五章3話 一休み(してない奴も居る)
心剣の欠片は女王様が封印しています。
封印を解く間少し時間が出来ました。
リジル様はいつの間にかどこかへ行ってしまって、何をしているのか分かりません。
ユウヤさんはさっき戦ったばかりなのにまだ修練するようです。レニィさんもそれに付いています。
あたしは久しぶりに会う親友とのんびりお茶しています。
「・・・ユウヤ、どんな人?」
おや?ヤミちゃんはユウヤさんに興味が有るのかな?あたしがリジル様に付いて行って人間嫌いに磨きがかかっていたレイちゃんとヤミちゃんだけど、これは良い傾向なんじゃないでしょうか?
「何よヤミ、人間なんかどうでもいいじゃない」
レイちゃんは相変わらずみたいですね。
「ユウヤさんですか?ん~どういう人なんでしょうね~、優しいって言うのは間違いないですけど」
正直それほどよく知ってる訳でもないんですよね、あまり姿を見せずにリジル様の傍にずっと居る私より、出会ったのは後でもよくユウヤさんと一緒に居るレニィさんの方が、ユウヤさんのことを知っているんじゃないでしょうか?そう言うと・・・
「あぁ、傷を治しに来た奴ね」
「・・・付き合ってる?」
「ヤミちゃん、大丈夫ですよ、まだそんな感じじゃないですから」
「まだねぇ?」
あ・・・ヤミちゃんから少し落ち込んだような気配が。
「もう、人間なんかどうでもいいでしょ!!」
「・・・ユウヤ、良い人」
「「・・・・・・・・・」」
あらら、睨み合い始めちゃった。
「だったら、2人もあたしみたいに契約したらどうですか?」
「嫌よ!人間と契約するなんて」
「・・・・・・・・・」
レイちゃんは全否定、ヤミちゃんは興味は有るけど怖いって感じかな?
「試しに仮契約ならどうですか?」
「それでも嫌!!」
「・・・・・・わたしは・・・してみたい」
よし、ヤミちゃんは落ちた。だったらヤミちゃんに甘いレイちゃんも・・・落ちる。
「レイちゃん?」
「む~仕方ないわね、仮契約だけよ!それ以上は嫌だからね!」
「はいはい、じゃあユウヤさんのとこ行こっか」
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試練が終わり心剣の欠片を取りにいく女王に頼みたいことがあるから、俺も女王と共に欠片を取りに向かっている所だ。
「で、頼みたいこととは?」
俺の少し先を歩く女王が切り出してきた。
「あぁ、空竜の神殿の様子って分からねぇか?後空竜の爺がどうしてるかも」
「あら?リジルは知らなかった?」
ん?なにをだ?
「空竜様は少し前に亡くなられたわよ」
「え!?ちょっと待て誰に殺られた!?」
まさか、あの爺が殺られるなんて、それで盗賊が心剣の欠片を持ってたのか?
でも盗賊ごときにあの爺を殺れるとも思えねぇ、殺ったのは別の奴か?
「誰でもないわ、年よ」
「は?・・・・・・・・・寿命?」
「そう、流石の空竜様も年には勝てないわ」
寿命ねぇ・・・ったく、心剣の欠片は爺の死んだ後の神殿から盗って来たってとこか・・・
いや、いくら年だとは言え、あの爺が預かった物をそのままにして逝くか?どうもおかしいな・・・
どうなってやがる?
「そうか・・・じゃあ俺の用事は終わりだ、欠片の方よろしく頼む」
「えぇ、明日の朝には渡せるからそれまで休んでいて」
聞きたいことは聞けたので女王とはここで別れる、さて疑問は残るが・・・今は休むか。
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すぐに修行中のユウヤさんと、彼を見守るレニィさんを見つけることができました。
「レイちゃん、ヤミちゃん頑張ってきて下さい」
二人をユウヤさんの方へ送り出します。あたしはレニィさんの相手をしましょうか・・・
「スノウちゃんたちも来たんですね?」
「はい、ユウヤさんに2人と契約してもらおうかと思ったんです。
ユウヤさんの切り札も多くて困ることも無いですから」
「精霊との契約ですか・・・リジルさんとスノウちゃんみたいな?」
「あたしとリジル様の契約とは種類が違います。
あたしたちのは精霊と騎士の誓約、二人がやろうとしてるのは精霊召喚の契約ですね。
今回は仮ですから、2人を召喚できるのは一度だけですけどね」
話してる間に2人がユウヤさんと契約を始めたようです。
何か困ってるユウヤさんに、キレ気味のレイちゃんと、いつもと代わらず無表情な(でも親しい者なら少し照れているのが分かる)ヤミちゃんが近付いていきます。
「「な!!」」
ユウヤさんとレニィさんの口から同時に驚きの声が漏れました。意味は微妙に違いそうですけど・・・
レイちゃんとヤミちゃんがユウヤさんを左右から挟み、同時に契約の言葉を囁きながら頬にキスをします。
召喚の仮契約ですからこれで十分ですね・・・あたしとリジル様のときは・・・キャ♪
と、妄想は置いといて、レニィさんのこの反応を見るとやっぱりユウヤさんに脈有りでしょうか?
ヤミちゃん頑張ってください、と胸の中で応援しておきます。