僕らのダンジョン探索録 11
隠し部屋で短槍……仮称、雷槍を手に入れた俺はその後順調に階層を進んでいった。
武器自体の攻撃力もさることながら、雷による特殊攻撃によってリーチが伸びるのが本当に便利だ。
加えて電撃が敵を怯ませてくれるので、その分敵の攻撃を貰うこと無く安全に戦闘することができた。
そんなわけで順調に5階層までやってきたわけですが。
真っ暗です。
何も見えません。
しゃがんで地面の様子を確かめてみた限りレンガ作りの部屋っぽい。
でも何も見えない。
そういえばそんなギミックありましたね。
松明で石油的な何かに火を灯して、っていうやつ。
一度火をつければそれなりに明るくなってたけど点けるまでは真っ暗だった。
「やっちまったなあ……」
とりあえず5階層の仕組みはダンジョンを入り直しても変わらないっていうことが分かったのはいいんだけど、そのギミックに必要な松明がない。
幸いあの石油がどこにあるかは臭いである程度わかるので、慎重に歩きつつ臭いの元へ近寄れば見つけることはできるだろう。
問題は着火だ。
着火できないと魔法陣が機能しなくて鬼も出てこないかわりに中層エリアへ続くゲートも出てこない。
悩みながらも右手に握る雷槍の感触を確かめる。
いけるか?
こいつの特殊攻撃なら着火できるかも?
いや、できると信じよう。
でなければ戻ることも進むこともできないのだから自殺することになる。
それは嫌だなと首を振り、俺は独特の臭いがする方向へと慎重に歩き出した。
「よし。噴水のところまで来たな」
石油の臭いが格段に強くなり、手を伸ばせば噴水台に触れることができる場所までやってきた。
道中は特に障害物も無かったのだが、やはり暗闇で何も見えない中歩くというのはかなり怖かった。
早いところ視界を確保したいところである。
「よーし……頼むから着火してくれよな……!」
少し心を落ち着かせて雷槍を構える。
そして、雷を発生させるようイメージしながら一気に突けば、刃先から雷が放射された。
雷光によって噴水台が照らされ、そのまま雷光は溢れ出る石油へと突き刺さる。
そしてその次の瞬間、ボッと小さく爆発したかと思えば一気に燃え上がり、火が水路を走っていった。
「おおし、首の皮一枚繋がった!」
試みは成功し、炎による魔法陣が描かれていく。
とりあえずこれで自殺はしなくて済みそうだ。
それから少しして、火が行き渡って魔法陣が完成する。
同時にゲートが現れて、その後魔法陣を構成していた石油的な液体とそれが流れていた水路が消え去る。
前回と流れは一緒だな。
ってことは……。
ゲートの扉が開きはじめる。
だが、それを無理やり破壊して開放する赤い腕が現れ、すぐにその全容が明らかになる。
『エリアボス、血狂いの赤鬼が現れました』
同時に前回同様のメッセージが通知された。
仕組みもそうだが、ボスも潜り直しても変わらないのな。
「グガアアアアアアアアア!!」
現れた赤鬼が叫び、駆けてくる。
攻撃パターンまで同じとは限らないが俺はすぐに避けられるように身構える。
そして、10メートル切ったところで最初と同じように赤鬼は高くジャンプして空中から襲いかかってきたので普通に回避した。
どうやら、最初の攻撃はそういう風に決まっているようだ。
だが、その後の行動はランダムなようで今回はやたらと蹴りが多い。
蹴り技というのは回避さえできればかなり大きな隙を生むことが多いのでこちらとしては助かる。
「おら、ここが弱点だったよなあ?」
「ガァアアアアアアアアアアア!?」
今も踏みつけを躱して後ろに回り込み、すかさず弱点のケツに槍を突き入れることができた。
特殊攻撃である雷光は溜め動作がいるので発動していないが、前回時よりもなんとなく大きなダメージを与えられている気がする。
突きに特化してる槍だからというのもあると思うが、やはり攻撃力が高いのだろう。
そして、ダメージに仰け反って隙だらけなところに俺はしっかりと槍を構えて雷光を発動しながらもう一度ケツへと突きをお見舞いした。
槍がケツに刺さるど同時に刃先から雷光が放たれて赤鬼の身を貫いた。
