一章4話 心剣の欠片
短いです。
「心剣の欠片?」
盗賊の襲撃の翌日、リジル家、朝食時、僕とリジルとアキラ、更に今日はスノウも食卓についていた。
「あぁ、昨日の盗賊の使っていた魔道具、どうやら心剣の欠片みたいだ」
心剣の欠片って、元の世界に帰る為にこれから集めようとしてる物だよね、いきなり見つかったの?都合良すぎない?
「俺にも予想外だったんだが、斬空の心剣、欠片だけでも何らかの力を発揮するみたいだ」
「その欠片は魔物を呼び出すってとこ?」
リジルの持って来た青い掌位の大きさの金属片を見て訊ねる。
「いや、分からねぇ、さっき試してみたら空から氷が降って来た、
おそらくだが、人によって効果が変わるんじゃねぇかと思うんだが・・・
まぁ、問題はそこじゃねぇ」
ん?何か問題が有るのか?
「実は俺、心剣の欠片の有る場所全部知ってんだ。この青の欠片を守ってた奴が盗賊ごときに後れを取るとも思えねぇし・・・簡単に盗みに入れるような場所でもねぇ、ん~」
何か考え出したけど僕じゃ何も分からないし難しい事は任せておこう。
「ユウヤさんおかわり、要りますか?」
「あ、うん、もらうよ」
スープの皿をスノウに渡す、このやり取りも久しぶりだなぁ。
「スノウと一緒にご飯を食べるのも久しぶりだね」
「ええっと、はい、すみません」
「まぁ、こいつアキラのこと警戒してたからな」
リジル、考え事はいいのか?
「はぁ、そうなのですか?」
確かに、スノウが出て来なくなったのってアキラが来てからだな、アキラはあまり気にして無いみたいだ、昨日も突然出てきたスノウにも何も言わなかったな。
「あたし精霊、人とは魔力の感じ方が違います」
「あぁ、なるほど、では警戒するのも仕方ありませんね、僕の魔は禍々し過ぎますから」
「でも、悪い人じゃ無いみたいです・・・」
「はは、ありがとうございます」
自分で禍々しいとか言ってるし・・・まぁ、僕もアキラは悪い奴には見えないから良いけどね。
「だぁあ!考えてもしかたねぇ、アクアリスに行くぞ!」
びっくりした、突然叫ばないでリジル。
「アクアリスですか、ここから東へ3日程の所に有る街ですね」
「あぁ、心剣の欠片を集めるにしてもまず行かなきゃならない場所だ、
あと村の復旧の為の人手を借りに行く、青の欠片のことも知り合いに相談したいしな」
「行くなら村の復旧を手伝ってから行こうかと思ってたんだけど、手伝いを頼みに行くなら、うん、資金もだいぶ貯まったしそろそろ良い頃合いだね」
「じゃあ明日にでも出発だ、あと心剣の欠片だけど、ユウヤが持ってろ、どんな効果がでるか分かんねぇが保険とでも思っておけ」
「分かった、じゃあ出発前にどんな効果が出るか確かめておくよ」
心剣の欠片を受け取った。無くさないようにしないと。
(・・・・・・・・)
あれ?何か聞こえた?
「何が起こるか分かりませんし、僕も付き合いますよ」
「それじゃあ昼過ぎに森へ行こう、それまでは復旧の手伝いってとこだね」
気のせいかな?でも盗賊の時のことも有るし注意しとこう。
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森の中の少し開けた場所、僕は心剣の欠片を手に立っている。
アキラは少し離れて何か有れば直ぐに対応出来るようにこちらを見守ってくれている。
「・・・・・・どうやって使うの?」
しまった、使い方が分からないと試し要が無い。
「適当で良いと、リジルさんが言ってましたよ。試しに心の中で心剣の欠片を使うとでも言ってみてください」
ん、アキラありがとう、それじゃあ試しに・・・
「(心剣の欠片を使う)」
おわっ!欠片が光りだした。
『む、何者だ?』
「!」
あ、頭の中に声が響いた。なんだ!どうなってる?
驚いてる間も欠片は光り続けてる、これは欠片の効果か?
『お主は誰だと聞いているんだが・・・』
「え、っと、僕は九薙 悠夜エルリオールとは別の世界の人間」
『悠夜か。しかし、エルリオールとは別の世界と言われてもな、それはどこだ?』
「質問するのはいいけど、君は名乗らないの?」
『・・・・・・は、ははは、そうだな質問の前にこちらも名のるべきだな
しかし困ったな、我には明確な名が無いのだ・・・そうだな・・・では、
人間たちが我を呼ぶときの名を名乗ろう、我は青龍、四神の一角だ』
・・・青龍?四神とか言われたらアレだよね、漫画とかゲームでよく使われるやつだよね・・・?
あれって実在するの?
『で、さっきの質問だ、エルリオールってどこだ?』
「ええっと、青龍は地球の四神だよね?エルリオールは地球とは別の世界だよ」
『ふむ、では我が先程から抗っている何かに引き寄せられる感覚はエルリオールに召喚されようとしているからか?』
あ、欠片の効果、僕の場合青龍の召喚になるんだなぁ・・・神と名の付く存在の召喚って、心剣・・・どれだけ規格外なんだ?
「ごめん、たぶんそれ僕のせいだ、あるアイテムをどんな効果が出るか試してみたんだ、おそらく帰せると思うから一旦こっちにきてくれない?」
『ふむ、まぁいいだろう』
光り続けていた欠片の光が一際大きくなる、光が収まった後僕の前に青い龍がいた。
あれ?思ったより大きくないな、僕の身長の倍ってところかな。
青龍曰くどんな所に出るか分からなかったので出来るだけ小さくなって出てきたそうだ。
『ここがエルリオールか?』
「ごめんね、かってに呼び出したりして」
『帰れるなら構わん、ところで悠夜、なぜ我を呼び出した?』
「いろいろ事情は有るんだけどね・・・」
迷惑をかけてしまったし、僕の現状を青龍に話す事にした。
青龍に敵意が無い為アキラも近くに来て警戒を解いている。
『お主も地球の住人なのか?なら我が帰るときに付いて来れば帰れるのではないか?』
「ユウヤさんのいた地球と青龍さんのいた地球が同じ地球とは限らないんですよ」
「うん、僕の居たとこでは青龍のことは作り話や伝承の中にしか出てこないから」
『ふむ、そうか』
さて、あんまり長居させても悪いし青龍を帰そうか。
「それじゃ帰すよ」
『うむ、頼む』
えっと、たぶん使うときと同じ要領でやればいいよな。
「それじゃあ(青龍送還)」
青龍の送還を願うと心剣の欠片が光り出して青龍の姿が次第に薄れていく。
『悠夜、それじゃな』
「うん、ばいばい」
『・・・まぁ、あれだ、何か有ったら我を呼び出せ、お主の力になってやろう』
「・・・いいの?」
『構わん、どうせ暇を持て余してるだけだしな』
「ありがとう」
『おう、またな悠夜』
「うん、またね青龍」
青龍が完全に消えて欠片の光も消えいつも通りの森に戻った。
「ユウヤさん、すごく強力な神獣を味方に出来たみたいですね、保険どころか切り札になりますよ」
「そうだね、あまり迷惑もかけたくないけどいざって時に頼らせてもらうよ」
さて、村に戻って明日の準備をしなきゃね。