メタルギガント
前回プレイした「DEAD RACING」というレースゲームではあえてロボットに乗ってプレイした。
細かくは書いていなかったがあのロボット、フットペダルやハンドレバーが両手両足で四つほどあり、さらにそのレバーには複数のボタンやらスティックコントローラーまで取り付けられていてそれらを全て同時に正しく動かすことで初めてまともに戦えるというシロモノだった。
正直操作はあまりにも難しいものだったが、その分ロボットに乗って操縦しているという感覚はこれ以上ないほどに感じられ、操作に慣れた後は楽しくてしょうがなかった。
だが、「DEAD RACING」はあくまでレースゲームだ。
異常な自由度を誇る機体製造システムによってそれを可能にしているだけでやっぱりレースゲームなのだ。
例え、同じロボットを作ってしまったプレイヤーとレースそっちのけでロボット対戦して遊べるとしてもレースゲームなのである。
では最初っからロボゲーとして作られたゲームはどうなのか。
ただのレースゲームがかなりの高クオリティだったのだから、ロボットを専門に作られたロボゲーであれば……と期待が膨らむのはしかたのないことだろう。
ということで、今回はそれを伝えるためにゲーム屋で中古217円(税込)で売られていた「メタルギガント」をプレイしていこうと思う。
値段がおかしい?
そんなことはないさ。
これぐらい普通だって普通。
では、さっそくゲーム開始といこう。
「貴様らは今より栄えある帝国機動部隊に配属される! それぞれが帝国のため全力で戦うことを期待している! 解散ッ!」
その言葉が聞こえてきたかと思うと急に視界がひらけ、体も自由に動かせるようになった。
周囲にいた兵士と思わしき人々もそれぞれ思い思いにどこかへと歩いて行く。
ゲーム開始して冒頭の出来事がそれだけってのもなかなか珍しいが、状況から察するに軍隊に入隊したとか、訓練を終えたとかそんなところか。
周囲を見れば人々がいたり機材があったりして、それらがどういう役割を持つのかわかりやすくアイコンが横に表示されている。
弾薬に治療……あれは店か?
そのアイコンも最初から装着していた目元を覆うヘルメットのようなものに投影される形で表示されているので世界観に違和感を与えることもない。
そういったHUDの表示に関しても拘っている点はかなりリアルに感じられ、このクオリティでなぜ中古217円という価格だったのかと疑問に感じる。
それはまあ横においておいてとりあえずチュートリアルか、あるいはヘルプ機能に該当するであろう「?マーク」の浮かぶ人物の元へと向かう。
中古で買った影響か説明書がなかったからな。
「ん? 基本操作を確認するのか?」
「ああ、頼む」
案の定チュートリアル開始のためのキャラだったようで一安心。
後から気づいたけど「?マーク」ってクエスト発生の可能性もあったからな。
「分かった。ようやく訓練も終わったというのにどいつもこいつも熱心だな……ちょっと待っててくれ。もうすぐ練習機が一機帰ってくるはずだ。っと、噂をすればだな」
苦笑しながらも感心した様子を見せた兵士が、何かに気づいた様子で空を見上げる。
それに釣られるように俺も空を見上げれば、まだ遠いがハッキリと人型の何かがこちらへと飛んできているのがわかる。
それは見ている間にどんどんこちらへと近づいてきて、すぐにその全貌が明らかになった。
高さはおおよそ10mといったところで「DEAD RACING」で俺が使っていたのよりも更に大きいものだ。
造形はまさしく人型兵器であり、なんとなく軽量級なのだろうと思えるほどにそのフォルムは細い。
その背にはブースターが備え付けられていて、それによって飛行を可能にしているようだ。
「よーし! そのまま徐々に高度を降ろせ! 接地したからといって急にブレーキをかけるなよ!」
ふと先ほどの兵士が大声で叫び指示を出す。
今の指示を聞くかぎり垂直離着陸はできず、飛行機のように地面を滑走しながら着陸するようだ。
となると目の前のだだっ広い空間はそのまま滑走路なのだろう。
そして練習機が徐々に高度を落とし、滑走路に足先が触れそうになった段階でブースターを切って完全に接地して……足が折れた。
「は?」
その光景に思わず声が漏れる。
なにせ、これからチュートリアルだって時に演出であろうその練習機の帰還シーンで練習機の足が折れたのだからそれも仕方ないだろう。
それによりバランスを保てなくなった練習機は地面に何度も叩きつけられるかのごとく地面を転がった。
そして最後は何やら倉庫のような建物へと突っ込んだかと思うと次の瞬間、その建物は大爆発を起こして全てを吹き飛ばした。
その爆発の規模は10m級の巨大な人型兵器が爆発したにしても大きすぎるものだったが、ふとあの場所にあったものがどういう建物だったのか気づいて納得する。
――ああ、あそこは弾薬庫だったな。
その爆発は全てを吹き飛ばした。
そう、文字通り全て……基地全てを丸ごと吹き飛ばしたのだ。
浮かび上がるGAME OVERの文字の背景で基地が吹き飛んだ映像が流れているから間違いない。
え、ってか俺死んだの?
