良さそう。入部して分析してみたい。」


拓也が、興奮を隠せずに叫ぶ。

拓也:「アニメみたいだ! 美咲先輩と生徒会長、聖子ちゃん超えてるよ!」

拓也(心の声):「こんなカッコいい先輩たちがいるなんて……水泳部は俺の青春アニメの舞台だ。絶対入る!」


美枝子が、目をキラキラさせて言う。

美枝子:「可愛すぎる! 水着もオシャレだし、見とれちゃう!」

美枝子(心の声):「生徒会長と美咲先輩のスタイル、完璧すぎる。水泳部ならファッションのインスピレーションも得られそう。」


綾乃が、落ち着いた声で感想を述べる。

綾乃:「歌も上手いし、パフォーマンスも完璧。さすがだね。」

綾乃(心の声):「芸術性が高い。水泳部でこんな表現ができるなら、私の美学にも合いそう。参加したいな。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら微笑む。

南:「水泳部ってこんなに楽しそうなんだ。海みたいだね。」

南(心の声):「水泳って自由で気持ちいいよね。美咲先輩たちのパフォーマンス見てたら、私も泳ぎたくなってきた。」


歌が終わり、美玲と美咲がポーズを決めると、体育館は拍手と歓声で埋め尽くされる。美玲がカツラを外し、笑顔で観客に手を振る。彼女の笑顔は、まるで全員を包み込むような温かさに満ちている。美咲は少し照れたようにマイクを手に取り、軽く咳払いをして続ける。

美咲:「どう? これが水泳部の雰囲気だよ。興味持ってくれたら、ぜひ体験に来てね。」


美咲の声には、厳しさの中に仲間への信頼が滲む。貫太郎は彼女の言葉に、胸が熱くなるのを感じる。新入生たちの間では、美玲が生徒会長だと気付いた驚きの声が広がり、体育館がさらにざわつく。貫太郎は隣の仲間たちと顔を見合わせ、興奮を隠せない。

貫太郎:「生徒会長、なんだかみんなに寄り添ってくれそうな印象だぜ…」


健太が、目を輝かせて続ける。

健太:「まじか! あの生徒会長がこんなパフォーマンスするなんて!」


亮が、冷静に頷く。

亮:「確かに。さすが生徒会長、リーダーシップが違うな。」


拓也が、ニヤリと笑う。

拓也:「水泳部にあんな美人がいるなんて、夢みたいだ……。」


美枝子が、髪をかき上げて言う。

美枝子:「生徒会長がこんな可愛いなんて、知らなかったよ!」


綾乃が、穏やかに微笑む。

綾乃:「生徒会長、ほんと格好いいね。予想以上だわ。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら言う。

南:「驚いた……本当に生徒会長なんだね。すごいな。」


貫太郎たちは一斉に立ち上がり、互いに興奮を隠せない様子で話し合う。体育館の熱気が、彼らの心をさらに高揚させる。貫太郎はチラシを握り、仲間たちに提案する。

貫太郎:「なあ、みんな。水泳部、行ってみないか? 楽しそうだし、なんか俺たちに合ってる気がする。」


健太が、拳を握って即答する。

健太:「賛成! 俺はもともと水泳部に入部希望してるから、最初から行くつもりだったんだ!」


亮が、眼鏡を軽く押し上げて頷く。

亮:「異議なし。学びの場としても面白そうだ。」


拓也が、目を輝かせて叫ぶ。

拓也:「絶対行く! アニメみたいな青春が待ってるよ!」


美枝子が、ニッコリ笑って言う。

美枝子:「私も行くよ! 生徒会長たちのファッション、勉強したい!」


綾乃が、落ち着いた声で答える。

綾乃:「私も賛成。もともと水泳のスポーツ推薦で入学した身。ここの水泳部は何か新しいものが見つかりそう。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら微笑む。

南:「うん、私も!ここの水泳部楽しそうだし、生徒会長たちと一緒にやりたい!」


貫太郎は仲間たちの笑顔を見ながら、胸が高鳴るのを感じる。水泳部がただのスポーツクラブではなく、友情や挑戦、そして楽しさが詰まった場所であることを確信した瞬間だった。彼はチラシを握り潰し、心の中で決意を固める。

貫太郎(心の声):「よし、水泳部だ。美咲先輩の言う基準タイム、絶対クリアしてやる。中学の実績が通用しなくても、ここで新しい俺を見せるんだ!」

体育館に響く拍手の中、貫太郎たちは新たな一歩を踏み出す決意を胸に、次の行動へと動き出す。潮風が窓を揺らし、遠くに海の青が輝く。貫太郎たちの新しい物語が、今、始まろうとしていた。


シーン2:体験入部手続き

海風学園高等学校の放課後の空気は、朝の厳粛さから一転して、自由と活気に満ちている。鳴海市の常夏の陽光が校舎の白亜の壁を照らし、椰子の木が潮風に揺れる。校庭では、野球部のバットの音やテニス部のラリーの掛け声が響き合い、校舎の廊下では部活動のチラシを手に持つ新入生たちが笑顔で談笑している。屋内プールへの道を急ぐ貫太郎の胸は、期待と緊張で高鳴っている。対面式で見た美咲と美玲のパフォーマンスが、彼の心に強く焼き付いている。貫太郎はクラスメイトの健太、亮、拓也、美枝子、綾乃、南と共に、屋内プールへと向かう。貫太郎は仲間たちの姿に、昨日からの絆がさらに深まっていることを感じる。

貫太郎(心の声):「対面式の美咲先輩と美玲先輩のパフォーマンス、めっちゃすごかったよな。あの歌と水着姿、なんか頭から離れない。水泳部、絶対楽しそうだけど、基準タイムってのが気になる……。中学の俺の実績でいけるかな。」


屋内プール棟は、校舎の裏手に位置し、ガラス張りのモダンな建物だ。プール棟の入り口には、「海風水泳部」の看板が掲げられ、青と白のロゴが輝いている。ガラス越しに、50メートルのプールが見え、水面が照明に反射してキラキラと光る。プールサイドには、ウォーミングアップをする部員たちの姿がちらりと見える。貫太郎たちは、入り口で一瞬立ち止まり、互いに顔を見合わせる。

健太:「おお、めっちゃ本格的なプールだな! テンション上がってきた!」

拓也:「アニメのスポーツシーンみたい! ここで泳いだら、めっちゃ青春っぽいぜ!」

美枝子:「うわ、なんかオシャレな雰囲気! 水着姿でここに立つなんて、ちょっとドキドキするね。」

綾乃:「確かに、設備は素晴らしいわ。スポーツ推薦の私でも、こんなプールで泳げるなんて楽しみ。」

南:「海みたいにキラキラしてるね。泳ぐの、絶対気持ちいいよ!」

亮:「施設のクオリティが高いな。トレーニング環境としては申し分ない。」


貫太郎は仲間たちの興奮した声を聞き、笑顔になる。彼らのテンションに引っ張られ、胸の緊張が少し和らぐ。

貫太郎:「よし、みんな、行くぞ! 水泳部の体験入部、絶対楽しもうな!」


プール棟の自動ドアがスッと開き、貫太郎たちは中に入る。プールサイドの空気は、塩素の匂いと湿気が混じり、どこか懐かしい。中学の水泳部のプールを思い出し、貫太郎の胸に温かい記憶が蘇る。プールサイドには、すでに数人の新入生が集まっており、水泳部の先輩たちが笑顔で迎えている。その中心に、水泳部主将の美咲と副キャプテンの美玲が立っている。美咲は赤いハイレグ型の競泳水着に、青いトラックジャケットを羽織っている。短い黒髪が、プールの照明に照らされて輝く。彼女の目は鋭く、新入生たちをじっと見据える。美玲は青いハイレグ型の競泳水着に白いTシャツを着ており、穏やかな笑顔が新入生たちを安心させる。彼女の長い黒髪は、ゆるやかにウェーブがかかり、肩に軽く触れている。貫太郎は、二人を見た瞬間、対面式の記憶がフラッシュバックし、胸がドキッとする。

貫太郎(心の声):「うわ、美咲先輩と美玲先輩、めっちゃカッコいい……。あの厳しい美咲先輩と、優しそうな美玲先輩。この二人に指導されるのか。なんか、めっちゃ緊張するけど、楽しみだ。」


美咲が一歩前に出て、力強い声で話し始める。彼女の声は、プール棟に響き渡り、新入生たちの注目を一気に集める。

美咲:「ようこそ海風学園水泳部に。私は水泳部キャプテンの高橋美咲です。水泳で何かを成し遂げるには毎日の練習が欠かせません。私たちの部は、夏の高校総体やインターハイを目指して、厳しいトレーニングを積んでいます。甘い覚悟じゃ、ここではやっていけないよ。」


美咲の言葉には、部活への情熱と厳しさが込められている。新入生たちの間に、緊張の空気が広がる。貫太郎は、彼女の鋭い視線に気圧されながらも、胸に闘志が湧く。

貫太郎(心の声):「やっぱり美咲先輩、めっちゃ厳しそう。でも、その本気さがなんかカッコいい。俺、負けられないな。」


美咲が一息つくと、美玲がマイクを引き継ぐ。彼女の声は柔らかく、体育館を包み込むような温かさに満ちている。

美玲:「同じく水泳部副キャプテンの上原美玲です。生徒会長もしています。水泳部では、みんなが一丸となって目標に挑戦します。私たちの年間活動や行事について具体的に説明しますね。興味を持ってくれて、ありがとう。きっとここで、素晴らしい仲間と経験が待ってるよ。」


