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プロローグ
一人の子どもが草原に立っていた
両手を後ろに固定されて身動きが取れない
その瞳には、虚無を映している
両親も友もいなければ、見送る者もいない
空からバタバタと機械音がしたので見上げてみる
深い紫色をしたゴンドラ船が地上に着陸しようとしていた
草原が風圧で波をうっている
子どもはただただ見上げていた
自分を迎えに来たと思った
そこには悍ましい数々の悪魔が住処にしていた
子どもを見下ろす
不快な笑みを浮かべてこう言った
『生ごみ人間』
絶望はまだ始まったばかり
もう何も言うことは無い
―あの時は、ごめんなさい。