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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
僕らのダンジョン探索録(ダンジョン探索RPG)
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僕らのダンジョン探索録 20

 感じるがままに身体を動かし刀を振るう。

 その度に、侍を浅く斬り裂いていく。

 反撃してきた侍の攻撃はすべて避けている。

 徐々に慣れて今では本当に紙一重で避けることもできるようになっていた。


『クカカ、やりおる! ならば見せてくれようぞ、我の本当の力を!』


 そうこうしている内にダメージが蓄積したからか、侍が大きく距離を取ってそんなことを言ってきた。

 そして、侍の身体を覆っていた瘴気がその内へと取り込まれていく。

 所謂、第二形態だとか激昂モードだとかそんな感じの能力アップ&行動パターンの変化ってやつか。

 お約束だし、今回はマナーを守って黙ってそれを見守る。


 侍の身体を覆っていた瘴気のすべてが取り込まれると、甲冑に守られていない部分から見える肌に無数の赤いヒビ割れが生じ、そこから紅蓮の炎が吹き出した。

 体中のあちこちから炎を吹き出し、その炎は刀をも覆っていった。

 もはや人というよりは炎そのものが甲冑を着込んでるかの如き姿である。


『クカカ、我に緋炎の剣を使わせたこと誇るがよいぞ!』


 そう言って、変化を終えた侍は瞬く間に距離を詰めて炎に包まれた刀を振るってきた。

 その攻撃は変化前よりも格段に早く、力強く、苛烈で激しいものだ。

 一切の反撃を許さぬとでもいうような幾重にも重ねられる無数の斬撃が俺を襲う。


『む?』


 だが、その斬撃が俺にダメージを与えることはなかった。

 今だ絶好調な俺にとっては能力が上がったとしてもその攻撃を見切ることなど造作もなく、炎に包まれた刀の間合いも数回躱して把握した。

 最低限の動きで斬撃を躱しながら俺は手に持つ刀に魔力を流す。


「魔装鋭刃!」


 十分に流したところでそう呟けば刀に流した魔力が刀の根本から覆うように漏れでて最終的に刀身を青白い膜が覆った。

 現在手にしている刀は魔刀であり、その能力は魔力を纏い武器を単純に強化することだ。

 発動にはこちらから魔力を流すのとキーワードを唱えることが必要になっているが、一度の使用で魔力の8割を消費するし、効果時間は5分しか無い。

 おまけに再使用には3時間のクールタイムがあるのでここぞという時にだけ使える切り札である。

 使用に制限がある分、かなり強化されるので地味な効果とは裏腹になかなか強力な一品だ。

 それに、俺的には魔刀の能力が魔力を纏うっていうのが洒落になってて気に入っている。


「フッ!」


『く!?』


 俺は侍の攻撃を紙一重で躱しながら魔力を纏った刀で斬りつける。

 強化された刀の一撃は先程までのとはまるで違うためか、その攻撃に侍は怯む。

 その隙を逃すこと無く更に攻撃を加えれば、侍は必死にそれを防ごうと動く。


 その動きによって新たに出来た隙を付くように攻撃の手は緩めず追い詰める。

 戦いは再び俺が優勢に立ち、侍がそれをなんとか凌ぐ形で展開していった。


 この魔刀の能力からすれば、こちらが常に攻めている状況はかなり理想的な展開だ。

 もちろん常日頃からこんな理想的な展開になることはなく、相手が人型であったことと今日の俺が過去にないほどの絶好調なことがこの状況を作り出した要因だろう。








『見事……!』


「シッ!」


 そうして、結局終始俺が攻め立てて最終的に攻撃を捌けなくなった侍が地に膝をつき、刀を地面突き刺してなんとか完全に倒れるのを防いだところで俺が侍の首を落として戦いは終了した。

