三章4話 風獣の丘(決戦)
「神風」
景色が加速する、イメージしたのは風になった自分、シルクの疾風の様に小回りは効かないけどそこは要検討だ、直線の移動速度なら僕の方が速い。今の状況なら特攻なのかも知れないけど、予想外の速度で突っ込まれる方は堪らない筈だ、今は特攻で良い。
だから今はまだ神風、でもいつか神速の風になる・・・
「来ましたね!疾風!」
すでに何度も僕の神風を視ているシルクはすぐに対応してくる。
「双薙!双薙!」
双薙を続けて二回、もうちょっとで次にいけそうな気がする。
「旋風槍!」
技と技をぶつけ合う、武器の相性から力負けするのは仕方ない、手数で勝とう。
「「やあぁぁ!!」」
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「ホント、ユウヤさんの剣は不思議ですね」
今日はアキラさんもユウヤさんの修行を見ています。隣に居るので修行の風景を眺めながら話しかけます。
「そうですね、魔力も使ってないのに風の力を自身に付加していますね、でも話を聞くには風の属性限定みたいですよ、最初にそういう物だと思い込んでしまったから他の概念が介入できないみたいです」
「そう聞くと特異能力者なんじゃないかって思えますね」
「取り合えず九薙流って特異能力だって思っておけばいいんじゃないですか?」
そうしておきましょう、私の夢見ではそんなことまでは分かりません・・・まぁ、ユウヤさんのことは全然分からないんですけどね・・・ホントどうしましょう?
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『ほう、やるか?』
「うん、お願いするよ」
1日ゆっくり休んで体調も万全にした、シルクと張り合えるくらいの速度も身に着けた、やっとビャクガから一本取れる最低条件が(推測だけど)整った。後はどうやってビャクガの意表をつくか、かな?
「いくぞ!神風!」
今回だって勝てるとしてもギリギリだろう、様子見なんて言ってられない、最初から全開で行く!
『いいぞ、ずいぶん成長しているようだな!』
「くっ!余裕ぶってられるのも今のうちだ!神風!」
前にマリアさんの試験の時シルクにやられた方法で、姿勢を低くしてビャクガの視界から急に消えたように錯覚させる、後ろに回りこんで・・・
「双薙!神風!」
双薙を避けられてもすぐに加速する、同じことを繰り返し避けられ続けるが時たま当たりそうになって体勢を崩す、その時が狙い目・・・ビャクガも手加減してるみたいだし畳み掛ける!
「伍薙!」
奥義に至る過程、双薙の次の工程、伍薙・・・剣戟は3度、だが剣戟と剣戟の間に斬撃が挿まれる、計5度の連撃。
1撃目避けられる、同時に迫る2撃目も同じ、ここまでは双薙を回避されたのと同じだ。3撃目元々体勢を崩しているところへの追撃、4撃目もなんとか避けられてしまう、5撃目で決める!
『ぐお!やば!ふぅ~危ない危ない』
「・・・全部避けたからって油断したら駄目だよ」
神風で加速した僕はビャクガの背後に居た、体勢を崩したところに伍薙の連撃、避けるのでいっぱいで僕の動きから気がそれたようだ、ビャクガの頭にチョップを入れる。1本取った。
『・・・・・・』
「師匠、やられちゃいましたね」
「まぁ、油断しすぎだ」
「ユウヤさんやりましたね」
「勝ちましたか、お疲れ様です」
皆寄って来た。
何はともあれこれで欠片2つ目、1つはマリアさんが持ってるから残るは1つ・・・
『まぁ、よくやったな、欠片は渡してやる。すぐに帰るって言うなら持って来るが今晩くらいゆっくりしていけ』
「あぁ、かまわないよな?」
リジルが応える、誰も異存はないしこの日はもう1日休んでいくことになった。
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『さて、こんなもんで良かったか?』
巨大岩の上中をくり抜いて住居にしている岩の上に俺とビャクガが居る、雲1つ無い星空に今日の2つの月は青と黄に輝いている、まぁ、酒の肴には中々だな、まだ酒のんでねぇけど。
「伍薙まで行ったから上出来だろう、本来九薙の剣術に無い技も身に付いたみたいだしな」
『まぁオレは弟子と試合させてただけだけどな』
「そろそろ戻るか、下でなんか宴会が始まってるぞ」
ユウヤの勝利祝いと言って、レニィとシルクがなんか張り合って料理を作りすぎてやがった。ビャクガにも食べさせねぇと今晩だけじゃ消費しきれねぇ量だ。
『肉が食いたい』
「野菜を食え、野菜を・・・まぁ、スノウが調理に加わらなかったからなんとかなる量だとは思うがとにかく行くぞ」
『ふぅ、・・・後で酒に付き合えよ』
「へいへい」
ユウヤの方もなんとか形になったか、欠片も残り1つだしユウヤの妹の捜索もこれぐらい順調だと楽なんだけどなぁ・・・どこにいるやら・・・