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Lv1の地図師ですがチートで無双します(仮)

作者: 駿

アイデアが浮かんだので短編で執筆してみました。是非読んでみてください。

「プツン」


15層で探索した際に魔方陣で転移した瞬間、突然今までのマッピング履歴がリセットされ一瞬激しい頭痛に襲われたのだが、それはすぐに収まった。今このタイミングで消去してしまった事を皆に告げると不安を煽る(あお)だけだと考え今は話していない。


「ここで一旦休憩にしよう!」


転移した場所はモンスターハウスだったが、さすがはSランクパーティーと言うべきか、100体近いB級の魔物達を次々と倒し全滅させた。だが体力も限界に近づいていることも事実でありこのパーティーのリーダーであるソードマスターの桐生兼嗣(きりゅうかねつぐ)が指示を出す。ダンジョンの魔物達はリポップするまで一定時間出現しないため安全地帯となるからだ。


「悠人、今ここが何階層か分かるか?」


「75階層です・・・。」


僕達は現在とある人類未到達ダンジョンの探索依頼で来ているのだが一つ一つの階層がだだっ広く3ヶ月を費やしていた。悠人(ゆうと)魔法鞄(マジックバッグ)から携帯食料と体力&魔力が回復するオリジナルドリンクを皆に渡し話を切り出す。


「みんな、落ち着いて聞いて欲しい。実は、さっきの魔方陣で転移したときに15階層以前のマッピングが全て消去されてしまったみたいで何をやっても表示されないんだ。今は転移した後のマッピングだけが更新されている状態です。」


意を決して皆に話す。


「えっ?それってつまり私達このダンジョンで迷子になったって事?」


レンジャーの水瀬ほのかが聞き返す。皆もようやく理解したのか不安の波が押し寄せる。


「悠人、マッピングしかできない非戦闘職で地図師のお前が案内出来なかったらこのパーティーにいる存在意義がないことは分かっているよな?何処のパーティーからも誘われなかったお前を俺たちが拾ってやったんだから何とかしろ!」


僕は言い返すことが出来ず黙って俯く。


「かねっち、悠人ばかりに文句言ってもあかんよ・・・無理にダンジョンの先へと進んだ私達にも少しは責任があるさかい、いくらA級の地図師でもこれだけ広いダンジョンのマッピングだったからキャパオーバーしたんとちゃう。」


賢者の桜井ひなが兼嗣を問いただす。僕はS級パーティーである紅蓮の焔に臨時のサポーターとして誘われたが兼嗣は何かある度に僕に責任を押しつけその度にひなが僕をかばってくれていた。そんな僕に肩を持つひなを見たくない兼嗣はそれ以上僕に文句を言うことはなかった。


「あんた達、ホント仲が悪いよね・・・」


ほのかがそんな2人を見て呆れていた。


「それよりもかねっち、さっきの戦闘で左腕を怪我してたでしょ。こっち来て見せなさい。」


「これぐらいかすり傷だから、すぐに治る!」


「体調を万全にしておくのは冒険者として当然のことよ。いいから早く見せて!」


強い口調に気圧され兼嗣はブツブツと大した怪我じゃないのにと呟きながら、ひなの元へと近づく。


「ハイヒール」


ひなが回復魔法を唱えるとほのかな光が兼嗣の左腕を照らし怪我が治癒していく。


「はい、おしまい。」


「一応、礼は言っとくぜ。」


「そうじゃなくてありがとうでしょ!もう・・・」


素直じゃない兼嗣を見てひなが呆れている。


「兼嗣さん、2時の方角に魔物の集団と思われる生命反応を探知しました。もの凄い早さでこちらに接近して来ます。数は83体。いや待って!どんどん通路にリポップして魔物で埋め尽くされています。数は・・・とにかくもの凄い数の魔物達が約5分後こちらと遭遇します。」


そう告げたのは探求者である小鳥遊美音(たかなしみおん)だ。


「みんな、戦闘準備だ!いつも通り俺とほのかが前衛、美音が中衛、悠人とひなは後衛で皆のサポートだ。行くぞ!」


兼嗣が皆に指示を出す。


「嘘だろ・・・マジかよ・・・」


「私達このダンジョンで迷子だし、通路は魔物の群れで塞がれているし、ここまでかな。もう少しだけ、みんなと冒険がしたかったな・・・」


ほのかが小さく呟く。


「みんな、今までおおきに・・・」


ひなも続いてまるでこの世の別れだと言わんばかりのフラグを立てる。この部屋にはモンスターハウスの魔物以外は見えない壁に阻まれ侵入することが出来ないが食料も残り僅かしか残っていない。


