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はじまり
あれは蒸し暑い日だった。
汗が首もとを流れながら、家のドアを開けた。
あの日向けられたものを、私は一生忘れ無いだろう。
冷たく、怒りに狂ったあの瞳を。
「お前は、もう必要ないんだ」
そう父に告げられたことを……
「ミラお嬢様。おはようございます」
メイドのフィマの澄んだ声に起こされる。
彼女、フィスマリ・ドークは、ここ、アリクストール王国のドーク子爵家の四女だ。優しく穏やかな薄いピンクの瞳と、絹のように細いサラサラな黒髪が特徴的だ。
「六歳の誕生日おめでとうございます。今日は誕生記念パーティーに向けて、とても可愛く仕上げますよ」
「うん!ありがとーフィマ!大好きだよ!」
私がそう言うと、彼女は微笑んで、お礼を言った。
そして、準備にとりかかった。