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苦手な方はご注意ください。

乙女ゲームに転生した武力チート(♂)

作者: たろっぺ

よろしくお願いいたします。



 おっす、俺クロノ・フォン・エインズヘイル!チート転生者だ!


 名前の通り貴族の息子だよ!平民出身というか元孤児だったけど!


 というのも、二年間ほどうちの王国と隣の帝国で戦争があったのだ。で、自分は徴兵されて戦争に参加したわけだ。当時十二歳。


 いやぁ、酷い戦争だった。こっちの装備は弓矢と槍。魔法もあるけど人間の使う魔法なんてせいぜいが前世における手投げ弾レベル。いや、まあ前世普通のサラリーマンだから、昔見た富士の演習ぐらいの知識だけど。


 対して帝国側の装備ときたら。ボルトアクション式のライフルに持ち運びできる大砲。安定して飛ばせられる気球。そこから落とされる爆弾にぶっこ抜かれるこっちの配置。さらにエルフまで向こうについたから、魔法戦でも圧倒される。あいつら一人一人が歩く戦車だよ。


 だがしかし、そこはチート転生者!しかも戦闘特化型の転生特典ばかり!


 この世界の弾丸なんてかすり傷にもならないし、砲弾だって投げ返せちゃう!エルフの魔法のバリアごと脊髄引き抜いちゃうぞ☆


 うん。やばかった。もう二度とやりたくない。マジで。


 一緒に村からきた奴らは全員死んだ。遺体を持ち帰れた奴はいない。裏切り者がいるのか、それとも気球のせいか。森にうちの部隊が伏兵として潜んでいたら火をつけられて酸欠で死にかけた。


 そして、何より、敵に自分以上のチートがいた。


 俺のチートは『状態異常無効』『身体能力増強』『超直感』『超再生』『あらゆる武術において百年に一人以上の才能』の五つ。走れば放たれた矢よりも速く、拳は巨岩を容易く砕く。凡百な鋼ではこの身に傷一つつけられず、いかなる傷もたちどころに治る。


 だというのに、正面から殴り負けた。


 帝国第一騎士団騎士団長。レーゲン・ガルツ・アームストロング。


 獅子のごとき金髪と顎鬚をはやし、二メートル近いこの身ですら見上げなければいけない巨躯。その肉体は鋼すらこえ、オリハルコンすら霞むほどの『特別』であった。


 武器の一振りで土砂崩れが起き、地面が割れる。渾身の一撃ですらかすり傷をつけるのがせいぜい。走れば容易く音速を越え、武の才は千年に一人か、それ以上。


 そんなのが現地産ってマジ?こっちチート転生者ぞ?


 戦後自分を養子として引きとってくれた、エインズヘイル辺境伯から借り受けた魔剣を手に、こんな怪物と幾度となく戦う事になった。


 自分にかすり傷とはいえ血を流させた俺を気に入ったらしく、いかなる状況でも自分を優先してそのバトルアックスを向けてきた。


『貴様こそ我が宿命!お前の首を手にする事が出来たのなら、俺はそれを家宝として飾り、毎夜酒の肴とするだろう!そうすればいかな安酒も天上の美酒に違いない!』


 という、嫌すぎるラブコールを叫びながら襲い掛かってきた。怖い。


 で、その息子はこんな感じ。


『ああ、お前こそが我が運命の相手!お前の血が見たい!お前に傷つけられたい!お前を殺した時!俺は生涯最高の絶頂を味わうだろう!ハハハ!いかなる美姫を抱くよりも!お前の首を抱きたいのだ!』


 ちなみに、スペックは技量と経験以外は父親とほぼ同じ。遺伝子強すぎだろ死ね。


 そんな現地産チートに執着されながら、帝国の層が厚い事を思い知らされる。


 ネームドと呼ばれる二つ名持ちが帝国にはいる。総勢百人ぐらい。そいつらがまあ強い。経験も技量もあちらが上なせいか、二人がかりだと普通に足止めされるし、三体一だと負けかける。


 だから、俺チート転生者だよ?もう一回スペック並べようか?


 当然の様に全体的に見れば王国側が連戦連敗。後少しで王都に進軍される所まで来ていた。


 だが、そこからの大逆転で押し返す事に成功。ギリギリ和平までこぎつける事ができたのである。


 誰のおかげかって?ここにチート転生者がいるだろ?


 いや、自惚れとかではなくマジなのだ。というか、自分がいなかったらアームストロング親子とネームドどもが暴れて終わっている。


 状況としては、敗走に敗走を重ねる王国軍。だが、偶然入手した情報から敵の元帥が最前線近くに布陣している事が判明。


 精鋭部隊という名の特攻部隊で元帥を討ち取り、敵軍を混乱させてその隙に押し返すという作戦がたてられた。その中には当然自分もいた。


 で、その元帥がどう考えても転生者だった。


 自分と同じ黒髪黒目。手にはノートパソコン。確定である。奴は護衛を切り伏せて現れた自分に対して笑いかけたのだ。


 決して友好の為の笑顔ではなかった。張り付けたような笑みであったし、その目は羽虫を見るかのようだった。


 同時に、体の表面で何かを弾いた感触。なんらかの攻撃をレジストした証拠だ。


 腰に提げられた元帥杖と豪華な服装からターゲットだと判断。すぐさま全力でもって斬りかかった。


 一合目はしのがれた。それでもパソコンごと左手は両断したのだ。普通なら苦痛で叫ぶか、放心するか。


 だが、その転生者は違ったのだ。


『笑った』


 心の底から、まるで恋する乙女の様に純真に。あるいは、恋に恋した血迷った目で。


 ぶっちゃけキモいし怖かったので、即二撃目で首を刎ねた。急いでたし。


 すごくいい笑顔な首と、証拠代わりに元帥杖を持ってその陣から跳びだした。というのも、特典である超直感が悲鳴を上げていたのだ。


 案の定、すぐ近くでアームストロング(父)が暴れていたのだ。大声で『どこだ、少年!私が会いに来たぞ!さあ、殺し合おう!』と叫びながら。


 このままでは王国軍が壊滅する。その次は自分だ。


 元帥の首を持ったまま王国軍の奇襲部隊本陣に跳び込んだ。そこですぐ、豪華な杖と一緒に持っていた首に目をつけられた。


 私が報告するから、その首と杖を置いて下がっていろ、下民。


 そう言って足元に金貨の入った小さな袋を投げてきた騎士に、すぐさま元帥杖と首をわたした。あまりにも素直にわたしたから訝しんでいたが、こっちとしては大変感謝していた。


 騎士に手柄首を横取りされるのはよくある事だ。それより、過ぎた手柄は身の破滅を呼ぶ。元帥の首など、自分の手には余る。


 え、本音?どう考えても厄ネタだから一刻も早く手放したかったです。


 そうして親切な騎士にお礼を言ってお金を拾った後、どうにかアームストロング騎士団長を足止め。その間に敵元帥が死んだことが戦場中に知れ渡り、帝国軍は大混乱のまま撤退した。ちなみにアームストロングはそれから三日ぐらい自分とド突き合いして満足して帰った。二度と来るな。


