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六章2話 悲劇の預言者

目の前に横たわる死体、僕が斬ったホーンドックの物だ。


意思を無くした瞳だが、僕を責めているように感じる。


他にも道中や乱戦の中斬り伏せた盗賊や魔物たち、どれも僕のことを攻め立てている・・・でも



「そんなことは分かってる・・・平和な場所で不住無く過ごして来たけど命の重みはどこに居ても代わらない!僕はもう覚悟を決めた!奪った命は全部背負って生きていく!」



僕の声に反応してか?死体が次々と立ち上がり一箇所に集まる。


不気味な音を響かせながら死体たちが融合して1つの巨人になる、身体の至る所に人や魔物の顔が有り、見ていて気持ち悪い。


「君たちは許さないって言うのか?

いいよ、どんな理由があっても僕が殺したことに代わりは無い、許されようとも思ってない!」


刀を抜き対峙する、もう一度死ね!













―生まれたみたいだぞ、悲劇の・・・―


―あぁ、大爺の夢見の通りの時間だ・・・―




「なんだ?これ?」


巨人を倒しても元の場所に戻らない、これが罠であるのは分かってるんだけど・・・どうやれば抜けられるんだろう?


暗闇の中で聞き覚えの無い声だけが響く、何の話をしているのかさっぱり分からない、僕との関係の無い物なのは間違い無さそうだ。



レニィの姉はなんて言ってた?



『元々使うはずの罠を発動させる』



違う罠にはまった?さっきじゃない別の罠?



『負の意思に囲まれてきた貴女には簡単には抜けられないわよ』



さっきのは命を奪う事への僕の後ろめたさ、これは過去の苦しみ?


そういったトラウマみたいなのを再現しているのか?でもこの声って・・・


やっぱり僕には聞き覚えが無い、だとすれば誰のトラウマだ?



―・・・ったく、余計な者を生んでくれた。―


―避けられない悲劇など予言されても・・・―



悲劇?予言?ってレニィの姉が言ってたな・・・


と言うことはこれはレニィのトラウマ?


でもなんで僕がレニィのトラウマを見てるんだ?


自分のは抜けたと思ったんだけど、次はレニィのに巻き込まれたのか?



「私は!・・・・・・私は!」



レニィの声!近くに居るのか!?

暗闇の中を声のする方へ向かう、しばらく進むと耳を塞ぎ蹲るレニィを見つけた。



――――――――――――――――――――


幼い頃は自分の夢見(予知)が皆に望まれていないことを理解していませんでした。


初めての夢見は一緒に遊んでいた子が軽い怪我をすると言うもの・・・その時私は何も考えずその子に注意するように言いました。


私の不幸の予知は通常外れることはありません。その子も予知の通り怪我をしました。


何度かそんなことがあり、次第に私と遊ぶ子の数が減っていきました。


―あのこと遊んじゃいけません!―


子の親達がそんなことを言っているのを聞いたことも在ります。


自分のことを悲劇の預言者だと理解した頃には友人と呼べる存在は一人も居ませんでした。


積極的に人に関わろうとしなかったと言うのもあります。

親しい人の不幸を見るより他人の不幸を見ているほうが気が楽でしたから・・・


人との関わりを出来るだけなくして予知の内容も誰にも言わずに数年間過ごしました。


その間も私に聞こえる聞こえないに関係なく、大人たちや幼い頃遊んだことも有る者たちの心無い言葉は、私の胸に突き刺さり続けました。


私の両親や兄と姉に対する風当たりもあまり良い物ではなかったようです。

それでも私を気遣い優しく接してくれた家族のおかげで私は捻くれずに済んだのだと思います。


でも・・・



―レニィ行って来るよ―


これは、一年位前の・・・兄の死ぬ夢をみてしまった時の・・・


だめ、行かないでください!


―ごめんね、君の予知を覆すことが出来なくて、世界は僕の命を必要としている―


―まだ見ぬ友人と世界のために、僕自身の死の未来を変える訳にはいかないんだ―


夢見の通り兄は帰ってきませんでした。


最後の会話の時の兄の申し訳なさそうな顔が、今も頭から離れません。




――――――――――――――――――――


僕は今レニィの隣で彼女の過去?を見ている、呼びかけても此方に気付かないのでやれることが無いんだ。


「にしても・・・悪いのは運か?」


悲劇の預言者だか知らないけど、レニィがこんな扱いを受けことってあるのか?

何か人為的なものを感じるんだけど・・・まぁ、もう起こってることをどうこう出来る訳じゃないから言っても仕方ないか・・・


最近レニィと一緒に居ることが多いけど、彼女の笑顔って見たこと無くないか?


「心から笑えない・・・?」


なんだろう?この気持ち。


僕は今、彼女の心から笑った顔が見たくて仕方ない。


彼女を守りたい。


なら、横でぼ~っとしてる場合じゃないよな。


「レニィ、レニィ!」


ひたすら呼びかける、いっそのこと殴るか?いやいや、女の子にそれは不味い、とにかく肩を揺さぶりながらひたすら呼びかけることにする。


時間稼ぎの罠みたいだから、レニィの意識がこっちに向けばなんとかなるだろう?



――――――――――――――――――――


兄は帰って来ませんでした。


それからしばらくの間私の夢見はお休み状態・・・久々に来たと思ったら救世の予知。


悲劇の預言者である私が救世の予知、冗談かと思いました。でも、やっぱり悲劇の予言で間違い無かったみたいです。


異界の救世主、その命を代価に世界を救う・・・


知らない世界に来て命を落とす、救世主様にとっては不幸に違いありません。


兄の死から色々考えてました。悲劇を止めることはできないか?


私は動き出しました。


救世主様を助ける為に・・・いえ、私自身が悲劇の預言者で無くなる為に。



「・・・ィ!レニィ!」


暗い空間に光が差し込みます。


聞こえてくる声、私を呼ぶ声は先程から絶えず響く村人たちの声をかき消してくれます。


この声の主を思い浮かべる、二度目に彼を見たとき驚きと期待でいっぱいになった。


なにしろ、私の夢見が始めて外れたのだから・・・


本来、女性であるはずの救世主の立ち位置に彼が居た。


まだまだ諦めるのは早過ぎる、こんな所で時間を使っている場合じゃない!


姉さんを止めないと!



――――――――――――――――――――


「・・・ユウヤさん?」


レニィがゆっくりと此方に意識を向ける、同時に僕たちの周りで黒い影が立ち上がる。


「気が付いた?」


「やっぱりユウヤさんは私の・・・」


「?とにかくこの罠を抜け出そうか?」


レニィを守れる位置に立ち刀を抜く、僕の時と同じ、最後は物理的に動けなくするつもりなんだろうな、いくつもの影が僕たちを取り囲んでいる。


「ちゃっちゃと片付けるか!」


「はい!」







ん?レニィ今ちょっと笑った?


色々と無理矢理な・・・

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