「諦めるな!生きてここから出るんだ!帰ったら皆で朝まで飲み明かすぞ!」


士気が低下している事を察した兼嗣が皆を鼓舞する。


「だったら私は報酬でいっぱい買い物がしたいな。」


普段、おっとりとしたほのかが続いて話に乗った。


「美音、一番手薄な通路は何処だ?」


兼嗣が美音に尋ねる。


「数だけで言えば悠人の左手側の通路が一番少ないわ。ただS級の魔物が3体いて今の私達の力で突破できるかどうか・・・」


「そうか・・・ならS級の魔物がいない通路は何処になる?」


「それならひなの目の前の通路よ。」


「みんな、聞いてくれ!今から作戦を説明する。モンスターハウスの魔物はしばらくリポップしないから通路を塞いでいるB級の魔物だけに集中して危なくなったら一時退却し回復したらまた戦闘を繰り返すヒット&アウェイでいこうと思う。通路は8つあるからS級の魔物がいる通路は避け、一つでも多くレベルを上げるんだ。悠人、帰還石は残りいくつある?あと食料はどのくらいの期間持ちそうだ?」


「帰還石は3つで食料は持って20日間です。あと回復ポーションが13個にマナポーションが8個です。」


「そうか・・・」


兼嗣が皆に指示を出す。


「ひな、皆に身体強化魔法を頼む!」


「分かった。プロテクション!リジェネーション!」


ひなが皆に防御力10%上昇のプロテクションと1分ごとに傷を癒やすリジェネーションを付与する。


「ウォォォー」


兼嗣が雄叫びをあげ魔物の群れに突進していく。さすがにSランクの冒険者だけあって剣で急所を突きB級の魔物が次々と絶命していく。しかし魔力が尽きリジェネーションの効果も切れ魔物の群れと対戦する度に体力と気力は削られ徐々に生傷が増えていく。疲労困憊(ひろこんぱい)で隙ができた一瞬を突きゴブリンナイトが兼嗣の頭めがけて棍棒を振りかぶる。


「アッシドポイズン」


ひなが毒の状態異常魔法で牽制するとゴブリンナイトは突然苦しみだしその隙に兼嗣が剣で胴体を薙ぎ払う。


「ひな、助かった」


「戦闘中にボーっとしたらあかんよ。」


「何処見てるの?」


ほのかが素早い動きでA級指定のオーガを翻弄し猛毒属性のポイズンダガーで斬りつけると殺傷部位がたちまちただれ腐っていく。


「ウガーーーッ」


オーガは壊死した右腕を躊躇せず左腕で引き抜き、まるで棍棒のようにそれを振り回す。


「きゃぁぁぁー」


ほのかが素早く大きく振られたオーガの右腕を躱すがオーガの血液が服に付着するとみるみる溶けて白い柔肌が姿を現す。ほのかは装備していた服を破り捨て短パンも脱いだため下着姿になっていた。


「おぉぉぉーーー」


兼嗣はそれを見て興奮していた。


「もう、恥ずかしいからあまりじろじろ見ないで戦闘に集中して!」


ほのかが兼嗣をきーっと睨み左腕で胸の部分を隠し後ろへ下がった。


「ねぇ、悠君何か肌を隠せる物ないかな。このままだと戦闘中に兼嗣がじろじろ見るだろうから恥ずかしくて闘えないよー。」


ほのかが涙目で僕を見てきた。


「とりあえず今はこれで隠して。」


「ありがとう」


予備で持っていた僕のTシャツをほのかに渡す。あいにくズボンはストックしておらず下半身が露出しているため意図せずにTシャツと生足のコラボが完成した。


「兼嗣さん、後ろ!」


ほのかが大きな声で兼嗣に危険を知らせる。


「ウリャー」


兼嗣が振り向きざまに左袈裟切りでキルラビットを一刀両断する。


「みんな、一旦モンスターハウスのあった部屋に少しずつ後退して休憩しよう。殿は俺がするから美音と悠人が避難したら俺たちも後から続く。」


「了解。」


「分かったわ。」


僕達は何とかモンスターハウスまで辿り着いた。皆が戦闘によって慢心相違の状態で誰1人しゃべろうとせず、ただひたすら各々体を休めていた。そして絶望に満ちた雰囲気の中で兼嗣が重い口をゆっくりと開いた。