美玲の笑顔に、新入生たちの緊張が少し和らぐ。貫太郎は、彼女の優しい声に安心感を覚える。美玲の言葉は、まるで全員を包み込むような力を持っている。

貫太郎(心の声):「美玲先輩、めっちゃ優しそう。生徒会長ってだけあって、なんかみんなを引っ張ってくれる感じだな。こういう先輩と一緒に泳げたら、楽しそう。」


美咲が再びマイクを手にし、具体的な練習スケジュールを説明する。彼女の声は、まるで軍隊の司令官のように力強い。

美咲:「水泳部は基本的に月曜日から金曜日までの平日には、早朝の朝練と放課後の練習があります。早朝は朝7時30分から8時30分まで、放課後は16時から18時まで基本的にプールで泳ぎ込みの練習をします。週末は朝の9時から昼食休憩を挟んで夕方17時までの集中練習があります。練習は厳しいけど、これを乗り越えた先に、大きな達成感が待ってるよ。」


新入生たちの間に、驚きの声が漏れる。貫太郎は、練習の厳しさに少し身構えるが、同時に中学時代のハードな練習を思い出し、胸に自信が湧く。

貫太郎(心の声):「朝練に放課後練習、週末もか……。中学の時よりめっちゃハードだな。でも、中学の時もきつい練習を乗り越えてきたし、俺ならやれるはず。全国優勝、目指したいな。」


美玲がマイクを引き継ぎ、年間行事について説明する。彼女の声は、まるで楽しい冒険を語るように弾む。

美玲:「年間の主な行事としては、春の新人戦、夏の高校総体、夏の慰安旅行、秋の高校総体、冬の慰安旅行、場合によっては世界競泳選手権など国際大会への参加もあり得ます。合宿は年に数回行い、長距離泳やスタミナ強化など高校総体に向けた練習を重点的に行います。また、文化祭では水着ファッションショーも開催します。練習は厳しいけど、楽しいイベントもたくさんあるから、メリハリをつけて楽しめるよ。」


美玲の言葉に、新入生たちの目がキラキラと輝く。貫太郎は、水着ファッションショーという言葉に一瞬ドキッとし、対面式の美咲と美玲のパフォーマンスを思い出す。

貫太郎:「なるほど、水泳部はいろんなイベントに参加するんですね。めっちゃ楽しそう!」

貫太郎(心の声):「水着ファッションショーって、対面式みたいな感じかな? めっちゃ盛り上がりそう。慰安旅行とかも、仲間と行ったら絶対楽しいよな。」


健太が、目を輝かせて叫ぶ。

健太:「水泳部には結構楽しいイベント盛りだくさんじゃないか! 練習キツそうだけど、こんなイベントあるなら頑張れるぜ!」

健太(心の声):「慰安旅行とか、文化祭とか、めっちゃ青春っぽい! 俺、バタフライで活躍して、イベントもガンガン楽しむぞ!」


亮が、冷静に分析するように呟く。

亮:「良い経験になるだろうな。新しい知識も得られるし。トレーニングデータも集められそうだ。」

亮(心の声):「厳しい練習は、科学的アプローチで効率化できるはず。イベントは、チームの結束力を高める良い機会だ。参加する価値はあるな。」


拓也が、興奮を隠せずに叫ぶ。

拓也:「練習は厳しいけど、楽しいイベントばっかりじゃないか! アニメみたいな青春、絶対ここで味わえるぜ!」

拓也(心の声):「水着ファッションショー、めっちゃアニメのイベントシーンみたい! 俺、泳げるようになって、こんな青春をガッツリ楽しむんだ!」


美枝子が、目をキラキラさせて言う。

美枝子:「あたしは水泳初心者だけど、何故かここの水泳部なら楽しめそう。ファッションショー、絶対オシャレでカッコいいよね!」

美枝子(心の声):「水泳初心者だけど、美咲先輩や美玲先輩みたいなカッコいい水着姿、憧れる! ここで自分を変えたいな。貫太郎、応援してね。」


綾乃が、落ち着いた声で感想を述べる。

綾乃:「もともと水泳のスポーツ推薦で入部をする私でも、水泳部にこんな楽しいイベントがあるなんて思いもしなかったわ。楽しみだね。」

綾乃(心の声):「厳しい練習は覚悟の上だけど、イベントは私の美学にも合いそう。貫太郎と一緒に、ここで成長できたらいいな。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら微笑む。

南:「水泳部は試合が多いけど、楽しいイベントも沢山あるんだね。みんなで頑張って、楽しめるといいな。」

南(心の声):「海みたいなプールで泳げるなんて、最高! 美咲先輩たちと一緒に、試合もイベントも楽しみたい。貫太郎、負けないよ!」


美咲が、体験入部希望者に向けて書類を手に持つ。彼女の目は、新入生一人一人を見据え、まるでその覚悟を試すようだ。

美咲:「体験入部を希望するなら、この書類に記入して。名前、住所、連絡先、競泳経験の有無、入部希望の理由を書いてもらうよ。ちゃんと本気で書くこと。ふざけた理由だと、即却下だから。」


美咲の言葉に、新入生たちの間に緊張が走る。貫太郎は、書類を受け取り、仲間たちと一緒にプールサイドのベンチに座る。書類には、指定された項目が細かく書かれている。貫太郎はペンを手に取り、深呼吸をする。美咲の厳しい視線を思い出し、胸に決意を固める。

貫太郎(心の声):「よし、ちゃんと書くぞ。美咲先輩に、俺の本気を見せるんだ。基準タイム、絶対クリアしてやる。」


貫太郎は、書類に丁寧に記入を始める。名前、住所、連絡先を書き終え、競泳経験の欄に「中学時代、水泳部所属。自由形専門。全国優勝経験あり」と記入する。入部希望の理由には、昨日と今日美咲に会った時の気持ちを思い出しながら書く。

貫太郎:「幼少期から水泳を続けており、中学時代は水泳部に所属して、キャプテンも務めて、全国優勝した実績を持っているため、海風学園の水泳部の全国優勝に貢献したいから。」

貫太郎(心の声):「これでいいはず。美咲先輩に、俺の覚悟を見せるんだ。全国優勝、俺も目指したい!」


健太が、隣でペンを走らせながら呟く。

健太:「幼少期から水泳に馴染んで、中学時代は水泳部に所属してインターハイに出場した経験を持っているため、海風学園水泳部で自分の実力を試したいから。」

健太(心の声):「バタフライでインターハイ出た俺なら、ここでもやれるはず。貫太郎と一緒に、ガンガン泳ぐぜ!」


亮が、冷静に書類を埋めていく。彼の字は丁寧で、まるで科学レポートのようだ。

亮:「自分は水泳は幼少期に習うも小学校2年生で辞めたきり、体育の水泳で自在に泳ぐも、他の部活動に所属して、長く水泳から離れていたが、友人の誘いもあってまた水泳をやってみたいと思ったから。」

亮(心の声):「水泳はデータ分析の良い機会だ。貫太郎の誘いが、良いきっかけになった。科学的なトレーニングで、どこまで成長できるか試したい。」


拓也が、興奮しながら書類に書き込む。彼の字は少し乱れているが、情熱が滲んでいる。

拓也:「体育の水泳の授業では金槌であったくらい未経験で、中学時代は部活動に所属せず帰宅部だったが、対面式の水泳部のパフォーマンスを見て、水泳部では何か新しい学びを得られると確信して、青春を楽しみたいから。」

拓也(心の声):「泳げないけど、対面式のあの雰囲気、めっちゃアニメみたいだった! ここで青春、ガッツリ味わうぜ!」


美枝子が、丁寧に書類を埋める。彼女の字は丸みを帯び、ファッション雑誌のような雰囲気だ。

美枝子:「中学時代は中一の途中まで吹奏楽部→中二の途中まで美術部→卒業まで家庭部と言った感じで文化部を転々としていたため、運動部の経験すらないが、高校に入学してから人生で一回くらい運動部に入って自分を鍛えたいと思うようになり、特に対面式での水泳部のパフォーマンスがファッショナブルでかっこよいと思い、水泳部でファッショナブルな泳ぎをしたいと思ったから。」

美枝子(心の声):「運動部、初めてだけど、貫太郎と一緒に頑張りたい。ファッションショー、絶対オシャレで楽しいよね!」


綾乃が、落ち着いた筆跡で書類を埋める。彼女の字は、まるで楽譜のように整然としている。

綾乃:「幼少期から水泳に馴染み、特に背泳ぎが得意だったため所属していたスイミングクラブ主催の大会では常に上位入賞して、中学時代の水泳部でも優秀な成績を収めて、水泳部のキャプテンとして部を牽引して、背泳ぎの個人種目で全国優勝した実績もあり、水泳のスポーツ推薦で海風学園に入学したため、自分の実力を海風学園水泳部で向上させたいから。」

綾乃(心の声):「背泳ぎの全国優勝、誇りだけど、ここではもっと高みを目指したい。貫太郎と一緒に、成長できたらいいな。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら書類を埋める。彼女の字は、海の波のような柔らかさがある。

南:「幼少期から祖父母の経営する海沿いの民宿で育ち、海を泳いできたため、海は自分にとっての庭であり、水泳も言うまでも無く得意だったため、水球も習い、水泳の実力向上に励み、中学時代では水球は女子の部で九州ナンバー1として活躍して、水泳はバタフライの個人種目で全国優勝した実績もあり、これまでの水泳経験を海風学園水泳部で生かしたいから。」

南(心の声):「海が私のホーム。バタフライの全国優勝、活かして、ここでみんなと一緒に輝きたい。貫太郎、負けないよ!」


貫太郎たちは、書類を美咲に提出する。美咲は書類を一枚一枚確認し、時折眉を上げる。彼女の目は鋭く、新入生たちの覚悟を試すようだ。

美咲:「ふーん、なかなか面白い理由が揃ってるね。覚悟はできてるみたいだね。体験入部は明日から三日間。最終日に入部試験があるから、基準タイムをクリアできるよう、しっかり準備してきなさい。」


美玲が、笑顔で新入生たちを励ます。

美玲:「みんな、素晴らしい理由を書いてくれてありがとう。体験入部、楽しんでね。分からないことがあれば、いつでも私達に聞いて。仲間として、応援してるよ!」


貫太郎たちは、書類を提出し終え、互いに顔を見合わせる。プールサイドの空気が、期待と緊張で満たされている。貫太郎は、仲間たちの笑顔を見て、胸に熱いものがこみ上げる。

