戦馬の足音
短いせいか、今回は早かった。
ほぼ兵器のスペック表です。これが一番しんどかった……。
興味のない方は飛ばしてください。
「ふむ、必要なのはこれだけかね? 狛犬大臣?」
「はい、省内で必要な物資を計算したのち、財務省とも協議した結果この数字が出ました」
小林の問いにスラスラと答える狛犬。そこには一国の宰相と軍の支配者の姿があった。
「そうか……分かった。しかし分かっていたとはいえ、かなり資源を使うな」
「しかたありません。対フィシー公国戦に合わせて新兵器を投入するには、これだけの物資が必要なのです」
「新暦8年の末に開戦だからな……、それまでに必要な量を揃えるには仕方ないか」
ため息をつかずにはいられない。何せ、この兵器開発・生産計画は日本が新領土で手に入れた資源の4割を食いつぶすのだから。
「これでも譲歩したほうです。本来ならば6割は
必要だったのですから」
「……一応聞いておくが、どのような部分を譲歩したんだ?」
「主に配備数ですね。兵器1つにつき5部隊配備予定のところを3部隊に削りました」
もう一度ため息をつく小林。これで削ったと言えるのだろうか、いや言えない。
だが妥協点としては此処までだろう。これ以上削れ、などと言おうものなら何をしでかすか分からない。クーデターはないだろうがジワジワと精神的に殺されるだろう。
「……分かった。ここに書かれている物資。
は全て用意する。ただし、結果は出すように」
「もちろんです。フィシー公国なんぞさっさと終えて、平和を手に入れましょう。日本が作る、日本の秩序によって回る平和を」
狛犬はそう言って笑う。無様に足掻く劣等民族の姿を想像して。
狛犬が去った部屋で小林は計画書を眺める。そこに書かれてある兵器が全て実戦配備されれば、朝鮮戦争時の技術力を持つ敵でも勝てる。
そこまでいけば、自衛隊に使う金を減らせるはずだ。日本はかつての大日本帝国のような軍事大国ではない。
前世界で健保改正する以前のように、敵国が軍拡していても、領空・領海侵犯されても何もしない失格国家でこそなくなったが、それでも、経済を守らなければならない。軍事力だけあっても、経済が伴っていなければ張子の虎だ。
国家は農場。軍事力と言う柵が優れていても、土壌を育てねば柵も腐る。
それが、かつてアメリカに負けた日本が得た戦訓。
「今はまだ大丈夫だ。今はまだ、日本経済にとっては許容範囲内だ」
戦争とは消費だ。しかも、国家の発展に必要なものを凄まじい勢いで吸い取っていく。人、資源、愛国心、エトセトラ……数えだせばきりがない。
「だからこそ、戦争は避けねばならない。相手が喧嘩を売ってきたときと戦争によって奪わねばならない場合を除いて」
日本を預かる小林としては、戦争よりも経済を優先したい。だが周辺国家がそれを許さない。
フィシー公国を潰しても、リシェーヌ王国から伝えられたグラン・イデア帝国の情報。それによれば、グラン・イデア帝国はその名の通り帝国主義国家らしい。
戦争は避けられない。ならば、政府機関を潰して内ゲバに突入させるのが、もっとも経済的だ。
そう悟った小林はぐったりとソファーに背を預ける。計画書をテーブルに放り投げて。
『自衛隊対フィシー公国戦までに行う兵器間発及び生産計画』
・本計画書は新暦8年に敵国フィシー公国に宣戦布告することが決定したことで作成された。
(中略)
・陸海空のリストをここに記しておく。閲覧終了後は速やかに処分するように。
・2試主力戦車
主砲 51口径105ミリライフル砲L7A1
副武装 7・62ミリ機関銃(主砲同軸) 12・7ミリM2重機関銃
エンジン 水冷4サイクルV型8気筒ディーゼル
装甲 正面装甲85ミリ 側面装甲70ミリ 背面装甲45ミリ
航続距離340キロ
速度 68キロ
重量 37トン
搭乗員数 4名 車長、操縦手、射手、無線手
参考兵器 T-55
・2試多砲塔戦車
主砲 62口径76ミリ砲
副砲 30ミリM230チェーンガン
副武装 全自動無人12・7ミリM2重機関銃搭載型RWS3基
エンジン 水冷4サイクルV型8気筒ディーゼル
装甲 正面装甲80ミリ 側面装甲70ミリ 背面装甲45ミリ
航続距離300キロ
速度 68キロ
重量 41トン
搭乗員数 4名 車長兼無線手 、操縦手、射手、機銃手
参考兵器 無し
・2試艦上戦闘機
エンジン TS3 1500馬力
最高速度 620キロ
限界高度 14120メートル
航続距離 2540キロ
武装 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門もしくは1式12・7ミリ5門内臓懸架式機関砲2門 500ポンドもしくは1000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 2式懸架式電探2基 胴体下に増槽1個
