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愚者は地獄の釜を開く

うーん。文章が安定しない……。

周りの作者様のように安定して書けるようになりたいなぁ……、と思う今日この頃。

 佐野首相は会議室で木村防衛大臣から憂鬱な報告を受けていた。

 「……それは間違いないのか?」

 「はい。グラン・イデア帝国の現皇帝は危篤、次期皇帝はボンクラで有名なカルモ皇子の可能性が高いとのことです」

はあ、とため息をつくと両手で頭を抱えてしまう。それほど特軍から上がってきた情報は頭が痛いものだった。

 中央大陸の覇者であるグラン・イデア帝国の皇帝カーメル・フォルタントスは日本との戦争を避け、国内の問題の解決を重視してきた。

 だがその息子である第1皇子は帝国の力を過信し、先々代から止めていた侵略戦争を起こすつもりらしい。

 「それで手始めに使者も送ってこない日本を叩き潰すつもりだと?」

 「はい。連中の脳には身の程という言葉がないようです」

 「うーむ、弾道弾を使うときがきたか。核弾頭の開発は済んでいるし、この1撃で終わるだろう」

 「そうですね。準備が整っていないので、正面戦力はあまり動かせませんから」

 「……今動かせる戦力は?」

 「旧式空母は飛鷹、隼鷹、祥鳳が出せます。それと雲龍型は雲龍と葛城は出せます。瑞鳳、笠置はドック入りしているので無理です」

 雲龍型は17式艦上戦闘機の運用が可能な空母だが、日本人の17式艦上戦闘機のパイロットの育成が済むまでは、プロペラ機とジェット軽戦闘攻撃機を運用している。

 「天城型空母と残りの雲龍型空母は?」

 「天城、赤城は艦の錬度が足りません。阿蘇、生駒、鞍馬はまだ完成まで時間がかかります」

 「……それで足りるのか?グラン・イデア帝国はもう空母を運用していると聞く。カルモ皇子は大艦巨砲主義者だが、空母もかなりの規模で建造されている。万が一、弾道弾の攻撃が失敗あるいは望んだほどの効果が出なかったら不味いのではないか?」

 現地に潜入した特軍が掴んだ情報では第2次大戦時のアメリカほどではないが、それでもかなりの規模の建造が始まっている。

 前弩級戦艦に代わり、グラン・イデア帝国海軍の主力となる弩級戦艦。複葉機もしくは全金属製単翼機を運用できる木製甲板の大型空母。艦隊決戦を援護する重雷装巡洋・駆逐艦。

 もちろん船団護衛用の軽巡洋艦、駆逐艦も充分な数が建造される。

 「問題ありません。203ミリ砲を搭載した河内型戦艦は実戦配備されていますし、35・6センチ砲搭載の扶桑型戦艦も近々建造が始まります。空母の艦載機も海空共用であるフレッチャーFD-25、T-4をそれぞれ魔改造した12式軽攻撃機と15式軽戦闘攻撃機で充分に圧倒できます」

 「ふむ、だが万が一ということもある。低空飛行でレーダーを掻い潜って接近してくる可能性もあるのではないか?」

 「接近されようともCAPに30ミリCIWS、40ミリ機関砲、127ミリ速射砲などの対空火器と組み合わせれば艦隊防御は万全です」

 「……分かった。君達に任せよう」

 なおも佐野は不安そうだったが、最終的に専門家である木村防衛大臣を信用することにしたようだった。

 彼にとって、この戦争は日本版NATO結成への第1歩なのだから気にするのは当然であろう。

 ただ、不安を大勢の部下の前で見せてしまうのは未熟さの証である。






 帝都グランイデアル。グラン・イデア帝国の繁栄の象徴であるこの都市には陰りが見えていた。

 皇帝が倒れ、政務を取り仕切るようになったカルモ皇子が平民階級以下の国民に重税を課したことで、貴族街以外の活気が失われたからだ。

 重税を嫌がった外国の商人も遠ざかり、内需も数少ない王侯貴族が中心となったことで、経済が衰退していった。

 その原因となったカルモ皇子は原因は帝国に歯向かう蛮族共にあると信じ込んでおり、膨大な税金のほとんどを自身の贅沢と軍拡のために使っている。

 落日の帝国。

 それがグラン・イデア帝国の現状だった。

 





 煌びやかな装飾がなされたパーティー会場のなかで形成される人の輪。その中心に20代の青年が居る。

 カルモ・フォルタントス。グラン・イデア帝国の衰退を推し進めている人物だ。

 「殿下。ニホン侵攻は近いようですな」

 「うむ。いい加減帝国も東海に進出せねばならん頃だ。父上は国内の安定化が先、と仰っていたが喧しい蛮族共は叩き潰せばよいのだ。にも関わらず対話などという軟弱な手段しか講じなかったところを見るに父上も年だったのだろう」

 「皇帝陛下は充分にご活躍されました。これからは殿下がご活躍する番です」

 「ああ、期待していてくれ」

 などと談笑しているカルモ皇子とその取り巻き貴族。この会話から分かるように、彼らは日本との国力差に気が付いていない。

 現実を理解している人間はほぼ全員カルモ皇子に対日戦争は無謀だと訴えたが、カルモ皇子は訴えた人間を1人残らず北北東にある半島に飛ばされた。

 自身の婚約者までも半島に放り込んだのだから、どれだけ他人に意見されるのが嫌いかが分かる。

 「(私の名は帝国の歴史に刻まれるだろう。帝国100年の繁栄の礎を築いた賢帝として)」

 カルモ皇子は笑う。自身の死後の名誉を夢見て。

 彼の死後、この妄想は部分的に叶えられることとなる。グラン・イデア帝国の歴史に彼は名を刻まれる。

 グラン・イデア帝国最後の皇帝にして、帝国を滅亡へ導いた史上最悪の愚帝として。






 後日、グラン・イデア帝国の使者が五月雨諸島(シュぺリア諸島)に前弩級戦艦4隻と共に現れた。

 使者は日本に対し旧フィシー公国領の割譲、毎年多額の上納金を渡すことを要求した。従わなければ強硬手段を採るとも。

 この事を報告された佐野は五月雨諸島近海に機動部隊を派遣した上で拒否し、『デス・オブ・パウダー(死神の粉)』作戦を開始するよう命じた。

次回はちょっと遅れるかもしれません。

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