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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
僕らのダンジョン探索録(ダンジョン探索RPG)
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僕らのダンジョン探索録 15

 ラッピーと別れてから俺はのんびりと街をめぐり、ヘーテル用の装備を買い揃えていた。

 すでにBランクでありしばらく死に戻りしていない俺とヘーテルでは、キャラの基本ステータスに差があるので特にステータス補助系の装備を重点的に揃えていく。

 まあ、Cランクダンジョンを数回探索すればヘーテルのステータスも向上してすぐに俺と同じ基本ステータスになるだろう。


 体感でしかわからないがすでに俺のステータスはカンストしている。

 以前、そのことに気づいた俺は、実験として死んでステータスをリセットしてからどれくらいでステータスが戻るかを調べてみたら大体Cランクダンジョンを数回探索したらカンストすることが分かったのだ。


 多分死んだら初期ステになるシステムがある分、ステータスのカンストも早めに設定されているんだと思う。

 カンスト状態だと、肉体性能は割りと高くなり、過酷な訓練と幾度の実戦によって鍛え上げられた精鋭特殊部隊並ぐらいには動けるようになる。

 でも、あまり安心はできない。

 あくまでその能力は鍛え上げられた人間の範疇でしかないからだ。


 相手はまさしく人の力を超える者たちで、対抗するにはやはり装備が重要になる。

 刃が通らなければ如何なる技術も無意味だし、どれだけ頑強であろうともモンスター共はあっさりとその身を引き裂く。

 スタミナだってどうあがいてもモンスターには及ばない。


 だからステータスが伸びたところでたいしたアドバンテージにはならない。

 逆に言えば、ステータスは低くともまともな装備とアイテムがあり、それをうまく扱えば十分に戦える。


 それに今回向かう予定のダンジョンはCランクダンジョンの中でも特に罠の多いトラップダンジョンになっている。

 このタイプのダンジョンはトラップが多い代わりにモンスターとのエンカウントは少なく、そして弱い。

 なので始めたばかりのヘーテルでも十分に戦えるだろう。


 生産に傾注しているけどヘーテルの戦闘スキルもなかなかのもんだしな。


「装備はこんなもんか。あとは武器だが……武器は好みがあるし、直接聞くか」


そうこうしているうちに粗方の準備が整い残すは武器のみとなった。

 これはさすがに俺の一存で決めるわけにもいかないので、オープンIDを利用してヘーテルと通信する。


『ん、どうしたの?』


「おう、ヘーテルの装備を揃えてたんだが、武器はどうする?」


『ああ、そういうことね。それなら……そうね、弓矢がいいわ』


 弓矢か。

 なかなか難しい武器を選んだな。


「使えるからこその発言だろうけど大丈夫なのか?」


『もちろんよ。VR道場でも弓の成績は二番目にいいんだから!』


 VR道場というのは誰もが知っていると思うが、様々な武器の扱いを学べて、体感時間加速機能タイムアクセラレーターまで備わった素晴らしいVR学習ソフトだ。

 このソフトのいいところはあくまでもVRゲームに最適化されているところだ。

 それで二番目に成績がいいのなら相当な腕前なのだろう。


 ちなみに俺は片手で扱えるぐらいまでの剣が一番成績がよく、次いで槍の成績がよかった。


「おお、なら安心だな。ちなみに一番目は?」


『一応メイスかしらね。より正確には鍛冶に使う槌だけど』


 なるほど、ヘーテルらしい。


「ところで罠解除の方はどうだ?」


『ん、表のはコツを掴んだら簡単だったわ。今は隠し扉を見つけたからその先の区画の罠で練習してるけど、こっちはなかなか複雑で楽しいわね』


 隠し扉?

