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五話 住谷 佳子

目の前にいる女性の名は住谷(すみや) 佳子(けいこ)。爺ちゃんと同じく研究者で、爺ちゃんの教え子でもある。この人には小さい頃からお世話になっている。

俺の両親は、まだ俺が赤ん坊の頃に亡くなっている。そのため、今は爺ちゃんと二人暮らしだ。住谷さんには両親が亡くなった頃から面倒を見てもらった。それゆえに、俺は住谷さんを母親のように慕っている。

俺が中学に入るまでは住谷さんもこの家で暮らしていた。理由としては、爺ちゃんが家事を一切できなかったことが大きいだろう。それに、爺ちゃんはほとんど地下の研究室に篭ってばかりだったため、俺の面倒を見てもらうためでもあった。

中学に入ったころから、住谷さんは仕事が忙しくなったため家を出ていった。その時に住谷さんはかなり謝っていたけど、俺達は住谷さんに甘えてばかりではいかないのは分かっていた。幸い、その頃の俺はある程度は家事ができたため、住谷さんがいなくてもなんとか生活できていた。もちろん、今でもこの家の家事は俺が担当している。前に爺ちゃんにやらせたことがあるが、俺の仕事が二倍に増えただけだったため一切やらせていない。

「やぁ涼くん。久しぶりだね。」

「はい、そうですね。ところで、今日の仕事は休みなんですか?」

住谷さんは今でもかなり仕事が忙しい。今ではかなり階級が高かったはずだったし、休みもそうそうないはずなのだが…

「ん?いやいや、もちろんすっぽかしたに決まってるじゃないか。だって、先生に呼ばれたんだよ。」

「…ですよねー…。」

…そうでしたね。この人はそういう人でしたね…。

これが住谷さんの欠点で、爺ちゃんに頼まれたことは最優先事項として扱い、そのためなら仕事や約束など平気ですっぽかすのだ。本人(いわ)く、「私はそれだけ先生を慕っているんですよ。」っとのことだが、限度というものがあるだろう。

「んで爺ちゃん。なんで住谷さんを呼んだんだ?」

「もちろん、そこにおるエルフの子の服を買ってきてもらったんじゃよ。見ての通り、その子の服はかなり汚れておるじゃろ?」

「…いや、待て待て待て待て!」

え、おかしくない?だって、その子と会ったのってほんの十分ほど前だよな?住谷さんの研究所まで確かここから50kmほどだったよな?明らかにおかしいだろ!

「マジでなんで住谷さんここにいんの!?仕事ってことは研究所にいたんじゃないの!?」

「はっはっは。何言ってるんだい涼くん。当たり前じゃないか。」

「じゃあなんでそんな早いんだよ!」

「もちろん、時速300kmで向かったからに決まってるじゃないか。研究所は私の家みたいなもので、服は後輩にプレゼントしたけど返されたものを持ってきたからすぐに準備できたしね。」

あーそっか。それなら納得…

「いや、できねーから!なに時速300kmって!アンタ車にどんなエンジン積んでんだよ!それに速度制限かかってるはずだろ?パトカーは!?アイツらちゃんと仕事してんのかよ!」

「はっはっは。涼くんっておもしろいね。パトカーなんて振り切ったに決まってるじゃないか。」

「なにものすごいこと言ってんの!なに?住谷さんってプロのカーレーサーか何かなの?」

「いやいや。私はそこら辺にいるただの研究者だよ。」

「ただの研究者がパトカー振り切れるわけねーだろ!それと研究者がそこら辺にいるわけねーよ!どんだけ頭がいいんだ日本人!」

住谷さん久々に相手したけど爺ちゃん並みにめんどくさいな!誰か突っ込むの変わってくれよ!俺の精神(MP)が全損しそうだよ!

「で?服が必要なのはそこの耳が長い子?その子の名前は?」

「「…あ。」」

俺と爺ちゃんは同時に間の抜けた声が出た。きっと爺ちゃんも俺と同じ心境だろう。…名前聞くことスッパリ忘れてた…。

『え?あ、はい。私の名前はシシル・エンウェザーです。』

「そう。いい名前ね。私の名前は住谷 佳子よ。コチラは私の先生で段野 和武先生。そんでこの子が先生の孫の段野 涼くんね。」

どうやら住谷さんは俺と爺ちゃんの反応を見て自分達も自己紹介をしていないことを察してくれたらしい。ほんと、こういうことは素直にすごいと思えるんだけどなぁ…。

「それじゃあシシルちゃん。服を着替えさせてあげるわね。」

『は、はい。』

そう言って住谷さんはシシルの手を引いて部屋を出ようとする。

「ちょっと待たんか。これがないと会話が出来んぞ。」

そう言って爺ちゃんが渡したのは例のコンニャクであった。

「あ、わかりました。」

…え、それだけ?他になんかないの?説明とかいんないの?

そんな疑問を抱いているうちに住谷さんはシシルを連れて部屋を出ていってしまった。

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