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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
僕らのダンジョン探索録(ダンジョン探索RPG)
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僕らのダンジョン探索録 19

 それなりの時間、ヘーテルが豪華な扉の解錠に取り組んでいて、俺はそれを見守っていた。

 だがカチャカチャと音が聞こえるだけで、モンスターなどの襲撃もない中、ただ見守っているのも疲れてきた。


 一応ヘーテルと雑談しながらなので、そう暇でもないんだが、手持ち無沙汰な状況が背中がむず痒い。


「あとどれくらいかかりそうだ?


「んー30分くらいかしら」


「なら、ちょっと暇潰しするかな」


 まだ時間がかかるようなので、ちょちょいとソフトを立ちあげてあれやこれやと設定。

 すると、目の前に仮想ウィンドウが表示され手元にはスティックとボタンのついたコントローラーが現れた。


 立ち上げたのはクラシックエミュレータというやつで、旧時代で主流だった画面に映像を流し、コントローラーで操作するゲームをVR世界で再現、プレイを可能にするものだ。

 このソフトはクラシックゲームが好きな人なら誰もが知ってるだろう。


 知らない人向けにもうちょっと説明すると、このソフトを使うことでVR世界に仮想ウィンドウと仮想コントローラーを呼び出すことができる。

 そして、クラシックゲームを購入してインストールしておくことでそこがVR世界であればどこでもクラシックゲームをプレイする事が可能なのだ。


 しかも特定ハードのものだけでなく、どのハードのものでも遊べる他、本来日本語字幕すらないゲームであってもVRチップの自動翻訳機能によってその内容を完璧に把握してプレイができる。


 クラシックゲームはだいたい一本100円で買えて気軽に遊べるのもいいところだ。

 今回プレイするのはいわゆるアクションRPGで、かなり難易度の高い闇な感じのシリーズ、その3作目だ。

 あるいは4、5作目とも言えるがそのあたりの細かいところは置いておく。

 このゲームは初見殺しのオンパレードで基本的には死んで覚えるタイプのゲームになっていてその難易度の高さに俺はすっかりハマってしまったのだ。

 なので、こうした時間を使ってシリーズの最初から少しずつ進めているのである。


「クラシックゲームは私、好きになれないのよね」


「まあ、好みはそれぞれだしな。VRに慣れてるとなんでそんなこともできないのかと思うことも多々あるし」


「そう、それよ。普通にその段差登れるでしょってところを登れなかったりしてイライラするのよね」


 俺がクラシックゲームをプレイしていると、ちらりとこちらを見たヘーテルが話しかけてきた。

 仮想ウィンドウを展開してプレイしているから、こうして話したりすることが出来るのもいいところだな。


「ははっそれは当時だと仕方ないからな」


「分かってても受け付けないのよ」


「それも仕方ないことか」


「そうね。それが私の仕様ってところよ」


 ポチポチどボタンを押しながら会話を続ける。

 よっし、パリィ成功っと。


「俺はなあ、それはそれ、これはこれって感じでだいたい楽しめるぞ」


「幸せな性格ね。あ、でもホラーならクラシックゲームも好きよ」


「あー俺無理。ホラーはもう絶対プレイしないって決めてる」


 ホラーとか何が楽しいのかさっぱりだ。


「まだ、あのゲーム引きずってるの? 確かに怖かったけどあのスリルが堪らないんじゃない」


「理解できんなあ」


 思い出すだけでも……いや、やめやめ!

 思い出す必要はない!

 ないのだ!


 あっ動揺から簡単なミスして死んでしまった。


「ふふっ、どうしようもないのね?」


「ああ、なんと言われてもそれが俺の仕様だ」


 そんな会話を続けながらも俺はクラシックゲームを、ヘーテルは扉の解錠を進めていた。

 この辺だけ抜き出したら何のゲームのプレイログなのか分からんな。







「よっし、エリアボス撃破」


「おつかれ。こっちもそろそろ……よし、開いたわよ!」


 それからしばらくして俺はプレイしていたゲームでエリアのボスを倒した。

 そして同じタイミングでヘーテルの方も解錠が終わったようだ。


 ……いや、そっちがメインだったな。

 開いたのならクラシックゲームも終了しておこう。


「結構時間かかったな」


「ええ、なかなか難しかったわ! 最初は順調に進んでたんだけど、ある時点でさっぱり進まなくなったのよ! どうすればと、少し悩んでから気づいたんだけど、一度解除した罠をもう一度セットする必要があったのね! それで、また――――」


