少女と英雄
自分のステータスを見ているとどこからか悲鳴が聞こえてきた。しかも少女のものだと思われる。
「はぁ、やるか」
ため息をつきながらも魔法を行使する。
「『我が魔力を持って 周囲を探り示せ』」
「【レーダー】」
彼が作ったオリジナル魔法『レーダー』。広範囲に魔力の波を放出して索敵や状況を確認する魔法だ。
「逃げているものと、追いかけてるものか、片方は魔物だな。うわー、Bランクかよ」
魔物にはランクが存在する。
SSS SS S A B C D E Fが存在する。Bランクはある程度のベテラン二人くらいで倒す、中堅レベルだ。
一般的には。
「急ぐか」
私の名前はアイナ。色々な理由あって奴隷をしている。
奴隷商人の馬車に乗っていると、魔物が襲ってくるとの事だった。
商人の護衛が戦ったが全滅。
商人も死んだ。
そのスキをみて逃げ出した。
魔物は商人たちに夢中だ。今なら逃げれると思った。死の恐怖から一刻も早く逃げたいと思いながら懸命に逃げる。
だが、
「ここまでくれーー「グオゥーー!」ひっ」
魔物は私を追いかけてきた。その牙に大量の血をつけて。
「何で何でなんで、死にたくない!やだよ!」
追って来ないと思っていた魔物が追ってきた。
二メートルを越える体に、鋭い牙と爪。
全身を覆う赤き毛皮。獲物を猛禽のように見つめる目。
どんなものをかみ切る牙。
逃げまとうが、奴隷の待遇は良くないため、体力はすぐに尽きて転んでしまう。
「死にたくない!誰かー!!助けてよー!!!」
迫り来る魔物が怖くて、目を瞑る。
しかし、一向にしても痛みが来ないどころか、何かが吹っ飛ぶ音がして目を開くと、1人の少年がいた。
「大丈夫、君は守る」
反応を見つけてから、全力でダッシュして急行していたが更なる悲鳴を聞いて、焦った俺はさらにスピードを上げて駆け抜けた。
少し開けたところにでると少女が転んで死ぬたくない、助けて言っているところだった。
しかし、魔物はそんなことお構い無しに少女に爪を伸ばすところだった。
間に合わないと思った俺はまた魔法を行使する。
「『空間を歪めよ して運べ』」
「【次元歩行】」
急激に景色が変化する。800メートル以上ある距離が一瞬で縮まり、目の前に赤毛の熊の魔物が来る。
突然、現れた俺に魔物も驚いていたが構わずに攻撃してきた。
流石に防御が間に合わないためまたも魔法を行使する。
魔法を使うためには、詠唱が必要なのだが無詠唱スキルにより、精度が下がる代わりに詠唱を無しで発動することが出来る。
時間が無いため速さを優先しこの技術を使う。
「【聖光大盾】ーコネクトー【反射】」
光の大盾が魔物の攻撃を防ぎ刹那、その衝撃が魔物に跳ね返る。
吹き飛んだ魔物を放置して、目を見開いて呆然としている少女に言う。
「大丈夫、君は守る」