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蒼き髪の魔術師  作者: ゆず
第一章 技術向上ノ章
13/33

012 精霊召喚

書けちゃったので投稿しときます。

明日こそお休みもらいます。

「じゃあ、ここまでにしましょうか。魔導書の内容の確認なんてしてたら、きりがないから」

 師匠は、魔導書を閉じながら、そう言った。

「……師匠」

「何?」

「……今の内容だと、火を扱うには精霊と契約しなきゃなくないですか」

「ええ、そうよ」

 それが何か?と言うような調子で師匠が肯定する。

「何か、知識を身につけて魔力の扱いを覚えたら、魔法は使えるみたいな雰囲気だったんですけど?」

「……それは、ね、気のせいよ、そう! 気のせい!」

 …………。

 驚愕で、言葉に詰まる。

 そして、私は思うのだ。

 ああ、やっぱり師匠はお茶目なんだな、と。

 そして、新たに天然も追加しようと心に決めたのだった。


「次は、魔力の扱いについて。……と、言っても、あなたには容易いことでしょうけどね」

 そうですね、とも、そうでもないと思います、とも言えないでいると、師匠が、魔力を出して見せた。

「これが、物質世界に出した魔力。これは、以前あなたも出来たわね」

 私が頷くと、師匠は、その魔力を体内に戻し、言った。

「……正直言うとねえ、魔力の扱いなんて、結界張れればそれで良いのよねえ……」

「……え?」

「いや、本当よ? だって、物質世界に出した魔力に、属性イメージを付与して放つのが魔法なんですもの。物質世界に出して、結界を張る程度のことができれば、何も問題ないのよ」 

 思わずツッコミを入れたくなるのを抑えつつ、私は言った。

「じゃあ、後、精霊と契約しなきゃないんじゃないんですか?」

「そうなのよ。でもねえ、正直、面倒くさいのよねえ……。風属性だけならカネレのところで済むのだけど、全属性だと、歩きで一月かかるのよ」

「一月……?」

 私は、かなり困惑した。一月もかかるのは、確かに面倒だ。召喚でも出来ればいいのに。

「……あ」

 突然、師匠が何かに気づいたような声を上げた。

「私、召喚魔法使えたんだった」

 私は、心底呆れてしまった。

 それもしょうがないと言うものである。

 自分の使える魔法を忘れるとは。

 やはり、師匠は天然なのだ、と、再認識したのである。


 この屋敷には、召喚の部屋があるのだと言う。本来はなくても良いのだが、部屋が余っていたので適当に召喚部屋にしたそうだ。

 おかげで、ほとんど使われることなく数十年放って置かれていたらしい。 

 扉を開くと、埃が舞い上がったのが、その証拠である。

「いやー、ちゃんと掃除しとけば良かった」

 という師匠の呟きが聞こえたが、きっと今後も掃除されることはないのだろうと悟った。

 師匠は、部屋の中へと進み出ると、風を操り、部屋中の埃を隅に寄せた。かなりの高さの小山になっているので、数十年、と言っても、二十年などではなく、七十年、八十年なのだろうと推測できた。

 書斎同様、この部屋にも、入り口以外に扉が一つ付いている。

 師匠は、その扉を開け、中から杖を引っ張り出してきた。

 銀色の持ち手に、金色の天球儀のようなものがつき、その中心には、青いクリスタルが固定されている。

 さっきの師匠の様子からは想像できないほど、その杖からは尋常ではない力を感じ取ることができた。

 師匠の力の一端を見たようで、少し不思議な気分になる。

 師匠は、部屋の中心に歩み出ると、杖の先端を床に勢い良く打ち付けた。

 カーン……という音と同時に、師匠を起点とした、部屋いっぱいに広がる魔法陣が起動した。

 魔法陣は、白い光を放ち、そこには、訳の分からない文字や、幾何学的模様が浮かび上がっている。その光が、いつの間にか光の遮られていた部屋を、神秘的に演出する。

「万物を司る精霊よ、我の召喚に応えよ。我は、精霊の御力みちからを欲するものなり。我が願い、聞き届け給え。現れよ、精霊達の宴(サモンスピリッツ)

