水着
「うっわ、暑い」
部室の戸を開けた僕は顔をしかめた。六月も後半、今日の気温は三十度を越え、真夏日となっている。もちろん、各クラスの冷房も点いていた。
「ちょっと先輩、何やってるんですか」
安夏先輩はいつものように本を読んでいるのだが、顔に大粒の汗をかいている。
「来たか。待ってたぞ」
肩で息をしながら、にやりと笑う。
「いや……ほんと何してるんですか」
「勝負だ、我慢比べを」
ピッ。
僕はすかさず近くに置かれていたリモコンで部室の冷房を作動させる。
「あっ、お前何やって」
すぐに冷風が僕達を包み込む。この瞬間が一番気持ちいいかもしれない。
さすがに廊下に冷房はついていないが、私立の金持ち高校だけあって、こんな小さな部室にも空調設備が整っているのだ。
「くっ……涼しいっ」
歯を食い縛る先輩。なんでそんなに悔しそうなんだろうか。
「わざわざ熱中症のリスクを高めることも無いでしょうに」
すると先輩は本を置いて立ち上がった。
「実はな、昨日新しい水着を買ったんだ。結構可愛いやつなんだぜ?」
「へぇ。……え? だからなんですか?」
突拍子もない話題に動揺してしまう。すると先輩は息をついて椅子に座り直した。
「いいや、なんでも」
汗で透けた白いブラウスが張り付いている。先輩、もしかして下に水着来てないか? 淡いブルーで水玉、タンクトップビキニ型の水着のようだ。もしかして、脱いで水着になりたかったのか?
それはそうと先日セーラー服の胸元について話したが、透け下着の方がエロいと思う。
「なんとなくですけど」
「ん?」
「その水着、先輩にぴったりですね。色合いとか」
先輩ははっとした様子で自分のブラウスの状態を見る。
「……お前……変態だな」
非常に不本意だ。




