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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
DEAD_RACING(レースゲーム)
7/72

DEAD_RACING 2

本日二話目

「60……50……気づかれたか!?」


 距離を口に出しながら集中して観察していたが気づかれたのか相手の車輌が動き始めた。

 とはいえ動き出しはスピード特化機体といえどもさすがに遅い。

 ギリギリ射程内に入ったため相手の進行方向へ十メートルずらした方向へ向けてパルスライフルを連射した。


 そしてその撃った場所へと車輌が突っ込み、電磁パルスによってその車輌のシステムがダウンした。

 そうして相手の車輌が止まったのを確認しつつ、地面に叩きつけられる前にブーストで速度を落とし、地上1mで落下の勢いが止まったところで機体のハッチを開け外へと出ると機体から飛び降りた。


 制御を失った機体はそのまま地上へと落ちるが1mから落ちたところでどうということはない。

 俺の手には一丁の拳銃。

 誰でも使える何の変哲もないやつだ。

 相手の機体まで走り、上に飛び乗ればシステムが落ちたことで出られなくなっていた操縦手の姿があった。


「ようスピードマン。運がなかったな」

「クソっ! なんでよりによって簒奪野郎がここに――」


 スピード特化機体故に体を固定する必要があったのか銃も構えることができない状況にいたその操縦手に窓越しに軽く挨拶をし、相手の言葉も最後まで聞くことなく俺は引き金を引いた。


 これにより操縦手は死亡し、このレースからはリタイアとなる。

 それから俺は残った機体からブースターのレアパーツを回収した。


 そうこのゲーム。

 相手からパーツを奪うことも可能なのだ。

 もっとも奪われたからといって完全にロストするわけではない。

 だが、奪われたパーツはすべて完全損壊したものとみなされる。

 この完全損壊というのがくせ者で、通常はどんなにひどいクラッシュをしても大破止まりで、その程度ならそれなりの修理費用だけで済む。

 だが、完全損壊となるとその修理費用が最低でも二桁分は変わってくる。

 そのためにレース中にパーツを奪われると莫大な修理費が請求される。

 払込期限は無いが、レアパーツともなるとその額はそれはもうこれ以上ないほど跳ね上がりかなり厳しいものとなる。


 なお奪うためにも条件があり、損傷率が70%以上の状態でプレイヤーを倒す必要がある。

 そうなると重火器なんて使えばあっという間にお釈迦だし、速度が出ている時に何らかの方法で無力化しても事故って大破するのがオチだ。


 だからこそ俺はパルスライフルを愛用している。

 直接的なダメージはかなり低く射程も短い代わりに相手のシステムをダウンさせることができるパルスライフルはパーツ回収には絶好の武器なのだ。

 まあ、システムダウンに対する対策がされると一気に厳しくなるのだが。


 さて、手に入れたブースターのレアパーツはなかなかの性能だ。

 愛機のブースターと入れ替えればかなり機動性が上がるだろう。


 まあ、この場ではそれができないから無事生き残らないとね。

 ロビーに帰るまでがパーツ泥棒です。


 ちゃちゃっと愛機へ乗り込み、薄暗くなっている路地へ潜む。

 こっからは待ちぶせ体制だ。


 スピード特化機体がいたのと、それに出会えたというのはかなり運がいい。

 おかげで早い段階から待ちぶせ戦法の準備が整った。


 さて、次に現れるのは一体誰だろうか。

 やはりVTOL機かね。

 このゲームにおけるVTOL機は普通に音速を超える速度出してくるし。

 まあ何が来るにせよ見逃すという選択肢はない。

 最初のチェックポイントを放棄している以上俺の勝利条件はライバルプレイヤーの殲滅しか無いのだ。

 そのためにひっそりと敵が来るのを待ち続けよう。




 さて、そうして30分ほど過ぎた。

 もうわかると思うがこのゲーム一回のプレイにかかる時間が結構長い。

 生き残れば生き残る程にそのプレイ時間は伸びていく。

 まあ、楽しいから俺は気にならないけど、そのプレイ時間が少しこのゲームの敷居を高くしているのは確かだろう。

 面白いんだけどな。


「っと、ようやくお客さんか」


 レーダーに反応があったのを見てつぶやく。

 そしてどうやらやってきたのは一人だけではないようで四人ぐらいの集団でやってきている。

 レーダーの光点が何度も重なるように蛇行しているのを見ると組んでいるわけではなく互いに相手をぶっ壊そうとしているようだ。


 あ、1機沈んだな。

 これで残りは3機、座標を受け取るときには止まっていないといけないというルール上この3機はここで争い続けるだろう。

 このまま待っていれば自然と数が減るがそれは少しつまらないので俺もこのタイミングで動く。


 やってくる3機が通る道路へと出ると一気にフットペダルを踏みスロットル全開で3機へと向かう。


「っ!」


 と、レーダーが新たな機体を捉える。

 俺の進む方向と垂直になる形で現れたその機体の速度はかなり早い。

 先ほどのスピード特化機体に迫るほどだ。


 間違いなくVTOL機。

 それにこの軌道……チェックポイントから少しずれている。


「見られてるな……」


 間違いなく狙いは俺だ。

 どのタイミングで俺を見つけていたのかは知らないが俺が動き出したのを見て横から叩こうという魂胆だろう。

 戦闘機タイプはデフォルトでレーダーがついているし、索敵ボーナスによって通常のレーダーでも俺が持つレアパーツのものと同等以上の性能を発揮する。


 だが、まあ。

 本来ならもっと近づかれないと気づけなかっただろうが俺はレアパーツのレーダーによりそれなりに余裕がある段階で気づけた。

 