 それは、先刻のふざけた師匠ではなかった。

 その顔は、完全に魔法使いの目をしていて、思わず見惚れてしまうほど、美しかった。 

「インベル、こっち」

 師匠が、手招きをしているので、魔法陣の真ん中に進み出る。

 魔法陣の中に足を踏み入れると、凄まじい力に、一瞬怯む。

「大丈夫。真ん中まで来て」

 師匠に支えられながら、魔法陣の中央に歩み寄った。

「祈って」

 そう言われ、私は手を組んで祈りを捧げた。

 すると、部屋の天井から、様々な色の光の珠が十一個、降って来たのだ。

 すると、脳に直接語りかける声が聞こえた。


(なんか、凄い力を感じたから、来てみたよ! 僕の力、存分に使って)


 その言葉と同時に、脳裏に、また一つ、珠が浮かび上がる。

 その紅い珠には、「四大元素に基づく炎の精霊サラマンダー王位レクス・サラマンダー」と文字が浮かんでいる。

 ……王位?


(あら、先駆けですの? レクス、いい加減に無駄な競争心を捨てたらどうなの? ……あら、ごめんなさい。貴女のこと、忘れてしまっていたわ。これから、よろしくね?)


 もう一つの紅い珠には、「五行に基づく炎の精霊王位レーギーナ」、と。


(あちゃー、先越されちゃった。まあ、いいや。インベル、これからよろしく!)


 黄色の珠には、「五行に基づく金の精霊上位アウルム」。 


(お、私の席は……残ってるな。……よし、これからよろしく!) 


 茶色の珠に、「五行に基づく土の精霊上位テッラ」。


(テッラ、こんな凄い力の持ち主なんだったら、俺の方が役に立てるさ。俺のこと、贔屓にしてくれよな!)


 もう一つの茶色の珠には、「四大元素に基づく地の精霊ノーム王位エブル・ノーム」。


(私、お役に立てるよう、頑張ります!)


「五行に基づく木の精霊王位ウィリデ」、と。


(あらら、もう皆さんお揃いなの? ふふ、私も混ぜて貰おうかしら?)


「五行に基づく水の精霊王位カルレム」。


(あら、カルレム、私を差し置いて契約するなんて。身の程を弁えた方が宜しいのではなくって?)


「四大元素に基づく水の精霊ウンディーネ天位サピュルス・ウンディーネ」と。


(フェネ、貴女の愛弟子には、私が付いてあげないとね)


「四大元素に基づく風の精霊シルフ天位カネレ・シルフィード」。


 カ、カネレさん⁉︎

 何やってんですか!


(あら、嫌なの? 因みに、風の天位精霊なら、私が一番強いのよ?)


 そ、そうですか。

 あ、ありがとう、ございます。

(ふふ、どういたしまして)


「終わった、かな」

 師匠が、安堵の声を上げる。


(まだまだ終わっちゃいないよー!)


 ……え?


(僕は、光の精霊最上位レーギア! 僕が来てあげたんだから、消失なんてしないでよ?)


「光の精霊最上位レーギア」、と。


「ひ、光の、最上位……?」

 師匠の反応を見るに、やばいやつらしい。


(ははは、びっくりしちゃったかな? でもね、この子には、強い光の力を感じたんだ!)


「ありえない、絶対、ありえない」

 あ、師匠が現実逃避に走った。


(フェネ、落ち着きなさい。あなたが取り乱してどうするの)


 カネレさんが、師匠に声を掛ける。

「だって、信じられる⁉︎ 光の、それも、最上位よ⁉︎」


(しょうがないじゃない、もう契約は済んじゃったんだもの)


「カネレ、だって……」


 結局、そこから師匠を慰めるのが、一番手間が掛かりそうなのでした。



 


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