僕らのダンジョン探索録 17
訓練場の控え室でバンとPvPについて好みの武器や、戦法等について語っていると、ヘーテルから罠解除の練習が終わったと連絡があった。
「っと、ツレが戻ってきたから俺いくわ」
「ああ、人待ってて時間潰してたのか。なら、俺もパーティーに入れてくれないか?」
「悪いな。今日は夫婦水入らずでダンジョンデートなんだ」
そう言ってバンの提案を断っておく。ある程度気心知れてるラッピー辺りならともかく初対面はな。
「え? 既婚者なのかよ!? しかも一緒にゲームしてくれるのか? 羨ましいな、おい」
「まあ、出会いはそもそもゲームでだからな。そんなわけでパーティーは無理だけどフレンド登録はしとこうぜ?」
「うい、俺だってそんな孤立無援なパーティーはごめんだぜ」
そんな会話をしながらフレンド登録は完了した。
尚、ゲーム内のものではなく、オープンIDを利用したほうでの登録だ。
「結構色んなゲームやってるから別のゲームでも遊ぶ機会はあるかもな。なんだったらバンが気に入ってるゲームがあって一緒にプレイする相手が欲しいとかあれば、気軽に誘ってくれていいぞ。こっちはすぐさま買ってプレイできるからさ」
「その言い方だと、金持ちで時間もわんさかある感じか? まあ、いいや、あれこれ聞くのはマナー違反だし。んじゃ、そういうならなんかあったら遠慮なく誘わせてもらうわ」
最後にちょっとした約束みたいなことを言ってから俺は控え室を後にしてヘーテルの元へと向かった。
さて、ところ変わって現在はCランクダンジョン、その内部へとやってきている。
当然隣にはヘーテルの姿があった。
武骨に機能だけを求めた防具をつけた彼女の姿はまるで戦女神だ。
「バカいってないでさっさと行くわよ」
「ういっす」
どうやら漏れていたらしく小言をもらってしまった。
でも、不満ではなかったのかその表情は柔らかい。
「さて……なるほど確かにトラップダンジョンと言うだけあるわね。本当に罠だらけじゃない」
それからざっとヘーテルが辺りを見渡してから呆れた様子でそんなことを呟いた。
どうやら呆れるほどに罠がいっぱいあるようだが俺の目には矢が放たれる罠と地雷が一つずつあるぐらいしか分からない。
「ふふーん? いいわ、教えてあげる! まず今あんたがいった2つの罠は分かりやすく設置されている……いえ、正しくはわざとらしく設置されている罠よ! それらは、見つけてもらうことを狙いにした罠でいわばブラフなのよ! 本命はそのそばにある地面に一体化してるスイッチで――」
それを伝えると、なぜか嬉しそうにして、どこにどんな罠があるのかを教えてくれた。
ああ、ヘーテルは説明が大好きだもんな。
これは話を振った俺のミスだな。
このままだと長々とヘーテル先生の解説は続きそうなので強制的に止めるべく後ろから防具の隙間へと手をさし入れた。
もみもみもみもみ……至福!
同時に目の前にハラスメント警告の通知が表示され……即座に警告が消えた。
ヘーテルが通報を拒否し、接触を許可してくれたからだろう。
「なに? 溜まってるの?」
「いや、さすがにこの部屋の罠全部の解説されても困るから」
別に拒否するわけでもなく、首を傾げるヘーテルに、解説はしなくていいと伝えれば納得したように頷いた。
「そういうこと。まあ、溜まってるはずは無いものね。毎晩――」
「やめなさい」
やめてください。
俺がプレイログ残してるの知っているでしょうが!
このログ、ほぼ自動生成なんだから後で修正入れなきゃいけなくなると面倒なんだぞ!
俺の必死な願いが通じたのか、ヘーテルはこくこくと頷いて、なぜか熱い口付けをしてきた。
「んん……今はこれで我慢しておきなさい。続きはゲームの後にベッ――」
「やーめーろーよー!!」
「なによ、嬉しくないの?」
「超嬉しいけどそれとこれとは話は別!」
最近はますますオープンになっていて、恥じらう姿など全然見ない。
それ自体は慣れたしそれはそれでかわいいけども、今はダンジョン攻略に集中したいのだ。
「ん、仕方ない。私が先導する、ついてきて」
「あ、まだそのキャラ残ってたんだ」
今度こそ俺の思いが通じたのか真面目な雰囲気になったヘーテルが無表情不思議っ子キャラでついてこいと言ってきた。
基本無表情で、片言というか必要なことだけを告げるあのキャラはある意味俺たちの出会いの切欠とも言えるから懐かしい。
最近はそのキャラも鳴りを潜めてたが、完全に消えてはいなかったようだ。
でも、こういうもう一人の自分を用意しているのって、結構中二病じゃね?
「本気でやってる人に殺されるからやめなさい!」
「あーうん、ごめん」
やっぱ、読心能力あるよな?
そしてあくまで彼女は中二病ではないらしい。
彼女程度で中二病だと定義されたら本気で中二病している人に殺されるようだ。
結婚しても未だに分からないんだけど本気で中二病をするってなんなのさ。
分からないけど触らぬ神に祟りなし。
触れないでおこう。
それにしてもグダグダな始まりになったな。
一応ここはダンジョンの中、気を引き締めていこう。
先導してくれるヘーテルの足跡をなぞるようにしてついていく。
彼女は普通に歩くような調子なのに、たまにジグザグと動いたり軽くジャンプしたりしている。
察するに罠を避けているのだろう。
足跡をなぞるようにしているのはそのためだ。
「解除はしないんだな」
「数、多い」
「なるほど」
会話をしながらもどんどん先へと進む。
それにしても敵の数は少ないとは聴いていたが本当に出くわさない。
まあ、こんな罠だらけな足場で敵と遭遇しても困るんだけど。
「止まって」
「敵か?」
そうして進んでいたところでヘーテルの指示に従い立ち止まる。
敵かと思ったが彼女は首を振った。
「いえ、違うわ。この先に罠がないのよ」
罠がない?
ここまで罠が視界に入らないことなどなかったのに、見通せる範囲に一個もないというのは不自然だな。
通らないという手もあるが……。
「……このまま行こう。こっからは俺が先導する」
「ええ、お願いね。また罠が出てきたら言うわ」
少し考えて進むことにした。
罠が無いとのことなので俺が前に出る。
ってかヘーテル、キャラ演じるのやめてるな。
それだけこの罠のない通路というのが不自然であり、彼女も警戒を強めたといったところか。
さて、通路の奥には何があるのか。
宝だと嬉しいが十中八九モンスター、それもボス的な奴がいるだろう。
それはそれで問題は無い。
ヘーテルに罠解除と言うか、罠避けを任せてきたのだからこういう場面で活躍しておかないと俺はただの寄生になってしまう。
彼女はそれでも気にしないだろうけど、そこら辺はやっぱり持ちつ持たれつな感じにしておきたいのだ。
などと、考えつつもいつ襲われてもいいように警戒して通路の奥へと進んでいった。




