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蒼き髪の魔術師  作者: ゆず
第一章 技術向上ノ章
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007 インベル・シードゥストラ

まずは、投稿期間が三週間ほど空いてしまったことをお詫びいたします。

言い訳をするつもりはありません、サボっておりました。

そんな方はいないと思いますが、もし投稿を楽しみにしていた方がいて下さったのなら、心からお詫びします。

こんな作者ですので、今後も投稿頻度についてはあまり期待せずに待っていたほうが良いかと思いますが、出来るだけ早く投稿できるように努めさせていただきますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

  私は、その扉に付いた重たいノックを持ち、そのまま打ち付けた。

  数分の沈黙の後、その重たい扉は開く。

「いらっしゃい」

  自分の目の前で微笑むその女性は、いつになく優しい雰囲気を纏わせている。

  ……と、言っても、会うのはたった2回目なのだけど。

「上がって。……あら、そのお嬢さんは? いや、「お嬢さん」なんて感じじゃないわね。その方は?」

  ソプラのことだ。

わたくしは、ソプラ・シルフィードと申します。先程、チバミズキさまと主従の契約を結ばせていただきました。その際、名を賜りましたので、この様に名乗ることができております」

  まだ精神は14歳の私からすると、「さま」付けされるのは恥ずかしいのだが、それも承知での契約なのだから、今更どうこう言える問題ではない。

「フェネさん、ソプラも、一緒に弟子入りさせてもらえませんか?」

  そう言い、頭を下げる。横で、ソプラも頭を下げたのがわかった。

「私は構わないけど……、いいの? こんな、下手したら天位に届くぐらいの子を預かって」

  フェネさんが、カネレさんの方を見る。

「問題ないわ。戦もなさそうだし、いざとなったら呼び戻すし。幸せな事に、今、シルフは天位精霊に恵まれてるのよ」

  カネレさんがそう言うと、フェネさんは、ふふ、と笑って、「そうね」と答えた。

「じゃあ、後はよろしくね、フェネ」

  カネレさんは、そう言い残すと、すっと消えてしまった。瞬間移動的な何かだろうか。

「じゃあ、二人とも、上がって」

  フェネさんに言われ、私は、今から私の家になる広大な屋敷に足を踏み入れた。

  落ち着いた木の匂いと、柔らかい太陽の光が合わさって、重厚で上品な雰囲気になっている。

  いつ来ても落ち着く場所だ。

「あなたの部屋はこっち。えっと、ソプラの部屋は、今エルムに掃除させるから少し待っていて。今夜はきちんと部屋で眠れる様にするから」

  フェネさんはそう言うと、奥の方に向かって「エルム、部屋を掃除しておいて」と声を掛けた。返事がきちんと帰ってきたのを確認すると、フェネさんは、昨日の書斎とは反対の方向へ歩き始めた。

  数分歩くと、一つの扉の前に着いた。

「ここが、練習の部屋。何重にも結界を張ってあるから、魔法撃ち放題なの」

  フェネさんは、その重そうな扉を1人で開きながらそう言った。

  その部屋は、本当に何もなかった。見渡す限り壁と床と天井しかない。天井には、よく見ると大きな仮補強の板が打ち付けてある。その間から日が差しているところを見ると、余程の大穴が開いている事になる。

「フェネさん、あの板……」

  私がそう言うと、フェネさんは、かなり慌てた様子で、

「いや、この間エルムが雷をぶっ放しちゃったのよ! この部屋、内側の力は大抵防ぐんだけど、空から降ってくる雷は防ぎきれなくて。屋敷には最低限の結界しか敷いてないから」

 と言った。

  様子から、明らかにぶっ放したのはフェネさんだと言う事は読み取れるのだが、口には出さない。それが大人への一歩なのである。

  ……それよりも、エルムさんは、ただのメイドさんではないのだろうか?

  話の流れ的に、エルムさんも魔法が使える様だし、この部屋で練習しているということは、フェネさんに習っているということも考えられる。

「フェネさん、エルムさんって、ただのメイドさんなんですか?」

  私の中での結論はノーなのだが、どうなんだろうか。

「あ、エルムは、私の弟子。つまりは、あなた達の兄弟子に当たるわね」

  やっぱり。

  となると、私も弟子となったからには、先輩とか読んだほうがいいのだろうか。……あ、フェネさんのことも、師匠、とか呼ばなくていいのだろうか。

「あの、フェネさん、フェネさんとエルムさんの呼び方って、今までの感じでいいんですか?なんかこう、先輩、とか、師匠、とかつけなくてもいいんですか?」

  私がそういうと、フェネさんは割と丁寧に答えてくれた。

「ああ、それもそうね。まあ、あなたの中で分別がつくのであれば別に呼び捨てでもいいのよ。私からは特に制限はしないけど、私が師匠だという意識が薄くならないような呼び方になさい。エルムは、本人に聞くといいわ」