 あの練習場はそういうのも見つける練習ができたのか。

 俺は罠にばかり気を取られてたから気づかなかったな。


「順調そうでなによりだな。んじゃ弓矢用意しておくからな」


『ええ、お願いね』


 最後にヘーテルの声を聞いたところで通話を終了し、武器屋で弓を購入。

 ダンジョンは狭い場所が多いし、長い直線区間もほとんど無いから取り回しのいいショートボウを選択した。

 矢も消耗品だからど、ケチることなくしっかりとした物を選び、50本ほど用意。

 やや多いが、それは収納拡大エンチャント付きの矢筒を購入することでカバーする。


 結構な量の金を使ったが、ヘーテルのためなのだから少しも惜しくないし、それだけの金を出せる程度にこれまで稼いでいるのだからなにも問題はない。


 それに、トラップダンジョンは攻略できるなら稼ぎのいいダンジョンなので、すぐに元は取れるだろう。


 敵も弱く稼ぎもいいならさぞ人気かと思うかもしれないが、本当に罠が多いためそれほどでもない。

 罠解除は付け焼き刃では時間がかかるし、罠を警戒しての探索はかなり疲れるからだ。


 それだったら他の、罠の少ないダンジョンを何度も攻略したほうが精神衛生的にはずっとよいだろう。

 もちろん罠が少ないからといって、警戒しなくていいというわけでもないのだが10歩歩けば罠を踏むような環境に比べればずっと楽である。


 とはいえ、罠解除に自信のあるプレイヤーも少なくないので全体的にはトラップダンジョンは少し不人気な程度で人気具合に大きな差はない。


 今さらだがトラップダンジョン以外にもあるダンジョンのタイプについて説明しておく。

 このゲームのダンジョンにはそれぞれ特性があり、罠もモンスターも普通なダンジョンはノーマルダンジョン、罠ばかりなダンジョンはトラップダンジョン、モンスターばかりなダンジョンはモンスターダンジョンといった感じで極めて単純な形で分けられている。


 このように分かれているからプレイヤーは自分の好みにあった環境でダンジョン探索できるわけだ。


 ちなみに上記のタイプの他にもうひとつダンジョンのタイプがある。

 多くの罠、それも脅威度の高いものが設置されている上にモンスターも強く、数も多いダンジョンで、これはマスターダンジョンと呼ばれている。


 これはBランクになり、さらに街中のクエストを進めることで知ることができるダンジョンで、言うまでもなくその難易度はかなり高い。

 難しいだけあって得られるアイテムはかなり質のいいものになるし、聞くところによればこのゲームの最終ダンジョンはこのタイプらしいので、最終的に最高の装備を求めるならこのタイプのダンジョンを探索することになるだろう。


 もちろん人によって得手不得手はあるだろうが、だからこそのマルチモードだ。

 うまく役割分担して攻略すればいい。


 そんな感じなので、このゲームはソロでもマルチでも遊べるが、ダンジョンオールクリアを狙うなら実質マルチプレイがほぼ必須なゲームになるだろう。

 ぼっち戦士の人は……まあ、頑張って野良パーティで攻略するか戦闘も罠解除もできるスーパーぼっち戦士になりましょう。






 さて、そんなこんなでヘーテルの装備も一通り揃えた俺はギルドへと向かった。

 まだ1時間ほど時間が余っているので、ギルドの訓練場を使わせてもらうつもりなのだ。

 訓練場というのはギルドに備わっている設備の1つで、そのまま戦闘訓練ができる場所のこと。


 ちなみにこの訓練場についても例の如く、聞いて初めて教えてもらえる施設であり、その時もミュラさんに教えていただいた。

 その時のミュラさんはなんだかどうでもよさそうな様子で教えてくれたのだが、それもそのはず訓練場は無料で利用できる設備だったのだ。


 なぜ戦闘訓練は無料なのか。

 それはソロプレイ時でも唯一のマルチ要素だからだ。


 つまり、この訓練場というのは他のプレイヤーとPvPできる設備だったのである。

 てなわけで、俺は今からその訓練場でPvPをして時間を潰そうとしている。


 このPvPはマッチングの設定も細かく設定できて装備が対等な者同士だったり、あえての格差バトルであったり、無差別なバトルロワイヤルだったりと色々なルールで戦闘ができるので中々楽しい。

 また、PvPで死んでもデスペナ無しかつ、体力も全快の状態で復活できるので気軽に戦えるのも嬉しいね。

 逆にこれでデスペナとかあったら廃れるから当然だろうとは思うけど。


 さて、今回は、装備は訓練場で借りられる武器を使用、アイテムは無しという対等の条件で戦うルールにした。


 早速、試合が組まれて広々とした舞台の上に転移した。

 正面には今回の対戦相手がいて、武器は大剣らしい。


「じゃ、よろしく!」


「おう、互いに全力でやろうぜ! ま、俺が勝つけどな!」


「言ってろ!」


 相手にとりあえずよろしくといえば、相手もそれに答えつつも勝ち気な発言を重ねてきた。

 どうやらPvP大好きな人らしくその顔には笑みが浮かんでいる。

 俺もそれに強気に返しつつ、剣を構えた。


 そうして、試合は始まった。

寝坊しました。


【VR道場】

作中の世界では極めて一般的な学習ソフト。

あらゆる武器の扱いを学べるがどういうわけかVRゲームに最適化されており、不思議と現実にはあまり影響しない。

いわゆる身体で覚えるといったことができないためとも言われている。

なお、学べるとはいっても型を教えてくれるわけでなく無限組手を行うだけである。

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