貫太郎:「よし、みんな、明日から体験入部だ! 基準タイム、絶対クリアしようぜ!」


健太が、拳を握って叫ぶ。

健太:「おう! バタフライでガンガンいくぜ!」


亮が、冷静に頷く。

亮:「科学的アプローチで、効率よく準備しよう。楽しみだ。」


拓也が、目を輝かせて言う。

拓也:「泳げるようになって、アニメみたいな青春、味わうぞ!」


美枝子が、ニッコリ笑う。

美枝子:「ファッショナブルな泳ぎ、絶対マスターするよ! 貫太郎、応援してね!」


綾乃が、落ち着いた声で言う。

綾乃:「美しい泳ぎで、みんなを引っ張るわ。貫太郎、一緒に頑張ろう。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら微笑む。

南:「海みたいな泳ぎを見せるよ。みんな、楽しもうね!」

プールサイドに響く仲間たちの声は、まるで新しい物語の始まりを告げるようだ。美咲と美玲が見守る中、貫太郎たちは体験入部への第一歩を踏み出す。プールの水面がキラキラと輝き、潮風がガラス窓を揺らす。貫太郎たちの水泳部での挑戦が、今、始まった。


シーン3:体験入部の準備

昨日、体験入部の手続きを終えた貫太郎は、胸に期待と緊張を秘めながら、クラスメイトの健太、亮、拓也、美枝子、綾乃、南を連れて屋内プール棟へと向かう。

貫太郎(心の声):「昨日、美咲先輩に体験入部届を渡したけど、基準タイムってどれくらいなんだろう。中学の全国優勝の記録なら、いけるはず……いや、美咲先輩の『中学の実績なんて通用しない』って言葉、頭から離れないな。でも、みんなと一緒なら、絶対乗り越えられる!」


プールサイドに足を踏み入れると、十数人の体験入部者が待機していた。水泳部の先輩たちはすでに集まり、新入生たちを見守っている。美咲と美玲は少し離れた場所で練習メニューを確認しており、彼女たちの真剣な姿に貫太郎たちの気合が一層入る。そうして、貫太郎達も集まると、美咲が手を叩き、新入生たちの注意を引きつける。彼女の赤いハイレグ型競泳水着には、天照大神のデザインが輝き、キャプテンとしての威厳を放っている。

美咲:「よし、みんな揃ったね。じゃあ、先輩たちに自己紹介してもらうよ。三年生と二年生から順番にいくよ。まずは、私から。水泳部キャプテンを務める特別進学科3年α組の高橋美咲です。種目は800m自由形と400m自由形の長距離です。好きなアニメは『バジリスク-甲賀忍法帖-』、『地獄少女』です。宜しく。」


美咲の声は力強く、プールサイドに響き渡る。彼女の鋭い視線が新入生たちを捉え、貫太郎は一瞬背筋を伸ばす。美咲の好きなアニメが歴史やダークなテーマだと知り、彼女の厳格な性格に納得する。

貫太郎(心の声):「『バジリスク』に『地獄少女』か……めっちゃ美咲先輩らしいチョイスだな。長距離自由形って、スタミナと精神力が必要だよな。さすがキャプテン。」


美玲が微笑みながら前に出る。彼女の青いハイレグ型競泳水着には聖母マリアのデザインが施され、優しさが漂う。彼女の声は柔らかく、新入生たちを安心させる。

美玲:「水泳部副キャプテンを務める特別進学科3年α組の上原美玲です。種目は200m自由形と100m自由形です。好きなアニメは『エヴァンゲリオン』、『コードギアス 反逆のルルーシュ』です。宜しくね。」


美玲の笑顔に、新入生たちの緊張が和らぐ。貫太郎は、彼女の好きなアニメが深いテーマの作品だと知り、彼女の知的な一面を感じる。

貫太郎(心の声):「『エヴァ』と『コードギアス』か。美玲先輩、優しそうだけど、頭脳派っぽいな。短距離自由形って、スピードとテクニックが大事だよな。」


続いて、大和田美奈が元気よく前に出る。彼女の黄色いハイレグ型競泳水着にはサモトラケのニケが描かれ、明るい雰囲気を放つ。関西弁の軽快な口調が、プールサイドに笑いを誘う。

美奈:「初めまして、水泳部に体験入部してくれておおきに。国際商業科3年α組の大和田美奈です。種目は200m平泳ぎと100m平泳ぎです。好きなアニメは沢山あるけど、中でも一番のお気に入りは『キャンディ・キャンディ』です。宜しゅうお願いします。」


美奈の明るい声に、新入生たちがクスクスと笑う。拓也が目を輝かせ、美奈のアニメの趣味に反応する。

拓也(心の声):「『キャンディ・キャンディ』! めっちゃクラシックなアニメじゃん! 美奈先輩、オタク仲間っぽいな。話が合いそう!」


中島さくらが穏やかに前に出る。彼女の紫色のハイレグ型競泳水着にはアルテミスが描かれ、落ち着いた美しさが漂う。彼女の声は静かだが、芯がある。

さくら:「皆さん、初めまして。水泳部に体験入部に来てくれて有難う。特別進学科3年α組の中島さくらです。種目は200m背泳ぎと100m背泳ぎです。アニメは『ガラスの仮面』や『フルーツバスケット』をよく見ます。クラシックの音楽を聴いたり、日記を書くのも好きです。宜しくお願いします。」


さくらの言葉に、綾乃が小さく頷く。クラシック音楽の趣味が共通していることに、親近感を覚える。

綾乃(心の声):「『ガラスの仮面』とクラシックか。さくら先輩、めっちゃ芸術的だな。背泳ぎの指導、楽しみだわ。」


山口健が少し照れながら前に出る。黄色いブーメラン型競泳水着にはオーディンが描かれ、彼のオタクな雰囲気を引き立てる。

健:「初めまして、水泳部に体験入部有難うな。電気工業科3年α組の山口健です。種目は200m平泳ぎと100m平泳ぎです。模型作りが趣味で、よくプラモデルを組み立てたりします。好きなアニメは『マジンガーZ』、『機動戦士ガンダム』です。また、俺はアニメだけでなく、石ノ森章太郎や八手三郎、円谷プロなど特撮ヒーロー作品にはかなり精通しています。こんな俺ですが、宜しくお願いします。」


健の言葉に、拓也がさらに興奮する。特撮の話題に反応し、心の中でガッツポーズをする。

拓也(心の声):「『ガンダム』に特撮! 健先輩、めっちゃオタクじゃん! 絶対話が合う! 平泳ぎ、頑張って教えてもらおう!」


田辺明美が力強く前に出る。赤いハイレグ型競泳水着にはアテナが描かれ、彼女の気の強さが際立つ。彼女の声は体育会系そのものだ。

明美:「初めまして。水泳部に体験入部に来てくれてありがとな。普通科2年α組の田辺明美だ。種目は400m個人メドレー、200m個人メドレーだ。好きなアニメは『ドラゴンボール』や『NARUTO』などジャンプのバトル漫画が中心だな。あたいはプロレスラーの娘として生まれ育ったから、めっぽう気が強いけど、宜しくな。」


明美の言葉に、健太が目を輝かせる。バトル漫画の話題に反応し、彼女の指導に期待を膨らませる。

健太(心の声):「『ドラゴンボール』! 明美先輩、めっちゃ熱血っぽいな。バタフライの指導、絶対熱いぜ!」


森川ユウが軽やかに前に出る。ピンクのハイレグ型競泳水着にはアフロディテが描かれ、彼女のファッションセンスが光る。

ユウ:「初めまして。水泳部に体験入部してくれて有難うね。国際商業科2年β組の森川ユウです。種目は50m自由形と100m自由形です。ファッションや写真撮影が趣味で、魔法少女系アニメやアイドル系のアニメが好きで、特に『セーラームーン』と『プリキュア』が好きです。こんなあたしですが、宜しくお願いします。」


ユウの言葉に、美枝子が目をキラキラさせる。ファッションとアニメの趣味が合い、指導に期待が高まる。

美枝子(心の声):「『セーラームーン』! ユウ先輩、めっちゃオシャレで可愛い! ファッションの話、絶対したい!」


小林咲が微笑みながら前に出る。紫のハイレグ型競泳水着には弁財天が描かれ、彼女の音楽的な雰囲気が漂う。

咲:「皆さん、初めまして。水泳部に体験入部してくれて有難う。特別進学科2年ζ組の小林咲です。水泳部に体験入部に来ている小林綾乃の姉です。種目は200mバタフライと100mバタフライです。趣味は音楽鑑賞とギター演奏です。洋楽のロックンロールをよく聴きます。ビートルズが一番好きです。好きなアニメは『エヴァンゲリオン』と『けいおん!』です。宜しくお願いします。」


咲の言葉に、綾乃が微笑む。姉妹での水泳部参加に、特別な絆を感じる。

綾乃(心の声):「お姉ちゃん、いつもカッコいいな。姉妹で一緒に泳げるなんて、最高!」


石田裕介が少し緊張しながら前に出る。赤いブーメラン型競泳水着にはアポロンが描かれ、彼の理系男子らしい雰囲気が漂う。

裕介:「皆さん、初めまして。水泳部に体験入部してくれて有難う。特別進学科2年γ組の石田裕介です。種目は200m背泳ぎと100m背泳ぎです。プログラミングと電子工作が好きで、部活動のスピーカーなどを自分で作ったことがあるくらい、物理が得意なので物理が苦手な人は是非とも色々俺に聞いて下さい。いつでも、物理の勉強を教えてあげますから。好きなアニメは『攻殻機動隊』と『デスノート』です。宜しくお願いします。」