「みんな、聞いてくれ。帰還石は3つで、この場から3人が生還できるけど残りの2人はこの場に残ることになる。だから万が一の事を考えてこの場に残る者を先に決めようと思う。その1人には俺がなる。あと1人この場に残ると言う者は立候補して欲しい。覚悟がない者を残すことは出来ないから4人でよく話し合って欲しい。」


皆が真剣な眼差しでお互いを見ている。この場に残れば間違いなく死が待ち受けている事は分かっている。5人が残れば2人よりは生存率は上がるだろう。しかし現状5人が残っても生き残れるという保証が何処にもない。現に一番難易度が低い通路を選んだにも関わらず苦戦しアイテムを消耗し全員が疲労困憊している。


「僕が残ります。帰還石は凄く貴重な物で高価だから既存のメンバーを差し置いて新入りの僕が使う権利はないと思うんです・・・」


悠人はありったけの勇気を振り絞り残ることを決意する。


「ゆうとっち・・・」


「悠君・・・」


「・・・」


「分かった。悠人、3人に帰還石を渡してくれ。あと回復薬と食料以外は全部3人に渡せ。」


「分かりました。」


これから起こる未来を想像し手を震わせながら僕は3人に回復薬と食料以外全てのアイテムを手渡す。


「いいな!自分が危険だと思ったら躊躇せずに帰還石を使ってくれ。俺は最後の1人になっても決して諦めない。」


「かねっち・・・ありがとう」


ひなは必死に涙をこらえていた。


「本当にありがとうございました。」


ほのかは兼嗣に何度もお辞儀をしていた。


「じぇったいに生きて帰ってきてくだしゃいにぇ。」


美音は顔をくしゃくしゃにして兼嗣に別れの挨拶をしていた。


「じゃ、私達3人はこれで帰るね。無事に戻ってくることを祈ってるわ。」


ひながそう告げると3人は帰還石を使ってこの場から消えた。


「えぇ?」


僕は訳が分からず口を開け呆けてしまった。今までの話の流れだと最後まで戦闘のサポートをしてくれて危険だと感じた時に帰還するという話だったはずだ。


「悠人、察してやれ。3人は一秒でも早くここから立ち去りたかったんだろう。もしも3人が残ってくれたとして結局途中で抜けることは間違いないだろ?それに戦闘の途中で帰還石を使うのが遅れて間に合わないかもしれない。そうなったら無事に生還できるはずだった3人のうちの誰かが片腕を失ったり最悪命の危険すらあるかもしれない。そんなの悠人も嫌だろう?」


「ま、まーな・・・」


「いなくなった奴等の事をいつまでも言ってても仕方がない。今は残った俺たち2人でこの苦境を乗り越えるぞ!」


「だよな・・・」


結局、兼嗣の言葉にも一理あるなと考えた僕はそれを了承した。


「悠人、とりあえず体力を回復してから再度挑戦することにしよう。」


兼嗣と悠人は食事をしてからその場でごろ寝をすると今までの疲れが出たのか悠人はぐっすり眠ってしまった。どれだけの時間眠っていたのだろうか?


「兼嗣さーん、どこですかー」


近くに兼嗣が見当たらなかったので大声で叫んだ。だが返事がない。しかも僕の魔法の鞄(マジックバッグ)も見当たらない。もしかしたら起きない僕を置いて1人で戦闘をしてレベリングをしているのだろうか?サポーターの僕がいなくても兼嗣さんなら1人でレベリングできるだろう。


ー兼嗣視点ー


「お待たせ!」


兼嗣はとある人物達と待ち合わせをしていた。


「もう、遅いよー」


「ほんと、かねっちって昔から時間にルーズなんだからいい加減直した方がいいよ。」


「遅いから少しだけ心配しました。」


「悪い。悠人がなかなか眠らなかったから文句があるなら悠人に言ってくれ。」


「ぶーっ!そういう事なら許してあげてもいいかな。」


ほのかがにっこりと微笑む。待ち合わせをしていた3人は先ほど帰還石で転移したひな、ほのか、美音だった。兼嗣は隠し持っていた帰還石でダンジョンから抜け出していたのだ。


「でも何でこんな回りくどい事を毎回するの?」


ひなが兼嗣に質問をする。


「用心深いと言ってくれ。万が一にもないと思うが、もしも悠人がダンジョンから生還して置き去りにしたことを根に持たれて俺たちが恨まれたりギルドに報告されても嫌だろ?」