搭乗員 1名 操縦士
参考兵器 紫電改
・3試軽戦闘機1号
エンジン TS3 1500馬力
最高速度 760キロ
限界高度 12100メートル
航続距離 2140キロ
武装 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門もしくは1式12・7ミリ5門内臓懸架式機関砲2門 500ポンドもしくは1000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 2式懸架式電探2基 胴体下に増槽1個
搭乗員 1名 操縦士
参考兵器 スピット・ファイアMkⅤ
・3試戦闘機2号
エンジン TS3 1500馬力
最高速度 710キロ
限界高度 12121メートル
航続距離 2120キロ
武装 胴体下に試製半埋め込み式25ミリ低速多銃身機関砲1門 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門 250ポンドもしくは500ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 2式懸架式電探2基 増槽2個
搭乗員 1名 操縦士
参考兵器 Me109G
・1試双発艦上戦闘機
エンジン T56-A-15 4508馬力
最高速度 812キロ
限界高度 13800メートル
航続距離 3630キロ
武装 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲4門もしくは1式12・7ミリ5門内臓懸架式機関砲6門 2式懸架式電探2基 500ポンド爆弾4発もしくは1000ポンド、2000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 増槽2個 胴体下に増槽1個もしくは3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲1門
搭乗員 2名 操縦士 副操縦士
参考兵器 デ・ハビランド モスキート
・1試双発双胴夜間戦闘機
エンジン T56-A-15 4508馬力
最高速度 821キロ
限界高度 13700メートル
航続距離 3510キロ
武装 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲4門もしくは1式12・7ミリ5門内臓懸架式機関砲4門 2式懸架式電探2基 500ポンド爆弾4発もしくは1000ポンド、2000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 増槽2個 胴体下に増槽1個もしくは3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲1門
搭乗員 3名 操縦士 防御機銃担当2名
参考兵器 P-61ブラック・ウィドウ
・1試艦上噴進戦闘機
最高速度 1280キロ
限界高度 15300メートル
航続距離 1510キロ
武装 胴体下に試製半埋め込み式25ミリ低速多銃身懸架式機関砲1門もしくは試製半埋め込み式30ミリ低速多銃身機関砲1門 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門もしくは試製30ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門 500ポンドもしくは1000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 2式懸架式電探2基 増槽2個
搭乗員 1名 操縦士
参考兵器 ホーカー ハンター
・2試艦上噴進軽戦闘機
最高速度 1160キロ
限界高度 15100メートル
航続距離 1430キロ
武装 胴体下に試製半埋め込み式25ミリ低速多銃身懸架式機関砲1門もしくは試製半埋め込み式30ミリ低速多銃身機関砲1門 主翼下に3式20ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門もしくは試製30ミリ低速多銃身懸架式機関砲2門 500ポンドもしくは1000ポンド爆弾2発 70ミリロケット弾38発もしくは127ミリロケット弾8発(いずれもロケットランチャーを懸架する場合) 2式懸架式電探2基 増槽2個
搭乗員 1名 操縦士
参考兵器 橘花
・松島型モニター艦
全長 165メートル
全幅 20メートル
基準排水量 2000トン
搭載武装 99式155ミリ砲2門 35ミリ低速機関砲12門
機関 ガスタービンエンジン2基
最高速力20ノット
弾着観測用無人ヘリ2機搭載
人員 102人
次は3年後に飛んで開戦の予定。