始まり
処女作です。誤字脱字の指摘、感想、お待ちしています。
20XX年、突如日本と外国との通信が全て途絶えた。更には外国にいた日本人と日本の資産が全て国内に戻っており、国内の外国人と外国資産は全て消えうせていた。
当初、国内は混乱の極みにあったが、辛うじて発せられた命令の下実行された自衛隊による調査の結果、日本は異世界に転移したことが判明した。
政府は各物資を自衛隊によって発見された大陸や島嶼を片っ端から開発することを決めた。
この未曾有の危機に、もはや侵略だの憲法違反だの言ってられなかったのだ。この状況でもそんなことを言った左派は国民と右翼の怒号と弾圧によって叩き潰された。
幸いにもそれらの土地には人が居らず、邪魔されることなく開発できた。
だが平和はいつまでも続かない。石油は人造石油と藻から採れるバイオ燃料、食糧は転移によって特許を気にせず生産できるようになった人造肉と環境の変化に強く栄養価の高い芋で乗り切ったが、戦争まではそうはいかない。
ウルバスト王国と名乗る軍が日本が開拓していた地域に現れ、隷属を要求してきた。
命綱を取られてたまるかと問答無用で拒否するつもりだったが、開拓地には戦力がほぼ皆無だったために本土の自衛隊が救援に来るまで交渉と言う名の時間稼ぎを行うことにした。
賄賂とお世辞と酒池肉林で騒いでいるあいだに準備を整え、いい加減隷属させるかと指揮官が考えたときには第7師団と西方普通化連隊に包囲されていた。
この事を知ったウルバスト王国上層部は日本に対し宣戦を布告した。宣戦布告を行った使者は見下した態度を取っていたが、自衛隊の機械兵器を見るごとに顔を青ざめ、航空自衛隊のF-35Jを見たときにはついに意識を手放した。
ウルバスト王国に帰った使者は国王に事実を伝えたが、国王を含め誰も信じなかった。
1週間後、戦列艦が中心の大艦隊が護衛艦に1隻残らず沈められ、本土防空隊の竜騎士団がF-2A、F-15J、F-35Jに壊滅し、首都の大部分を爆装したP3CとP1に吹き飛ばされたあとでは誰もが信じたが。
第1空挺団の奇襲と第7師団と西方普通化連隊の火力の前に、王室の維持を条件にウルバスト王国はついに降伏、従わない貴族を除き旧ウルバスト王国の領土は日本の領土となった。
この戦争で日本側に死傷者はほとんど出なかったが、1つの大きな戦訓をもたらした。
――即ち、現代兵器は金がかかり過ぎる、と。
1回の出撃でウン千万かかる戦闘機、最低でも何百万円もするうえに使い捨てのミサイルなどは転移後の日本のお財布に優しくなかったのだ。
それでも敵が日本にとってそれらの兵器を使うに値する存在ならば使い続けただろうが、相手は格下も格下、しかもウルバスト王国から得た情報によれば、周辺国の軍事力はウルバスト王国より下で兵器も大差ないということが分かった。
航空戦力は時速300キロも出せず、機動性も劣悪な飛竜、ダメージコントロールなんて概念の無い戦列艦、マスケット兵と騎兵が主力の陸軍、これを日本が脅威と考えるのには無理がある。
アメリカと言う後ろ盾を失い、急遽軍事力が必要になった日本は金がかかり使い難い高性能兵器よりも安くて数が揃えられて初心者でも扱いやすい旧式兵器を欲した。
ウルバスト王国占領から3ヵ月後、日本政府は自衛隊のドクトリンの大幅変更とそれに伴う新たな兵器開発計画を発表した。
まず海上自衛隊は既存のヘリ空母を改装することで運用できるターボロップ機を中心とした空母機動部隊を設立し、現在開発中のレールガンを搭載した戦艦、及び金がかかる装備を削った水上護衛艦隊の整備。陸上自衛隊は現代技術で再現したT-34などのソ連戦車を生産配備し、機甲師団の整備を進めていき、陸海共用の攻撃ヘリの開発。航空自衛隊はターボファン、ターボロップの迎撃機と汎用性の高い戦闘攻撃機、共通部品を使っており、高いペイロードを有する輸送機と爆撃機の開発を発表した。
また憲法改正を始めとし本土を含めた各基地の燃料保管庫、弾薬庫の装甲化に全体的な輸送能力の強化を行うなど目立たない部分の改善も進み、日本は普通の国家に近づいていった。