 帝国軍の混乱は予想以上だった。というか異常だった。


 というのも、不自然なまでにあの元帥に権力が集中していたのである。あげく、位の高い騎士や軍人ほど元帥の狂信者が多く、指揮系統は滅茶苦茶に。アームストロング親子以外元帥の死があまりに衝撃的すぎたらしい。


 あげく帝国本国さえ大混乱の渦に飲み込まれたようで、アームストロング親子と多数のネームドが帝国内に呼び戻され、残された帝国軍も指揮官たちが使い物にならなくなって撤退せざるをえなくなった。


 結果王国は領地の五分の一を取られたままであるが、どうにか和平に。戦争は一年前に終わったのだ。


 戦後、村に帰るかと思っていた自分をエインズヘイル辺境伯が呼び止めた。


『私の息子にならないか?いや是非なってくれ。お願いだ。この通りだ』


 馬から降りて地面に頭を擦り付ける辺境伯とその側近に、こちらが慌てるほどだった。


 平民の自分は、いくら手柄をあげようが所詮は平民。しかも孤児。勝ち戦とはお世辞にも言えなかった事もあり、褒美など貰えないだろう。


 しかし、代わりに辺境伯の正式な養子として認められた。王にこそ謁見はなかったが、公式に書類上で決まったのだ。


 これで生まれた村が滅んだ時に引き取ってくれた、今の村の人達に恩返しができる。幸い村は辺境伯の寄子の男爵家が収めている。便宜をはらってくれると約束してくれた。


 そうしてはれて貴族の仲間入りした自分は今、王都にある『魔法学校』に入学するのだ。


 王立魔法学校。才ある者を須らく受け入れ、王国の素晴らしき発展に貢献できる若者を教育する機関である。


 まあ、実際は金持ち商人の子供か、貴族の子息ばかりなのだが。偶に特待生として平民も受け入れられるけど、扱いはお察しである。


 辺境伯の息子になって一年。頑張って貴族らしい振る舞いを勉強したが、教育係の顔からして及第点にも届いていなかっただろう。


 この世界の言語はできるが、田舎訛りがひどいまま。難しい言い回しは未だ穴だらけ。読み書きに関しても、識字率が低いこの世界では当然一年で覚える事になり、そちらも穴だらけ。


 礼儀作法は前世と共通する部分があったのと、教育係の動きを完コピするだけだから、ある程度は様になったか。それでも応用とかは同年代基準でも下の方。


 そんな自分がこの学校でやっていけるか不安であるが、村の皆の為、拾ってくれた辺境伯の為、どうにか無事卒業。寄子の子爵家への婿入りも伯が決めてくれたので、そこに滑り込んで恩返しをするのだ。


 ……内心、『あれ、この国もうダメじゃね?』とは思っているけど、せめて戦争に負けるにしても、あの村ぐらいは守れる働きをしなくては。


 そうして入学したのだが。


「見ろよ、あれが噂の平民だ」


「なんでも、随分な野蛮人らしいわね。近寄らないようにしないと」


「平民なんて全員猿さ。どいつも野蛮な馬鹿だよ」


「ああ鼻が曲がる。近づかなくても土臭い。さっさと森に帰って虫でも食べてればいいのに」


 そんな陰口が聞こえてくる。つうか誰が臭いか。ちゃんと毎日体を洗っとるわ。


 自分が平民上がりという事は知れ渡っており、明らかに遠巻きにされている。噂では、自分が辺境伯にケツを売って取り入ったとか。


 あー、いっそ全員首へし折ってやろうかな。


 ダメだ。自分は辺境伯の息子としてここにいる。不用意な行動は出来ない。かといって噂を否定しようと舌戦をしようにも、訛りが酷いし言い回しがわからなくって詰む。


 ああ、イライラする。いっそ直接殴りに来い。先に殴らせれば正当防衛という事にこの国でもなるはずだ。貴族同士ならだが。


 入学式を終えて、居場所もなく廊下を彷徨う。辺境伯が決めてくれた婚約者に会いに行こうかとも思ったが、忙しくて今は会えないらしい。


 友達を作るなり教室で居場所を作った方がいいのはわかっている。貴族はコネが大事だ。だが、そもそも自分は彼らに『貴族』と認められていないので、取り付く島もない。見下した目で追い払われて終わった。


 そうして廊下を歩いていると、中庭が騒がしいのに気づいた。


「王大志殿下よ!」


「ああ、今日もお美しい……」


 主に女子生徒が騒いでいる。目を向けてみれば、正統派王子様っていう顔をしたイケメンが、また別のイケメンを引き連れて歩いていた。


 王大志殿下だ。顔は初めて見た。まさか肖像画と同じとは。てっきり画家が忖度したものとばかり。


「待って、なによあの女……」


「誰?どこの田舎者よ」


「あいつ、殿下に馴れ馴れしすぎない?」


 そうして進むイケメン集団の中に、一人少女がいる。栗色の髪をした小柄な少女だ。どこか小動物めいた印象だが、何故だろう。超感覚は『女狐』と言っている。


 まあ、スタイルは全然小動物ではないが。それを言ったらこの世界の女性は皆発育がいい。おっぱいおっぱい。


 貧:普:巨:爆で言えば、1:1:6:2だけど。凄いなこの国。いやこの大陸全般そうなのか?ちらりと見た留学生の集団も大きかったし。


 イケメン達はその少女を大事そうに構いながら、中庭を去っていった。


 まるで乙女ゲーみたいだな。前世も今生と同じ男だったので縁がなかったが、なんとなくイメージした通りだ。


 さて、それよりもどこか時間を潰せる場所を探さなくては。入学初日だけあって時間が有り余っている。かといってそのまま帰るわけにもいかない。一応新入生歓迎パーティーがしばらく後にあるのだ。