意味がわからない。
チュートリアルでなんで俺死んでんの?
いやチュートリアルでも気を抜けば死ぬってのはよくあることだけど、そもそもチュートリアル始まってないよね!?
チュートリアル開始するために練習機が戻ってくるの待ってただけなんだけど!?
なんでその帰ってきた練習機が事故って弾薬庫に突っ込んでんだよ!
ほんともう……キレそう。
でもキレない。
チュートリアルでのふざけた仕様のカミングアウトなんてレジェンドオブシルバで体験済みだし?
とりあえずリプレイ。
//〜〜//
いや、すまない。プレイログに書き記すのも忘れてプレイし続けていた。
そんなに楽しかったのかって?
いやいや。
結論から言おう。
このゲーム糞だ。
クソゲーだ。
そりゃ中古で217円も納得だわ。
いや、むしろあれだね。高すぎるね。
まず最初チュートリアルで練習機が事故ってたやつ。
あれ、確率でたまに起こるイベントだった。
それだけだったらただのお遊び要素として笑えたかもしれない。
ただ、このイベントが起きる確率は体感で30%ぐらいだ。
ばっかじゃねーの。
なんで体感できたのか。
このゲーム、ある程度進めるまでセーブ機能が一切無かったのだ!
ある程度っていうのはチュートリアルを終えるまでなんだけどその間何度も死んで最初からプレイしてたからいろいろ体感的に確率が分かってしまった。
これだけだとただ単に俺が下手くそなだけだと思うかもしれない。
でも仕方ないと思うんだ。
練習機のコックピットにかけられた梯子を登っていると、梯子が横にずれて倒れてその先にあった柵に刺さって死亡するとか予想できるわけないだろ。
乗ったら乗ったで通信で指示されたとおりに起動スイッチをオンにしたらジェネレーターが異常出力を起こして爆発して死亡したし。
はたまた空飛んでたらメインブースターが逝かれて水没どころか地面に叩きつけられるし、戦闘訓練に入れば使ったミサイルが暴発してやっぱり爆死したし、訓練用の弾をわざと受けての被弾時の衝撃に関する訓練なのに何故か実戦用の対重装甲弾が装填されててコックピット見事に撃ちぬかれて死ぬし。
しかもそれら全部がだいたい30%の確率で起こる。
それぞれのイベントに対して30%だ。
即死イベントがやたら多いくせにそれぞれで確率判定されるのだからそれはもう何度も死んだ。
そして最初に見た練習機の不時着。
あれが自分の操縦時においても起きた。
ロボットの操作自体はおかしいところなかったし死にながらのトライアンドエラーで操作感覚は身についてたから指示されたとおり完璧に速度を落とし着陸したってのにポッキリと足が折れたのだ。
なんていうかどれだけ完璧でも折れるときは折れるもんだって言われた気がした。
ホント折れるときは折れるもんだって納得したよ。
心折れましたからね。
まあ、悔しいからチュートリアルだけは終わらせたけどな!
でも続きをプレイしようとは思わない。
なにせチュートリアルが終わると同時に「絶対に安全というのはありえない。それが人型兵器という不安定なものであれば尚更である」っていう注意書きが出てきたからな!
練習機でない正規の機体でも動作不良起こすこと示唆してんじゃねえか!
とはいえ正規の機体でも同じような目に合うってのは俺の予想にすぎない。
だから一応普通のミッションを司令部から受けて出撃したのさ。
案の定出撃前に爆死だよ! クソがッッッ!!!!
二度とこの会社のゲームは買わねえ。
そう誓わせてくれたゲームでした。
クソゲー故に一話完結もやむなし