009 Grimoire of librarian part1
世界設定説明の回です。
司書さんが地球人の皆さんに説明してくれます。
あと2、3話続く予定です。
特に面白いところはありませんが、読んでもらったほうがこの先の魔術系シーンをより楽しめるはずです。
(楽しめるくらいの文章を書ける力が私にあるかは別としておいてください)
その晩、師匠はカネレさんを呼び寄せ、徹底的に問い詰めた。
と、言っても、収穫量はあまりにも少なかったのだが。
一言で言うと、カネレさんはそんな細工はしていないのだそう。
この件について司書さんに聞いてみると、
《回答します。恐らく、何らかの現象によって、能力が突然変異したものと思われます》
と、言うことだ。
つまり、当の本人ですら、推測でしか語れない様なことが起きたと言うわけである。
司書さんの膨大な量の知識(自称)を持ってしても、原因が分からないのだ。
当然、当人ではない師匠やカネレさんに分かるわけもなく、その晩の問答は、ほぼ収穫がないまま終わったのである。
「えっと、まあ、昨晩のことはひとまず置いておくとして、理論は理解したのよね?」
「はい」
当たり前だ。だが、実際私がその知識を持っているかと言うと、そうではないのだが。
全ては司書さんの管理の元なので、私自身が理解しているわけではないのである。
建前上は私の知識だが、事実を言うと司書さんの知識なのだ。
「じゃあ、一つずつ確認だけしましょうか」
「はい」
Grimoire of librarian〜司書の魔導書〜
第一章 精神世界と魔力
魔法学は、精神世界と密接に関わっている学問の一つです。
私の力を持ってすれば、すべての知識を皆さんに与えることができますが、どうやら地球の皆さんには無理なようです。つまり、異世界の魔法事情に興味がある人は、この魔導書を読むほかないと言うことです。
私の膨大な量の知識と経験を持って説明すれば、魔法学を小学一年生の算数より簡単に理解することができるでしょう。
第一章では、精神世界というものの概念や、魔力の存在について解き明かしていきます。
こんなもの、私の知識と経験を持ってすr……。
つい、前置きが長くなってしまいました。
では、本題に入っていきます。
まず、皆さんの住む地球は物質世界にあります。
主人の住む世界−皆さんから見た異世界–も、物質世界に存在しています。それに対して、魔力は、主に精神世界に存在しています。
精神世界は、98%の確率で存在するとされていますが、その真相は分かっていません。しかし、無いとなると魔力という物の説明がつかなくなるため、あってほしいと言うのが学者たちの考えです。
ここでは、精神世界は有ると言う前提で話を進めます。
精神世界に存在するものと言えば、異常な濃度の魔力、生物の魂、精霊、悪魔、天使の核、能力などが有名です。これらは、目に見ることはできませんが、物質世界に対し、大きな影響力を持っています。
生物は、物質世界に生まれ落ちると、精神世界に魂が生まれ、それを守るかの様に魔力が魂を包みます。こうすることにより、精神世界で大きな力を持つ精霊や悪魔に魂を消されることはほとんどなくなります。この魔力の壁を掻い潜って魂を消された時、所謂「神隠し」が起きるとされています。
では、魔力とはどの様な物質なのか。
一言で言うと、「不思議な物体」です。
魔力の存在がとても重要な主人の世界でも、その真相を突き止めることは、今だに出来ていません。
そもそも、精神世界に行くことができないのに魔力がどの様なものか分かっている方が不思議というものでしょう。
では、ここからは、魔力について詳しく見ていきたいと思います。
人間の持つ魔力は、魂を守っている物のみです。それに対し、魔物や魔法使いと言った者は、魔力を吸収する能力を持っています。故に、魔法の行使など、魔力を基礎とした術を使うことができます。人間が魔法を使う場合、魂を守っている魔力を使うことになるため、神隠しに会う確率が高くなります。ですから、人間は、進化の過程で魔力の使用が不可能となるようにしたのです。
魔物や、魔法使いは、魂の周りに「器」と呼ばれる膜が張られています。これに収まる量であれば、魔力を吸収することが出来ます。この「器」の大きさは、遺伝的なものと、突然変異で決まるとされますが、基本的は遺伝による物が多いとされます。
契約精霊や悪魔、能力も「器」の中に入っています。能力は魔力を必要としないため、人間も持つことはできますが、維持に膨大な量の精神力を使うため、下位能力の中でもさらに下位のものしか持つことはできません。
え?地球に能力はない?
……私の干渉し得る範囲外ですので。
……器には、小さな穴が無数に開いています。人間で言えば汗腺の様なもので、そこから魔力が出入りします。
魔力を吸収するときは穴はそのまま精神世界に開き、排出するときはそこに物質世界へと通じる出口が開きます。これを魔力腺と呼び、魂の意思による操作が可能です。
魔法は、この能力を応用し、魔力腺から出した魔力に属性を付与させ打ち出すものです。属性を付与することで、物質世界では結界の意味しかない魔力に様々な効果を付与することが出来ます。
私の地域はまだ大丈夫ですが、関東辺りに上陸する可能性も大きいようです。
皆さんどうぞお気をつけて。
また会えることを祈っています。