 そうして彷徨っていると、一人の女子生徒が前から歩いてきた。それだけで周りの生徒が道を開け、息をひそめる。なんとなくそれに倣って道の脇によって視線を落とす。


 どこかのお偉いさんか?王太子にもあんなミーハーな態度だったのに、ここの生徒がこんな対応をするとは。一体何者なのか。


 そう思っていると、その女子生徒が自分の前で立ち止まった。


「顔を、上げてくださる?」


「へえ」


 はいと答えたいが、訛りのせいで『へえ』になってしまった。忍笑いがどこかから聞こえてくる。


 顔を上げると、人形の様な少女がいた。美しさ的にも、表情的にも。


 均整の取れた手足。ブレザータイプの制服からでもわかる爆乳。美しい顔立ち。それでいて何の感情も読み取れない表情。


 そして、その少女は『黒髪黒目』だった。


 ふいに、少女が笑みを浮べる。桜色のやや厚めな唇が甘美に動いた。


『アルミ缶の上にあるミカン』


『親父ギャグかよ……』


 返せ。目が合った瞬間のトキメキを返せ。見てみろよ、ダダ滑り過ぎて周りの生徒も青い顔しているし、中には卒倒している奴まで……。


 待て、今こいつ何を言った?アルミ缶なんてこの世界にはない。それに……。


『日本語……?』


 そう呟いたが、その女子生徒はそっと唇の前で人差し指をたてた。


 色々聞きたい事も言いたい事もある。だが、確かにここで日本語の会話をするわけにもいかない。傍から見れば意味不明な言語を使う変人だ。


 人形の様な無表情に戻った後、少女がこちらにチラリと視線を向けてから歩いていく。ついてこいという意味だろう。


 少女の後を歩いていくと、校内の端にたどり着いた。小さくも高級感のある椅子と机、それを囲う柱と屋根がある。なんというか、絵本にでも出てきそうだ。


『ここならいいかな。さ、座ってくれ』


『……どうも』


 相手が座るのを待ってから、こちらも椅子に浅く腰をかける。その様子に、女子生徒は苦笑を浮べながら肩をすくめた。


『そこは、レディに椅子を引いてあげる所だよ』


『そういう対応がお望みなら、次からはそうしましょう』


『ふふ、すまない。こうして普通に話せる相手が前世ぶりなものでね。怒らないでくれ』


 どうにも、つかみどころのない相手だ。敵意の類は感じない。ざっと見た感じ、暗器は持っているようには見えない。


 体つきも立ち姿も、『戦士』でも『兵士』でもない。どこから見ても美しい以外は普通の貴族令嬢だ。


 だが、相手はおそらく自分と同じ『転生者』だ。どんな特典を持っているかわからない。初見殺しのものであれば、負ける可能性もある。油断は出来ない。


『君としては、最初にあった転生者が敵国の元帥だったからね。転生者と言うだけで警戒してしまうのはわかる。だから、身構えるなとは言えない。それでも、どうか最後まで私の話を聞いてほしい』


 少女は『頼む』と言って机に額がつきそうなほど頭をさげた。その姿に、小さくため息をつく。


『頭を上げてください。自分としても貴女の話に興味があります』


 肩から力を抜いて見せる。少女側も顔を上げて、小さく笑った。


 そうも頭を下げられて、意固地な態度を見せ続けるには、警戒する材料が少なすぎる。どのみち相手がこちらを敵視しているのなら、社会的に潰す方向でかかってくるはずだ。


 もっとも、もし敵対するようであればこちらも『相応の』態度であたらねばならないし、この体勢からでも少女の急所へ拳を叩き込めるようにしているが。


『いやぁ、いいね。こうして周りを気にせず笑顔を浮べられるのは。しかも日本語まで喋れる。今日はいい日だ』


 こちらの内心を知ってか知らずか、少女は何がおかしいのかやたらニコニコしている。廊下の時は気づかなかったが、体表で何かを弾いている感触が薄っすらある。


 この感触には覚えがある。帝国の元帥が笑いかけて来た時だ。


『ああ、そうそう。警戒されているだろうから先に私の転生特典を明かそう。『ニコゾ』『状態異常無効』『現代知識・食』『現代知識・農業』『特典把握』だ』


『っ……』


 どういうつもりだ?こいつは自分が帝国の転生者と遭遇した事を知っている。その上で、自分の特典を明かしてきた。ブラフか?だが超直感は本当だと言っている。


『ニコゾ、っていう能力はね。特典とは名ばかりの呪いの様な力さ。ニコポの派生とも言える力で、私の笑みを見た相手は背筋がゾッとするんだ。それこそ生命の危機に瀕しているような恐怖を感じてね』


 やれやれと肩をすくめる少女。つまり精神に干渉する特典か。それで彼女が笑っていると状態異常無効の特典が反応して、レジストしている感触がするのか。


『そして特典把握。これはまあ、名前の通り他の転生者が持つ特典を知ることが出来る。大まかな位置もね。それで帝国の彼や、君の事も知っているのさ』


『……なるほど、そうでしたか』


 安堵した表情を浮かべて見せる。


 つまりこちらの特典を把握しているわけだな、この少女は。その上で拳の届く距離にいる。大した胆力だ。見た目こそ少女だが、いったい享年はいくつだったのか。


『帝国の彼。彼の苦労もなんとなく察せてしまうよ。彼は『ニコポ』『ナデポ』『現代知識・兵器』『現代知識・工業』『状態異常無効』だったからね』


 にこぽ?なでぽ?……ああ、思い出した。そうか、そういえば前世読んだネット小説とかであったな。なるほどあれか。


『一見メリットばかりに見えるけど、笑いかければ誰だって自分に好意的になり、撫でてやれば従順な僕になる。最初は楽しいだろうけど、十年二十年も経てば呪いだよ』


 言いたい事は分かる。わかるけど、前世から童貞記録を更新している身としては何とも言えない。


『だから、きっと君と出会えた時は大層喜んだんじゃないかな?今の私の様に』


『……まあ、笑っていましたよ』


 最期の顔を思い出す。……やっぱ忘れよう。夢に出てきそうだし。


 それにしても、やはり自分は同郷を殺したのか。そうだろうとは思っていたが、この会話で確信に変わった。


 心の中で『南無阿弥陀仏』と唱えてやったが、それだけだ。奴はたくさんの人間を死に追いやった。その中には、当然自分によくしてくれた、村の友達もいる。


 まあ、仇はとれたのでよし。今度は奴の縁者に自分が狙われるだろうが。殺したのだから殺されもする。奴も、そして自分も。


『おっと、話がそれてしまっていたね。すまない』


『いえ……』


 どうやら本題に入るらしい。居住まいを正した少女に、こちらも背筋を伸ばす。


『今生の私は、エレイン・フォン・ミソラティ。ミソラティ侯爵家の長女として生を受けた身だ』


『自分はクロノ・フォン・エインズヘイル。元は孤児でしたが、現在はエインズヘイル辺境伯に養子として迎え入れて頂きました。立場としては三男となります』


 名乗り返すと、少女は満足げに頷いた。


『そう、ここは現実だ。それを踏まえたうえで聞いてほしい』


 一瞬だけ躊躇した後、少女、ミソラティが口を開く。


『ここは乙女ゲーム『ラブラブ王国プリンセス~君の瞳に百年の恋を~』の世界に酷似した異世界だ』


『……………は?』


 なんて言った?今なんて言った?


『驚くのは無理もない。このラブラブ王国プリンセス、略して王プリだが、実は私はその製作スタッフの一人だったんだ。だから断言できる。ここはそういう世界だ』


『いや、あの……え?乙女ゲーム?乙女ゲームって言いました?』


 嘘だろ?俺の経歴言おうか?孤児スタートからの村全体でのいじめ。その村が滅んで流れ着いた新しい村は温かかったけど、その後血と泥にまみれた戦争だよ?髭もじゃなおっさんに追いかけまわされたよ?