 最後に侍が呟いた言葉は妙にらしいと思ってしまった。

 他のボスよりも高いレベルのAIが組み込まれていた気がするしボスの中でも割りかし重要であったり強力なボスだったのかもしれない。


「はぁ……はぁ……フー……っ」


 戦いが終わると、途端に心臓がバクバクと音を立てて躍動しているのを感じられた。

 戦闘中は気にもならなかったがこうして終わってみるとかなり体力を消耗していたことが分かる。

 それから侍の死体が消えていく。


「はぁ……ん?」


 だが、最後に侍が突き立てた刀だけが消えずにその場に残ってるのを見て思わず声を漏らす。

 恐る恐る手を伸ばして柄を握れば、一切の抵抗無く地面から引きぬくことが出来た。

 まるで炎のような刃紋をしたその刀を見ていると、ヘーテルが近づいてきた。


「お疲れ様、すごかったわね」


「ああ、なんだかすっげえ絶好調だったんだよ」


 労いの言葉に笑みを浮かべてそう返す。

 それから少しヘーテルがこちらを心配するような表情になる。


「見てる側からするとギリギリで避け続けている姿はハラハラしたけどね」


「ははっ、それは……ごめん」


 どうやら、俺の戦い方は見る側からすれば心臓に悪いものだったらしい。

 苦笑しながらも謝れば、彼女も別に気にしてないわと笑みを零す。


「それでそれは?」


「ああ、さっきの侍が持ってた刀だ。何故か消えなかったし報酬みたいなもんじゃないかな」


 そういえば、他のドロップアイテムと違って最初から刀の形としてあったけどそういう演出だったのかね。

 そう思いつつ、もっとよく見たいといった様子のヘーテルに一旦渡そうとした瞬間。


「あつっ!?」


「へ?」


 一瞬、刀身が燃え上がって火花を散らせた。

 それに驚いてヘーテルは手を引っ込め、俺は突然のことに呆然とする。


「んー……っとと、危ない危ない。これはあれね……刀が所有者を選んでるみたいね」


 すぐに立ち直ったヘーテルがゆっくりと刀へ手を伸ばし先ほどと同じ反応が起こることを確認して呟いた。

 なるほど、確かに言われてみればそんな感じか。

 それに先程から燃え上がる炎が全然熱くない。

 これは俺が侍を倒したからということかな。


「ま、私は刀は使わないし、そのままあんたが使えばいいんじゃない?」


「じゃ、有りがたく使わせてもらうか。んー二刀流でも……うーん」


 これだけ特殊な形で入手したものであるし、その能力には期待できるから使うのは問題ない。

 ただ、すでに持っていた魔刀もそれなりに気に入っているのでどうせなら二刀流って手もある。

 あるが……うん。

 やっぱりないな。


 それ用にこしらえた武器で二刀流ならまだしも、魔刀も、侍から得た刀もどちらも本差として扱うような代物だし。

 これはゲームだし、現状のステータスであれば普通に出来そうだがやっぱり違う気がする。

 二刀流もかっこいいとは思うけど、一本の刀を両手できっちり振るうのもかっこいいと思います。


 まあ、気分で持ち替えて使うか。

 その前に街で鑑定して能力について調べないとだが。

 能力があるのは間違いないだろう。

 だってすでに勝手に刀身が燃えたりしてるわけですし。


「んじゃ、先行こうか。さっきの侍が言った言葉を信じるならこの先は宝物庫で、あいつが最後の守りだったようだし期待できそうだな」


「ま、一応警戒はしておきましょう」


 そうして、俺たちは宝物庫へと進んでいく。

 侍の言葉は間違いなかったようで途中に罠も無ければモンスターとも出くわすこと無く宝物庫の入り口と思われる扉までたどり着いた。


 近づくことがトリガーだったのか勝手に扉が開き始めたが横でヘーテルが落ち着いているので問題ないのだろう。

 そして、扉が開いた先はそれなりに広い空間となっていて金銀財宝が山のように積まれていた。


「おお……」


「罠は……本当にないようね」


 それを聞いて金銀財宝を手に取ろうとするが張り付いて取れやしない。


「なんだ、オブジェかこれ」


「拾えるアイテムはキラリと光ってる奴と……あの宝箱だけみたいね」


 言われてみればあちこちにドロップ状態のアイテムが散らばっている。

 宝物庫だし演出として金銀財宝は置いておきたいけど、それ全部持ち帰れても困るだろうから当然といえば当然か。


「ま、宝箱はヘーテルが開けるとして、散らばってるアイテムは手分けして回収しますか」


「そうね。何かしら私もよさ気な装備が手に入ると嬉しいわ」


 そんな会話をしつつ宝物庫に散らばっているアイテムを回収していく。

 背景オブジェの金銀財宝が無駄に輝いて、若干ひろえるアイテムを探すのに苦労したがすべて回収し終えた。

 とりあえず散らばっていたのはすべて換金アイテムで、中には金でできた直径30cmの球体もあって、それは拾い上げようと触れた瞬間に変化した。

 純金のようでとても持ち上げられないほど重い。とりあえず地面をゴロゴロと転がして背負袋に入れた。

 これ、今の背負袋がかなり性能の高いものだからなんとかなったけど場合によっては諦めるしかなかったな。


「ふう……結構重いものが多くて大変ね」


「ああ、ほんとにな。でも後はこの宝箱だけだし中身回収したら一度街に帰還だな」


 最後にメインである宝箱のそばに二人して近寄って、俺はヘーテルがそれを開けるのを傍で見守っている。


「宝箱に罠は……無いみたいね。それじゃ開けるわよ?」


「おう」


 罠がないことを確認したヘーテルは一度こちらを見て、開くと告げてきたので俺は頷く。

 そして、宝箱が開かれ中にはキラリと光る何かがある。

 宝箱も他のアイテムと同じく拾うまでは分からない仕様だというのは、以前雷槍を手に入れた時に分かっていたことだ。

 それからヘーテルが恐る恐るそれを拾い上げ、ようやくどんなアイテムなのかが判明する。

 それは翡翠色に輝く金属から作られた弓だった。


「結構軽いわね……あら?」


「おお、魔法弓か」


 感触を確かめつつヘーテルが試しに弦を引いてみると、そこに突然青白く輝く光が矢のように現れた。


「そうみたいね……射なくても矢を発生させるだけで魔力は消費するけど、体感としてはそこまでコストは高くなさそうだしこれは便利そうね。ま、詳しくは鑑定してからにしましょ」


 何度か確かめて満足したのか頷いて弓をしまいつつヘーテルがそう告げる。

 俺も異論はないので一度宝物庫を見渡して回収し忘れのものが無いか確認して、帰還水晶を使ってダンジョンを脱出した。


 このゲームをヘーテルと一緒にプレイしての初ダンジョン探索は大成功と言っていいだろう。

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