DEAD_RACING 1
VR技術。
夢だと思われていたのも今は昔。
今では……ってどうでもいいわな。
ってことで早速今回プレイするゲームを発表しよう。
今回は比較的最近に発売されたゲームだから知っている人も多いだろう。
タイトルは「DEAD RACING」。
決してショッピングマートであふれたゾンビを相手にスケボーやらマネキンの腕やらで無双もといサバイバルするゲームではない。
まあ、タイトルからわかると思うがレースゲームだ。
ただ、頭にDEADとついていることからリアル系でないことはわかってもらえると思う。
とりあえずこのゲームはすでにプレイ済みなのでとにかくこのゲームの面白さを伝えられれば幸いだ。
ってことでゲームスタート。
降り立った場所はスチームパンク感あふれる街の中。
レーシングゲームであるのだがこの時点で車などに乗っているわけではない。
この街はいわばロビーであり、ここで出場するレースを選ぶことになるのだ。
また、レースで得た賞金やパーツで機体を購入したり改造したりすることも可能。
しかもその機体をプレイヤーでかなり自由に作れるためレース用の機体は本当に人それぞれだ。
プレイログに残す形としてはこれがこのゲーム初になるので今回は俺の愛用する自慢の機体を選択した。
大きさは高さ5メートル、横幅3メートル。そして奥行きが2.5メートル。
こうして数字にすると非常にアンバランスな造形に思えるかもしれないがそんなことはない。
安定性も機動性も素晴らしい機体だと自負している。
そして両腕には二丁のパルスライフルが装備されている。
ざっくり言うと戦闘用人型兵器である。
さて、早速レースに参加するとしよう。
この機体はそれなりに高ランクのものとなるので必然的に高ランクか無制限のレースのみと出られるレースが限られる。
今回は無制限を選択した。
そうして参加するレースが決まるとレース参加者が集まる空間へと転移させられる。
この時に搭乗機体に乗り込んだ状態で転移されるのでレース開始前に参加者の機体を確かめることでレースに勝つためにどうするか考えることができる。
「おっ、最後の参加者が来た……ゲェ!?」
「やっとかぁって!? 簒奪野郎かよ!?」
「オワタ……」
「今日は気合入れて勝ち狙った機体で来たってのにこれじゃ修理費が……」
「なんで無制限にその機体でくるんだよ……最高ランクマッチにいけよ……」
俺が現れると同時にこんな反応があった。
歓迎されてて嬉しくなっちゃうね。
ホント、嬉しくてしょうがないからお礼に全力でレースしてやろう。
期待通りにな!
さて、レース参加者だが……どうやらオーソドックスに車輌型の機体ばかりのようだ。
F1などに使われるような車だったり、軍用ジープだったり装甲車だったりするがそれでも普通の車輌型だ。
おっと、他の車輌に隠れていたが垂直離着陸戦闘機がいるな。
武装は……プラズマミニガンか。
最優先破壊目標が決定したな。
他に脅威になりそうな機体はいない。
どうやら今回のマッチングは全体的に一攫千金を狙った輩らしい。
無制限マッチは参加するのに一切の制限がなく、高ランクのプレイヤーが参加してくることも結構ある。
だからその分レースの賞金は相当なもので、ただゴールするだけでも中堅といえるぐらいの人たちからすればかなり儲けられるのだ。
反面俺ぐらいのランクになると無制限マッチはそこまで旨味は無い。
高ランク専用マッチのほうが遥かに稼げるからな。
まあ、無制限マッチには奇妙奇天烈な機体で参加する猛者が結構いるため高ランクプレイヤーでも参加することは多々ある。
俺は基本は高ランク専用マッチで遊び、たまに無制限マッチにネタ機で参加する程度だ。
今回はプレイログにするということで愛機を選択し、低ランクの普通というのも伝えるために無制限を選択したわけだ。
さて、そろそろレースが始まる。
参加者がそれぞれ別の場所へと転移させられた。
俺の開始地点はビルの立ち並ぶ区域の道のど真ん中。
マップを確認すれば南側の端の方で、といったところだが、これはランクによる補正がかかっているのだろう。
最初の目的地からかなり離れた場所だ。
ちなみにこのゲーム決まったコースはないしそもそもまともな道さえ用意されてないことがある。
あるのは広大なオープンマップと通るべきチェックポイントだけでチェックポイントをクリアするたびに次のチェックポイントが提示されていくのだ。
そしてレース中は完全にルール無用のサドンデスレースである。
勝つためならライバルを蹴落とすどころかぶっ殺してでも勝利をつかむ。
それがこの「DEAD RACING」というゲームだ。
さて、最初のチェックポイントはここから真北のかなり離れた場所だ。
高ランク機体だから普通にレースしても勝てるぐらいにはスピードも出せるがその場合は本当に速く動き続けなければならない。
ってことでゴールとかチェックポイントとかは無視しよう。
