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ただ沈みゆくのみ

次でフィシー公国戦を終わらせたら、と思っています。

それと活動報告覧で少しお知らせ。

ブルスト港。フィシー公国南西部に存在するこの港は、古くから中央大陸との交易で栄えてきた。

 フィシー公国は東大陸では手に入らない工業製品を、グラン・イデア帝国は天然資源と芸術品を購入する。

 お互いに不必要なものを売却し、必要なものを購入するという理想的な取引が行われていた。

 栄えた都市の富を狙う者も多かったが、そのたびにネヴェア艦隊と北北西にあるライネ要塞が守って来た。

 飢餓に苦しむことも無く、外敵は守護者達が追い払ってくれる。ブルスト港はフィシー公国でもっとも平和な土地だった。

 そう、だった。

 日本と開戦してから、輸出するための品が入ってこなくなった。輸送隊が日本の航空機に襲われたのだ。1週間前にフィシュティアが包囲されて、それ以東と遮断されてからは、生活物資を含む、ありとあらゆる物資が枯渇した。

 海も同様だった。生存者の報告では何もない海上で商船、輸送船はてには漁船すら突然水柱を上げて沈んだり、グラン・イデア帝国の軍艦のような鉄の船の砲撃で爆散したという。

 グラン・イデア帝国の商会も、こんな危険な商売をする気がなくなり、帝国の船も来なくなった。

 最初は跳ね上がった輸送費で一攫千金を狙う者がいたが、1ヶ月もする頃には全員、魚の餌となっていた。

 農村は戦闘機の機銃掃射に怯えて、食糧を運ばなくなり、業を煮やしたライネ要塞司令官は兵士を使って無理やり運ばせた。大半は空自の6式戦闘機のロケット弾と機銃掃射によって目的地に辿り着くことはなかったが。

 「お母さん。お腹すいた……」

 痩せ簿そった子供が母親に縋り付く。全体的に土や泥で薄汚れており、徒歩で長旅をしてきたことが分かる。

 現在、フィシュティア以西は飢餓が蔓延していた。農業は農地を爆撃され、漁業は漁船を機銃掃射で破壊された。

 あとは釣りと狩猟だが、それとて戦闘機に見つかれば機銃掃射の対象となった。

 「ごめんね。エレートに行けば食べ物があるから、それまで我慢してね」

 皮肉なことに、日本の占領地では食糧に困らなかった。自衛隊に歯向かわず、与えられた仕事をキチンとこなせば家族全員1日2食の配給と生活設備完備(自炊設備を除く)のプレハブ住宅ありつけるからだ。

 餓えと寒さに苦しむ西部の民衆の多くは、暖かい寝床と食事を求めて東へ向かった。

 当然、領主や要塞指令は止めたが、圧倒的な数で占領地へ向かう民衆を押し留めることはできなかった。

 「主戦派がさっさと降伏すれば……」

 「そもそも主戦派がニホンに喧嘩を売らなきゃ良かったんだよ!」

 主戦派がまともなら、主戦派が馬鹿をしなければ、主戦派が悪い…………民心はフィシー公国から離れ、日本へ近づいていった。  

 その裏で特軍の工作があったことを知るのは、戦後から70年経ってからだった。






 かつては多くの水夫が積荷を運び、国際色豊かな品物が並ぶ市場があったブルスト港。

 今では水夫は海軍に徴兵され、商人は店を畳んで逃げ出したことで寂れた町となっている。 

 それでもこの町を愛する地元住民は残り、貧しいながらも必死に生きていた。そしてブルストにいる家族を思い、たとえ物資が無いために動けなくとも、ネヴェア艦隊は今日もフィシー公国最強の艦隊であり続ける。

