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落とし卵

作者: うんちょび

起きているのか眠っているのか分からない


薄暗い闇の中


下品な産声を上げることもなく。

劣っている皆と同じ


大きい手に拐われる。


罪を知らないその手は、畜生の限りを尽くす。


どうせ生まれながらの劣等種


親は愛情なんてくれやしない

明日にはまた次の犠牲が生まれるだけ


存在の価値を考えた時、考える必要がないってことに気づく


それでも感じる


喋らないから分からない。

動かないから気づかない。


ただ外は同じ仲間がいるのだろう。

そんかことを考えてるうちに

気づけば薄暗い光に照らされて判別される


劣等種の中の、障害持ちは消えていく


生まれてすぐの命は消える


起きてるわけでもない、寝ているわけでもない

ただそんな気がする


望んでもいないのに、心は洗われる


そんな見窄らしい格好では、誰の目にも届かないって


それは運命ってやつなのかもしれない


時間がすぎるのは遅い

何もかもが新鮮で、まだ感じたことない、経験したことのない世界だから


生まれながらにして少し大きいみたいだ。

同じ大きさの仲間のクラスに入れてもらう


仲間は自分を含めて10

似たり寄ったりかもしれない

周りはそう思うだろう

しかし、皆に意思があるのであれば、これから先は違う運命を辿るのだろう


しばらく流されることもなく、専用のベッドで束の間の休息

息もしていないかれらの選別。

自分にはそんなことを考えること自体があまりにも愚直だということはわかっている。

だけど疲れたんだ

声をも通さぬ殻の中生温い思いだけが充満していた。





…眩しい

何かに運ばれるよう

集団を乗せた船は陳腐な列をなす


その船は上から順に波にさらわれるよう、また大きな船へと移る


声は聞こえない

ただたしかに彼等の命運を握るであろうその大きな波はかれらの叫び声を消しているかのように感じた


自分の番が回って来るのをただ冷静沈着に待つ。

待っているというよりかは、そろそろこんな考えを誰かに飲み込んで欲し欲しい


けど、このまま終わるのもなんかなぁ

生まれてから出てくる期待なんてものは覚える間も無く、新しい瞬間、好奇心が閃光のように一瞬の期待を打ち消す


経験も結果もない

生まれた時から決められたその価値は、自分の意思とは真逆に低い査定であったんだろう


その船は、ほかの船も巻き添えに、ぐちゃぐちゃに持ち上げられる。

自分たちに気を使っているのか扱いはそっと。


見えていない。

だがきっと揺ら揺らぐ気持ち、平衡感覚は麻痺しそうだ



冷たい暗い場所に入る。

種別は問わない

日常に入り込む


一定に保つ気温は、生まれた時に感じたその空気とは違い冷たく、感覚や神経さえも麻痺させるような、どうせならここで眠ってしまえと誰かに言われているような洗礼を浴びせられる


そう…

うとうとしてしまうような気持ちになる。


声が聞こえる

初めて何かに必要とされる感覚


呼んでいる


生まれていいんだよ


僕の夢をむちゃくちゃにしたその手は暖かく僕を包む


誰かから与えられた洗礼を許してくれる


この温もりだ。

きっと自分が感じたかったのは

この気持ちの良いまま殺して


その手はコンクリートに叩きつけてくる


生まれておいで…


麻痺した神経と感覚は

初めて感じる衝撃をどこかで喜んでいたのかもしれない


快とは、不快とは…

答えを知ることのできない自分を早く殺して


夢を見ていただけだ。

無残に晒されたその醜態を、感じたことのない熱さが包み込む


境界線が曖昧な自分の形を作る


感じたことのない瞬間の連続


果てしない夢のつづき。そして終わる

救われた自分は、飲み込まれた


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