『私の働いていた会社、アトランティスが作ったゲームだが、まあ売れなかったんだよね、うん。絵は同社の人気絵師がやってくれたんだけどね』


『うん?アトランティス?……もしかして、スーパーおっぱい対戦シリーズの?』


『……もしかして、買ってくれた?』


『ええ、まあ。一応生きている間に出たシリーズは全部やってましたけど』


『お買い上げありがとうございます!』


 突然勢いよくミソラティが立ち上がって頭を下げて来た。爆乳が揺れてそれを目で追ってしまう。


『って、もしかして作画はスーパーおっぱい対戦のスタッフが?』


『うん』


『売れなかった原因それでしょ!?』


 スーパーおっぱい対戦は、そのアホな名前から察しが付く通り男向けエロゲ―である。当然、その絵も『そういう』感じなわけで。


 それを乙女ゲームでやったの?馬鹿なの?


『納品してからね、私達も気づいたんだよ。あれ、これ女性人気でなくねって』


『もっと早く気づきましょうよ。というか女性社員は何も言わなかったんですか?』


『私含め、製作スタッフ全員男だったんだよね。突然上から乙女ゲーム作れって言われて、どうしようと悩んだ結果迷走したとしか言いようがない』


 そんな制作秘話言われても困る。というかこの人前世男だったのか。TS転生とか大変だな。


『まあ、そういうわけでこの大陸、というか海を越えた先の島や別の大陸も、設定通りなら巨乳ばっかりだよ!やったね!』


『そんなだから売れなかったのでは?』


『けど男ならおっぱい好きだろぉ!?』


『大好きです!』


 固い握手をした。あ、手ちっちゃい。柔らかい。これが女の子の手か。いや、前世は男らしいし、こういう感想をもつのは失礼か?


『わかってくれて嬉しいよ。とにかく、そう言う理由で私は王プリについてある程度知識を持っている』


『それは、はい。そうですか』


 たぶん本当の事を言っているのだろう。


 では、この世界で起きる事や、起こった事について詳しいという事でもあるのか?であれば、ぜひ教えて欲しいのだが。特に帝国との戦争。


『ただし、当然王プリには転生者なんていなかった。だから、既に私が知っている世界ではないんだ。特に先の帝国との戦争とかもね』


『ですよねぇ……』


 そう上手い話もあるわけないか。自分と帝国の元帥が随分暴れたわけだし。


『特に帝国は元帥君の特典のせいで、滅茶苦茶強化されているからね。原作なら、相手も技術レベルは王国とほぼ同じだった。ついでにエルフは第三勢力だったよ』


 エルフについては、たぶん『ニコポ』『ナデポ』が無双したんだろうなぁ。自分でも使うわ。


『じゃあ、アームストロング親子もその影響で?』


『いや、あそこは原作の設定どおりだよ。まあ私は直接見たわけではないから、伝聞でしか知らないけど』


『俺、戦闘特化型な特典なのに正面からボコボコにされつづけたんですけど?』


『マジ?』


『マジです』


『おおう……』


 頭を抱えて『噂は本当だったかぁ』と呟くミソラティ。自分としては、あの親子が原作通りな方に驚いた。


 だが、それは朗報ではないか?あの王太子達の光景。そして王プリのタイトル。この二つから、主人公は王国側。つまり最終的に勝つ側だ。原作であの親子をどうにか出来ているのである。


『ちなみに、原作ではあの親子をどうやって倒したんですか?』


『戦うかはルートによるけど、基本的に主人公ちゃんが一人で倒してくれるよ。魔法で』


『わお……』


 凄い。もしかして主人公ちゃんとやらは怪獣の類では?


『とにかく、主人公ちゃんの活躍次第でこの国が残るか滅びるかは決まるのさ』


『……でも、それはゲームの話では?』


 ミソラティは先ほど『ここはゲーム似ている異世界』と言った。まるっきりゲーム通りになるとは、考えない方がいいのではないだろうか。


『うん。そうなんだけど、正直それ以外に王国が勝てる可能性が見当たらない』


『たしかに』


『というかあの親子については設定考えた奴が悪乗りしちゃった結果だから。主人公ちゃん以外勝てる奴がいない』


『たしかに』


 あの不思議生命体に勝てる生き物が想像できない。凄いな主人公ちゃん。


『で、その主人公ちゃんなんだけど、別の転生者がその立場を奪ったぽい』


『はぁ!?』


『いやぁ、まいっちゃうよねぇ』


 乾いた笑いを浮かべるミソラティに、絶句する。


『う、嘘でしょ?』


『君も見たんじゃないかな?中庭で王大志殿下と腕を組んでいる女の子』


 あれかぁ!?


『あんな子は原作にいない。そして私の特典も反応したから、別口の転生者だ』


『別口?』


『そう。私達を転生させた神様とは別の神様に送られた転生者さ』


 別の神様とかいたのか。


 思い出す転生の間。真っ白な空間に魂だけで放り出され、どこかからか聞こえる声に押しつぶされそうになった。


 本能というか、魂で理解できた。逆らったら存在ごと消されると。よく転生ものの小説で、神様相手に交渉したり殴りかかったりする転生者がいるが、自分には無理だ。


『そんなわけで、あの転生者ちゃんには特典がない。かわりに、どうも原作プレイ済みらしくてね。フラグ管理もばっちりなようだ。イベント前倒しなのに』


『……なんか嬉しそうですね』


『お客様と言うだけで私の好感度はプラスよりだよ!』


『そうですか』


 自分としては、国の存亡がかかっているので勘弁してほしいが。


『他にも別口転生者は大陸を見渡せばけっこういるようだ。けど、この学園には私と君。そして例の転生者ちゃんと悪役令嬢に一人だね』


『悪役……ああ』


 それも思い出した。そういえば一時期流行ったな、悪役令嬢シリーズ。


『ちなみに、この作品には五人の悪役令嬢がいるけど、全員ガチの悪役だよ。実家含めて』


『……一応聞きますが、何故?』


『だって、攻略対象が婚約破棄するだけの理由ってなると、ね?』


『そりゃそうですけど……』


 普通、貴族間の婚約破棄などよっぽどのことがなければ起きない。最悪内乱に発展する。そのよっぽどが悪役令嬢とその実家にはあるのだろう。


『エントリーナンバーワン!豪商の攻略対象と婚約している悪役令嬢!彼女はこの国で十年前に禁止された奴隷を売りさばいている家の子だよ!本人も複数の奴隷をペットとして飼っていて、バッドエンドでは主人公ちゃんは彼女に外国へ売りに出されたりするよ!』