 ネヴェア艦隊に所属する、とある哨戒艇。4人乗りの小さな船だが、立派な最強艦隊の一員である、思いを抱いて数少ない動ける艦艇として出航する。

 「敵はいないな」

 ブルストから離れた沖合いで艦長は安心したように呟く。

 「そうですね。ニホンは今頃フィシュティアに夢中でしょうから」

 副艦長が艦長の呟きに返答する。それに応じるように他の船員も混ざる。

 「そうでもないらしいですよ?最近竜騎士団の報告じゃあニホン艦隊に動きがあるらしいですし」

 「要所であるシュぺリア諸島は抑えたんだろう?もう海軍が動く必要はないと思うが」

 男は首を横に振る。

 「それがそうでもないんだよ。陸の方じゃライネ要塞方面に戦力が割かれてるって話だぜ。陸と海で同時攻撃を仕掛けるんじゃないか?」

 ヒートアップしていく議論に艦長が水を差す。

 「お喋りもいい加減にしろ。今はライネ要塞に気が向いているが、ニホンがこっちにちょっかいかけてこないとは限らないんだからな」

 艦長に言われて渋々自分の仕事に戻っていく。いくらやることが無いとはいえ、やって良い事と悪いことがある。

 「ん?」

 仕事に戻った見張り員が望遠鏡で周辺を警戒していると、何かが視界に入った気がした。艦長に報告しようと思ったとき、何かが光った。

 見張りの男は、それが火砲の発射炎に似ていることから、軍艦であると判断した。そしてこの海域で活動する火砲を載せた軍艦は、ニホン海軍の軍艦以外はありえない。    

 そこまで考えた男は望遠鏡を覗いたまま艦長に報告しようとした瞬間、薩摩型戦艦薩摩のAGS62口径155ミリ砲の直撃を受けて1人残らず肉片となった。

 生存者がいないことを確認すると、艦隊は作戦に戻っていった。






 薩摩CIC。戦艦薩摩艦長大岡1等海佐は高揚していた。

 戦艦好きである彼にとって、日本戦後初の戦艦の艦長になれただけでなく、そのCICで歴史に残る大規模上陸作戦を指揮できると知ったときは、今が人生の絶頂だと本気で思ったほどだ。

 大岡はディスプレイを見る。そこにはこの作戦に参加した艦隊が映っていた。

 「駆逐艦12隻、軽巡洋艦10隻、潜水艦4隻、強襲揚陸艦3隻、揚陸艦5隻、空母1隻、戦艦2隻。総勢37隻の大艦隊だ。そして相手は補給を失ったハリボテ艦隊と空の傘を失った港、負ける訳が無い」

 大岡は自分が預かっている圧倒的な戦力に感動すら覚える。

 和製ウダロイ級駆逐艦・陽炎型駆逐艦。

 和製スヴェルドロフ級巡洋艦・球磨型巡洋艦。

 和製カーラ級巡洋艦・妙高型巡洋艦。

 和製ワスプ級強襲上陸艦・秋津型強襲揚陸艦。

 和製イワン・ロゴフ級揚陸艦・神州型揚陸艦。

 そこに廉価版そうりゅう型である天潮型、飛鷹型空母飛鷹と薩摩型戦艦薩摩、安芸が加わればこの世界の列強でも話にならない戦力となる。

 本来、VSLなどを装備した艦艇は本土近海から離れないのが普通なのだが、小林総理に「実戦データがあったほうが後々便利だろう?」という言葉で上陸作戦は最新艦艇で行われることが決定した。

 ちなみに「平成時代、あるいは冷戦時代並みの技術力を持った敵性国家が出てきたら現状の兵器で対抗できるのか?」と質問された狛犬防衛大臣以下5名は「不可能です」と見事にシンクロさせて答えたため、「せめて平成レベルの相手に対抗できる装備は配備しろ」と命じた。このことが理由で第3世代戦車、ジェット機対応の正規空母、第4世代ジェット戦闘機の配備が進むのだが、それはまた別の話。





 

 ブルスト上陸作戦は爆撃をもって開始された。

 空母飛鷹から発艦した8式艦上戦闘爆撃機の1000ポンド爆弾と7式艦上戦闘機のロケット弾がネヴェア艦隊に炸裂した。

 ネヴェア艦隊はガレオン船50隻、戦列艦30隻、竜母15隻で構成されている。その内、戦列艦の半数と全ての竜母が海の藻屑となった。

 慌てて出向しようとするネヴェア艦隊だが、出向の準備が整ったときには無人観測ヘリが上空に待機しており、艦砲の射程内に収まっていた。

 最初に撃ったのは薩摩、安芸であった。AGS155ミリ砲が火を噴くたびに木造船がくの字に折れながら海に沈んでいく。

 途中からは駆逐艦の62口径76ミリ速射砲と巡洋艦の62口径76ミリ連装砲も参加し、奇襲ということもあってフィシー公国最強の艦隊は、あっさりと全滅した。

 その後も砲撃は続き、要塞砲が全滅したのを確認した大岡は上陸開始を命じた。

 「上陸艇を出せ、一気に制圧しろ」

 秋津型強襲揚陸艦と神州型揚陸艦の後部ハッチから放出されたLCAC、LCU、輸送艇1号型は岸辺へと向かい。発艦した輸送ヘリが市庁舎へ飛行する。

 ブルスト兵は兵器庫からバリスタ、火砲を持ってきて迎撃しようとしたが、1式艦上攻撃回転翼機改隼2型とドアガンを装備した2式汎用回転翼機の銃撃、更には神州型揚陸艦の76ミリ砲の砲撃によって制圧された。

