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2つめの太陽

読者の方々のニイタカヤマノボレの食いつきぶりに驚き(笑)

大日本帝国海軍、南雲機動部隊。12月8日。

 歴史を知っているものならばすぐに分かるだろう。そう、真珠湾攻撃である。

 12月7日に転移してきた国は多い。木星並みの大きさであるため、地球ではパンクしかねない数の国が転移してきても問題なかった。

 そう、大日本帝国という怪物を生かすための生贄を充分に収容できる程度には。

 日本は無資源国家。少しでも日本を知るものならば常識であるが、異世界転移で海外領土の大半を失った大日本帝国には一大事であった。

 そこで新しい資源帯を確保する必要があったのだが、何しろ異世界転移という異常事態に上から下まで混乱しきっていた。

 そのことを知らないハワイへ向け航行中の南雲機動部隊は転移直前に受信した電報に従い、ハワイへ向け攻撃を開始した。

 蒼空へ往く第1次攻撃隊。彼らの先にあるのはハワイはでなく、同じ転移国家であるヒュゼル王国である。






 ヒュゼル王国。ハワイに良く似た島とニューギニア、インドシナに似た島々からなる小さな島国。

 外敵に脅かされることもなく、周辺国家との付き合いも無いこの国は異世界転移したことにも気付かず、平和に暮らしていた。

 この日までは。

 彼らにとって不幸だったのは、第一にこの島の地形がハワイに限りなく似通っていたこと。第二に米軍施設に似た施設を彼らが有していたことである。

 大怪鳥と呼ばれる人を楽々乗せて飛べる鳥を使うための滑走路。雨水を溜め込むための巨大な石の円筒型貯水タンク。お祭りのために用意された、灰色に塗られた大小様々な船のハリボテ。

 『トラトラトラ!』

 ヒュゼル王国の人々が空の異変に気付いたのは、淵田美津雄中佐の電文が赤城へ向けて発せられたあとだった。

 





 最初に動いたのは九九式艦上爆撃機であった。胴体下の250キロ爆弾と翼下の60キロ爆弾2発が飛行場へ投下された。

 対空砲火がない状況で大日本帝国海軍の熟練搭乗員達が飛行場という巨大な目標を外すわけも無く、この1撃で滑走路を使用不能にした。

 他の飛行場も同様に煙を上げており、離陸することは出来ないだろう。

 普通の航空機なら。

 そして大怪鳥は航空機ではない。かなり体力を消耗するが垂直離陸は可能だ。

 だがこれまでろくに脅威に晒されたことも無い戦士達は大怪鳥共々、突然の事態に混乱しきっていた。

 極一部の者は空に上がったが、動きが鈍くなった状態では零式艦上戦闘機二一型の敵ではなかった。

 「何だこれは!?米軍機ではないのか!?」

 「よく見たら米軍なんていないぞ!」

 自分達が攻撃している相手が米軍ではないことに気付いた航空隊。今更攻撃を止める訳にもいかず、九七式艦上攻撃機はハリボテに800キロ爆弾と魚雷を叩き込み、海の藻屑に変えていく。

