二章3話 夢見の少女
ユウヤたちと別れて教会へやって来た。聖神セイクリヤを信仰するセイクリヤ教会、ここに来るのはほぼ一年ぶりだが、ここの空気は俺には合わないことを改めて実感する。
好き嫌いも言ってられないのでそのまま進む、礼拝堂に入ってすぐ目的の人物を発見した。
「リジル?どうしたの?随分久しぶりじゃない」
マリア グラース、かつての仲間で心剣の欠片の一つを管理している。
こっちに気付いて声をかけてくる、久々だがこいつも変わりは無い様だ。
「少し頼みと、相談があってな」
「ん、なに?」
「あぁ、まず頼みのほうなんだが、数日前フルールが賊に襲われた。幸い多少の怪我人が出たのと何軒か燃えただけで済んだが、復興の為の人手を貸して欲しい」
「ええ、いいわよ教会から何人かフルールへ向かわせるわ。それで相談っていうのは?」
こっちの方はどこから話せばいいんだ?とりあえず・・・
「賊の一人が心剣の欠片を持ってやがった、色は青。空竜の爺が管理していたやつだ」
「賊が・・・どういうことかしら?空竜様が賊にやられるとも思えないし、そもそも簡単に近づけるような場所の居る訳でもないんだけど・・・」
「あぁ、分かんねぇから調べに行く、その間一緒に来た連れを頼めねぇか?」
「スノウちゃんのこと?」
「あ、いや、違う、実はな・・・」
ユウヤとアキラのことを話す、さらにユウヤが帰るために心剣の欠片を集めたいことも話す。
「なるほど、また異界の迷子を拾ったのね。それじゃあ空竜様の所を調べるのは教会に任せて、リジルは風獣の丘に行った方が良いんじゃない?」
「任せていいのか?」
俺としては助かるんだが、あまり迷惑をかけるわけにもいかねぇしな・・・
「私だって心剣の欠片を管理する一人よ、空竜様に何か有ったのか気になるし、こっちはまかせて」
「すまねぇ、助かる」
「それと、ユウヤ君だっけ?今度連れてきてね、欠片を渡すならどんな子か確かめてからにしたいし」
「あぁ、近いうちに連れてくる」
話はだいたい片付いたな、さてちょいと早いが戻って二人を待つか・・・
「ところで、スノウちゃんは居ないの?」
「んあ?いや居るぞ。スノウ」
呼びかけに応えてスノウが姿を見せる、まぁずっと俺の隣りに居たんだけどな。
「スノウちゃん、お久しぶり。おねいさんとお茶しようか、クッキーもあるよー」
・・・あれ、マリアってこんなやつだったか?
「は、はい、お久しぶりです。え、えっと、リジル様?」
スノウがマリヤに捉まりこっちに助けを求めてくる、まぁ時間も有るし良いか。
「せっかくだからゆっくりしていくか」
面白がって笑いながらそう告げてみる。
「あう・・・」
スノウの反応にちょっと癒された。
ユウヤ、アキラ、すまん少し遅くなりそうだ。
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とりあえず宿は決まった。僕達に用の有る少女に少し待ってもらって4人分の部屋を確保する、ん?スノウの部屋って要るのかな?ずっとリジルと一緒にいるイメージが有るんだけど・・・まぁ要らなかったら要らなかったで良いかな。
そして、現在少女を交えて昼食を取りながら自己紹介中。
「僕の名前は知ってますよね、まぁ一応・・・アキラです。今は彼、救世主様の手伝いをしています」
まずはアキラ、そう言ってこちらに振る・・・さてどこまで話そうかな・・・
「僕は九薙 悠夜、あ、悠夜が名前だから、えっと・・・故郷に帰るための旅の途中かな、あと救世主って呼ばないでよ光と闇の魔導師様」
救世主って呼ぶのは止めろ。
「ユウヤさんですか・・・私はレニィ ウォーティア、夢見の民です。
ユウヤさんは・・・異世界の人ですか・・・?」
どうしてばれてるんだろう?
「ユウヤさん、彼女は夢見の民、預言者の一族です。おそらく僕たちのことを夢見したのでしょう」
そう言えばリジルの話にも夢見の民って出て来てたな、それじゃこっちの事情なんかは全部知られてるって事かな。
「へぇ、そこまで分かるものなんだ?」
「はい、でも私の夢見の結果はあまり良い物ではなくて・・・だから、私をあなた達と共に行動させてください。世界は救われるけど・・・一番救われなくちゃいけない人が不幸になる・・・そんな未来を変えたいんです」
大勢を救う為に少数を切り捨てるなんて、よく有ることじゃないのかな?それで世界が救われるなら彼女の見た未来はけっして悪くは無い・・・まぁ内容にもよるけど・・・聞いておこう。
「具体的な予知の内容は?」
「すみません、詳しくは話せないんです。ただ、あなた達の行動が世界を救うとしか・・・」
まぁ、よく有る事だよね・・・話すことで未来が変わるとかいろいろ理由は考えられるけど・・・
「僕たちと一緒に来るのは・・・僕たちだけじゃ許可できませんね」
「だね、僕は別に構わないけどリジルの意見も聞いてみないとね」
「氷の精霊騎士様ですか?」
リジルの二つ名かな?微妙にカッコイイと思う僕は駄目なんだろうか?
これで一応話もまとまったかな。さて昼食も終わったし・・・
「うん、夕方におち合うことになってるからそれまでゆっくりしててよ。アキラ、彼女のこと任せていい?」
「かまいませんが、どこかへ行くんですか?」
「ちょっと街の外に、大丈夫、時間までには戻ってくるから、じゃ、よろしく」
二人を残して僕は街の外に出た、理由は簡単だ、レニィに絡んでいた男、彼の実力が発揮される前に逃げたけど確実に僕よりも上だろう・・・今の僕じゃ勝てそうに無い。剣の技術は兄さんに叩き込まれていたけど、実践経験が違いすぎる。まぁ、そんな訳で修練だ!少しでも強くならないとな・・・
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ユウヤさんが宿を出て私とアキラさんが残りました。
彼は異世界人、だったら救世主様の筈なんですけど・・・
「どうかしましたか?」
考え込んでいるとアキラさんが心配そうに話しかけてきます。
「い、いえ、何でもありません」
私の夢見に違和感を感じますが、それを彼らに話す訳にもいきません。気付かれない様に取り繕い微笑みますが旨くいったでしょうか?
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「なぁ、マリア・・・」
「ん~? あ、スノウちゃんこっちもおいしいよ~」
聞いてねぇなこいつ、さっきからスノウに構いっきりで俺には茶すら出ない。
「俺、昼まだだから暫くスノウのこと頼む」
告げた瞬間スノウがもの凄く絶望したような気もするが気のせいだ、ここは気のせいにしておかないと俺は昼飯にありつけない。
「うん、まかせて~」
「リ!リジル様!?」
「んじゃ、よろしく」
すまん、スノウ許してくれ必ず後で迎えに来るからな・・・
戦闘が無いと短いな・・・まぁ、戦闘描写もうまくできてないんだけどな・・・