二章4話 マリアさんの試験
「・・・・・・ナンパか?しかも成功してるって」
「違うからね!」
レニィを加えて待ち合わせ場所でリジルを待っていたんだけど、やって来てすぐそれか!
「冗談だ、それよりその娘どうしたんだ?」
「えっと、私から説明させてもらいます。・・・・・・」
説明中、説明とか苦手なので助かる。
「夢見の・・・そうか、まぁ、いいんじゃねぇ?」
やけにあっさりと認めた、話が早くていいか・・・
「今日は微妙に疲れた、後はこれからのことは明日にして休もうぜ。ちゃんと宿は見つけたんだろうな?」
「大丈夫ですよ、では、行きましょうか」
そして翌日、久しぶりにベッドで目を覚ました。アクアリスに来る道中、野宿だったので昨日は良く眠れた。
食堂に顔を出すとリジルとレニィが朝食を食べていた。
「・・・って事は無いんだな?」
「はい、大丈夫です」
「おはよう、2人とも。アキラはまだ?」
「まだねてんだろ、寝かせといてやれ、今日はユウヤさえ居ればいいからな」
「ん?今日の予定?」
「あぁ、今日は昨日俺が会いに行ってたやつのとこに一緒に行くぞ。お前に欠片を預けても大丈夫か直接会って判断するとさ。まぁ、昼くらいに行くからそれまでは暫くゆっくりしようぜ」
「うん、分かった」
朝食が終わり昼までレニィといろいろ話して時間を潰し、昼食後リジルとレニィと共に教会へやって来た。
レニィは出来るだけ僕と共に行動する気らしい、アキラは・・・
「教会ですか・・・僕は遠慮しておきます」
って言って留守番している。
教会内に入りリジルの案内で教会の内庭的なとこにやって来た。
「いらしゃい、よく来てくれたわね」
神官っぽい服に身を包んだ綺麗な人が僕等を迎えてくれた。彼女が目的の人物、心剣の欠片を預かってる人らしい。
「どうも、えっと、僕が九薙 悠夜です」
「えぇ、話は聞いてるわ、私はマリア グラース、心剣の欠片の一つを預かってるわ。ところで?そっちの娘は?」
マリアさんがレニィに目を向けてリジルに聞いている
「レニィ ウォーティア、・・・夢見の民だ、まぁ、これから斬空の心剣を復活させようって言うんだ、夢見が付いてもおかしくねぇだろ」
「レニィ ウォーティア、そう、よろしくね。さて、それじゃあさっそく試験を始めましょうか」
「へ?試験?」
リジル!聞いてないぞ!試験って何するんだ?僕こっちの字はほとんど読めないよ。
「安心しろ、俺も今始めて聞いた」
「それの何を安心したらいいの!?」
「ふふ、大丈夫よ、ちょっとこっちの用意した人と試合って貰うだけだから。心剣の欠片を渡すんだから、最低限欠片を守れるくらいの力は見せて欲しいな、リジルも居るし大丈夫だとは思うけね」
なんだ、戦う試験か、それなら大丈夫かな。
ふとレニィを襲っていた男が頭を過ぎった、あいつと1対1なら不味いかもしれないけど・・・
などと考えていたら、マリアさんが誰かを呼んできた。
「私情で教会の騎士を動かすわけにも行かないから、冒険者の方に来てもらったわ」
マリアさんの連れてきた人物を見る、女の子だ、僕より年下っぽいな、この子と戦うのか?
武器は大剣かな、柄が槍みたいな長さだけどどっちにしろ刀との相性は良くないかな、まぁ、小回りはきかなそうだからなんとかなるかな?