裕介の言葉に、亮が小さく頷く。物理の話題に反応し、指導に期待を寄せる。

亮(心の声):「物理のプロだな、裕介先輩。科学的アプローチで楽しみだ。」


最後に、高田光が落ち着いて前に出る。白いブーメラン型競泳水着には白虎が描かれ、彼の和風な雰囲気が際立つ。

光:「初めまして。皆さん、水泳部に体験入部してくれて心より感謝します。普通科2年β組の高田光です。種目は200m平泳ぎと100m平泳ぎです。実家が割烹居酒屋であるため、和食が得意です。一人前の料理人を目指して修行している身ですが、いつか料理人としても独立できるように頑張っています。好きなアニメは『銀魂』と『BLEACH』です。宜しくお願いします。」


光の言葉に、貫太郎が興味を引かれる。和風アニメの趣味に親近感を覚える。

貫太郎(心の声):「『銀魂』か、めっちゃ面白いよな。光先輩、料理もできるなんてカッコいいな。合宿の料理、楽しみだ。」


自己紹介が終わり、美咲が新入生たちを見回す。彼女の目は鋭く、まるで一人一人の覚悟を試すようだ。

美咲:「さて、体験入部を希望するみんなに伝えることがあるわ。水泳部では練習も大会も、男子はブーメラン型、女子はハイレグ型の競泳水着を着用します。これには理由があります。」


美咲の言葉に、新入生たちの間にざわめきが広がる。貫太郎は、中学時代にブーメラン型水着を着ていたことを思い出し、懐かしさと少しの照れを感じる。

貫太郎(心の声):「ブーメラン型か。まあ、中学の練習の時もこれだったし、慣れてるけど……高校ではまたどころか、大会でも着るって、なんかドキドキするな。」


美玲がマイクを引き継ぎ、科学的で丁寧な説明を始める。彼女の声は、まるで授業のように分かりやすい。

美玲:「スパッツ型の水着は水の抵抗を減らすので速く泳げるけれど、着脱の不便さや、泳力強化を怠る可能性があるの。ブーメラン型やハイレグ型は足が動かしやすく、脚力と泳力を鍛えやすい。FINAマークがあれば公式大会でも使えます。結局、勝負を決めるのは泳力ですから。」


美玲の説明に、新入生たちが頷く。亮が小さく頷き、理論的な裏付けに安心した様子を見せる。

亮:「物理的に考えても、抵抗を少なくして泳力に集中できるのは合理的な選択だ。」

亮(心の声):「水の抵抗と脚力の関係、納得だ。科学的アプローチで泳力を強化できるなら、ブーメラン型で十分だな。」


拓也が、目を輝かせて言う。

拓也:「なるほど…。『聖闘士星矢』でも、小宇宙の強さが勝敗を決めるって話だな。納得した。」

拓也(心の声):「ブーメラン型、めっちゃアニメのヒーローっぽい! 泳力で勝負なら、俺も頑張れるぜ!」


美枝子が少し照れながらも、意を決したように笑顔を見せる。

美枝子:「セクシーに魅せて勝てるなら、私もこれでいくよ。元々露出狂気質だし、大会でも大丈夫なら心配ないね。」

美枝子(心の声):「ハイレグ、めっちゃオシャレ! 貫太郎に見てもらえたら、もっと頑張れそう!」

美咲が満足げに頷き、体験入部生に競泳水着を配るように指示する。先輩たちが用意した水着が、新入生たちに手渡される。男子にはブーメラン型、女子にはハイレグ型の水着が貸与される。どれも卒部生からのお下がりだが、丁寧に手入れされており、色あせやほつれもなく、ほぼ新品同様だ。貫太郎たちは、それぞれ自分の水着を受け取り、更衣室へと向かう。


男子更衣室では、貫太郎が自分の名前が書かれたタグの付いた赤いブーメラン型競泳水着を手に取る。黒いラインが斜めに走るデザインで、どこか力強さを感じさせる。彼はそれをじっと見つめ、照れくさい気持ちと懐かしさが同時に込み上げる。

貫太郎:「これ、卒部生のお下がりなんだ…。」

貫太郎(心の声):「小さい頃から水泳やってたから、この形には慣れてるはずなのにさ…。高校では大会でも着るって思うと、なんか緊張するな。でも、中学の時みたいにプールで輝きたい。気合入れないと。」

彼は中学時代の全国優勝の記憶を思い出す。水しぶきを切り裂き、ゴールにタッチした瞬間の歓声が耳に蘇り、胸が熱くなる。同時に、美咲の「中学の実績なんて通用しない」という言葉が頭をよぎり、少しだけ不安が顔を覗かせる。


健太が、緑のブーメラン型水着を手に持って軽く笑う。黄色いラインが入ったデザインで、彼の陽気な性格にぴったりだ。

健太:「これ、もっと露出するんだけど、まあ慣れればいいか。」

健太(心の声):「露出高いけど、日焼けもバッチリできるし、バタフライで目立つにはちょうどいいよな。みんなと一緒なら恥ずかしくないし、楽しそうじゃん。」


貫太郎は健太の軽いノリに少し安心しつつ、自分の水着を手に持ったまま答える。

貫太郎:「幼少期の練習からずっとこれだから、俺は平気だよ。」

健太:「俺は日焼けしたいから、これでいいんだ。やっぱり、ブーメラン型だと焼けるもんね。」

健太は水着を広げてみて、鏡の前でポーズを取る。その姿に貫太郎は思わず笑いそうになるが、彼のポジティブさに救われる気持ちもあった。


亮が黒いブーメラン型水着を手に持ち、冷静に言う。

亮:「黒だ。物理的に見ても、黒は光を吸収するから、水中でも目立たないよな。」

亮(心の声):「黒って冷静さを表す色だし、俺の泳ぎに合ってる。気に入った。」


拓也が青いブーメラン型水着を手に、誇らしげにポーズを取る。

拓也:「青だ。アニメのキャラみたいで、気に入ってる。」

拓也(心の声):「青って、聖闘士星矢のイメージカラーみたいだ。俺、カッコいいかも!」


女子更衣室では、綾乃が水色のハイレグ型競泳水着を手に持つ。シンプルだが洗練されたデザインで、彼女の落ち着いた雰囲気に合っている。彼女は自信に満ちた表情で水着を見つめ、静かに口を開く。

綾乃:「私は小学校の時から水泳選手だったの。スパッツ型にすると、どうもタイムが出なかった。ハイレグ型の方が自分の泳ぎが出るの。小学校低学年の時から、みんないつも『人魚姫』って呼んでたんだよね。」

綾乃(心の声):「この水着なら、私の背泳ぎが生きる。小さい頃から泳ぎ続けてきた自信があるから、ここでもみんなに認められたい。貫太郎にも、見ててほしいな…。」


南が緑のハイレグ型水着を手に持って頷く。深みのある緑色が、彼女の海への愛を象徴しているようだ。

南:「海に潜る時、自由に動けるのが大事だから、ハイレグ型が一番。スキューバダイビングでもウェットスーツじゃなくて、これで泳ぐんだ。水球もやってたし、水中での動きには慣れてるよ。」

南(心の声):「この水着なら、海の中を泳いでるみたいな感覚になれる。バタフライで自由に泳ぐのが楽しみだ。貫太郎と一緒に泳げるなんて、ちょっとドキドキするな。」


美枝子がピンクのハイレグ型水着を手に、くるりと回ってみせる。鮮やかなピンクが彼女の華やかな性格を際立たせる。

美枝子:「ピンク、めっちゃ可愛い! セクシーでオシャレだし、絶対目立つよね!」

美枝子(心の声):「この水着、めっちゃ映える! 貫太郎に見てもらえたら、もっと頑張れる。ファッションショー、絶対出たい!」


着替えを終えた貫太郎たちは、プールサイドに集まり、自分の水着を見せ合って感想を述べ始める。プールの水面がキラキラと輝き、潮風がガラス窓を揺らす。仲間たちの笑顔が、緊張を和らげる。

貫太郎:「俺のは赤だ。どう?」


彼は赤いブーメラン型競泳水着を着て、少し胸を張る。健太が感心したように頷く。

健太:「緑。結構目立つから、気に入ったよ。貫太郎、赤はクールだな。」

健太(心の声):「貫太郎の赤って、リーダーっぽいよな。俺の緑も負けてないけどさ。」


亮が冷静に言う。

亮:「俺のは黒。物理的に見ても、黒は光を吸収するから、水中でも目立たないよな。」

亮(心の声):「黒って冷静さを表す色だし、俺の背泳ぎに合ってる。気に入った。」


拓也が誇らしげにポーズを取る。

拓也:「青だ。アニメのキャラみたいで、気に入ってる。」

拓也(心の声):「青って、聖闘士星矢のイメージカラーみたいだ。俺、カッコいいかも!」


美枝子がピンクの水着を着て、くるりと回ってみせる。

美枝子:「私のはピンク。結構セクシーでしょ? 綾乃の水色、めっちゃ可愛いね。」


綾乃が微笑んで答える。

綾乃:「ありがと。ピンクの方が断然似合ってるよ、美枝子。南、緑って色、海っぽくて良いね。」


南が照れながら言う。

南:「そう? ありがと。水色もすごく綺麗だよ、綾乃。美枝子、ピンクは本当に似合ってる。私たち、華やかじゃない?」

南(心の声):「みんなの水着、個性があって素敵だ。仲間と一緒なら、恥ずかしさも吹き飛ぶね。」


美咲が満足げに彼らを見回す。彼女の目は、まるで新入生たちの可能性を見極めるようだ。

美咲:「みんないい色の水着だね。泳ぐときも、見た目でも、個々の個性が出てるよ。」


美玲が希望を込めた声で続ける。

美玲:「これからも、みんなが自分の色を出して、水泳部を盛り上げていってほしいね。」


新入生たちは互いに笑い合い、水着を見せ合うことで緊張がほぐれていく。貫太郎は仲間たちの笑顔を見ながら、自分の赤い水着に誇りを感じていた。

貫太郎(心の声):「この水着で、俺の新しいスタートを切るんだ。美咲先輩の基準タイム、絶対クリアしてやる。みんなと一緒に、最高の水泳部にしよう!」

こうして、水着の準備が整い、彼らはプールサイドへと向かう。プールの水面がキラキラと輝き、潮風がガラス窓を揺らす。貫太郎たちの水泳部での挑戦が、今まさに始まろうとしていた。新しい仲間と共に、プールでの第一歩を踏み出す瞬間が、すぐそこに迫っている。