「要らぬ心配だと思うけどな。今までだって誰もダンジョンから帰って来ていないじゃない。兼嗣って相変わらず心配性だね~。私ならあんな生きた心地のしない場からは早く立ち去りたいけどね。」


ひなが少し呆れている。


「ダンジョンに入る前に帰還石を用意していなかった悠君が悪いんでしゅ。」


美音が頬を膨らませて、プンスカ怒っている。


「まーな、俺たちは帰還石を買うお金があったけど今まで碌な稼ぎのない悠人じゃ用意できなかったんだろうな。俺等もそれを見越してパーティーに誘ったんだけどな。本当ならマッピングした地図を複写した紙を奪ってダンジョンの奥に1人で置き去りにする予定だったのにまさかA級の地図師が転写のスキルを持っていないなんて誰も思わないよな。しかもマッピングが途中で消えてるし・・・。依頼は失敗したけど今回は上位の魔法の鞄(マジックバッグ)と途中でたくさんのアイテムもこの鞄の中に入っているし当たりだっただろ?この魔法の鞄(マジックバッグ)は上級だから容量もかなり大きいし今まで使っていた物と交換だな。古いのは明日にでも売ってしまおう。中古でもかなりの値が付くことは間違いないだろうな。」


兼嗣が悪びれる様子もなくそう話す。


「依頼失敗でギルドの査定には影響あるでしょうけどね。」


ひなが呟く。実は兼嗣達はサポーターをパーティーに加入させダンジョン奥深くに誘い込み持ち物を奪って置き去りにする常習犯であった。サポーターの多くは非戦闘職であるため戦闘に役立つアイテムを数多く所持している者が多く悠人も例外ではなかった。


ー悠人視点ー


マッピングで懸命に兼嗣さんを探すが見つからない。1人で何処まで行ったのだろうか?しかも僕の傍らに置いてあったはずの魔法の鞄(マジックバッグ)も見当たらない。全てのアイテムと食料が魔法の鞄(マジックバッグ)の中に入っていたので、あれがないと今後の食料にも困る。待っている間に悠人はナノマシンを使ってマップの探索範囲を徐々に広げていたため今では75層のマップはほぼ完成している。その課程で8本の通路を通らなくても下層へと繋がる隠し通路の存在を知った。ただしそこにはガーディアンがいるので、こいつを何とかしなくてはならない。非戦闘職である悠人が勝てる相手ではないことは明白だ。目覚めてから3時間が経過したが兼嗣は戻らず悠人は1人で先へと進む決意をした。


「僕の戦闘力では魔物の群れと闘って上層へ戻ることはできないし下層へと繋がる部屋を守るガーディアンを倒す事も恐らく出来ない。だけどダンジョンに存在する隠し通路を上手く活用することができれば外へ繋がる魔方陣があるかもしれない・・・」


悠人は隠し通路を使って魔物を避けながら75層を探索した。隠し通路には所々に宝箱が置いてあったので回収することを忘れない。


「そろそろ荷物が限界でこれ以上は移動に差し支える。こんな時に魔法の鞄(マジックバッグ)があればな・・・」


小さい頃に祖父から貰った大切な魔法の鞄(マジックバッグ)が今は手元にない。そんな事を考えているとまたもや宝箱が隠し通路に置かれていた。空けてみると8つの穴の中に色とりどりの宝石が埋め込まれたバングルが入っていた。それと一緒に手紙も入っていた。


ー私はレガリア王国の錬金術師でとある人物から身を隠すためここで長い日々を過ごしていた。ここに来てから早50年私も老いには勝てずこの身もやがて朽ち果てる事だろう。ここにいる間、たくさんの隠し部屋と通路を作成し私の錬金術による多くの品々をそこに隠したが、あれらはすべて試作品だ。その創造のバングルこそが長年の研究成果の結晶だと言っても過言ではない。魔石の等級とMP消費量で品質が左右されるがきっとお主の役に立つだろう。では健闘を祈る マギウスー