「シルク ソードです、よろしくお願いします」
「あ、うん、僕は九薙 悠夜、よろしく」
「刀ですか、珍しいですね。アタシの大戦槍も使う人は少ないほうですけど・・・」
「2人とも?そろそろいいかな?始めるわよ」
マリアさんの声で僕たちはそれぞれの武器を手に向かい合った。
「ここは教会だし怪我してもすぐに治してあげるからね~、それじゃ~始め!」
先手必勝、刀の武器は早さだと思ってる。シルクに速攻を仕掛けるけどシルクも僕と同時に動き出していた。速い、大戦槍だったか?大型の武器を持ってるとは思えない速さだ、刀の僕とそれほど変わらない。
武器の相性での有利性は無いと思っておこう。
「いきます!」
シルクの振るう槍を避ける、攻撃速度も速いうえに、僕は避けるか受け流さないといけないけ、どシルクは槍を盾の様にして僕の攻撃を防ぐ。受けられるだけでも刀がやられそうで怖い。
やはり早くけりをつけたほうが良さそうだ。
「双薙!」
「っつ!旋風槍!」
双薙も防がれ、その後シルクの起こした風に吹き飛ばされる。速い上になんかしらの能力を持っているみたいだ、普通に強いな・・・一旦距離が開いたので仕切りなおしだ
「2人とも速いです・・・私じゃ追いきれません」
「あの娘、特異能力者か?」
「えぇ、風を操るみたいね」
「あ~、ユウヤにはちょっとキツイかもな」
「別に勝たなくてもいいから、彼の力がみたいだけよ・・・」
今度は彼女の力も警戒しながら再度シルクに攻撃を仕掛ける。
「旋風槍!」
警戒しながらだったのでさっきより攻撃が遅れ先手を取られた。
「風薙!」
シルクの放つ風に風薙を(風の刃を飛ばして)ぶつけ相殺する。やれば出来るものだな
「風の刃?貴方も、特異能力者?」
「なに?特異能力者って?僕のは九薙流剣術、特異能力者と言うのじゃないよ」
「唯の剣術でアタシの風を打ち消すの?、もう少し本気になったほうが良さそうですね・・・加速します、疾風」
「くっ!」
宣言通り動きが速くなった、何とか目で追えているけど少しずつ反応が遅れる、動きが追いつかない!?
「ふっ!」
目の前で消えた?違う!いきなり姿勢を低くして視界から消えたんだ今の彼女は・・・僕の後ろ!?
「っと!」
前に飛んで背後からの攻撃を避ける、危なかった。今回はなんとか避けられたけど完全に押されてるな。今の僕じゃ正直勝てるか分からない。どうせなら、一つ試してみよう、九薙流奥義は2つそれに至る過程で派生する技はいくつか存在するけど、僕が使えるの双薙と風薙のみ、強くなる為に次の技に進もう。
シルクの旋風槍を見れたのもいいヒントになった。
再度シルクが視界から消える、今度はどこから来るか・・・
「いくぞ!九薙流、旋風!」
技は成功した。僕の周囲を剣戟から発生させた風でなぎ倒す。これなら前後左右関係ない!
「残念でした」
シルクの声が頭上から聞こえた、うえ? 直後に僕の背に何かに圧し掛かられた衝撃が来る、倒れた僕の目の前に大戦槍が突き立てられる。僕の負けだ・・・
「終わったみたいね」
「あぁ、まぁ負けちまったのはしかたねぇな。相手が悪かったな、ユウヤも結局奥の手は使わなかったみたいだしな」
「奥の手?」
「奥の手は僕の力じゃないしね、使うのはシルクに悪いよ」
シルクに起こされて二人でリジルたちの所に戻ってくる
「アタシは気にしないけど、むしろ全力でやってくれたほうが良かった」
「僕自身の力では全力だったよ」
「君の実力はだいたい分かったわ(ホントは途中からよく見えなくなったけど)、リジルも居るし心剣の欠片を渡してもいいわ」
勝負には負けたけど試験には合格のようだ。
「それじゃ、依頼は終わりですね」
「えぇ、報酬は協会の方で受け取ってくれる?」
「わかりました、じゃ、アタシはこれで・・・ユウヤさん機会があればまた」
依頼の終わったシルクはそうして去っていった。
「欠片を渡すのはいいけど、私の預かってるのは最後に渡すわ、他の欠片を全部集めたらもう一度訊ねて来てくれるかな?」
「まぁ、渡してくれるなら何時でも良いよな?」
「うん、それじゃあ他の欠片を集めたらまた」
「んじゃ今日はこれで・・・」
「待って、今日はスノウちゃんは居ないの?せっかくお菓子とか用意しといたのに・・・」
話も終わったとさっさと帰ろうとするリジルに続いて去ろうとする僕たちをマリアさんが呼び止める。
「はぁ・・・スノウ相手してやれ」
「レニィちゃんも一緒にいかが?」
「ふぇ?わ、私もですか!?」
・・・あ、マリアさんってもしかして
「リジル?」
「俺も昨日気付いたんだがな、マリアは見ての通りの奴だ、可愛いものに目が無い」
・・・シルクがさっさと帰ったのもこれが原因か?僕たちが来るまで彼女が相手をしていたんだろうし・・・
「今日はさっさと帰ろうと思ってたんだけどな・・・しゃーねぇ、今日は一日潰れたと思っとけ」
「ははは・・・」
マリアさんに可愛がられるスノウとレニィを眺め苦笑するしかなかった。
各キャラの容姿等は決めてません・・・