シーン4:水泳部の練習開始

貫太郎は、赤いブーメラン型競泳水着を身にまとい、プールサイドに立つ。隣には、緑のブーメラン型競泳水着を着た健太、黒のブーメラン型競泳水着の亮、青の水着の拓也、そして女子のピンクのハイレグ型水着の美枝子、水色のハイレグ型競泳水着の綾乃、緑のハイレグ型競泳水着の南が並ぶ。それぞれの水着の色が個性を際立たせ、プールサイドに華やかな雰囲気を加えている。他の新入生たちも、卒部生のお下がりであるブーメラン型やハイレグ型の競泳水着を着て、少し恥じらいを隠せない様子だ。一方で、先輩たちの個性的な水着――美咲の天照大神、美玲の聖母マリア、美奈のサモトラケのニケ、さくらのアルテミス――に圧倒されつつも、どこか親近感を覚えている。貫太郎は、仲間たちの緊張した面持ちを見ながら、自分の胸に高まる期待と不安を感じる。昨日、美咲から聞いた「基準タイム」の言葉が頭をよぎり、中学時代の全国優勝の記憶が自信とプレッシャーを同時に呼び起こす。

貫太郎(心の声):「いよいよ練習開始か。美咲先輩の厳しい指導、想像できるけど……基準タイム、絶対クリアしてやる。みんなと一緒なら、乗り越えられるはず!」


健太が、緑の水着を指で弾きながら、隣の貫太郎に小声で話しかける。

健太:「おい、貫太郎、なんか緊張するな。この水着、めっちゃ目立つし、みんなカッコいいよな。」


貫太郎は、健太の陽気な声に少し緊張がほぐれ、笑顔で答える。

貫太郎:「だろ? 赤も悪くないぜ。まあ、泳ぎで目立たないとな!」


亮が、黒の水着を整えながら冷静に言う。

亮:「水着の色より、泳力の方が大事だ。物理的に考えても、抵抗を最小限に抑えるフォームが鍵だな。」


拓也が、青の水着でアニメのポーズを決めながら叫ぶ。

拓也:「アニメの主人公みたいに、プールで輝くぜ! 聖闘士星矢の星矢みたいにさ!」


美枝子が、ピンクのハイレグ型水着を少し恥ずかしそうに整えながら、貫太郎に微笑む。

美枝子:「貫太郎、私のピンク、どう? セクシーでしょ? 泳ぐの、ちょっと緊張するけど、頑張るよ!」


綾乃が、水色の水着で落ち着いた姿勢を保ちながら、美枝子に言う。

綾乃:「美枝子、ピンクめっちゃ似合ってるよ。私もこの水色で、背泳ぎで目立つから、負けないわ。」


南が、緑の水着を手に触れながら、楽しそうに言う。

南:「海みたいな緑、気に入ってるよ。みんなの水着、めっちゃ個性的で楽しいね!」


新入生たちの会話がプールサイドに響く中、突然、力強い足音が近づいてくる。水泳部顧問の松澤恵美がプールサイドに現れる。紫のビキニ姿で、28歳とは思えない若々しさと健康的な美しさが際立つ。長い黒髪が潮風になびき、自信に満ちた笑顔が新入生たちの視線を一瞬で奪う。彼女のビキニはシンプルだが、体のラインを強調し、プールサイドに立つ姿はまるでアスリートの彫刻のようだ。貫太郎たちは、担任教師の普段の清楚な姿とのギャップに息を呑む。

恵美:「みんな、着替えは完了したわね。さあ、今日からみんなで新生活を始めましょう。水泳部も勉強も、どっちも頑張りましょう!」


恵美の声は明るく、プールサイドに響き渡る。水泳部員一同が、一斉に声を揃える。

部員一同:「はい!」


恵美は軽く助走をつけ、優雅にプールに飛び込む。紫のビキニが水面に浮かび、水しぶきがキラキラと舞う。彼女は水中でスムーズにターンし、軽やかに泳ぎながらプールサイドに戻ってくる。その泳ぎは、まるで水と一体になったような流麗さで、新入生たちは一瞬言葉を失う。貫太郎は、目を丸くして感嘆の声を漏らす。

貫太郎:「恵美先生、ビキニで泳げるなんて…すげえな。」

貫太郎(心の声):「普段の清楚な先生と全然違う! めっちゃカッコいい泳ぎだ。さすが元水泳部キャプテンだな……でも、この先生、めっちゃ厳しそう。」


健太が、隣で小さく笑いながら言う。

健太:「貫太郎、恵美先生、めっちゃ速え! 俺、なんかテンション上がってきた!」


美咲が前に出て、新入生たちに指示を出す。彼女の声は、まるで軍隊の司令官のように力強い。

美咲:「よし、じゃあ練習開始よ。まずは準備運動から。プールサイドで柔軟運動やるよ。怪我しないようにしっかり伸ばして。」


新入生たちは、先輩たちに倣い、プールサイドで体を動かし始める。青いタイルの冷たさが足裏に伝わり、緊張を一層引き締める。貫太郎は腕を回しながら、隣の健太に小声で話しかける。

貫太郎:「健太、緊張するな。美咲先輩、厳しそうだけど、面倒見の良い先輩だと思うぞ。」


健太が、肩を回しながら答える。

健太:「まあな。でも、俺らの担任の恵美先生の泳ぎ見てたら、なんかやる気出てきたよ。お前はどうだ?」


貫太郎は、胸を張って答える。

貫太郎:「俺もだよ。基準タイムクリアして、絶対入部できるようにする。それが、恵美先生のクラスの一員として当然のことだ。」

貫太郎(心の声):「恵美先生の泳ぎ、めっちゃ迫力あった。俺もあんな風に泳げるようになりたい。美咲先輩の指導、厳しいだろうけど、絶対ついていく!」


亮が、冷静にストレッチをしながら呟く。

亮:「理論的には、準備運動で筋肉を温めれば、パフォーマンスが上がる。しっかりやろう。」

亮(心の声):「準備運動は筋肉の柔軟性を高める。科学的アプローチで、効率よく泳力を上げたい。」


拓也が、アニメのポーズを真似てストレッチしながら、目を輝かせる。

拓也:「アニメの主人公並みにカッコよく泳ぐんだ!」

拓也(心の声):「泳げないけど、アニメのヒーローみたいにプールで輝きたい! 絶対カッコいいぜ!」


美枝子が、笑いながら体を伸ばし、貫太郎に声をかける。

美枝子:「私、セクシーに泳いで目立つよ。貫太郎、見ててね。」

美枝子(心の声):「このピンクの水着、めっちゃ映える! 貫太郎にセクシーな泳ぎ見せたいな。」


綾乃が、静かにストレッチしつつ、美枝子に微笑む。

綾乃:「美枝子なら、絶対目立つよ。私も負けないけど。」

綾乃(心の声):「背泳ぎで、みんなを引っ張る。美枝子も南も、いいライバルだ。貫太郎にも見ててほしい。」


南が、楽しそうに体を動かしながら呟く。

南:「海みたいに自由に泳ぎたいな。みんなと一緒なら、もっと楽しいよ。」

南(心の声):「バタフライで、海を泳ぐみたいに自由に動きたい。仲間と一緒なら、どんな練習も乗り越えられる!」


美玲が、新入生たちの準備運動を見て回り、優しく声をかける。

美玲:「みんな、いい感じだよ。準備運動が終わったら、まずは50メートルの軽い泳ぎから始めよう。自分のペースでいいからね。」


美玲の声に、新入生たちの緊張が少し和らぐ。貫太郎は、彼女の優しい笑顔に安心感を覚える。

貫太郎(心の声):「美玲先輩、めっちゃ優しいな。美咲先輩の厳しさとバランス取れてる感じ。こういう先輩たちと泳げるなら、絶対楽しい!」


恵美がプールから上がってきて、濡れた髪を軽く振る。紫のビキニが水滴に光り、彼女の存在感がプールサイドを支配する。彼女は新入生たちに笑顔を見せる。

恵美:「私も一緒に泳ぐよ。みんなの泳ぎ、見せてね。楽しみにしてるから!」


恵美の言葉に、新入生たちが一斉に頷く。貫太郎たちは互いに顔を見合わせ、笑顔で気合を入れる。

貫太郎:「よし、みんな、行くぞ! 初日の練習、気合入れよう!」

健太:「おう! バタフライでガンガンいくぜ!」

亮:「冷静に、効率よく泳ぐ。それが俺のスタイルだ。」

拓也:「アニメのヒーローみたいに、プールで輝くぜ!」

美枝子:「セクシーに泳いで、みんなの視線を独り占めよ!」

綾乃:「背泳ぎで、トップ目指すわ。みんな、負けないよ。」

南:「海みたいに自由に泳ぐよ! 楽しみだ!」


準備運動が終わり、新入生たちはプールサイドに整列する。美咲がストップウォッチを手に、練習の開始を宣言する。

美咲:「よし、50メートル自由形から。自分のペースでいいけど、全力で泳ぎな。恵美先生と私がフォームをチェックするよ。スタート!」


新入生たちが一斉にプールに飛び込む。水しぶきが上がり、プールサイドに緊張と興奮が響き合う。貫太郎は水をかき分け、自由形で泳ぎ始める。中学時代のフォームを思い出しながら、腕を大きく振り、水を力強く押す。しかし、久しぶりの本格的な泳ぎに、すぐに息が上がる。