俺はフットペダルを踏み、ブーストを吹かせ北東へと移動を開始した。
ブーストパワーは少し抑えて7割といったところだがそれでもこの戦闘用人型兵器は時速400kmぐらいの速度を出してビルが立ち並ぶ街中を進む。
かなり早いように感じるかもしれないが他の参加者の車輌もそれなりに早い。
そもそも一人戦闘機に乗ってるやついるしな。
30分ほど何事も無いドライブ……と言っていいか謎だがとにかく北東へ移動し続けたところレーダーが敵機を感知した。
その速度はかなり早いが位置的には地上の道路を走っているようで最初のチェックポイントとは別の方向へと爆走している。
ってことはあれはすでに最初のチェックポイントをクリアして次のチェックポイントに向かってるってことになる。
かなり早いな。
おそらくは低ランクに抑えた上でのスピード特化機体。
低ランク機体により開始位置を有利にし、スピード特化によって妨害を受けるよりも速くゴールしてしまえばいいという発想なのだろう。
低ランク機体でこの早さとなるとそれなりのレアパーツを使っていると思われるな。
レアパーツは例え低ランクに収まるものでも性能が桁違いだ。
どれぐらいの性能かというと普通に高ランク機体でも十分以上に使えるぐらいには高性能だ。
さて、パーツのことはともかくチェックポイントは参加者共通のものなので他の参加者もゆくゆくはそのチェックポイントへと辿り着く。
つまりは待ちぶせには最高の場所ってことだ。
俺はビルを挟んでその敵機と追走することにした。
ひとまずモードを切り替えるか。
モードを変えるボタンを押せば機体があっという間に変形し、戦闘機のようなフォルムへと変わる。
戦闘機に一瞬で変形する人型兵器。
どこかで聞いたような?
まあ、よくある定番ですし?
この状態だとかなりの速度で動けるが、武器が使えないというのとやや小回りが効かないという難点がある。
おまけにエネルギーの消費速度がジェネレーターの出力を上回るので最終的に一旦止まってエネルギーが充填されるのを待たなければならないというのもある。
だが、スピード特化機体を追うには仕方ないのだ。
と言うかこれでも若干追いついてないが……振り切られる前にチェックポイントについて欲しいものだ。
なお、レーダーと言うのはかなり大きいパーツになるのでまず相手の機体はレーダーを装備していない。
スピード特化なら尚更だ。
だからこっちが相手をレーダーで捉えたからといって、相手側が俺を捉えているわけではないので追われていることに気づかれる可能性はかなり低い。
それに俺の使うレーダーはレアパーツ。
索敵範囲が通常のそれよりもアホみたいに広いので相手との距離はそれなりに開いているから目視される心配もない。
楽しい楽しいドライブと行こうじゃないか。
それからわずかに10分後。
そろそろエネルギーもやばいかなってところで相手が停止した。
ビル群の中心あたりだ。
余程の理由がない限りレースで止まることはない。
なんらかの故障が生じた時か、死んだ時か。そしてチェックポイントへ辿り着いた時ぐらいである。
チェックポイントへ辿り着いたら一定時間停止して次のチェックポイントの座標を受け取らなければならないのだ。
それを確認して消費の激しい戦闘機モードから元の人型へと戻し、ややブーストパワーを抑えて相手が停車した場所へと向かう。
この座標受け取りの時間はかなり長めだ。
だからこそ相手側もこの時間を最も警戒しているから見つかれば即座に離脱されるだろう。
離脱してもそれまでに受け取った分は保持されるのでそうやって少しずつチェックポイントに停止することで敵の妨害を掻い潜りながら座標を得られる。
俺はレースのゴールを目指していない故にここでこのスピード特化機体を逃すのはかなり面倒なことになる。
そのため決して逃がさないように慎重に動かなければならない。
そうしていくつかビルを挟んで100mほどまで近づけた。
ここまで近づくまで動かなかったところを見るとやはりチェックポイントで間違いないようだ。
場合によっては俺みたいな待ち伏せてライバルを破壊するプレイヤーに対するブラフとして別の方向へ進むプレイヤーもいるからな。
さて、それなり近づいたが、装備しているパルスライフルの射程はかなり短くて30mギリギリ届くかといった代物なので後100mと言うのは短いようで遠い。
だが、これ以上近づけば気づかれ逃げられるだろう。
だから音を立てないようにブーストパワーを抑え少しずつ上昇し、ビルの屋上を目指した。
そろそろ座標の受け取りも終わる頃だが焦らずに上昇を続け、ついに屋上へと辿り着く。
屋上に辿り着いたら今度は別のビルの屋上へと移動し、相手に近づいていく。
相手はまだ動かない。
そしてついに眼下に相手の車輌を見下ろせるビルの屋上まで辿り着いた。
……よし、気づかれていない。
だが、そろそろ座標の受け取りも終わるだろう。
だから、すぐにビルの屋上から飛び降りた。