17 タコス陣営
俺様は支配者の一族、タコス様だ。
ここ最近、やっとの思いで封印から出てこれた。
今はあのいけ好かないスイカのやつに歯向いそうなイワシがいたから、もしかしたら逆転のチャンスかとおもって手助けしてやることにしたんだが……
イワシ魚人はバカばかりだ。全員が突撃しか考えてない。
魚人になってから鍛えられた兵士と魚人になったばかりの泳ぐこともままならないやつら。
誰が見てもどっちが勝つかは丸分かりだろ?
俺様は正直、このまま突っ込むだけだったらイワシ魚人を放置して、別のどこかに逃げる予定だった。
しかし、テルという魚人はすこしだけ違った。
まず、テルの寄生虫のノエに体のサイズが変わる特徴があるとわかった。
これは俺様も見たことなかった特徴だったから驚いた。
テルが特殊なのかノエが特殊なのかはわからないが、まあ、そういうこともあるんだろう。
で、どうもテルはそこからヒントを得たみたいだ。
イワシ魚人の全員の特徴を調べ始めた。
俺様には誰が誰だかわからんがな。魚ならわかるが魚人の顔はよくわからん。
テルにはわかるみたいだが。やっぱりイワシ魚人か。無意識で個人を判別しているんだろうか。
これで意外なことがわかった。
生まれた順で11番から19番目までが魔法が使えることがわかった。しかも使い手が珍しい攻撃魔法の使い手だ。特に余市と一三の2人は威力、精度共に申し分ないくらいの使い手だった。まだまだ経験が少ないから、これからもっと伸びるだろう。
水流魔法は水中の圧を操作して、線状の範囲にダメージを当てる魔法のことだ。魚人は攻撃魔法が使える奴がいてもこれしか使えない。人間は火とか風とか色々使えるが、なんでもかんでも人間と一緒というわけではないのだ。
しかし、それが大体1000匹に1匹程度だから100匹中8匹使えるだけでも凄いと言える。
彼らはテンナンバーズと言われて狙撃部隊として動くそうだ。
次にテルは武器の開発をしていった。
基本的に魚の武器は体当たりと噛みつきだ。それは魚人になったからといっても変わらない。と、いうか武器になりそうなものが少なすぎる。
剣は水の抵抗がすごすぎて扱えるものはほとんどいない。達人になれば別だが、扱えても水の抵抗を受けてゆっくりな剣を避けるのは魚人にはそう難しいことでもない。
だから、魚人は槍や銛をつかう。突いても水の抵抗でゆっくりになるが、その遅さは大分マシになる。相手の体に刺されば一気にこちらが有利になる。
これを試して、すぐに理解したテルはまあ、まともなんだろう。
棒切れをブンブン振り回したあと突きの練習しかしなくなったからな。
そして長めの棒を配備した。そこら辺の棒切れで丈夫そうなのを見繕っていたんだ。サンゴとか海草とか貝殻とかもつかってたな。
中には配備が足りなかったり拳の方が得意なものもいたが。
ここらで俺様もこれはかなりいけるんじゃねって思い始めた。
だって、そもそもが100人いるんだ。
これだけ準備すればうまくいけばスイカにも勝てる。
そんなことしてたらいつのまにか一部の魚人が音もなく活動するようになっていた。
テルに聞いたらニンジャらしい。
なんだそれ? って聞いたらスパイだって。
よくわからんがそれがなんかの役に立つんだろうか。
テルは時折そういうことがある。
テキヲシリオノレヲシレバーとかいってソンシーだかの言葉とかいってたが意味を聞いてもよくわからんかった。
言ってる本人も理解してるのかどうかわかってなさそうだったから。
しかしテルはわかってるのかね?
少々鍛えたとしてもそれで有利になるのは同じ数の相手だけだ。
自分よりも多い敵と戦ったらどんなに頑張っても勝てないってことをね。