今の僕にとって今一番必要なのは一緒に戦闘をしてくれる相棒だ。


「頼む!僕を決して裏切らない優秀な相棒が欲しい。」


そう考えた僕が全魔力を消費し創造すると魔石の輝きが全て消え透き通る羽をばたつかせ地面に着地し両手でスカートの端を掴みお辞儀をする1人のピクシーが現れた。


「ぜ、全部消えてしまった!?あ~っ、こんな事なら魔法の鞄(マジックバッグ)にすれば良かった・・・」


創造1つにつき魔石1つの消費だと考えていた僕は後悔していた。落ち込んでいる僕に先ほど創造したピクシーがポンポンと背中を叩く。


「まずは私を創造してくれてありがとね。創造神様の事なら何でも言うこと聞くから遠慮無く言ってちょうだい。」


「本当に何でもいいの?」


「あの~ちょっと目がやらしく見えるのは気のせいかな~。」


目の前のピクシーは年頃の娘が絶対に男の前で言ってはいけない言葉を発した事で僕は思春期の男の子が1度は考えるだろう事を一つ残らず想像してしまった。ま、体が小さい分、期待も比例して小さいのだが・・・


「それより創造神様は止めて欲しい。悠人って呼んでくれ。」


「創造神様の事を呼び捨てするなんてできないよ~。それならご主人様と呼んでもいいかな?私の事は好きに呼んで構わないから!」


目の前の妖精は緑がかった青の澄んだ瞳で僕を凝視している。


「そうだな。瞳が印象的だからシアンなんてどうだ?」


「それ、いい!響きが良くてとてもすっごく気に入った!ご主人様ありがとう。」


なんにせよ僕に新しい仲間ができた事は素直に嬉しいが、この小さな体で戦闘の役に立つのだろうか?できれば攻撃力の高い戦士系か防御力の高いタンクが良かった。


「戦闘に入る前にお互いのスキルやレベルを確認しておこう。まずはシアンからだ。」


「今はLv1でスキルは4属性の初級魔法と付与魔法をいくつか覚えてるよ。あと地母神の記憶ね。これは前世の記憶を辿ることで万物の理を知ることができるわ。」


シアンが、どや顔でない胸を反っていた。下層の強力な魔物達には恐らくシアンの攻撃は通じないだろうが付与魔法と地母神の記憶とやらは役に立つかもれしれない。


「僕はLv35で地図師だ。スキルは探索とマッピングで地図を作成することができる。古代遺産(アーティファクト)の知識もあるけど今はないから宝の持ち腐れだな。戦闘についてはあまり期待をしないで欲しい。」


サポーターであるから戦闘力がなくても仕方がない。自分が戦闘に参加出来ないことを分かっているからこそ今までも多くの冒険者を支援してきたのだから・・・と自分に言い聞かせていた。


「ご主人様の事は私がこの命に代えても守ります。」


自分よりも遙かに小さなピクシーのしかも女の子に言われて僕の小さなプライドに火が着いた。


「主従関係なんか気にしなくていい。僕はシアンよりも体が大きいし守るのは僕だ!」


「ありがと・・・」


シアンは顔を赤くして今にも落ちそうな感じでゆらゆらと目の前を飛んでいた。


「シアン、僕達はお世辞にも強いとは言えない。安全にLvアップできる方法とかないかな?」


「そうね~。このダンジョンにある隠し通路は次元が違うから本来こちらから攻撃もできないし受ける事もないの。だけどダークマターを錬成した武器であればそれが可能よ。ちなみにマギウス様が錬成した武器の中にダークマターを錬成して作られた試作品があるよ。」


僕が腰にぶら下げている刀がそうだったようだ。


「えぃ!」


僕は隠し通路の向こう側から刀で魔物を突きまくる。魔物からは僕達に攻撃できないため安全に経験値だけが上昇しLvも上がっていった。そして周囲の魔物の気配がなくなった頃には僕のLvは80を超えていた。


「場所を変えてLvアップしよう!」


「はい、ご主人様。」


次の狩り場に場所を変更しLvアップを図っていた。そしてとうとう人間の限界値であるLv99に到達する。


「シアン、Lvがカンストしたしそろそろこの階層から下へ行こうと思うんだけど大丈夫かな?」


「まだね。そのLvだとこの階層にいるガーディアンすらも倒す事ができないわ。今のLvで下の階層へ行くのは危険よ。もっとLvを上げてから挑むべきよ。」


「さっきも言ったけど僕はすでにLvがカンストしている。現にLvが99になってからたくさんの魔物を倒したけどLvが上がっていない。」


「それは次のレベルアップに必要とする経験値が到達してないからよ。」


「へっ?」


僕は予期せぬ返答に戸惑ってしまった。なぜならLvが99になってから恐らくすでに200万を優に超えているからだ。恐らくといったのはLv99になってから経験値の画面が※※※となっていて表示されていないからだ。