『一発目からか……』


『エントリーナンバーツー!宰相の息子と婚約している悪役令嬢!彼女は脱税をしている家の子だよ!』


『脱税ぐらいどこの貴族もやっているんじゃ……』


 ここ一年で学んだが、脱税も賄賂も当たり前である。元日本人からしたら悪い事だし、この世界の法律でも悪だ。黙認されているだけで。


 だが、それでも国を、領地をまわしていくには必要なのだ。安易に前世の価値観で踏み込んでいい物ではない。


『うん。ただの脱税じゃなくって、戦争への資金の方でも、ね……』


 無言で立ち上がる。野郎ぶっ殺してやる。


『どこの家ですか。教えてください。ちょっと石投げてきます』


『君の投げる石音速いきそうじゃん!?頼むから最後まできいてって!』


『……失礼しました』


 眉間に皺をよせながらも、どうにか着席する。


 あの戦争でどれだけの命が……遠回しに自分の友人達の仇でもあるではないか。


『で、そこの娘さんな悪役令嬢もそれを知ったうえで、自分もあっちこっちから金をちょろまかして男遊びと酒盛りで楽しんでいるよ』


 よし、決めた。その家は絶対滅ぼす。一族郎党皆殺しだ。


『エントリーナンバースリー!騎士団長の息子と婚約している悪役令嬢!』


『そのノリまだ続けるんですね』


『この悪役令嬢の家は違法薬物を製造、販売しているよ!彼女も周りに使って自分の都合のいいように操っているね!』


『もう終わりだよこの国』


 そもそもそんな国にとって重要な人物と婚約する家が、ただの一貴族なわけがない。どう考えても大貴族だ。それらがこんな事をしているとか、もうダメだろ。


『エントリーナンバーフォー!枢機卿の甥っ子と婚約している悪役令嬢!彼女の家は代々悪魔崇拝を裏でしているよ!サバトは日常茶飯事さ!バッドエンドは主人公ちゃんが洗脳されて王国も帝国もまとめて滅ぼしていたよ!』


『ダメじゃん』


 つうか本当に主人公ちゃんなんなの?出てくる作品間違えてない?決戦兵器すぎない?


『そしておおとりはこの方!王大志殿下の婚約者な悪役令嬢!彼女こそ転生者な悪役令嬢だよ!』


 ひそかに期待を膨らませる。


 転生者な悪役令嬢。乙女ゲームものでは真の主人公枠として有名だ。きっと彼女はこの国をいい方向に導いてくれる英傑に違いない。


『家丸ごと帝国に王国を売るつもりだよ!原作で彼女は帝国の若き皇帝に恋慕していたね!』


『……うん。まあ、うん』


 原作ではそうなのか。ちょっと根切りにしにいこうか迷ったけど、転生者な令嬢なら違うはず。


『私が調べた限り、この世界でもそうぽいというか。今も皇帝と文通しているっぽい』


『ギルティ』


 よし、殺そう。少なくともその令嬢とナンバーツーの令嬢。その家は刺し違えてでも殺す。


 敵に殺されたのなら、そう言う事もあるだろう。恨みはするし、敵討ちも考える。だが、味方が裏切りそのせいであいつらが死んだ?


 許せるはずがない。裏切りには報いを。そいつらの首を死んでいった友たちの墓前へ届けなくてはならない。


『……とにかく、こちらとしてはその原作主人公とやらについて、もう少し詳しくお願いします』


 この国の最後の希望だ。主人公ちゃんとやらいかんで、この国の命運が左右される。


 原作とやら同様に、彼女が悪役令嬢とその家を断罪し、帝国を打ち倒して王国を守ってくれるのか。それ次第だ。


『それが……わかんない』


『はい?』


『彼女が本来現れるのは入学初日の新入生歓迎会なんだよ。随分田舎からやってきたから、馬車が遅れるんだよ。そして、田舎ということ以外は彼女の出身はほぼランダム。登場まで特定はできないのさ』


『そう、ですか』


 それならば仕方がない。まあ初日から遅刻する令嬢というのも、主人公らしいと言えばらしいか。


『そういえば、あの転生者はなぜ主人公のポジションを奪うような真似を?』


『……あくまで推測なんだが、彼女は主人公がどうやって帝国に勝ったかを知らない可能性がある』


『え?あの転生者はプレイした事がある人なんじゃ……』


『いや、原作で帝国との戦争は二、三行ぐらいしか書かれていないんだ。プレイヤーは主人公が魔法の天才という事ぐらいしか知らない。攻略キャラとの愛の力で勝てたぞ、的な事しかテキストには出ていないと思う』


『マジですか……』


『戦争に勝った方法や、アームストロング親子については別売りの設定資料集を読まないと』


『なんで売れないゲームに設定資料集なんて売り出したんですか』


『しょうがないじゃん!ソフトを納品した頃にはもう作っちゃってたんだから!』


 無計画すぎるだろ……。


『あと、攻略キャラの能力はあんまり期待しないでね!アームストロング親子の設定を考えた人とは別の人がキャラ考えたから!考えた奴ひねくれた自称リアリストだから!』


『なにキレ気味に言ってるんですか。というかキャラの設定を考える時はちゃんと話し合って整合性をとりましょうよ』


『うるせー!上司みたいな事言うなぁ!私達は作りたい物を作るんだい!』


『商売でやってるなら客に喜ばれるの優先しろや!我欲を作品に流し込むのは商売以外でしろよ!』


『知るかー!買ってない癖に好き勝手いうんじゃねえ!もう整合性を取る為に主人公ちゃんを最強無双の天才魔法使いにするしかなかったんだよぉ!』


『もうちょっと王国に優しい設定でゲーム作れやぁ!』


『ここはあくまでそっくりな異世界ですぅ。ゲームと混同とかさいてーい』


『あんたが酷似した世界だとか色々設定ぶちまけたんじゃろぉがい!』


 そんな馬鹿な罵り合いをすること五分。どうにか落ち着いて椅子に座りなおす。


『失礼しました。侯爵家の御令嬢にとんだ非礼を』


『いや、気にしないでくれ。私も熱くなり過ぎた』


 小さく咳ばらいをして、話を切り替える。


『で、だ。私としてはどうにか帝国との戦争に勝利し、王国を後の世まで残したい。君も王国側として戦ってくれるかね』


『はい。元より、育ててもらった村の為。拾ってくれた辺境伯への恩返しの為。全力を尽くすつもりです』


 まあ、『王国』ではなく『辺境伯の領地』を守る戦いをするつもりだけれども。そこはたぶんお互い様だろう。貴族とはそういうものらしいし。


『ありがとう。帝国の彼が死んだ影響は未だかの国を蝕んでいる様でね。責任の押し付け合いと、これを機に利権を手にしようと暴れている者達もいるし。ついでにうちの密偵も仕事熱心だ』


『それはいい。時間はあればあるほどいい状況ですからね』


 王国が受けた傷はあまりに大きい。幸い帝国以外は同盟国としか隣接していないし、海ともつながっている。立地は決して悪くない。


 ただ、同盟国と言えども所詮は他国。隙を見せていればいつか食われる。帝国との戦いも考えれば、一刻も早い力の回復が必要だ。


 ……正直、今の王国は帝国の襲撃がなくとも危うい。たった一年貴族について学んだ自分でもそう思っている。


 実質的な敗戦で王家の権威は地に落ちた。貴族たちも当主や領民、騎士を多く失った。そして、ほとんど回収できなかった戦費。少なすぎる恩賞。


 いつ内乱が起きてもおかしくない。地方では貴族同士の戦争がいくつも発生しており、王家や寄り親たちも碌に仲裁できていない。


 はっきり言おう。自分が辺境伯に恩を感じていなければ、村人たちを連れて隣国にでも逃げている。最悪、自分の腕を売り込めば開拓村の一つぐらいは分けてもらえるかもしれない。