貫太郎(心の声):「くっ、思ったよりキツい……中学の時みたいにスムーズにいかないな。でも、諦めるわけにはいかない!」


健太は豪快に水をかき分ける。彼の緑の水着が水面で目立ち、力強い泳ぎが先輩たちの目を引く。

健太(心の声):「めっちゃ気持ちいい! インターハイの感覚、思い出してきたぜ!」


亮は冷静に泳ぐ。黒の水着が水面に溶け込み、流れるようなフォームが彼の理系らしい精密さを物語る。

亮(心の声):「水の抵抗を最小限に。フォームを意識すれば、タイムは上がる。集中だ。」


拓也は必死に泳ぐ。青の水着が水しぶきに映えるが、フォームが崩れがちで、思うように進まない。

拓也(心の声):「うわ、泳ぐのキツい! でも、アニメの主人公みたいに諦めないぜ!」


美枝子は初心者らしいぎこちなさがあるが、一生懸命に泳ぐ彼女の華やかな動きがプールサイドの視線を集める。

美枝子(心の声):「セクシーに泳ぐって決めたんだから! 貫太郎、見ててよ!」


綾乃は優雅に泳ぐ。スポーツ推薦の自信が彼女のフォームに現れ、先輩たちも感心した様子だ。

綾乃(心の声):「水泳は私の舞台。全国優勝のプライド、絶対見せる!」


南は、緑の水着でバタフライを力強く泳ぐ。海を泳ぐような自由な動きが、彼女の水泳への愛を物語る。

南(心の声):「海みたいに自由に! バタフライで、みんなと一緒に輝きたい!」


恵美は、プールサイドで一人一人の泳ぎを観察する。彼女の目は鋭く、新入生たちのフォームの欠点を瞬時に見抜く。普段の清楚な教師の姿はどこにもなく、鬼コーチとしての厳しさが全面に出る。彼女は貫太郎の泳ぎを見て、大きな声で指摘する。

恵美:「貫太郎! 腕の入水が浅い! もっと深く水をかいて! フォームが崩れてるよ!」


貫太郎は、恵美の声に一瞬驚き、水中で体を硬くする。普段の優しい担任教師とのギャップに、内心動揺する。

貫太郎(心の声):「うわ、恵美先生、めっちゃ厳しい! 普段の授業じゃこんな声聞いたことないぞ……でも、指摘は的確だ。直さないと。」


恵美は、次に拓也に目を向ける。彼女の声が再びプールサイドに響く。

恵美:「拓也! 膝が曲がりすぎ! 泳ぎはもっと滑らかに、流れるように泳ぐの!」


拓也が、水中で慌ててフォームを直そうとするが、焦りからさらにバランスを崩す。

拓也(心の声):「うわ、恵美先生、怖え! でも、アニメの師匠みたいだ。頑張らないと!」


美枝子にも、恵美の厳しい指導が飛ぶ。

恵美:「美枝子! 頭が上がりすぎ! 水面に体を平行に保って!」


美枝子は、必死にフォームを意識しながら泳ぐ。彼女のピンクの水着が水しぶきに映えるが、初心者らしいぎこちなさが目立つ。

美枝子(心の声):「恵美先生、めっちゃ怖い! でも、セクシーに泳ぐためにも、頑張るよ!」


美咲も、新入生たちの泳ぎをチェックしながら、的確な指示を出す。彼女は健太の自由形を見て、声を張り上げる。

美咲:「健太! 腕のリカバリーが遅い! もっと素早く水面に戻して!」


健太は、美咲の指摘に頷き、フォームを修正する。彼の力強い泳ぎが、少しずつ安定していく。

健太(心の声):「美咲先輩、めっちゃ厳しいけど、的確だ。インターハイの経験、活かさないとな!」


美玲は、優しく新入生たちを励ます。彼女は綾乃の泳ぎを見て、微笑みながら声をかける。

美玲:「綾乃、素晴らしいフォームだよ。リズムを崩さず、その調子で!」


綾乃は美玲の言葉に自信を深め、さらになめらかに泳ぐ。

綾乃(心の声):「美玲先輩の応援、めっちゃ嬉しい。絶対トップ目指す!」


南のにも美玲が温かい声をかける。

美玲:「南、いい動きだよ! 海を泳ぐみたいな自由さ、最高だね!」


南は、美玲の言葉に笑顔になり、力強く水をかく。

南(心の声):「美玲先輩、めっちゃ優しい! 海みたいに自由に泳げるよ!」


恵美の厳しい指導は、他の新入生たちにも容赦なく飛ぶ。彼女は、普段の清楚な教師の姿を完全に脱ぎ捨て、鬼コーチとして新入生たちを鍛える。特別進学科1年ε組の貫太郎、健太、亮、拓也、美枝子、綾乃、南は、担任である恵美の普段の優しい姿しか知らなかったため、彼女の二面性に驚きを隠せない。特に貫太郎は、恵美に何度も怒鳴られ、内心動揺を抑えきれない。

貫太郎(心の声):「恵美先生、授業じゃめっちゃ優しいのに、部活じゃ鬼みたいだ……。でも、この厳しさ、めっちゃ本気なんだな。俺、負けられない!」


50メートルの泳ぎが終わり、新入生たちはプールサイドに上がる。息を切らし、疲れ果てた顔で互いを見合わせる。経験者である貫太郎、健太、綾乃、南は、まだ余裕があるものの、亮、拓也、美枝子は明らかに疲れている。美咲がストップウォッチを確認し、新入生たちに声をかける。

美咲:「初日はこんなもんね。経験者と未経験者の差は出るけど、練習で埋められるよ。恵美先生の指摘、ちゃんと覚えておきな。」


恵美が、濡れた髪をかき上げながら、新入生たちに言う。

恵美:「みんな、よく頑張ったわ。初日は自分の泳ぎを知る日。明日から、もっと具体的な指導をするから、覚悟してなさい。」


貫太郎たちは、疲れた体でプールサイドに座り込む。健太が、息を整えながら笑う。

健太:「いや、恵美先生、めっちゃ怖かったな。でも、なんか燃えてきたぜ!」


亮が、冷静に言う。

亮:「厳しいけど、指摘は全部的確だ。科学的にも、フォーム改善がタイムに直結する。」


拓也が、疲れた顔で笑う。

拓也:「アニメの師匠みたいだったぜ。俺、絶対泳げるようになる!」


美枝子が、髪を拭きながら言う。

美枝子:「恵美先生、怖いけど、めっちゃカッコいい! 私、もっとセクシーに泳げるように頑張るよ!」


綾乃が、静かに微笑む。

綾乃:「恵美先生の指導、めっちゃ勉強になる。泳ぎ、もっと磨くわ。」


南が、貝殻のキーホルダーを握りながら言う。

南:「海みたいに泳げるよう、もっと練習するよ。みんな、めっちゃ頑張ってた!」


貫太郎は、仲間たちの笑顔を見て、疲れの中にも希望を感じる。彼は、赤い水着を握りしめ、心の中で決意を新たにする。

貫太郎(心の声):「恵美先生の厳しさ、めっちゃキツいけど、これ乗り越えたら絶対強くなれる。基準タイム、絶対クリアして、みんなと一緒に水泳部に入るんだ!」


美玲が、新入生たちに温かく声をかける。

美玲:「みんな、初日お疲れ様。疲れたと思うけど、今日の頑張りは絶対無駄にならないよ。明日も一緒に頑張ろう!」

体験入部の初日が終わり、新入生たちは疲れ果てた顔でロッカー室へと向かう。プールの水面が静かに揺れ、夕陽がガラス窓をオレンジに染める。貫太郎たちの水泳部での挑戦は、まだ始まったばかりだ。仲間と共に、厳しい練習を乗り越え、基準タイムを目指す彼らの物語が、ここからさらに動き出す。


シーン5:居残り練習

体験入部初日の練習を終えた新入生たちは、疲れ果てた体を引きずりながらロッカー室へと向かう。ロッカー室からは、笑い声や軽い雑談が漏れ聞こえ、初日の緊張が解けた安堵感が漂っている。しかし、川名貫太郎だけは、プールサイドに一人取り残されていた。貫太郎は全身が重く、筋肉にはすでに疲労が蓄積している。初日の練習での自分の泳ぎが、恵美や美咲の期待に応えられなかったことが、彼の胸に重くのしかかる。中学時代の全国優勝の記憶が、逆にプレッシャーとなり、自信を揺さぶっている。プールサイドに立つ彼の視界には、すでに制服に着替えた健太、亮、拓也、美枝子、綾乃、南の姿が映る。ロッカー室の入り口で、彼らは貫太郎に同情のまなざしを向けている。

貫太郎(心の声):「中学の全国優勝が、こんな簡単に通用しないなんて。美咲先輩の『中学の実績なんて通用しない』って言葉、本当だったんだな。くそ、悔しい……でも、ここで諦めるわけにはいかない!」