 俺はタイミングを測りながら先に捉えた3機へと前進し続ける。

 5……4……3…………


「今っ!」


 そしてやや開けた場所に出る直前で俺はバックブーストで急静止をかける。

 操縦席の慣性制御機能を持ってしてもなお強力なGがかかるがそれに負けぬように歯を食いしばる。

 そして無事止まったのと同時に10m先をプラズマ弾が斉射していった。


 無事攻撃が回避できたことに一息つくこともなくパルスライフルを前方、やや上方へ向かって連射する。

 直前までバレないように離れた位置に待機し、攻撃を仕掛けるために高速で迫っていたVTOL機は当然攻撃だけして即座に反転、なんてことはできない。

 だからこそ、その射撃によって生じた電磁パルスの中へとVTOL機が突っ込むのは必然だった。


 電子制御の比率が大きいVTOL機はその分それに対する対策が施されているが、嵐のまっただ中に突っ込めばさすがに一瞬ぐらいはシステムに異常が生じる。

 そしてこのビルが渦巻く街中で高速で飛行していた戦闘機が一瞬でもシステムに異常が生じればビルに激突するのは避けられない。


「グッバイ、エースパイロット」


 無事VTOL機がビルへと衝突するその直前にそんな通信を送り敬礼。

 直後、勇敢なパイロットは通信を返す暇もなく爆発四散したのだった。





 さて、今の爆発で前方にいた3機も……っていつのまにやら1機沈んでるから2機か。その前方の2機も誰かがこの付近にいることに気づいただろう。

 この2機はまだ争っている最中だがそれでもこちらのことを警戒するだろう。


 だが、安心してほしい。

 警戒する必要なんてない。


 だって俺は正面から行くからな。

 

「正面からてめえらの車をシュゥゥゥッ! 超エキサイティン!」


 ブースターをフルスロットルで吹かし、人型形態での最高速度で突っ込みその速度のまま先行していた軍用ジープを蹴っ飛ばし、ジープを追っていた装甲車へとぶつけてやる。

 いくら装甲車といえども時速600kmの速度から繰り出された蹴りで飛ばされたジープが衝突して無事で済むはずがない。

 衝突した部分は大きくひしゃげ、更に強引に方向が変えられたことでバランスを崩した装甲車は二転三転と派手に転がった後爆発した。


 同時に「Congratulations! Survivor is only you!」の文字が浮かび上がる。

 日本語にするとおめでとう生き残りはあなただけだ!

 つまりライバルレーサーが全滅したってことだな。

 俺一人の完全勝利である。


 ちなみに自分以外全滅した場合レース賞金総額を得られる。

 敗北者が得られるのは何もなく修理費という出費だけが残るとてもシビアなゲームである。


 俺としては賞金よりもレアブースターが得られたのがうれしい。

 



 さて気持よく勝利したところで今回のプレイログはおしまいだ。

 このゲームは本当に自由度が高い。

 俺だってまさか人型兵器を作れるとは思ってなかった。

 まあ、操縦機関の構成がアホみたいに難しくて、完成後は操作がすげえ難しくて最初はひどかったけどな。


 俺の機体もなかなかユニークだが、このゲームには他にもユニークな機体を使っているプレイヤーが結構いる。

 もはや乗り物ですら無い強化外骨格なんていう機体を使うプレイヤーすらいれば時速500km以上の速度を出すスケボーを使うプレイヤーなんてのもいる。


 VRレースゲームというとどうしてもリアル志向になりがちな中であえてこの方向性を示したDEAD RACINGはレースゲーム業界に激震を起こしたと言ってもいいだろう。

 グラフィックなどの基本性能はそれなりに新しいゲームだけあってどれも高水準。

 内容も異常なまでの自由度を誇る機体作成システムによりどれだけプレイしても飽きさせることはない。

 また、マッチング条件に一般車両のみなど制限をかけることができるのでそんな突拍子のないレースがしたいわけじゃないって人にも十分おすすめできる。


 ただ、やはり惜しむらくは一回のレースにかかる時間がかなり長いものとなる点だろう。

 特に待ち伏せ中はかなり暇で、ゲーム外アプリを起動して別のゲームをプレイできるほどに暇だ。

 まあ、ゲーム中に他のゲームをプレイできる機能のお陰で案外苦ではないのだが、その一回にかかるプレイ時間というのは人を選んでしまう。

 結果プレイ人口もやや他のビッグタイトルと比べるとどうしても見劣りする。


 それだけが本当に残念である。

 ただまあ、時間にある程度余裕があるのならこのゲームは間違いなく買いだ。





 P.S.最新のアプデでCo-op要素が追加された。突如あふれたゾンビをみんなで蹴散らせ! レースゲームなのにそんな要素を追加しちゃうDEAD RACINGは今なら****円!

DEAD_RACINGはこれで終わり。

二話だけですが文字数はレジェンドオブシルバと3000字ぐらいしか変わらない。


むしろレジェンドオブシルバが小分けしすぎたのを反省してこんなかんじにしました。

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