『王国存続のカギは主人公ちゃんだが、君も重要なピースだ』


『はい。心得ております』


 口論の最中、主人公ちゃんは天才ではあれど、今まで魔法の魔の字も知らずに生きて来たそうだ


 いかなる天才でも、磨かなければ凡才同然。彼女が戦力となるまでは、自分が戦わなければ。


 ……最低だな、自分は。おそらく十代の少女に、戦場で兵器としての働きを期待している。また地獄に行く理由が増えてしまった。


 だが、今更罪状が増えた所でどうしたというのか。元より地獄行きは確定事項。ならば、いかに戦い、いかに恩を返すか。


 そして、出来るだけ主人公ちゃんとやらが、幸せな人生を送れるよう手助けするのみ。罪を覚悟しているからと言って、償いもしないのはおかしいだろう。


『おっと、そろそろパーティーの準備をしないとだね』


『そうですね』


 辺境伯から貰った懐中時計を確認する。ミソラティが言う通り、そろそろ新入生歓迎パーティーの準備をしなければ。


 制服での参加だが、最低限の身だしなみを整えなければ。ミソラティなど、侯爵令嬢だから余計に必要だろう。


『では、また会場で』


『ええ、それでは』


 そう言って席をたち、別々の方向へ。


 さて、新入生歓迎パーティーでは遂に婚約者とご対面か。きちんとエスコートできるだろうか。


 あまり自信はないが、それでも全力であたるしかない。パーティーは貴族の戦場と聞く。辺境伯や婚約者に迷惑をかけないようにしなければ。



*        *        *



おかしい。婚約者と未だ会えていない。


 予定では会場に入る際、合流する予定だった。だが、自分は受付時間ギリギリに会場へと放り込まれただけだ。


 一応手紙にあった場所で待っていたし、近くにいた使用人の人にも確認したので、場所を間違えたという事はないだろう。


 となると、なんらかのトラブルが彼女にあった?今からでも会場を出て探しに行くべきだろうか。


 そう思って受付を通ろうとしたが、止められてしまった。なんでも彼女は既に会場に入っており、サプライズの為合流していないのだとか。


 嫌な予感がする。戦場で敵が奇襲を仕掛けてきた時と似た感覚だ。


 理事長や生徒会長の挨拶も終わり、呼ばれていた楽団が和やかな演奏を始める。だが、それはキンキン声に遮られた。


「私、セイラ・フォン・ネトルホルズンは、クロノ・フォン・エインズヘイルとの婚約を破棄します!」


「……は?」


 セイラ?ネトルホルズン?それって確か辺境伯から紹介された婚約者の名前だよな。そして、自分の名前も呼ばれた。


 え、婚約破棄?


 生徒達が左右により、道が出来る。皆ニヤニヤと面白そうに笑っている。


 そして、開けた道の先には四人ほどの生徒がいた。女子生徒三人に、男子生徒一人だ。顔に見覚えがあるのは一人。赤毛の少女だ。辺境伯に見せられた肖像画に似ている。彼女がセイラ殿か。


 で、そのセイラ殿が、他の三人と一緒に見知らぬ男子生徒へと侍っているのだが?


「貴方が行ったチャランクス・フォン・ヤリティーン様への数々の蛮行!決して許せるものではありません!」


「おいおい。僕はあくまで、彼に謝ってもらえればそれでいいんだけどね」


 そう言ってやれやれとニヒルに笑う金髪の男子生徒。彼がチャランクス・フォン・ヤリティーンか。……すごい名前だな。


「蛮行ゆうっでも。おいはそげな事しりません」


 会場のあっちこっちから笑い声が聞こえる。我ながら訛りが酷すぎるが、これでもだいぶマシになったのだ。


 それはそれとして、セイラ殿とチャランクス。その他二人の笑いがイラっとくるな。というかセイラ殿含めて三人ともまったいらだけど、そういう趣味か?


「なんて言葉遣い。やはり平民上がりっていうのは本当ね!」


「辺境伯の愛人になって貴族になったっていうもの!」


「あんな奴、貴族じゃないわ!ただの猿よ!」


 チャランクスの三人娘が口々に大声をあげる。周りに言い聞かせているな、あれは。


「蛮行って、どげな事をおいがしたっどいうですか。おいは、三日前に王都さきたばっかですけん」


「嘘おっしゃい!貴方がチャランクス様に嫉妬し、何度もお命を狙ったのは知っています!証人もいるのですよ!」


 いや本当に知らんし。そもそもチャランクス何某も今知ったんだけど。


 いや、待てよ。ヤリティーン?そう言えば辺境伯の寄子の一つにそんな家いたな。そこの子息か?


 けど本当にそれぐらいしか接点がない。となれば、どう考えても奴らは自分を『嵌めようと』している。


 まずい状況だ。周囲の視線は自分への侮蔑か、嘲笑か、あるいは無関心ばかり。味方がいない。


 こういう時、事実などどうでもいいのだ。『周りがどう思うか』。それにつきる。特に、この国の貴族は。


「僕も別に怒ってはいないのさ。君が謝ってくれるのなら、全てを水に流すよ」


「ああ、チャランクス様。なんてお優しい」


「あの下民に見習わせたいわ」


「あんな猿とチャランクス様を比べる方が失礼よ」


 謝れるわけねえだろボケ。


 今の自分は『エインズヘイル辺境伯の三男』だぞ。それが公衆の面前で、寄子であるヤリティーン家の子供に頭を下げる事の意味ぐらい、子供だってわかるだろうに。


「ほら、土下座しろよ平民!」


「お前ごときが我が校の制服を着ている方がおかしいんだ!」


「さっさと服を脱いで土下座しろ!」


 周囲から『土下座!土下座!』とコールが起きる。どうでもいいけど、ヨーロッパぽい雰囲気なのに土下座文化あるのな。


 さて、援軍はいないか。そうでなくとも中立か、この場を収めてくれる人物はいないか視線を巡らせる。


 理事長。ダメだ。楽しそうにニヤニヤ笑っている。


 生徒会。論外。例の転生者とのお話で頭がいっぱいらしい。


 ミソラティ。なんで白目剥いて立ったまま気絶してんだよ。器用だな。


 結論。ダメだなこれ、どうにもならん。


「さあ、皆パーティーを早く楽しみたいんだ。さっさと終わらせてくれないか?」


 チャランクスが思いっきりこちらを見下しながら言ってくる。


「……おいが謝る事はできません。後日、書面にて家同士話し合う事ですけん。この場は一度仕切りなおしてほしか」


 全力で、訛りを抑えて口を開く。だが、返ってきたのは笑い声と怒声だけだ。


「なんて見苦しい!仮にも貴族を名乗りながら、辺境伯に助けをこうのですか!?」


 どう考えても子息が判断できる領域超えているだろボケが。脳みそ詰まってねえのか。


「はは、どうやら辺境伯と随分と『仲がいい』という噂は本当らしいね!ここで泣きつく相手に選ぶんだから!」


 いや、ここで勝手に判断する方が問題だろ。それがわかっていて挑発しているんだろうに。


 というか、何故学院側は止めにこない。これはもう子供の喧嘩ですまない範囲にきているだろう。学園のメンツにも関わってくるはず。それに、これ以上は完全に貴族同士の戦争になる。そんな事になったら……。