水泳部顧問の恵美が貫太郎の前に立つ。彼女の声は厳しいが、どこか温かみに満ちている。

恵美:「貫太郎、あなたの練習の不真面目さが目に余る。だから、体験入部初日だけど、今日は居残り練習ね。先輩方が応援するから、頑張りなさい。」


貫太郎は、恵美の言葉に一瞬体を硬くする。普段の優しい担任教師とのギャップに、内心動揺を隠せない。しかし、彼女の目に宿る本気の期待を感じ取り、小さく頷く。

貫太郎:「はい、分かりました…。」

貫太郎(心の声):「不真面目って……そんなつもりじゃなかったのに。恵美先生の目、めっちゃ怖いけど、期待されてるってことだよな。絶対、乗り越えてやる!」


ロッカー室の入り口で、健太が少し申し訳なさそうな表情で貫太郎に声をかける。

健太:「貫太郎、頑張れよ…。俺ら、先に帰るけどさ。」

健太(心の声):「貫太郎、初日で居残りってキツいな。俺もバタフライでミスったけど、なんで貫太郎だけ……。でも、貫太郎なら絶対やれるよな!」


亮が冷静に言い放つ。

亮:「大変そうだな…。でも、こういう練習が後で生きるよ。頑張れ。」

亮(心の声):「居残り練習は、科学的にも集中強化に有効だ。貫太郎の泳力なら、乗り越えられるはず。データに基づく努力が大事だな。」


拓也が不安げな顔で貫太郎を見つめる。

拓也:「本当に大丈夫だろうか…。俺、帰りに何か差し入れ持ってこようか?」

拓也(心の声):「貫太郎、めっちゃキツそう! アニメの主人公なら、こんな試練乗り越えるけど……俺、泳げないのに心配だけじゃダメだよな。」


美枝子が貫太郎に優しく微笑む。

美枝子:「貫太郎ほどの人が居残りを命じられるなんて、正直信じられないよ。でも、あたしはずっと貫太郎の味方だから応援してるよ。」

美枝子(心の声):「貫太郎、こんなキツい練習でも絶対カッコいいよ。私の応援、届いてほしいな。頑張って、貫太郎!」


綾乃が落ち着いた声で貫太郎を励ます。

綾乃:「私も貫太郎が居残りを命じられるなんて、驚きを隠せないわ。だけど、中学時代に水泳部として活躍した貴方ならやれるよ。」

綾乃(心の声):「貫太郎、こんな試練でも絶対乗り越えられる。背泳ぎの私も、貫太郎に負けないように頑張るわ。」


南が明るく言う。彼女の笑顔が、貫太郎の心を少し軽くする。

南:「居残りを命じられるのはもしかしたら、それほど期待されているかもよ。だから、恵美先生の期待に応えられるように頑張って!」

南(心の声):「貫太郎、めっちゃ大変そうだけど、期待されてるってことだよね。海みたいに自由に泳げる貫太郎、絶対カッコいいよ!」


貫太郎は、仲間たちの励ましに小さく手を振り返す。口では気丈に振る舞うが、心の中では不安が渦巻いている。

貫太郎:「大丈夫だよ。みんな、ありがとう。明日、絶対いい報告するから!」

貫太郎(心の声):「みんなの応援、めっちゃ嬉しいけど……正直、めっちゃ怖い。恵美先生の居残り練習、どれだけキツいんだよ……。」


仲間たちがロッカー室のドアをくぐり、プールサイドが静かになる中、3年生の男子水泳部員の健が貫太郎に近づいてくる。彼は苦笑いを浮かべ、貫太郎の肩に軽く手を置く。

健:「海風学園の水泳部は男子部員は人数も実績も少ないから発言力が低い。言うまでも無く人数と実績の多い女子部員の権威が強い。ここでは女子に逆らったら、俺たち男子は居場所を無くす。それほど男子水泳部は弱くて、女子水泳部にはいつもスパルタ練習で扱かれる。俺も新入生だった頃に居残り練習を経験したけどさ、まるで旧日本軍、韓国軍、北朝鮮軍並みの厳しさだよ。あれは本当に地獄の特訓だぜ…。だから、体験入部期間だけ通って辞めたり、入部試験に合格しても途中で辞めたり、と多くの部員が辞めていったんだ。海風学園水泳部はそれほど甘くないし、と言うか高校水泳そのものが甘くないんだ。覚悟しとけよ、貫太郎。」


健の言葉は重く、貫太郎の背筋に冷たいものが走る。彼の目に宿る過去の過酷な記憶は、冗談ではなく本気の警告だ。貫太郎は、健の肩を叩く手に力強さを感じ、深呼吸をする。

貫太郎:「健先輩、ありがとうございます。覚悟、決めます。絶対、乗り越えてみせます!」

貫太郎(心の声):「健先輩の話、めっちゃ怖いけど……本気で言ってるんだな。女子水泳部の厳しさ、想像以上だ。でも、俺、負けるわけにはいかない!」


健が肩を叩いて去っていくのを見送り、貫太郎がプールサイドに立つと、女子水泳部の先輩たちが彼を囲む。美咲、美玲、美奈、さくら、明美、ユウ、咲――それぞれの個性的なハイレグ型競泳水着が、プールの照明に映えて眩しい。美咲は腕を組み、貫太郎を睨むような鋭い視線を向ける。

美咲:「貫太郎、泳ぎ方が甘いわね。もっと腰を振って、速く泳ぐのよ! さっきの練習見てたけど、無駄な動きが多すぎる。これでよく中学の全国大会で優勝できたものだわ。」


美咲の言葉は刺すように鋭く、貫太郎のプライドをズタズタに切り裂く。彼は一瞬言葉を失い、拳を握りしめる。

貫太郎(心の声):「美咲先輩、めっちゃ厳しい……。確かに、今日の泳ぎ、ダメだったけど、こんな風に言われると悔しいな。でも、指摘は的確だ。直さないと。」


美玲が、優しげな笑みを浮かべながら、貫太郎に話しかける。

美玲:「確かに貫太郎は中学時代は全国優勝した実績はあるかもしれないけど、去年の夏のインターハイが終わった後に引退して以来、長く水泳から離れてたんじゃないかな?」


美玲の言葉は、まるで貫太郎の心を見透かすようだ。彼は、正直に答える。

貫太郎:「美玲先輩の言う通りです。俺は中3の夏で引退して以来、受験勉強に集中していたため、ほとんど水泳の練習はしていませんでした。だからか、俺の泳ぎは少し鈍ったかもしれません。」

貫太郎(心の声):「美玲先輩、めっちゃ優しいな。でも、俺の弱点、ズバリ当てられた。確かに、練習不足だ。認めないわけにはいかない。」


美咲が、冷たく続ける。彼女の声には、貫太郎を本気で鍛えようとする情熱が隠れている。

美咲:「やはりね。いくら全国優勝の実績を持ってても、長く練習から遠ざかっていたら自然と衰えていく。今日の泳ぎを見て、全国優勝者とは思えないくらいに動きに無駄が多かったから。」


貫太郎は、美咲の棘のある言葉に唇を噛む。

貫太郎(心の声):「美咲先輩の言う通りだ。過去の栄光にしがみついてても、ダメだ。俺、もっと本気でやらないと……。」


美奈が、関西弁の明るい声で貫太郎を励ます。

美奈:「まあまあ、ちっこい時から水泳をやってきた貫太郎はほんまは実力者や。今からみっちり練習すれば、昔のように強い選手に戻れるわ!」


美奈の言葉に、貫太郎の心が少し軽くなる。彼女の笑顔が、まるで太陽のように温かい。

貫太郎(心の声):「美奈先輩、めっちゃ明るいな。こんな先輩が応援してくれるなら、頑張れる気がする!」


さくらが、静かな声で続ける。

さくら:「ここの水泳部の指導は本格的で、より実戦的なのよ。そこらの高校水泳部とは全然違う体験ができるよ。」


さくらの言葉に、貫太郎は頷く。彼女の穏やかな声が、クラシック音楽のように心を落ち着かせる。

貫太郎(心の声):「さくら先輩、めっちゃ知的だな。本格的な指導、楽しみだけど、キツそうだ……。」


明美が、力強い声で貫太郎を鼓舞する。

明美:「お前ならナンバー1に返り咲けるぜ。あたいらはお前に強い期待を抱いているんだ!」


明美の熱い言葉に、貫太郎の胸に闘志が湧く。彼女のプロレスラーのような気迫が、背中を押す。

貫太郎(心の声):「明美先輩、めっちゃ熱い! ナンバー1、目指したいな!」


ユウが柔らかく言う。

ユウ:「あたしも貫太郎なら男子水泳部のスターになれると確信しているよ。あたし達が熱心に鍛えるから、貫太郎ももっと高みを目指して!」


ユウの優しい笑顔に、貫太郎は心から感謝する。彼女のファッションセンスが、まるで魔法のように魅力的だ。

貫太郎(心の声):「ユウ先輩、めっちゃ応援してくれる。スターだなんて、照れるけど、頑張らないとな!」


咲が貫太郎に微笑む。

咲:「私の妹の綾乃から聞いてるよ。面倒見が良いそうじゃん。だから、私たちが将来のキャプテンになれるように育てるよ!」


咲の言葉に、貫太郎は綾乃の姉としての信頼を感じる。彼女のロックンロールな雰囲気が、どこか心強い。

貫太郎(心の声):「咲先輩、綾乃の姉貴って感じだな。キャプテンだなんて、プレッシャーだけど、めっちゃ嬉しい!」


美咲が再び口を開き、厳しい現実を突きつける。彼女の声は、まるで戦国大名の命令のように重い。

美咲:「高校水泳の世界は、中学みたいに生温いもんじゃないよ。全国優勝したって過去の栄光にしがみついてるだけじゃ、ここじゃ通用しない。分かったらさっさと泳ぎなさい。」


美咲の冷たい言葉に、貫太郎のプライドが傷つく。しかし、その裏に隠れた情熱を感じ取り、彼は拳を握りしめる。

貫太郎(心の声):「美咲先輩、めっちゃ厳しいけど、本気で俺を強くしたいんだな。よし、絶対見返すぞ!」


居残り練習のメニューは、恵美が用意した過酷なものだった。最初のウォーミングアップから始まり、クロールでプールの長辺を200往復。水面に手を出さず、リズムを保つことに集中する。続いて、スピードドリルで50mのクロールを全力で泳ぎ、15秒のインターバルを挟んで100回繰り返す。次に、テクニック練習でキックボードを使ってキックの強化。特に足首の柔軟性とバタフライキックのタイミングを50回繰り返す。最後に、スタミナ強化として200メートルのメドレースイム。背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形を各50メートル泳ぎ、休まず続ける。貫太郎は、恵美から渡されたメニュー表を見て、息を呑む。