 クラシックゲームをさっさと終了して、ヘーテルの傍にいって声を掛ければそれが切っ掛けになったようで、彼女はマシンガンの如き勢いでこの扉の解錠に関するあれこれを解説し始めた。


 うむ、楽しそうで何より。

 前回の発作、ダンジョンに入った時の罠についての解説の時は強制終了させた分今回は聞いておくとしよう。

 スイッチ入って嬉しそうに解説するヘーテルの姿は何度見てもカワイイものだからな。


「――――そうしてようやく解錠に成功したってわけ! あーもう、ホント楽しかったわ!」


 そんなわけで、プレイログからはバッサリカットしてヘーテルの解説が終わった。

 解説にかかった時間は15分。

 大変活き活きとしたヘーテル様を見て私めも元気いっぱいでございます。


 えっと、なんだっけ。

 罠がワナワナとトランポリンだっけか。

 うむ。

 そんな感じだった。


 ……………ハッ!


「じゃ、先進もうか」


「え? ああ、そうね!」


 何か、今頭の中おかしかったような?

 でも不思議と深く考えてはいけない気がしたのでとにかく先へ進むことにした。

 なんでか知らないけど扉が開かれてから無駄にここに居た気がするし。


 そんなわけでヘーテルが解錠した扉を開けてその先の様子を伺う。

 扉の先はまた通路かなと思っていたのだが、何やら広々とした部屋に繋がっていたようだ。


『クカカ、幾重もの罠を切り抜けし者どもよ。まずはその技量、褒めてやろうぞ。しかし、貴様らが宝物庫に辿り着くことはない。宝物庫の最後の守りであり、最強の番人たる我が貴様らを葬るが故に。何、ここまでたどり着いたのだ。その技量に免じてせめて痛みなく逝かせてくれよう』


 そしてその部屋の中心に居た存在が、そんなことを告げてきた。

 そいつは甲冑姿の侍と言った感じで、背丈や体格は俺より少し大きい程度だ。

 また、その体全体を赤黒い瘴気のようなオーラが覆っており、阿修羅を模した特徴的な兜をしており、その表情はすべてが憤怒の表情で、正面の面の眼の部分が赤く光っている。


『宝物庫の番人、一刃千殺の無銘侍が現れました』


 そして、表示される情報ウィンドウ。

 一刃千殺。

 字面から察するに、刀一振りで千人殺したとかかね。

 まあ、ゲームだしその辺りはそういう設定ってだけの話だろうが。


「顔が怖いわね」


「ああ、そうだな。中々厳つい面だよなあれ」


「あっちじゃないわ。あなたのことよ」


 ん?


「まるで殺人鬼が得物を見つけたみたいな笑みを浮かべているわよ?」


「おっと」


 どうやら中々凶悪な笑みを浮かべていたらしい。

 両手で揉み解す。


 なぜだか侍が待っていてくれているので余裕の行動だ。


「じゃ、あれは任せろ」


「そう? 手伝いが欲しければ言ってね」


「ああ」


 そう言って、背負袋をヘーテルに預け武器だけ持って侍へと歩み寄っていく。

 奇しくも今回使っている武器は刀。

 侍相手にこれほど『らしい』ものはないだろう。


『ほう? 貴様一人で戦おうと言うの「しゃああああ! ようやくの出番だああああああああああああああ!!!」――ッ!?』


 侍の言葉の途中だったが、俺は待っていられず斬りかかった。

 道中ずっとヘーテルについていくだけで何一つ手伝うことも無かった俺の鬱憤は溜まりに溜まっていたのである。


 侍は俺の突然の攻撃に驚きながらも危なげなく防ぎ、即座に反撃してきた。

 チラリと横目に振られた刀を見て、その軌道を把握し半歩だけ引いて、ギリギリで回避しつつ斬り上げる。


『ヌゥ!?』


 俺の目測通り、侍の刀は俺の胸元1cmのところを通り過ぎ、斬り上げた俺の刃が、刀を振り切った侍の右腕を浅く斬り裂いた。

 なんだか、調子がかなりいい。

 何もかもがゆっくりに見えて、一瞬の内に認識できる。

 身体が思うように動く。

 絶好調といっていい。


 そうして戦いは俺が最初から優勢に立ち、ボスである侍がそれに耐え忍ぶというボス戦としてはかなり奇妙な様相となっていったのだった。

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