八章3話 合成魔人戦1
「マジかよ・・・」
マリアたちを見送り、魔物の死臭漂う中居眠りしていたオレは、生きた魔物の気配に目を覚ます。
わずかに回復した身体に鞭打ち無理矢理立ち上がる、傷こそ負っていないが立っているだけでまた倒れそうなぐらいキツイ。
まぁ、遺跡の中に入ろうとする魔物たちを前にじっとしている訳にもいかないんだけどな・・・あいつらの邪魔をさせるわけにはいかない・・・
「行かせねぇ!
我剣は炎の刃
炎属性攻撃付加!」
少ない魔力を剣に付加し、休ませろと訴える体を無理矢理動かし目に付く魔物から斬り伏せていく。
なんとか遺跡の入り口に陣取り魔物が中に入るのは防ぐことが出来たと思う、でも、もう限界だな・・・
うなり声を上げ襲い掛かってくる魔物のことは認識できている、でも身体が動かねぇ、マジでやべぇ。
「「光闇混合、二重砲!」」
このまま殺られると思っている俺の前を白と黒の閃光が通り過ぎて行った。
今の閃光で魔物は綺麗に消されていた。
オレは助かったのか?
「この状況って、今君は味方なのか?」
こいつ・・・
言葉を返したいが、はは、ちょっと無理だ、いよいよ限界だな・・・
「だいぶ無理したみたいだな、ゆっくり休んでて」
へっ、無理したってもう動けねぇよ。
「2人ともここの守り任せるよ」
「・・・うん、任せて」
「はぁ~、一回の召喚でどれだけ扱き使うのよ、まぁ仕方ないか・・・」
「ごめんね、じゃあ任せるよ」
「はいはい、良いからさっさと行って、さっさと終わらせて来なさい」
「・・・頑張って」
「あぁ、行ってくる」
会話を聞いてる間はなんとか立っていたけど限界だ、ったく、しまらねぇな・・・
あいつが遺跡に入って行った後オレは今度こそぶっ倒れた。
____________________________________________________________________
順調だった、マリアとローラが2人掛かりで不完全な斬空の心剣を制御して無の空間への扉を開く。
それからさほど時を待たずに悠久氷壁の封印が解ける、俺とスノウ、アキラが全力で攻撃を仕掛ける。
「「凍える冷気は精霊の青」」
俺たちの攻撃は当然二重詠唱、2人の息が合わなければうまく発動しないが、その分威力は増す。
「「凍てつく刃は大地を奔る
邪魔するモノは全て氷れ 『氷晶覇』!」」
「フハハハ、ハァ!?ごぷぁ!!」
俺の剣から放つ無数の氷の刃が、悠久氷壁の封印が解け砕けた氷を巻き込みながら、解放されたばかりの合成魔人に襲い掛かる。合成魔人を中心として氷の華が咲いた。
「「いきます!」」
アキラとレニィが続く。
「汝、形無き赤と碧
闇をも焦がす焦熱の烈風
焔よ渦巻き飲み込め」
「白き奇跡の力
その輝きは断罪の剣
光よ、集いて撃ち貫け・・・」
「『フレイムサイクロン』」
「『セイクリットブレイド』」
アキラの放った炎が氷ごと合成間人を焼く、少し遅れ光の剣が合成魔人めがけ降り注ぐ。
「く!貴様ら!がぁぁぁぁ!!」
俺たちの存在に気付いた合成魔人に聖騎士たちの魔法が襲い掛かる。
「ぶっ飛べ!」
タイミングを見て合成魔人を無の空間の方へ蹴り飛ばす、これで無の空間まで下がってくれれば助かるんだが、そううまくいく訳ないか・・・攻撃を続ける!
「赤き弾丸を装填
我が従えしは炎の魔弾
撃ち出すは烈火の六撃 『フレイムバレット・Ⅵ』」
アキラの放つ炎の弾丸は1発1発が合成魔人を少しずつ後退させる。
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
どういう構成か分からないが、アキラがすぐさま同じ魔法を放つ。
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
「再装填 『フレイムバレット・Ⅵ』」
容赦ねぇな、他の者もアキラに続き合成魔人に攻撃を続ける、だが問題が有る、奴の回復力だ、前の時もそれで、完全な心剣が有るにもかかわらず倒すことは叶わず、封印するだけで終わったんだ・・・
今回もその回復力は健在のようだな、俺たちは絶え間なく攻撃を続けるが、すでに最初の頃与えたダメージは回復しているようだ。
その上、合成間人も俺たちの狙いに気付いたか?先程から攻撃の規模は変えてないのに合成魔人の後退は止まっている。
「大きいのいきます!
白き輝きの旋律、聖なる光は奇跡の音色
我は其の真名を詠う、始まりの神の一柱
願わくばその光、我等に恵みたまえ
汝が紡ぎ謳うは裁きの音色 『セイントリュミエール』」
それに気付いたのか?レニィが神聖魔法の中でも高位の威力の高いものを撃つ。
聖なる光が合成魔人を包み込み焼く、最高位の浄化の光だが合成魔人を浄化するまでには至らない。
「レニィさん!僕も負けていられませんね。
我魂の欠片が冥界の門を打ち開く
星に眠りし命の紅、輝き燃ゆる煉獄の蒼
地の底より来たる穢れなき深炎をもって
全てを焼き尽くし、無と還せ 『アルティメットフレア』」
レニィによって神聖な光で焼かれた合成間人をアキラの炎が更に焼く、炎が妙に禍々しいけど、その威力はレニィの放った高位の神聖魔法よりも上だった。
「これは、いけるか!?」
一瞬気を緩めたのが不味かった。
「そこだ・・・」
合成魔人が炎に包まれながら、数本の先端に刃の付いた触手をマリアとローラに振るう。
「く!しまった!!」
俺たちの誰も間に合わない、当然無の空間を開き続けている2人にも触手を防ぐ手は無い。
―ヒュッ―
その時俺の隣を風が駆け抜けた。
「遅延の盾!!」
風と共に戦場を駆け抜け、触手とマリアたちの間に立った者の展開した見えない盾?によって触手は動きを止めた。いや、触手がその場に固定された!?いやいや、それよりも!!
「なんでお前がここに居るんだよ・・・」
「当然!奴を倒すためだよ!そのための力はここに有る!さっさと終わらせよう!」
この戦場に立ち頼もしい笑みを浮かべるそいつ、ユウヤは手に黄色い輝きを放つ欠片を持っていた。