貫太郎(心の声):「200往復に100回繰り返し、キック50回、メドレースイム……。これ、めっちゃキツいぞ。恵美先生、本気で俺を鍛える気だな。」


恵美が貫太郎に指示を出す。彼女の声は、まるで軍隊の教官のように力強い。

恵美:「貫太郎、ウォーミングアップから始めるよ。クロールで200往復。水面に手を出さない、リズムを保つこと。スタート!」


貫太郎は、プールに飛び込み、クロールで泳ぎ始める。水面に手を出さないよう意識し、美咲の「腰を振って!」という言葉を思い出し、腰を動かして推進力を得ようとする。しかし、慣れない動きに体がぎこちなく、水しぶきが上がるたびに疲労が蓄積していく。

貫太郎(心の声):「くっ、腰を振るって、こんなに難しいのか……。美咲先輩の指摘、めっちゃ的確だ。集中しないと!」


美奈が貫太郎の背中に近づく。彼女の関西弁が、プールサイドに響く。

美奈:「ほな、背中押すから、もっと前へ! 頑張りや!」


美奈の手が貫太郎の背中に力強く当たり、彼は思わず水中に飛び込む。水中で流れる感覚に、慌てて泳ぎ始める。彼女の力強いサポートが、貫太郎の動きを後押しする。

貫太郎(心の声):「美奈先輩、めっちゃ力強い! この押し、めっちゃ助かる!」


50メートル時点に到達すると、さくらが静かに近づき、リズミカルな指導を始める。彼女の紫の水着が幻想的に光り、クラシック音楽のような穏やかな声が響く。

さくら:「リズムを感じて、水と一体になろう。焦らずに、落ち着いて泳いでね。」


貫太郎は、さくらの言葉に合わせてリズムを意識する。彼女の落ち着いた声が、まるで交響曲のように心を整える。

貫太郎(心の声):「さくら先輩の声、めっちゃ落ち着く。リズム、確かに大事だ。意識しよう。」


100メートルに到達すると、ユウが貫太郎のそばに立つ。

ユウ:「もっと伸びやかに泳ぐのよ。蹴伸びの姿勢、直してあげるから。」


ユウは貫太郎の腕をつかみ、無理やり伸ばすような動作をさせる。キツい動きに、貫太郎は痛みに顔を歪めるが、彼女の指導が正しいことを理解する。

貫太郎(心の声):「うっ、痛い! でも、ユウ先輩の言う通り、伸びやかに泳がないと。頑張る!」


150メートルに到達すると、明美が貫太郎に近づき、耳をつまんで集中を促す。

明美:「集中! 負けるわけにはいかないんだから! しっかり泳ぎなさい!」


耳をつままれる痛みに、貫太郎は思わず声を上げる。

貫太郎:「痛っ!」

貫太郎(心の声):「明美先輩、めっちゃスパルタ! でも、この刺激、眠気吹き飛んだ! 集中するぞ!」


200メートルに到達すると、咲が疲れ切った貫太郎に近づき、優しくマッサージを施す。

咲:「自分のペースで泳ぐのよ。ちょっと疲れてるみたいだから、肩揉んであげるね。」


咲の手が貫太郎の肩に触れると、硬くなった筋肉が少しずつほぐれる。彼女の優しさに、貫太郎は一瞬リラックスする。

貫太郎(心の声):「咲先輩、めっちゃ優しい……。このマッサージ、めっちゃ助かる。よし、次行くぞ!」


ウォーミングアップが終わり、次はスピードドリルだ。貫太郎は全力で50メートルを泳ぎ、ゴールにタッチすると15秒のインターバルで息を整える。しかし、10回目を超えたあたりで体が悲鳴を上げ始める。

美咲:「スピード落ちてるよ、貫太郎! 中学の優勝者はこんなもんじゃないよね?」


美咲の叱責に、貫太郎のプライドが刺激される。彼は力を振り絞って泳ぐ。

貫太郎(心の声):「くそっ、美咲先輩、めっちゃ厳しい! でも、負けたくない! 優勝者の意地、見せるぞ!」


美玲が、優しくフォローする。

美玲:「力はあるんだから、それを信じて。15秒でしっかり息整えてね。」


貫太郎は、美玲の言葉に励まされ、インターバルで深呼吸を繰り返す。

貫太郎(心の声):「美玲先輩、めっちゃ優しい。よし、力を信じて、頑張る!」


50回目を過ぎた頃には、全身が鉛のようになるが、美玲が泳ぎながら声をかける。

美玲:「集中よ! あと少し、頑張って!」


貫太郎は、美玲の応援に奮起し、なんとかスピードドリルを続ける。

貫太郎(心の声):「美玲先輩の声、めっちゃ力になる。集中だ!」


スピードドリルが終わり、次はキックボードを使った練習だ。貫太郎はキックボードを手に持ち、足首の柔軟性を意識してキックを始める。

美奈:「もっと足首柔らかくして! 前へ進むイメージやで!」


美奈の指導に、貫太郎は足首を意識し、バタフライキックのタイミングを掴もうとする。しかし、慣れない動きに足がつりそうになり、苦悶の表情を浮かべる。

貫太郎(心の声):「足、つりそう……。でも、美奈先輩の言う通り、前へ進むイメージだ!」


咲が、水中からアドバイスする。

咲:「海で泳ぐ時みたいに、自然にキックするんだよ。力入れすぎないで。」


貫太郎は、咲の言葉を頼りに、少しずつ自然な動きを取り戻す。50回を終えた頃、足の筋肉が震えるが、泳ぎに変化が現れる。

貫太郎(心の声):「咲先輩のアドバイス、めっちゃ効いてる! 自然にキック、意識するぞ!」


キックボードの練習が終わり、最後のメニューはスタミナ強化の200メートルメドレースイムだ。背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、自由形を各50メートル泳ぎ、休まず続ける。貫太郎は、最初の10回をなんとか耐えるが、20回を超えると意識が朦朧としてくる。さくらが、背泳ぎの指導で近づく。彼女の声は、まるでバイオリンの旋律のように穏やかだ。

さくら:「貫太郎、背泳ぎは如何に水面に体を浮かせられるかが鍵だよ。ラッコになった気持ちで泳いでみて。」


貫太郎は、さくらの言葉に合わせて体を浮かせることを意識する。ラッコのイメージが、意外と効果的だ。

貫太郎(心の声):「ラッコか、なんか面白いな。さくら先輩、めっちゃ分かりやすい!」


美奈が、平泳ぎの指導で続ける。彼女の関西弁が、プールに響く。

美奈:「貫太郎、平泳ぎはフォームは自由形に近いし、体育では誰もが習うはず。だから、泳げないと話にならへんで。蛙になった気持ちで泳いでみぃ。」


貫太郎は、蛙のイメージで平泳ぎを泳ぐ。美奈の明るい声が、疲れを忘れさせる。

貫太郎(心の声):「蛙、か。美奈先輩、めっちゃユニーク! でも、確かに分かりやすいな。」


咲が、バタフライの指導で近づく。彼女の声は、ロックンロールのリズムのように力強い。

咲:「バタフライは蝶が舞うように泳ぐのよ。胡蝶の舞よ。だから、腕をきちんと広げて、バタ足を蹴れるようにして!」


貫太郎は、咲の言葉に合わせて腕を広げ、バタフライキックを意識する。蝶のイメージが、彼の動きを軽やかにする。

貫太郎(心の声):「胡蝶の舞、か。咲先輩、めっちゃカッコいい! バタフライ、頑張るぞ!」


自由形では、美咲と美玲が直接指導する。美咲の声が、まるで戦国大名の号令のように響く。

美咲:「貫太郎、フォーム崩れてる! スタミナ切れても技術は維持しなさい!」


貫太郎は、美咲の怒号に必死に応え、フォームを意識する。

貫太郎(心の声):「美咲先輩、めっちゃ怖い! でも、フォーム、絶対崩さない!」


美玲が優しく励まして、肩を揉みながら続ける。

美玲:「あと少しだよ。自分のペースでいいから、諦めないで。リラックスして。」


貫太郎は、美玲の優しさに力を得て、なんとか100回を突破する。しかし、200回を超えたあたりで限界が近づき、彼はプールの底に沈みそうになる。

貫太郎(心の声):「もう、限界……。体、動かない……。」


そこへ、ユウが潜り込み、貫太郎を抱き上げる。

ユウ:「貫太郎、諦めないで! 私も一緒に泳ぐから!」


貫太郎は、ユウの存在に救われ、残りの回数をなんとか乗り切る。彼女の温かい腕が、彼を支える。

貫太郎(心の声):「ユウ先輩、めっちゃ助けてくれる……。諦めない、絶対!」


過酷なメニューを終え、貫太郎は最後のクールダウンでプールをゆっくり泳ぐ。ブレストストロークの穏やかな動きが、全身の疲れを癒していく。プールサイドに上がると、美咲が満足げに頷く。

美咲:「まあ、今日はこれでいいよ。よく頑張った。」


美玲が、微笑みながら続ける。

美玲:「貫太郎、すごいよ。今日の努力、絶対無駄にならないから。」


貫太郎は、プールサイドに座り込み、深呼吸を繰り返す。全身が重く、筋肉が震えるが、心は達成感で満たされている。

貫太郎:「ありがとう、みんな……。絶対、基準タイムクリアするよ。」

貫太郎(心の声):「めっちゃキツかったけど、みんなの応援、めっちゃ力になった。恵美先生、美咲先輩、美玲先輩、みんなくそカッコいい。俺、絶対強くなる!」

プールの水面が静かに揺れ、夕陽がガラス窓をオレンジに染める。貫太郎の居残り練習は、彼の水泳部での新たな一歩を刻んだ。仲間たちの支えと先輩たちの厳しくも温かい指導が、彼の心に火を灯す。基準タイムを目指す挑戦は、まだ始まったばかりだ。



次回、貫太郎達の高校の学園生活で本格的に授業が始まります。しかし、貫太郎達は予想以上に高校の学習内容は専門度が高すぎて苦戦します。勉強に部活動、貫太郎達は両立できるのでしょうか!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