「じゃあとどのくらい経験値を積めばいいの?」


「そうね~あと9億9752万7612の経験値が必要かしら。」


シアンは真顔でとんでもない事を言い放った。だが納得もしていた。それだけの経験値が必要ならばいくら上級冒険者でも人間の寿命を考えれば到達することは無理だろう。


「経験値を積めばLvが上がる事は分かったけど、それだと僕の寿命が尽きそうなんだけど・・・」


「それについては創造のバングルで経験値倍加スキルを作成してみて。」


僕は最初に填めてあった物よりも二回りほど小さな魔石を全ての穴に填め創造のバングルで経験値倍加スキルを作成する。


「せめて2倍の経験値倍加スキルは欲しい。頼む!僕の期待に応えてくれ。」


創造のバングルが目映く光る。


「スキル、経験値10倍を習得しました。」


頭の中に女性の声でアナウンスが流れた。


「よし!期待以上だ。」


僕は小さく右手でガッツポーズをしていた。あれからどのくらいの月日が流れたのだろうか?ようやく必要経験値が残り1万を切っていた。


「これで最後だ!」


僕は錬成した全能力値3倍スキルを発動し改心の一撃で魔物を撃破した。


「おめでとうございます。貴方は人類で初めて限界突破を果たされました。今からそれを授けます。」


すると突然目の前の空間から右手が出てきて僕の左目に突き刺し眼球を持ち去った。


「うわぁぁぁーーー」


辺りに僕の叫び声が鳴り響く。5分ほどして再び頭の中にアナウンスが流れた。


「冒険者が片目を失ったくらいで見苦しいですよ。現時点で貴方は神の使徒となりましたので、その証となる神眼を授けます。神眼とはあらゆる物を見通す力を有しており神眼を持つ者同士であればどんなに遠く離れた場所でも念話や位置情報の共有が可能で嬉しいことに私とも通信が可能です。あと限界突破したお祝いに1つだけ質問をする権利を貴方に与えます。」


アナウンスをしている女性は少し浮かれているようでいつもより声のトーンが高い。


「それでは名無しさんに質問です。このダンジョンは貴方が作られたのですか?」


僕は確信に迫る質問をしてみた。


「ぶーっ。女神に対して名無しさんはないんじゃない?私にはアルテナって名前があるんだから!コホン・・・質問の問いに答えます。貴方の想像通りこの惑星にあるA級以上のダンジョンは私が作成し管理を担っています。このダンジョンも私の管理下にある中の一つです。ちなみにB級以下のダンジョンはA級以上のダンジョンから漏れ出たマナから偶然自然発生したものです。」


この自称女神が本当にダンジョンの管理者ならここから出られるかもしれない。


「もしもダンジョンが貴方の管理下にあるなら僕達を地上に帰すことも可能ですか?」


「質問は1つという約束です。その問いには答えられません。」


なんだよ、自称女神って言ってるけど本当は何もできないじゃないのか?


「ふふふ、ちゃんと聞こえていますからね。それと自称ではありませんから。」


顔は見えないが悪い顔をしていることは間違いない。


「悪い顔もしていませんから!それに神に頼らず自分がダンジョンマスターとなればいいではありませんか?そうしたらダンジョンの最下層から地上に一瞬で移動することだって可能ですよ。」


この自称女神は今とんでもない事を言い放った。ダンジョンマスターになれだって?それはダンジョンコアを守るガーディアンを倒せってことだよな?以前、A級ダンジョンの最下層に到達したS級パーティーがダンジョンコアを守るガーディアンに手も足も出せずに全滅してしまったと聞いた事がある。ここは階層数から判断するとS級ダンジョンで間違いない。そんなダンジョンの最下層のガーディアンを倒す事など今の僕達には到底不可能だ。


「貴方の考えていることは間違っています。ここは私が最初に作成した原初のダンジョンで当時はS級でしたが成長して今ではSSS級です。ここまで成長したダンジョンのマスターを倒す事は骨が折れるでしょう。ですから命が惜しいのであれば上層へ向かうことも選択肢の1つです。堅実かそれともハイリターンを求めるか?それは貴方達次第です。」


「誰もまだ見ぬ前人未踏の地がそこにあるなら挑戦するのが冒険者でしょう!」


「フフフ、その通りね。」


こうして僕達の旅が始まった。

面白い、続きが読みたいと思われた方は評価をお願い致します。反応を見て連載するかどうか決めたいと思います。よろしくお願い致します。

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