 市街地に逃げ込んだ残党も無人観測ヘリの誘導を受けた陸自隊員の和製AK-103の1式7・62ミリ小銃と和製AK-74Mである4式5・56ミリ小銃の射撃を受けて効率良く狩られていく。

 市庁舎に近づいたところで市長は倉庫に隠していた巨大猪を投入させたが、上空で待機していた7式艦上戦闘機のモーターカノンでひき肉となった。

 ちなみに巨大猪の死体は研究のために特軍の731部隊にまわされた(表向きは本土行きということなっている)。

 上陸から3時間後。市庁舎は制圧され、ブルスト港は日本の支配下に入った。






 ブルスト港が陥落してから2週間後、ライネ要塞は崩壊寸前となった。

 7式双発爆撃機と8式4発重爆撃機連山による定期便で地上の施設は壊滅し、飛竜も地下に避難せざろう得なかった。

 爆発音と息苦しい地下生活でのストレスで人間も飛竜も荒れ、それがまたストレスを発生させる……悪循環だった。

 何とか飛竜だけでもと、夜陰に乗じてフィシュティアへ逃そうとしたが、早々にレーダーに引っ掛かり、1試双発双胴夜間戦闘機に全滅させられた。

 そのことを写真付きのビラで宣伝しながら、航空戦力が壊滅したことでライネ要塞は新兵の錬度向上のために参加した空母航空隊の練習場と化し、ここにきてライネ要塞司令部は降伏。

 これにより日本が落とすフィシー公国の要所は、フィシュティアのみとなった。






 ・6式戦闘機 機体イメージ、P-40 

 3式戦の後続機とハイローミックスでハイの5式戦とは逆のローを担う安くて使いやすい戦闘機を目指して開発された。

 平凡だが操縦性と整備性で優れていることから前線では高い評価を得ている。


 ・6式艦上軽爆撃機 機体イメージ、(固定脚を引き込み脚した)九九式艦上爆撃機

 機種更新とエンジン改装で余ったTS2エンジンに目をつけた海自と空自が海自は護衛空母でも運用可能な単発爆撃機を、空自は精密爆撃が可能な機体を求めていたため開発された。

 翼内固定機銃はガンポッドの欠点(空気抵抗の増大)を嫌うパイロットが多かったため試験的に搭載した。

 性能はもちろん、固定機銃も前線のパイロットから好評であり、小型レーダー開発も相まって、今後は機内搭載が増えていくと思われる。


 ・7式艦上戦闘機 機体イメージ、Bf109F

 海自は1式戦の後継機に求めた能力は以下の項目である。

 ・護衛空母でも運用可能なSTOL性能

 ・必要ならば武装を1000ポンドないし500ポンド搭載可能

 ・最高速度700キロ以上、可能ならば800キロ以上

 ・航続距離1500キロ以上(増槽装備時も含む) 

 本機は本命の8式艦上戦闘爆撃機が失敗したときのための予備機として開発が始まった。

 堅実な8式戦とは違いモーターカノンなど野心的な新機構を多く装備している。

 試作1号機は新機構を多く採用したこともあって不調だったが、試作5号機では解決している。

 優れた上昇力と高速域での起動性を誇り、今後日本のプロペラ艦上戦闘機は7、8、0の発展型後続機で占められると言われてれる。


 ・8式艦上戦闘爆撃機 機体イメージ、F4Uコルセア

 海自が0式艦上戦闘機が出来るまでのつなぎの後続機を求めていた事と狛犬防衛大臣が2試艦上戦闘機の性能を疑問視したことが重なり、開発が決定された。

 カタログスペックよりも稼働率と安定性、防御力を重視した設計で、総合的には7式戦よりも優れていると言われている。

次は少々異世界自衛隊モノの王道的展開アリ。

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