 戦闘機隊も7・7ミリ機銃で弓を撃ってくる戦士たちを射殺していく。一部の機は祭りのために集まっていた民衆に向けて発射する。

 「ギャアッ」

 「うわぁー!」

 人々の血と怨嗟の声を背後に第1次攻撃隊は各々の巣へ帰還する。






 「米軍がいないだと」

 第一航空艦隊司令部の南雲忠一は混乱していた。

 航路に間違いは無く、ハワイらしき島も確認された。航空隊の話では地形も地図と同じだったという。

 だがそこには米軍のコンクリート製の飛行場も戦艦群もなく、あるのは未開人の国家だった。

 「……長官、ご命令を。当初の予定通り第2次攻撃隊を出しますか?」

 草鹿龍之介参謀長は南雲に指示を求める。 参謀の視線が集まるなか南雲は考え込む。

 理由は分からないがハワイに米軍がいない以上、第2次攻撃隊を出す意味は無い。それどころか、まだ無事な米空母の攻撃を受ける可能性もある。

 山本五十六からはこの作戦において攻撃を徹底するように言われているが、この異常事態ならば撤退しても納得して貰えるはずだ。

 何しろ攻撃目標の米軍は影も形も無く、もたもたしていたら、敵の接近を許してしまうことになる。

 1隻でも空母を失うことが辛い大日本帝国海軍としては、出来るだけ危険は避けるべきだ。

 「……撤退する。米軍がいない以上、攻撃隊を出しても意味が無い。だが撤退する前にハワイらしき島の写真を撮れ。必要なら護衛も付けろ。それから索敵機を増やせ。艦攻も索敵に回して構わん。雲隠れした米軍から襲われてはたまらんからな」

 「了解しました。では本土から何かしらの命令が下った場合は?」

 「そのときは命令に従う。もう我々がここにいる意味は無いのだからな」

 敬礼と共に連絡員が部屋から出て行く。

 空は、彼らの心情を表したように曇っていた。






 この攻撃より1週間後、ヒュゼル王国沿岸に大和を中心とする派遣艦隊が出現した。

 特使は国王に対し大日本帝国への恭順を求めた。実質、植民地になれという命令に国王は顔を真っ赤にしたが、沿岸の近代艦隊の前では屈するほか無かった。

 このあと大日本帝国は周辺国家への干渉を強めていく。






 一方で平成日本は転移国家である扶桑帝国、レメリア共和国、ブレジアと国交と結んだ。

 扶桑帝国は立憲君主制の国家で国民は日本人に近い民族であり、交渉は穏便に進んだ。

 日本から見て南に位置しており、国土面積は九州の10倍程度で、形も九州に似ている。

 軍事面では最近空軍が設立され、亜音速ジェット戦闘機が海空軍に配備され始めた。

 陸軍は61式戦車モドキが開発されており、近々お披露目されると言われている。

 海軍は戦艦の大半を解体して代わりに空母の配備を進めている。また日本の強襲揚陸艦に関心を示しており、秋津型強襲揚陸艦の購入を希望している。

 列強との貿易で栄えていたことと戦略物資の多くを輸入に依存していたために転移後経済は低迷しており、日本を含めた近隣諸国との貿易を望んでいる。

 レメリア共和国はロマエト連邦の上に転移してきた元内陸国の白人国家である。人種差別はなかったものの、日本の国力を危険視しており、侵攻してくるのではないかと懸念を抱いている(日卯戦争、日比戦争を侵略戦争だと認識していたことも理由の1つである)。

 日本への対抗と商船護衛のために海軍の設立を急いでいるが、ノウハウがまったく無いため苦戦している。

 国土はオーストリアを倍にした程度の大きさで少量であるがレアメタルが産出する。

 F-104似の機体を主力戦闘機として配備しておいるが、日本の17式戦闘機(日本版Su-34)に劣っていることから後続機の開発を急いでいる。

 陸軍は海軍設立のために予算を削られまくって悲鳴を上げているが、何とかM48A5パットン相当の新型戦車配備の予算はもぎ取った。

 扶桑帝国と同じく、戦略物資の多くを外国に依存していたことに加えて、元内陸国故に海軍が無いのでシーレーンを実質日本に握られている状況に危機感を抱いている。

 ブレジアはブラジルとほぼ同じ面積、形をした民主主義国家であり、シュぺリア諸島から東に転移してきた。

 レメリア共和国に比べて工業化が遅れており、海軍こそ有しているものの日本に比べると質・量共に劣っている。

 艦載機はアメリカのF-8クルセイダーに似た艦上戦闘機とフランスのエタンダールⅣ艦上戦闘攻撃機に近い艦上攻撃機兼艦上偵察機を配備している。

 シュぺリア諸島の領有権で少し揉めているが、国内の開発で儲かっているため概ね日本との関係は良好である。

 日本国首相、佐野吉武は中央大陸に対抗するために、この3カ国とNATOに似た組織を作ることを計画していた。

次回に日本の軍備の説明を入れられれば、と考えています。

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