  そう言われ、私は少し思案する。

「……じゃあ、師匠、って呼ばせてもらいます」

 やはり、師匠なのだから、こう呼んだ方が分別がつく。私の気持ち的な面でも、この選択がベストだと思えた。

「分かったわ。じゃあ、早速【師弟】を結びましょうか」

 ……師弟?

 主従の派生的な何かだろうが、基本的にやり方は同じとみていいのだろうか。


 《回答します。問題ありませんが、付与するものに違いがあります。【師弟】は大まかに2種類あり、一方は武術、もう一方は魔法です。【主従】では魔力の付与を行いますが、武術の【師弟】では能力スキルと段位、魔法の【師弟】では能力スキルと魔術師名の付与を行います》


 魔術師名、と言うことは、アルファベットで書けるかっこいい名前をもらえるのだろうか。

 そもそも、この世界にアルファベットの概念が有るのかも怪しいのだが、カネレさんや師匠の名前からしても、書けないことはなさそうだ。


「分かりました」

 私がそう返答すると、師匠は明らかに驚いたような顔になり、私に問いを投げかけた。

「もしかして、既に能力スキルを持っているの?」

 私は、特に隠すことでもなければ、隠し通せる自信もなかったので、素直に肯いた。

「カネレさんから、さっきもらいました」

 私がそう言うと、師匠は、「少し体に触れるわね」と言って、私の胸元に触れた。

 例の如く師匠の手が透け、私の心臓のあたりを撫でるような感覚が襲う。

 少しすると、師匠の手が離れ、その感覚は遠のいていった。

下位能力ロースキルとは言え、司書、とはね」

 ……何か問題でもあるのだろうか。

「……あなた、一生カネレに感謝すべきね」

 え?

「この世界では、9割以上の生き物が能力スキルを持ってるわ。大概が、あまり強くない能力スキルなのだけれど、たまにヤバいのがある。例として、司書。あとは、何人かの魔王の能力スキルが該当すると思うわ。まあ、魔王も馬鹿ではないから、自分から能力スキルを開示したりしないでしょうし、推測に過ぎないけれどね。他には、初代精霊盟主が持っていたとされている【先導者】、遙か西の国の有名な国王が持っていると噂される【武将】なんかね」

 イマイチ実感が湧かない、と言う顔をしていると、師匠が具体的な数字を上げてくれた。

「これらは基本的に、になるけど、一般的な農民の持つ【農民】は、作業効率1.2倍と疲労耐性。職人の持つ【職人】は作業効率1.25倍と創作補助。それに対して貴女の【司書】は?」

「知識整頓、詠唱速度1000倍、時空間の遅延及び収縮25倍……」

「この観点から見れば、カネレに感謝しなければならない理由はわかるはず。……手を出して」

 え、と思ったが、【師弟】を結ぶのだと言う答えに行き着いたので、素直に手を差し出した。 

 師匠が、私の手を握る。

「そして、私からもう一つ」

 師匠がそう言うと、私の脳裏に、美しい珠がもう一つ出来上がった。


下位能力ロースキル「魔導師」】


「魔法使いが持てる最上級の能力スキルよ。上限がないから、倍率は使い込むほど上がるわ。……それから、さっき言ってなかったけど、【司書】は上限開放型。習得率が100%に達すると、次の階級ランクに上がる」

 師匠はそこで言葉を区切り、残りを一息に綴った。

「そして、貴女の魔導師名はインベル。インベル・シードゥストラを名乗りなさい」


 その名が、私の魂に刻まれるのがはっきりと分かった。


 夜風が、彼女の美しい黒髪を靡かせ、綺麗な流線美を作り出していた。

 灰青色のローブを纏ったその女性は、思案する。


 ……あの子を、同じ目に合わせてしまわないだろうか。

 ……長年の孤独故に引き取ったが、彼女は正直な所、不安でしかないのである。


「……師匠?」

 この少女の蒼髪も、あの子のように美しいのだ。


 今でなくても良い。いずれ、彼女が己の「書」を開く時、知ってもらえれば、それで良いのだ。

最近、自分の存在意義を見失ってきている気がします。

だからこそ、この世界に逃げ込んだのかもしれません。

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