「グア――……っ」
「おお……マジでこの武器つええ」
それで赤鬼は力尽きたようで、ゆっくりと倒れ消え去った。
かなりあっさりではあるが、それだけ手に入れた武器が強力ということだろう。
そうして俺は中層エリアである6階層へと戻ってきた。
さて、ここからが勝負である。
とりあえず前回ロストしたアイテムを見つけても慌てずにトラップを確認して動こう。
こういうのはアイテム手前にいやらしくトラップが設置されているのがダンジョン探索ゲーのお約束だからな。
雷槍も手にした今、いよいよ生きて帰りたいところである。
さて、とりあえず6階層に転移してきたこの部屋にはアイテムはないようなので移動する。
部屋から通路へと入るときはなんとなくジャンプして直前の床を踏まないようにした。
なんか、出入り口って罠が特にあるイメージがある。
そこに罠があったら大概絶対引っかかるだろうし。
疑心暗鬼になりそうだ。
「ふう……そろそろ1つぐらい見つかってほしい……」
あれから2時間ほどダンジョンを歩いているが、新規に換金アイテムを見つけていたりはするものの、肝心のロストアイテムが見つからない。
最低でも帰還水晶さえ見つけられれば諦めて帰るって手段も取れるのだが。
「っと、次の部屋が見えてきたな……」
祈りながらも通路を歩いていれば次の部屋の入口に差し掛かる。
周囲の音に集中してみるがとりあえず怪しい物音はしない。
というか、15分ほど前から全く敵モンスターの気配を感じない。
それまでは程々の頻度で出くわしたものなのだが。
尚、出てきたモンスターは雷槍によって簡単に倒せたので苦労はなかった。
「とりあえず入り口に罠は……ないな。で、部屋の様子はっと……おっ」
とりあえず入り口に怪しげなスイッチなどが無いか確認し、それから部屋を見渡せば何やら見覚えのあるテントが部屋の隅に広がっていた。
はやる気持ちを抑え、慎重に罠がないか確かめつつ近寄って見れば、それは間違いなく俺が持っていた魔物避けエンチャント付きのテントであった。
「おおーなんでか知らんけど展開された状態であったからこの辺りに魔物が居なかったのか!」
ようやく見つけたロストアイテムにテンションを上げつつ、ここまで不自然にモンスターと出くわさなかった理由を悟る。
どうやらロストしたアイテムは他のアイテムみたいに拾い上げるまでキラリと光る小さな石みたいな表示じゃなくてしっかり形が分かるようになっているらしいな。
ふんふん……っと、待てよ?
そういえばひとつ前にあった部屋の棚。
あっこに確か背負袋っぽいものがぶら下がっていた。
あの時はアイテムは光る石な感じで表示されてると思ってたからスルーしたけどあれってもしかしてもしかするんじゃないか?
よし、ちょっと確認してこよう。
「おし! 来た! 流れ来てる、これ!」
早速戻って確認すればやはりそれは俺がロストしたはずの背負袋で間違いなかった。
とりあえず低級の背負袋と入れ替え、道中手に入れたアイテムも回収した背負袋へと入れ治していく。
ああー軽量化エンチャントのおかげでかなり軽くなった。
こんなに効果あったんだこれ、って感じ。
「これでテントも回収できるな」
これで容量も拡大したのでテントの方も回収できる。
この失った装備が徐々に戻ってくる感じ、たまらないね!
それからテントを回収した俺はこの周辺の部屋を探していくことにした。
2つだけだが隣り合って存在してたんだし、他のアイテムだって近くにある可能性はあるだろう。
もちろん罠に対する警戒は緩めない。
折角回収したんだから何としても俺は生還してみせる!
そうして周辺の部屋を探索した結果、案の定ロストアイテムが周辺に固まっていて、携帯食料と煙幕玉以外のアイテムは回収することができた。
見つからなかった2つは所詮消耗品だし、持ってきた分が残っているので問題ではない。
とりあえずダンジョンを一気にここまで潜ってきたのと、アイテムを回収するためにかなり集中して罠を警戒していたのとで精神的にも疲れてきたのですぐに帰還水晶を使用して街へと帰還したのだった。