 ああ、なるほど。『帝国側』か、理事長は。王大志殿下の婚約者に選ばれる家が裏切っている段階で、考え付くべきだったか。


「それに、辺境伯はお忙しいんじゃないかなぁ?君なんかに関わっていられないぐらい」


 で、当然ながらそっちも対応しているわな。


 自分の知っている範囲の辺境伯側戦力と、寄子の戦力を頭に並べる。自分の知識的にも、超感覚的にも、ヤリティーン家とネトルホルズン家。そこに二家加わった戦力なら、負ける事はないだろう。それ以上の戦力でこられると、流石にまずいが。


 さて、自分はどう動くのが正解か。まいった、俺は決して頭のいい方ではない。貴族としての教育も一年間だけ。とても政治を考えた判断など満足にはできん。


 ……よし。適当に誤魔化して撤退。辺境伯領に向かおう。そこで辺境伯軍に参戦し攻めて来た寄子戦力を迎撃する。


 ここで知りえた事を辺境伯に投げて、後は知らん。ミソラティには申し訳ないが、主人公ちゃんの事は任せた。自分が学園へ復帰するのはできないだろう。


 ここでの撤退は辺境伯に迷惑をかけるだろうが、それ以外だと傷口を広げるだけだ。


「おいは断固としてその蛮行とやらを認める事はできんのです。やっておらんもんはやっておらん!帰らせていただくけん!」


 周囲からの罵倒や無責任な野次が飛んでくるし、婚約者、いや『元婚約者』からも非難の声が聞こえる。チャランクスの勝ち誇った声も。


 ああ、出来るのなら今すぐ皆殺しにしたい。舐められたら負けが貴族とも聞いたし、やはり今から首をねじ切ろうか。


 ダメだ、冷静になれ。それでは最悪、他の貴族からも辺境伯へと攻め込む理由を与えかねない。どうやら、この国の貴族は帝国との戦いではなく、いかに手土産を持って帝国に寝返るかを考えているらしい。


 踵を返し、会場を出ようとする。だが、鎧姿の守衛達に阻まれた。


「のけ。おいはエインズヘイル辺境伯の三男ぞ。それが帰るのを邪魔するってことがどげな意味をもつか、わからねわけじゃあるめぇ」


 守衛たちは答えない。武器こそ抜いていないが、腰を低くしてこちらを抑え込みにはいる体制にはいっている。


「そか……」


 どうやら、もう完全に『そういう事』らしい。


 ここの守衛の所属がわからない。学園か、それともどこかの貴族がだしたものか。であれば、殺すわけにもいかない。可能なら無傷がいいだろう。


 幸い雑魚ばかりだ。帝国の一般兵以下のみ。適当に逃げるのは容易。


 そう思って足に力を込めた、その瞬間。


「遅れてすみませーん!」


 蹴り開ける様な勢いで扉を開けて、一人の少女が入ってきた。


 緩くウェーブのかかった豊かな金髪に、綺麗な碧眼。あどけなさを残しながらも、美しい顔だち。


 そして、この世界特有と言うべきか、制服越しでもわかる煩悩を刺激するスタイル。


「……あれ、もしかして私、なにかやっちゃいました?」


 そう困ったように後頭部をかく少女。一目でわかった。


 なるほど。この娘が主人公か。



*     *       *



三日後、エインズヘイル辺境伯邸。


「う~む、今日も紅茶が美味しい。腕を上げたねセバスチャン」


「もったいないお言葉にございます」


「ふふん。私は辺境伯だからな。有能な者が有能な結果を出したのなら、褒めるのは当然だとも」


 そう言って笑うのはカイゼル髭を生やした恰幅のいい男だった。豪奢な服に綺麗に撫でつけられた金髪。どこからどう見ても貴族だ。


 そう、彼こそがエインズヘイル辺境伯その人である。


「ふう、それにしても、クロノは上手くやっているだろうか」


「それはなんとも……そろそろ手紙が来る頃ではありますが」


 辺境伯が思い浮かべるのは、黒髪黒目の少年だ。


 礼儀作法を短期間で教え込むため、エインズヘイル辺境伯家が用意できる最高の指導係を選んだ。だが、それでも期間が短すぎたし、元々ついてしまっていた癖が酷い。


 十中八九王都で馬鹿にされるだろうが、婚約者のセイラと、他にも何人かの寄子に頼んである。ある程度はどうにかなるだろう。


 本来、平民を貴族の子供に招き入れるなどありえない事だ。だが、それでも辺境伯は養子に迎える必要があった。


 彼は元々、エインズヘイル辺境伯家の三男だった。だが、幼い頃に長男が病死。


 そして帝国との戦争になり、兄は領地に残り、彼とその父が兵を率いて戦場に向かった。といっても、彼らは貴族の中でも高位である辺境伯。当然安全な位置だし、事前の調査で帝国と王国で兵数はほぼ同じ。死ぬことはないと思っていた。


 地獄だった。


 見た事もない兵器の数々。雑兵が持った謎の筒が煙と音を出すたびに、鎧を着た騎士達が死んでいく。


 上からも破裂する謎の物体が落ちてきたり、火のついた油もまかれてくる。


 そのうえ、敵にエルフまでいたのだ。寝物語に聞かされる、この世で最も魔法を熟知した種族が、何故か帝国についたのだ。


 それらだけでも王国軍をすりつぶすには十分過ぎた。子供を大人が斧で殴るも同然だ。


 だが、帝国は容赦などしなかった。周辺諸国に名をとどろかせる悪魔ども。『ネームド』を惜しみなく戦場に投入したのだ。


 王国はただ滅びるのを待つだけだった。


 そこに現れた一筋の光明こそ、クロノである。


 まだ十代前半だろうに、素手で次々と敵兵を薙ぎ払っていった。ネームドもエルフも彼の歩みを止める事は出来ず、ただ赤いシミへと変わるだけ。


 その姿は悪鬼そのもの。美しい容貌もあいまって、魔人とまで王国兵に言われる始末。なれど味方として戦い、自分達を助けてくれるなら、魔人でも兵士達には神様だ。


 敵兵の砲弾で父を失った彼も、クロノの戦う姿に希望を見た。


 直後に、実家から緊急で送られてきた手紙で絶望した。兄が死んだのだ。死因は酒の飲みすぎ。後に帰ってきて徹底的に調べたが、マジでただの飲み過ぎだった。


 戦場にて例外的に当主となったエインズヘイル辺境伯。本当はすぐに領地へと戻るべきだが、兵役は終わっていない。金銭で補おうにも、既に兵と食料などで金を使い過ぎている。


