011 Grimoire of librarian part3
今回で、設定説明の回は終了です。
第三章 魔法使いと精霊の軌跡
精霊と魔法使いの関係は、古代より築かれてきた永き歴史です。
その始まりは数万年前にも及び、数々の人間の尽力によって築かれました。
元々、魔法使いという種族の祖は、人間なのです。そして、その特徴として挙げられるのが、魔法使いは子孫を必要としないこと、というのは有名な話です。
人間は、主に物質世界に存在の重きを置いています。人間は、物質世界の肉体が滅ぶと死が訪れるのがその証拠です。人間にとって魂とは「意思」でしかなく、それほど重要ではないのです。
しかし、魔法使いの存在に対する価値観は、それとは正反対の考え方をしています。
魔法使いにとって、精神世界の身体、即ち魂こそが大切な身体なのです。
故に、魔法使いは魂を破壊されることにより消滅し、その存在は消えることになります。つまり、魔法使いは、何度物質世界の肉体が滅ぼされようと、魂が消えない限りは本当の意味で消滅することはない、と言うことになります。
それはつまり、睡眠や食事を必要としないことに直結しています。そもそもの話、人間が食事をとったり、眠ったり、呼吸をしたりするのは、そうしなければ肉体を維持できないからです。つまり、魔法使いが魂に存在の重きを置く以上、肉体は、「物質世界に存在するための替えの利く身体」でしかないということです。つまりは、食事や睡眠を取らなければならないという制限を課してまで維持する必要はありません。いざと言う時、それが枷となる場合もあるからです。故に、魔法使いの物質世界の身体の維持は、魔力を用いて行われています。魔法使いの身体には、消化器や循環器、呼吸器などの器官や臓器が存在しません。では、その身体は何で構成されているかといえば、それは、「仮初の身体」と言う他ありません。魔力に臓器等の想像を付与し、顕現させているだけなのです。故に、「器」に魔力が残っていれば肉体の再生が可能なのです。仮に、器に魔力が残っていなくても、魔法使いは魔力を精神世界から吸収する能力を有しているため、少し待てば肉体の再生が可能となります。
そして、先程も言った通り、魔法使いは、子孫を残すことを必要としません。
それは、魔法使いという種族が個人で完成しているから、と言われていますが、恐らくは、魂が存在する限り消滅することがない、という独特の価値観により、寿命が存在せず、理論上は永遠の時を生きることができるからと推察することが出来ます。理論上、種が途切れることがないために、生殖能力が失われたのだと思われます。
では、粗方魔法使いの身体の仕組みの説明を終えたところで、本題の精霊と魔法使いの歴史に移っていきます。
え?ここまでは前置きだったのかって?
その通りですが、何か問題でも有るのですか?
え?章の題名は内容に合ったものにすべき?
……私の管轄外ですので。
……続けます。
ここからは、精霊と魔法使いの歴史について説明していきます。
魔法使いという種族が現れたのが、約17万年前と言われています。
その頃は、魔物が進化を繰り返し、種族数が増加していた時代で、魔物の脅威に人間は対抗する術もなく、多数の死者を出していました。
そんな時、怪我人の治癒がもっと簡単に出来れば、という人間の願いから生み出されたのが、魔法使いだったのです。
初めは、魔法使いは、回復魔法を使い、魔物との戦いでの負傷者の傷を癒すことのみを行っていました。
しかし、だんだんと、魔物の弱体化や自陣営の強化、睡眠、麻痺などの異常効果の付与などの効果を持つ魔法術式が組まれるようになり、魔法使いの需要は格段に上がったのです。
そして、時代が流れ、「国」という概念が生まれたのです。
そして、共に魔物という脅威に立ち向かっていたはずの他国の人間が、富や名声を求めて自国に攻め入ってくるようになりました。
そんな時、魔法使いに求められたのは防御系魔法ではなく、敵軍を一瞬で蹴散らすような、攻撃系の魔法でした。
魔法使い達は、各国の期待に応える為、各属性の力を持つ精霊に目を付け、約12万年前、交渉会を開きました。
これを、「精魔交渉会」と言います。
しかし、精霊は争いを嫌っていたが為に、人間の誘いには乗らず、その話を断りました。
その交渉会は幾度となく行われましたが、遂に魔法使い側の人間は諦め、約8万7千年前の「精魔最終交渉会」を最後に、交渉会は行われなくなりました。
それから、魔法使いは、精霊の意見を尊重しようとする人々が増え、精霊と関わることはありませんでした。
しかし、人間は、正直な所、精霊を恨んでいたのです。
ある国の王は、王宮魔術師に、精霊に対抗しうる魔法術式を開発するよう命じました。
その魔術師は、7千年もの時をかけ、その術式を完成させました。
これを、「精霊の終焉」と言います。
この術式は、古代魔法の祖となるのですが、古代魔法を語る上で外してはならない人物が存在します。
パルウム・アクアリウム、古代魔法の発展に尽力した異世界転生者です。この人物は真の天才で、古代魔法の術式を幾つも生み出しました。
これにより、精霊に対抗できるほどの戦力が、人間側に備わったのです。
約4万年前にパルウム・アクアリウムが消滅すると、その直後、「精魔千年戦争」の火蓋が切られました。
精霊の聖地は荒れ放題となり、各国の領土も、酷い有り様となりました。
その戦争は、文字通り千年に渡って続けられ、世界は、廃墟と化したのです。
古代魔法によって、ギリギリ耐えていた人間側でしたが、廃墟となった世界で、作物が育つわけもなく、飢餓で多数の死者が出ました。
ここで、精霊側が、和睦の提案をするのです。
その提案が、なぜ今まで為されなかったのか。
理由は簡単、人間側が話を聞かなかった、この一点のみです。
精霊側も黙ってやられる訳にもいかず、仕方なく交戦していたのでした。
ここで提案を受け入れないほど、人間は能無しではありませんでした。
そして、約3万7千前、魔法学の決定的な転換点である、「精魔会談」が行われたのでした。
精魔会談によって、双方の意見が互いに尊重され、現在の形に落ち着いたのでした。
争いは好かない、という理由で契約に応じていなかった精霊は、争いに使ってもいい、と思う者のみ、契約をするようになったのでした。
これにより、今の魔法の主力である、「精霊魔法」が確立されたのです。
世界設定を考えるというのはかなり疲れます。
ついでに、タイピングも習得中なので、かなりの疲労感が。
数日、お休みをもらうかもです。
でも、次回からはちゃんと物語に戻るので、割と早く出せるかも。
でも、一日くらいは休ませてもらうと思います。