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VRゲームで遊ぼう  作者: イントレット
僕らのダンジョン探索録(ダンジョン探索RPG)
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僕らのダンジョン探索録 12

 街に戻った俺はそのままログアウト……の前にギルドへ向かった。

 換金だけは済ましておきたいからな。


「換金お願いしまーす」


「はいはい、こちらへどうぞ!」


 慣れた食堂への注文のごとくそんなことをいいながらギルドに入れば割りとすぐに案内される。

 担当してくれるのはまたもや登録時に担当してくれた人だ。


「ふふふ、ヒュージさん、昨日ぶりですね! さあ、今回はどちらへ行ってこられたんですか? やはり先日お伝えした新しいダンジョンですか?」


「いや、最初のダンジョンの中層のほうに」


「おやおやおや! もう中層に挑まれたんですか! それにその様子ですと無事生還した様子! これは、本当に素晴らしい! おかげで担当した私の評価もまた大きく上がりそうです、ありがとうございます!」


 相変わらず現金な人だ。


「あ、私ミュラっていうんですけどこれからよろしくお願いしますね!」


「これから、というのは?」


「はい、これからは私がヒュージさんの専属の受付員になりますので、これからは換金であったり、何か相談事があればすべてこの私にお任せください!」


 へえ……?


「いやーもうヒュージさんはまず間違いなく出世株。他の人に任せて成果を取られ……じゃなかった、ヒュージさんに万が一のことがあったら大変ですからね! 私がしっかりサポートしなければと、そう思った次第ですよ!」


「なんとまあ……正直な人ですね」


「ふっふっふー、そうでしょう、そうでしょう! 我ながら自分の正直さは本当に素晴らしいと、そう思っております! 流石実力派の探索者であるヒュージ様! お目が高い!」


 なんとも困って濁した反応を返すしか無かったのだが、ミュラさんはそれで満足したらしく胸をはって自画自賛していた。

 どうやら今後はオークションであるとか関係なしにこのテンションと付き合わないといけないらしい。

 楽しいんだけどちょっと疲れる。


 まあ、いいや。


「はは……えっと、換金お願いします」


「はい! ではこちらに換金したいアイテムをいれてもらえますか?」


 今回は死ぬ前に得ていたものと、新たに手に入れたものを合わせて10個ほど。

 相変わらず出された箱はその数に合わせて仕切りがされているので丁寧に納めていく。


「はいはいっと……ふんふん、今回はオークションに出品するようなものはありませんねえ、残念です」


 ミュラさんが鑑定しながらもそう呟く。

 その言葉は絶対あれだろうな。

 自身の評価のためでた言葉だろう。

 以前の口振りから察するに、こちらの稼ぎによってミュラさんの評価も向上するようだし。


 その後も軽口を叩きながら一つ一つアイテムを鑑定していくが、態度のせいで若干鑑定結果を怪しんでしまいそうになる。

 しまいそうになるだけで、実際はその結果は公正なものだと確信している。


 だってゲームだし。

 それに鑑定しているときの目がヘーテルが生産活動しているときの目とそっくりだからな。


「はい、終わりました! オークションに出すような超高額アイテムがなかったのは残念でしたが、それでも一つ一つの質や希少性はかなりのもので、これはこれでヒュージさんを懸命に支えてきた私の評価も大きなものとなりそうです! ヒャッフー!」


 鑑定が終わると同時に流れるように出てくる現金なお言葉。

 だからなんでそんなハイテンションなのか。


「で、結局どんなもん?」


「あっと、そうでした! とりあえずランクによる換金ボーナスも全部合わせて284万ゼフで買い取りさせていただきます! 内訳はこちらのほうをご覧ください!」


「えっ……えぇ!?」


 予想外に高額買い取りに、思わず驚きの声を上げ、内訳の書かれた紙に目を通す。

 合計欄にはたしかに284万ゼフと書かれていた。

 どれも10万ゼフ以上で買い取りされていて、一番高いものはミドルリザードから手に入れた竜系譜の涙という名称らしいアイテムで、これひとつで120万ゼフと書かれていた。


「最初のダンジョンなのに中層にいっただけでこんなになるのか……」


「ふふふ、驚いたでしょう? うんうん分かる、分かるよーその気持ち! それだけダンジョンのアイテムは貴重だってことなんですよー!」


 俺の呟き反応したミュラさんが何故かどや顔で語り始めた。


「まあ、その槍なんかを換金したら7000万ゼフは堅いですから、それと比べればこれぐらい普通ですよ普通!」


 ついでとばかりにもたらされた雷槍の価値についての情報に俺はピシッと固まった。


「…………えぇ!? これそんなにするの!?」


「もちろんですよ! 魔法特性付きの武器、それも雷属性となればかなりの逸品! 見たところFランクダンジョンから手に入れたようなので等級自体は低くなりますが、それでもDランクダンジョンの上層エリアボスぐらいまでは通じるでしょうし」


 驚いた俺の言葉にえっへんとばかりに胸を張ったミュラさんが説明してくれた。

 でもそれを聞いてすこし落ち着いたというよりも落胆した。


 逸品とはいえ、Dランクダンジョンの上層エリアボスまでにしか通じないのか。

 こうなると最初のダンジョンでこれを手にいれてしまったことが悔やまれる。

 もっと高難易度か、深い階層で手にいれていれば相応に高い性能のものが手に入っただろうに。

 なんとなく無駄に運を使ってしまった感が残る。


 ……まあ、仕方ない。

俺が高望みしすぎていただけだからな。

 切り替えよう。


「ところでこれを買い取ればそれだけミュラさんの評価に繋がりそうなのに売ってくれとか言わないんですね」


「そんな身勝手な要求するわけないじゃないてすか! 私をなんだとおもってるんですか!?」


 切り替えて、冗談混じりに告げた言葉に思いの外ミュラさんが怒ってしまった。

 さらに、本当に心外だと言わんばかりの表情で言葉を続ける。


「いいですか? いまそれを買い取ったとしてもそれは一度きりです。ですがその槍をヒュージさんが使えば、ダンジョン探索はよりスムーズに進み、その分多くのアイテムをこちらで買い取ることが出来るんです! 今その槍を買い取るよりもそっちの方がずっと高い評価を貰えてお得なんです! だからむしろ売らないでくださいね!」


 うん。

 まあ、知ってた。


 けどまあ、現金な人ではあるが、一応こちらのことも考えてくれていての発言なのだろう。


「ええと、まあ心配してくれてありがとうございます」


「はあ? 何をいって……んっんん! いえ、探索者の皆様を支援するのが私たちの役目ですので! はい!」


 ……きっと、おそらくはこちらのことを考えてくれているはず……。


 さて、とにかく換金は終わったし今日はもう終わりますか。

 明日はそうだな……罠解除について調べてみるか。


 チュートリアルもそうだけど聞かない限りは教えてくれないっぽいし。

 ……そのチュートリアルで罠解除についても教えてくれてたりしてな。


 そんな一抹の不安を感じながらゲームを終了した。

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