 そこに、帝国は第一騎士団団長、レーゲン・ガルツ・アームストロングを投入。止めをさしに来た。


 生きる伝説。竜殺しの英雄。歩く災害。奴をさす言葉は数あれど、共通するのは『最強』の二文字。


 バトルアックスの一振りで、いったいどれだけの兵が死んだか。王国軍は完全に崩壊する目前だった。


 それを止めたのも、クロノだった。


 戦場で拾った武器を使い捨てながら、あのアームストロングを押しとどめたのだ。それだけではない。巧みに戦いの場を誘導し、帝国軍を余波で巻き込んだ。


 彼がいなければ、いったい何度王国軍が壊滅したかわからない。エインズヘイル辺境伯は、彼こそが現人神。戦の神が降臨させた使徒なのだと確信した。それ故に家宝の魔剣を預けるにいたったのだ。


 そうして、実質クロノ一人の活躍で王国は多大な犠牲を払いながらも停戦にまでこぎつけた。


 当然、兵も将も死力を尽くした。死んでいった者達も、生き残った者達も、皆英雄であると辺境伯は思っている。


 そのうえで、クロノこそが希望であるとも、思い続けていた。


 そして、王国のクロノへの扱いに絶句した。マジかと。アホかと。


 平民だから恩賞なし?手柄は全て騎士と貴族達で分配?確かにこの戦争は実質的な負けだった。王国はなにも得る物のない戦いだった。


 だからってこの扱い。もしもクロノが王国を出て行ってしまったら、いったい誰がアームストロングとネームド共を止めるというのか。それらがなくても王国は負けるだろうに。


 確かに、普通ならたった一人の武力で戦局をひっくり返す事は出来ない。だが、世の中には例外がいるのだ。アームストロング騎士団長であったり、その息子であったり。そして、クロノもその一人だ。


 辺境伯の行動は早かった。


 すぐさまクロノの出身地を調べ上げ、そこを管理している貴族に根回しを済ませた。出身が自分の寄子がおさめる領地であった事に、天へと祈りを捧げたほどだ。


 状況が理解できている部下を引き連れ、いざ交渉に。交渉と言っても、初手土下座である。それ以外に辺境伯側からできる事がなかった。クロノほどの『怪物』いいや『英雄』を縛り付けられる『生贄』は用意できなかったのだ。


 幸運なことに、クロノの感性は人の、平民のものだった。どうにか辺境伯家に迎え入れる事に成功。


 エインズヘイル辺境伯にやるべきことは多かった。失ったものも両手の指では足りない。だが、クロノと言う最終兵器を手に入れたのだ。


 彼がいれば、領地と領民は守れる。縛る鎖を増やすため、婚約者も用意した。……空いている令嬢がほとんどいなかったので、あまり噂のよくないネトルホルズン家になってしまったが、そこは全力でホローするしかない。


 帝国もかなり混乱している事だし、その間に領内の安定化。寄子達との結束を強めなければ。


 やる事は多い。だが、希望はある。


 今後の予定を頭に浮かべながら、エインズヘイル辺境伯は優雅に紅茶を飲み干した。


 その時、ノックもなしにドアが開けられ、息を切らした執事が入ってきた。この青年は辺境伯の側近、セバスチャンの孫である。


「マイケル。なんと無礼な」


「申し訳ありません!しかし緊急なのです!」


 青年、マイケルが手に持った手紙を掲げる。刻印は王都にいる親戚の物だ。クロノに何かあれば連絡するよう頼んでいた。


「どうした、何があったのだ。落ち着いて述べたまえ」


 余裕の態度で辺境伯がマイケルに笑いかける。なお、内心はと言うと。


『うそだろぉ!?こんな早く問題起きたの?まだ領内の安定化全然できてないよ?セイラ嬢とかなにやってんの?お宅の実家にはたくさんお金とかコレクションわたしてお願いしといたでしょ?』


 と、大慌てである。しかし彼は大貴族。下の者に内心など悟らせない。


「ネトルホルズン家のセイラ様がクロノ様に、新入生歓迎パーティーで婚約破棄を宣言しました!」


「ほんげぇええええええええええ!?」


 そんな余裕は秒で吹き飛んだ。


「え、なんで?なんでぇ!?」


「手紙には、クロノ様がヤリティーン家のチャランクス様に嫌がらせの数々を行ったからだと……」


「そんな暇あるわけないじゃん!?完全にただの言いがかりじゃん!?」


 続いて、セバスチャンの息子、ジャックが部屋に飛び込んでくる。


「ご当主ぅ!」


「ちょっと今は後にして!?大変な事になってるから!」


 クロノがこの領地を出て行ってしまうかもしれない。そうなれば我が領地の守りは……。その考えで辺境伯の頭はいっぱいだ。


「こちらも緊急の知らせなのです!」


「今度はなにぃ!?」


「ヤリティーン家、ネトルホルズン家、ガバァガヴァン家、ヤリマルス家の四家がエインズヘイル辺境伯家に宣戦布告を申し込みました!理由は先の戦に関する恩賞の不払いだそうです!」


「はんぎゃああああああああ!?」


 辺境伯が内心で絶叫する。外面でも絶叫してた。


「嘘でしょ!?ちゃんと当主同士の話し合いで、裏金をまわすだけでOKってなったじゃん!?というかあの四家、大して活躍していなかったじゃん!?」


 当然、宣戦布告の理由など適当である。彼らは辺境伯に攻め込める理由さえあればいいのだ。


 すべては、帝国への手土産の為に。


「いかがなさいますエインズヘイル様!」


「はう」


「ご当主!」


「あう」


「当主様!」


「おう」


 問いかけてくる三人に、当主が出した答えは。


「……しじゃ」


「はい?」


「皆殺しじゃぁ!全員まとめて焼いてくれるわぁ!」


 当主、お気にのティーカップを床にたたきつけ、鼻から気炎をだしながら武器庫へと走っていった。


「セバスチャン!将を集めろ!ジャックは他の寄子の状況確認!とにかく情報を集めよ!マイケルは私についてこい!」


 慌てて辺境伯についていく執事たちに、素早く指示が飛んでいく。


「既に先手は取られた!死にたくなければ動け!」


「「「はっ」」」


 その体型からは想像もつかない健脚で走りながら、辺境伯は叫んだ。


「もう終わりじゃこんな国ぃぃぃぃいいいいいい!」




※戦争を仕掛けた四家当主は一週間後。クロノ君が首だけにした後、王都にいる元婚約者へのプレゼントとしてネックレスにしました。心のこもったお土産です。




読んでいただきありがとうございました。

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[良い点] ストーリーめっちゃ好み [気になる点] なし [一言] 連載だったらなぁ
[一言] あれ? 主旨が分からん。途中までは面白かったけど肝心のオチ周りが放り投げENDって認識で合っているのだろうか… なんか勿体ないというか途中までの流れはあんま関係ない感じ?
[一言] 転生者な婚約者的には真面目に将来を考えた上でこんな北の将軍様の国より更に酷い国は滅びるべきでは?とかなって丁度転生者もいて産業革命してる親近感バリバリな帝国に滅ぼしてもらおうとしたら意味不明…
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