第4話 母親(元転移者)の登場回
母親の登場!
俺がヒナタを家に連れて帰ると、
母親が手に持っていた皿を落とし、そのまま固まった。
「か、母さん・・・?」
俺は驚いて声を掛ける。
すると母さんは号泣し始めた。
「定職もない、彼女も居たことない・・・あんたにプレッシャーを掛けまいとずっとずぅっと我慢してきたけど、ようやく・・・ようやくそんな可愛い彼女を連れてきてくれたのね・・・」
「いや、違えよ!彼女じゃないし、落ち着け!って言うかそんなこと思ってたのかよ!聞きたくなかったよ!」
「・・・違うの?」
「・・・あぁ、そうだ。彼女はさっきそこで知り合ったばかりだ」
俺がそう言うと母さんは、今度は顔を真っ赤にして立ち上がった。
「あんた・・・さっき知り合ったばかりの子を家に連れ込む気?母さん若者の気軽な恋愛には理解がある方だけど、いくらなんでもそんなに適当なのは許さないわよ?」
母さんの後ろに鬼が見える。
「だーから!違うっての。街で困ってたから連れてきたんだよ!しかも若者の気軽な恋愛ってなんだよ!息子にそういうこと言うな!」
俺は叫ぶ。
母さんはその言葉を聞いてようやく冷静になってくれたようだった。
母さんは勢いのあるあわてん坊だ。
「えっと、初めまして・・・カロの母です」
母さんがヒナタに声を掛ける。
ヒナタは困ったようにこちらを見た。
『これ、うちの母さん。自己紹介してる』
『は、初めまして!ヒナタです!』
ヒナタは慌てて頭を下げる。
「母さん、こちらヒナタ。実は言葉が分からないみたいんなんだ」
俺はヒナタを紹介する。
「あらあら、言葉が分からないってそれは大変ね。あ、そうか。だからカロの【翻訳】スキルで会話してあげてるって訳ね!」
母さんは無駄に察しが良い。
「そんなところだ。腹が減ってるみたいだから、夕食を食べさせてやってくれないか?」
俺の言葉に母さんの目がきらりと光る。
「任せておいて!ヒナタちゃん!私の料理は美味しいから、楽しみにしててちょうだい!」
そう言って母さんはヒナタにウインクする。
通じてないぞと俺は思ったが、
ヒナタは何やら嬉しそうな表情で首をコクコクと縦に振った。
「いや、会話成り立ってるのかよ!」
・・・
・・
・
テーブルに載せられた、
母さん108つの得意料理の一つ、「コカトリスの香草焼き」。
それを一口食べて、ヒナタが驚きの表情を浮かべる。
『美味しい・・・』
最初の一口を皮切りに、
一気に肉を頬張る。
『美味いだろ。母さんの料理』
俺の言葉に首を振って答えるヒナタ。
相当空腹だったのか次へと肉を口に運ぶヒナタ。
そうだよな。
母さんの料理は美味いし、そうなるよな。
俺は食べ続けるヒナタを温かい目で見守る。
ヒナタはコカトリスの半身を耐えらげると、
一緒に出された「お化けキャベツのサラダ」もペロリ。
続いて母さん特製の「レッドベリーのパン」も平らげた。
それも母さんが3人前として作った量を一人で、だ。
『ってどれだけ食べるんだよ!』
俺のツッコミに身体を震わせるヒナタ。
その光景を見た母さんが声を掛ける。
「あらあら、よほどお腹が空いてたのね。良いのよ、たくさん食べてくれて嬉しいわ。まだ食べられる?」
母さんは、美味しそうに料理を食べるヒナタにすっかり上機嫌だ。
『ご、ごめんなさい・・・美味しくてつい』
ヒナタはしょんぼりと謝る。
『ったく。良いよ、母さん喜んでいるから。もっと食べるか?だってだ』
俺の言葉にヒナタの顔がパアァと明るくなる。
分かりやすいやつ。
結局その日は、いつもの倍以上の食料が消費されたのだった。
ヒナタは料理を食べると、途端に眠たそうにし、そのまま眠ってしまう。
ベッドに案内する間もなく、椅子の上でスヤスヤと寝息を立てる。
「あらあら、随分疲れてたのね。でもこんなに安心しきった顔で寝てくれると、可愛いものね」
見るとヒナタは、ソファーに寝転んで寝息を立てていた。
口元からは涎が垂れている。
こいつ、口元緩過ぎないか。
俺はそう思った。
「こんな子を襲ったりしたらダメよ、カロ。母さん許さないわ」
「いや、そんなこと息子に言うなよ!」
俺は突っ込む。
俺が大声を上げたからか、ヒナタは寝苦しそうに息を漏らした。
見るとその目元からは涙が流れていた。
「何があったか知らないけど、しっかり力になってあげなさい。あんたほぼニートなんだから時間はあるでしょ。たまには人の役に立ってみなさい。」
「急に辛辣すぎるだろ!」
俺から意中のツッコミを受けた母さんは満足そうに笑っている。
だが母さんは笑みを崩さずに、俺に聞こえない声で呟いた。
「・・・ホント、運命って怖いものね」
「あん?なんか言ったか?」
「なんでもないわよー」
そう言って母さんはご機嫌なまま夕食の後片付けを始めた。
こうして、ヒナタと初めて出会った1日が終わった。
この日から、俺の人生は大きく変わることになる。
母親の意味深な言葉!
物語の根幹に関わる伏線の予感。