八章1話 世界を越える
「まぁ、こんなもんか」
兄さんはそう言って折れた刀を放り投げる、道場の床に刺さり花梨さんに殴られていた。
「んじゃ、早速試してみるか?ほれ」
無造作に心剣の欠片を投げ渡してくる、これの能力次第で僕は向うへ戻れる・・・
と、その前に・・・
「なんで、兄さんがこれを持ってるの?」
聞いておかなくちゃいけないことが有る、だいたい予想は付くけど・・・
「俺が一年前、行方不明になってた時にいたのがエルリオールだからな
一応、向うじゃ斬空の英雄ってことになってるな」
欠片を持っていた時点で、なんとなくそんな気はしていた。
「お前も向うでリジルに会ったんだな・・・なんかなつかしいなぁ」
過去に思いをはせる兄を置いておいて欠片の効果を試すことにする。
向うに戻っても、全部終わった後じゃ意味が無いんだ、兄さんに付き合ってる暇は無い。
青の欠片の時と同じように欠片の使用をイメージする、青龍の時と違い欠片使用時の効果が頭の中に流れ込んでくる。
黄の欠片
使用者・・・九薙 悠夜
効果・・・一定空間の遅延化(指定した空間の時間の流れを限りなく0にする)
駄目だ、向うに戻れるような能力じゃない・・・
「駄目だったか、まぁ仕方ねぇだろ?向うにはリジルも居るんだ、何とかするだろ?お前はこっちで平和に暮らせ」
無理だ、・エルリオール(むこう)で一緒に戦った仲間・・・それを忘れて、僕だけ安全な所に居る・・・そんなの・・・そんなの僕の心が耐えられない!
それにこの欠片が有れば斬空の心剣が本来の力を取り戻すことが出来る、それは合成魔人をを封印する助けになるはずなんだ・・
どうにか、どうにかならないのか!?
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
『精霊との契約ですか・・・リジルさんとスノウちゃんみたいな?』
『あたしとリジル様の契約とは種類が違います。
あたしたちのは精霊と騎士の誓約、二人がやろうとしてるのは精霊召喚の契約ですね。
今回は仮ですから、2人を|召喚できる(呼べる)のは一度だけですけどね』
精霊召喚の契約・・・
光と闇、2人の精霊はあの時なんと言っていた?
『ユウヤ、契約・・・』
『は?』
『あくまでも仮よ、仮契約、ヤミがやってみたいって言うんだから仕方なくだからね!』
召霊の森、ここの精霊の女王が心剣の欠片の封印を解いている間、修行中に2人は突然やって来た。
『は?何?』
『ユウヤ・・・』
『いいから!つべこべ言わず契約しなさい!』
2人が同時に何か呟く、直後に両頬に唇の感触を感じた。
『な!!』
『仮契約・・・完了・・・///』
ヤミ、何か嬉しそうにしている・・・逆にレイは今にも怒りで爆発しそうだ。
『一回しか説明しないわよ・・・今のは精霊召喚の仮契約、貴方が何処にいてもその場と精霊界との門を繋ぎ・・・』
『ユウヤのもとに駆けつけ力になる・・・
召喚の言葉は・・・・・・』
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
仮契約、召喚の門を繋ぐ・・・
それと、僕が黄の欠片を使った時の効果・・・
行ける?
「ん?どうした?駄目だったならか帰らねぇか?」
「兄さんちょっと黙ってて」
どうにか向うに戻れそうなんだ、兄さんには悪いけど黙っててもらおう。
こうして意識してみると、2人との繋がりが僕の中に有るのが分かる、ヤミに教わった召喚の呪文を紡ぐ・・・精霊界との門が開き眩い光と黒い影が渦巻く、それらが収まった後、レイとヤミの2人の精霊が立っていた。
「ユウヤ、敵は?・・・・・・」
「何?用も無いのに呼んだの?
仮契約だから一回しか召喚できないって言ったわよね?ってここ何処!?」
「あ~、とりあえず落ち着いて、すぐに帰すから・・・
兄さん、行けそうだから行って来るよ」
僕がいきなり2人の(見た目)女の子を呼び出したことに驚く花梨さんと違い、落ち着いている兄さんに告げる。
「あぁ、なんとかなったのか、まぁ、それじゃぁ行って来い」
「うん」
「まぁ、なんだ、死ぬなよ・・・」
「うん、僕だってこれ以上の犠牲はごめんだ、僕だけじゃなく、誰も死なせない、
2人共、行こうか・・・」
「はい・・・」
「ん~イマイチ状況が理解できてないけど、まぁいいわ」
レイとヤミを送り帰す。その行程で生まれる門に黄の欠片を使い門を固定する。
「悠夜、俺は向こうへ行って創剣の力に目覚めた・・・それは世界を越えた時にエルリオールの神によって自動で与えられた力だ、お前にはどんな力が与えられたんだろうな?」
兄さんの言葉を背に2人と共に門をくぐる、
次に僕が立っていたのはエルリオールの召霊の森の精霊界。
戻ってきた・・・・・・
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俺たちの前で召喚の門が消える、悠夜は無事に向うに付いただろうか?
俺がエルリオールで残したことの尻拭いをさせることになっちまったな・・・
創剣の時に俺が心剣の型を刀にイメージしていれば合成魔人を倒せたかもしれねぇんだけどな・・・
「良かったの?」
悠夜の消えた空間を見つめ考え事をしていた俺に花梨が声をかけてくる。
悠夜を行かせて良かったのか?悠夜じゃなく俺が行った方が良かったんじゃないか?
そんな考えも浮かんでくるけど・・・俺はもう悠夜に託した。
「あぁ、後は悠夜に任せる、俺の英雄譚は一年前に終わってるからな・・・」
「あたしには何のことかサッパリ分からないんだけど」
「気にすんな」
「・・・・・・・・・はぁ~、まったく・・・」
ため息をつく花梨のことは気にしないでおこう。
悠夜、後は任せた・・・
向うに大事なものが出来たなら
無理にこっちに帰ってくる必要は無いが、死ぬんじゃねぇぞ・・・
・・・・・・・・・展開早いかな?
はぁ、暑い、更新速度が落ちる・・・